十二国
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十二国(じゅうにこく)は小野不由美の小説『十二国記』シリーズの舞台となる架空の世界の呼称、またはそこに存在する12の国の総称である。
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[編集] 概要
十二国の世界は、山海経に登場するような神仙や妖魔の存在する世界である。文化、政治形態は古代中国(特に周)に類似しており、絶対的な王制である。しかし世襲制ではなく、12の国はそれぞれ神獣麒麟(きりん)が天意に従って選んだ王により統治されている。王は諸侯を封じ、政治をさせる。王や一部の高位の官は神仙として不老長寿(だが必ずしも不死ではなく、胴や首を断たれれば死んでしまう)の身体を得て、天意に従う形で国を治めることを求められている。麒麟が失道にかかりそのまま死ぬ、あるいは退位禅譲するか、誰かに討たれない限り王は死なない。
他国への軍事的干渉は、その国の国主が助力を求めてこない限り天意によって厳しく禁止されており、理由の如何を問わず破った国は王・麒麟ともに悲惨な死に方をし国氏も変わる(覿面の罪)。この点が他の異世界ファンタジー小説と大きく異なる設定である。それは戦闘シーンや戦争そのものを描くことが本作の主眼ではないからであろう。王とそれを選ぶ麒麟、そして天意とは何なのかという問いが、作品全体の主題となっている。さらに、サイドストーリーとして最初に執筆された『魔性の子』では、この異世界が我々の暮らす現実世界に干渉したときの恐怖がホラー小説として描かれており、甘い異世界幻想に収まらない世界観を提示している。
[編集] 基本設定
[編集] 創世神話
この世界には独特の創世神話が存在している。それは単に過去のことを語る神話として存在しているのではなく、具体的な「天の意思」として今なお現実に機能している太綱等とも密接に結びついている。それはおおよそ次のようなものである。
- かつて世界は九州と四夷の合わせて十三州からなる今とは全く違う世界であった。しかしそこでは人々はあまりにも条理をわきまえず無軌道に生きていた。天帝がどれだけ諭しても誰も行いを改めず、戦争が絶えることなく血の河が流れるほどであった。
- そこで天帝は決意し、世界の全てを一度滅ぼして5人の神と12人の人を除いて全てを卵に返した。
- 中央に五山を作り五山を取り巻く部分を黄海とした。5人の神を龍神として五山のそれぞれを守らせた。
- また12人の人にそれぞれ3つの実がなっていて蛇が巻き付いている枝を渡した。3つの実はそれぞれ土地と国と玉座になり、残った枝は筆になった。蛇は太綱、土地は戸籍、国は律、玉座は仁道、筆は歴史をそれぞれ示している。
[編集] 天帝
天帝(てんてい)とはこの世界の最高神であり創造主でもある。今の世界が出来る前から世界の支配者であったが、かつての世界があまりにも乱れたものであったため世界を一度滅ぼして、全てを卵に返して現在の十二国世界を作った。十二国世界の全てを作り、天綱を定めて今も世界の全てを治めているとされる存在である。麒麟が王を選ぶのも天帝の意思に従って選んでいるとされている。単に「天」と呼ばれることもある。玉京に住むと伝えられている。
小説中においてもほとんど説明がなされない謎の存在。天界に属する天仙である犬狼真君が黄朱の里に里木をもたらす際に「天帝や諸神を動かした」とされる[1]が詳細は明らかにされていない。「天帝が王を任じる儀式」とされている王の即位の儀式においても姿を現さず声すら聞こえない[2]。人界に属する雁国主従は500年に及ぶ統治の間「会ったこともないし、会ったという奴も知らない」と語っている[3]。そのため、存在の有無や十二国世界での役割については様々な憶測を呼んでいる。
[編集] 王
王は麒麟によって選ばれ、天帝に代わって国を統治する人物。選ばれる資格はその国の里木に実った卵果から生まれたこと(戸籍の有無は問わない)と、麒麟のみが感じ取る王気を有していることである。この王気は、天帝の意思すなわち天命とも云われているが、はっきりしたことは不明。過去に無能な王や女王が数多くおり、長期間統治する名君や賢君と呼ばれる者は少数派である。また、謀反などで王が危機に陥っても、天帝が助けてくれることはない。これらのことから、一般的に伝えられる天命というシステムや天の存在に対し、疑問をもつ者もいる。
王の統治には幾つかの転機が存在するらしい[4]。
-
- 統治を始めてから十年ほどの時期。実務に長けた官僚団を編成できるかが最初の関門となる。官僚の編成に失敗し、国家統治への気概を失うことが多い。
- 一般的な人間の寿命が過ぎたあたり。不老不死であるにもかかわらず人間としての寿命が尽きたことを考え始め、「生きること」への欲求を失うものと思われる。
- 300年ほど経過した時期。このまま王として永遠に統治し続ける事の重圧に、精神が耐え切れずに破綻するものと思われる。
もちろん、これらの転機点以外で斃れる王も数多く、常にこの事例に該当することではない。
“王”となるのは麒麟に跪かれた時点、あるいは誓約を交わした時点であるなどと考えられている。王になった時点でその者は人として死に、麒麟の霊力で生かされているとも考えられており、麒麟が死ねば王は死ぬ。麒麟の選定により王となった者は戸籍から除かれて神籍に登録され、以後は不老不死となり、冬器以外では危害を受けない体になる(この点は仙と同じ)。戸籍が無いため正式な結婚は出来ないが、登極時に既婚者の場合はその配偶者との間の子供を路木に願う事が出来る。各国の宝重の中には王のみしか扱えないものもあり、麒麟とともに王にとっての切り札となる。麒麟が失道するほどの失政がない限り、王が玉座にいることで天災や妖魔の襲来を減らすことが出来る。王にとっての最も基本的な職務に当たるが、ただ王宮にいるだけでは足りず、儀式、特に郊祀が不可欠。
王に選ばれると麒麟との誓約を慣例に従った文言で交わす(麒麟はこの誓句を女仙達に習う)ことになる。そして、天勅を受けるために蓬山に向かう。天勅を受ける日まで王は丹桂宮で過ごし、吉日になると雲梯宮へ赴き、階を昇る。階は蓬山の山頂の廟に続いており、階を昇り終えた者は天帝に向かって廟に焼香する。その後、玄武の背に乗って雲海の上を渡って王宮へ向かう。
王が誕生すると、様々な吉兆が現れる。まず、王が誕生した国の白雉が「即位」と鳴き、鳳が他国の王にどこの王が即位したかを伝える。そして、瑞雲(正体は玄武の航跡)が現れる。したがって、これらの吉兆が無い場合に王の即位を伝える使節が来た場合、大抵の場合は偽王であることを疑うし、事実、そうである。王が斃れた場合は、白雉が「崩御」と鳴いて死に、こちらも鳳によって他国の王に知らされる。
[編集] 麒麟
一国に一の最高位の神獣。王気を頼りに自らの主(王)を選ぶ。その後は王と共に国へ赴き(麒麟は蓬山生まれであるが、慣例として「生国へ下る」と表現される)、臣下に下り宰輔となる。その本性は仁である。民意が具現化したものと考えられている。自らの主以外には決して叩頭せず、拒む意思や王の命令の有無によらず他者に叩頭することは不可能である。なお、麒麟本来の力は、獣に転じたときの角が根源であるとされ、故に額に触れられるのを嫌う。空を駆ける事ができ、この世で最も脚が早いとされる。
麒麟は十二国世界の中央・五山の一つ蓬山にある捨身木に黄金の卵果として実り、誕生後は蓬廬宮を住宮とし、女怪の乳と蓬山の女仙によって育てられる。王と誓約するまでは「蓬山公」(蓬山の主の意味)とも呼ばれる。蓬山に住む女仙達は麒麟の身の回りの世話をする召使となるが、女仙の長である碧霞玄君は唯一麒麟と同格の存在として扱われる。王のいない麒麟の寿命は30年ほどで、先代の雁国の麒麟のように稀に王を見出せないまま天寿を迎える麒麟がいる。しかし王を選んだ後は、王が道を失って「失道の病」にかかったり、謀反などで冬器で攻撃されるなどの事態にならない限り、王と共に生き続けることが出来る。麒麟が死ねば王も死んでしまうため麒麟を殺したものは死罪に処されるが、著しい圧政時においてはその限りではない。麒麟の性格は基本的には生国の国民の気質に準じる。
生まれたときは獣の姿で角は無いが、5歳ぐらいになると時折何かの弾みで人の形に変化するようになり、片言の言葉を話し始める。それからしばらくは姿が頻繁に変わるが次第に落ち着いてきて、角の先端が額に現れると完全な人型になることができ、同時に乳離れをする。乳離れする前は傷や血の汚れに強い。麒麟の能力の多くは獣の時代に身に付く。獣の頃は五山を奔放に駆け黄海を飛び回って妖魔を遊びのように折伏しながら暮らす。人の姿から獣の姿になることを転変(てんぺん)、逆に獣から人になることを転化(てんげ)という。蓬山で生まれ育った麒麟は獣の姿で生まれ、成長に伴って転化を覚える。しかし、泰麒のように十二国外での生活が長すぎて転変が困難な場合がある。また、成獣すると外見上の成長は止まるが、成獣までの年月はそれぞれの麒麟によって異なる。
色違いで無い場合は金の鬣を持つ(黒麒麟である泰麒は鋼色)。供麒は銅に近い金色、景麒はかなり薄い金色、と言った具合に、鬣の色にも個性がある。十二国世界で金髪の者は必ず麒麟である。いかなる染料をもってしても鬣を染める事はできない。人型のときの髪は獣型における鬣であり、転変時に不揃いになることや首が曲がってしまうことを避けるため、基本的に切ったり結ったりはしない。鬣(=髪)の長さは個体により違い、伸びるのが止まるまで伸ばすのが普通である。
雄を麒、雌を麟といい、国氏を冠してその麒麟を表す号となる。たとえば、慶国の麒麟は雄なので景麒(けいき)、範国の麒麟は雌なので氾麟(はんりん)と呼ばれる。ただし、そう呼ぶのは蓬山で女仙の庇護下にある間か私的な会話の場合のみで、公式の場では一般に役職名の宰輔、あるいは畏れ敬って台輔(たいほ)と呼ばれる。他国の麒麟の場合は国氏をつけて景台輔などと呼ぶ。麒と麟の割合は、一国をみても世界全体を見ても、時代によって偏りが出る事もあるが総て見ると大体半々の割合になる。
麒麟は慈悲の生き物であり、その性質上、血の穢れを最も嫌うので、肉や脂(煮凝りや動物性のスープも含む)はどのように調理しても当然食べられない。血が体に付着すると(たとえ自分の血であっても)体が痺れて動けなくなり、血の臭いが充満した戦場などに行くと、最悪の場合倒れてしまう。
特殊な能力として、妖魔を自分の臣下(使令、しれい)として従える事ができる。使令に下す際、麒麟は死後に自分の死体を食べさせるという契約をする(麒麟の肉体は霊力の塊であり、妖魔にとって美味とされる)。そのため、墓は王と合葬される形を採られるものの、墓に麒麟の死体は無い。また、妖魔は麒麟を食べることでその力を得るため、麒麟自身の能力を超えた力を持つ妖魔を従属させる事はできない。通常麒麟は死後に殯宮(もがりのみや)に安置され、安置されている間に妖魔はこっそり死体を食べる。
生みの親は居らず、自国に戸籍が持てず(他国の麒麟を戸籍に入れることは可能)、結婚も出来なければ子供も出来ず、ひたすら王に尽くした後は自分だけの墓は無く、王と合同の墓はあっても死体が無いという麒麟の生涯を、六太は「無い無い尽くし」であると喩えている。
[編集] 昇山
昇山(しょうざん)とは、王に選定されることを望む人々が、自力で蓬山に登ってその国の麒麟に面会することである。昇山によって麒麟に面会できるのはその国に籍がある者だけである(たとえば、景麒に面会できるのは慶の人間のみ)。ただし、王となる条件は生国の里木から生まれた者であるため、王となるべき人物が胎果として流された場合は昇山することができないため、麒麟が自ら蓬莱・崑崙に渡って王を探さなければならなくなる。また、一生に一度しか昇山できない規定がある。
前王と共に麒麟がなくなった場合、麒麟の成長を待たなければならないため、約5~10年の歳月を待たなければならない。麒麟の準備が整うと生国の里祠に麒麟旗が掲げられ、王の選定(昇山)の開始を告げる。そのため、いち早く昇山を試みようとして、時期が近付くと麒麟旗が揚る前に四令門を巡り始める者もいる(四令門が開くのは、それぞれ年に一度決められた日だけであるため)。
昇山するには「四令門」のいずれかを通って蓬山に赴くことになる。門から蓬山までは約一月かかる生死を賭けた旅である。麒麟と面会した結果、王気を認められなければ「至日(中日)までご無事で」と言われるのが定石である。至日(しじつ)とは夏至および冬至、中日(ちゅうじつ)とは彼岸のちょうど中日(春分および秋分)、つまり次に「門」に開く日を指す。王であれば帰路は雲海の上を安全に帰ることになるので、王ではない=危険の伴う黄海を戻ることを暗に伝えていることになる。
一般的に昇山者は、初期ほど自負心の強い軍人や官が多く、後になるほど周囲の者に押されて昇山を決意した者や商人が増える傾向にある。特に最初の昇山者の中から王が出たときは、その王を「疾風のように王になった者」の意味で瓢風(ひょうふう)の王と呼ぶ。瓢風の王は昇山前から自他共に「王に相応しい」と評された者が多く、傑物であり名君になる可能性が高いとされる一方で、早期に斃れることも多いとされている(「瓢風の王は朝を終えず」という故事も存在する)。瓢風の王の例としては、驍宗(泰王)や砥尚(采王)が挙げられる。
昇山者の中に王となるべき人物がいた場合、剛氏の間ではそれを鵬もしくは鵬雛と呼び、通常よりも格段に困難が軽減されるためにその旅を「鵬翼に乗る」と表現するが、万一その人物が死ぬと、それまでの幸運のツケが一気に回ってくる。
なお、現在の十二国の王のうち自分で昇山したことが明確に分かっているのは供王・珠晶と泰王・驍宗の2人。延王・尚隆と景王・赤子は麒麟が蓬莱に赴いて王を選び、宗王・櫨先新はその経営する旅館に宗麟が訪れている[5]。利広によると劉王・助露峰も昇山はしていない[6]。他の国については不明。
[編集] 特殊な獣
[編集] 女怪(にょかい)
麒麟と同じく捨身木(12の枝と12の根を持つ木)から生まれる。枝に麒麟の卵果が実るとそれに対応する根にも女怪の卵果が実り、1日で孵る。生まれたときには自分が育てる麒麟の性別を知っている。女怪は麒麟より先に生まれて麒麟の誕生を見守り、乳母として育て、生国に下ってのちは使令として仕え、麒麟が死ねば同時に女怪も死ぬ。さまざまな動物が入り混じった姿をしており、混ざっている動物の数が多いほど良いとされる。姓は必ず白(はく)で、姓を持つのは重要な使命(生まれてきた麒麟を守ること)を担っているからである。麒麟を守る事しか考えられないため、麒麟が危機にさらされた時には後先を顧みずに無茶な行動に出ることもある。種族的には人と妖獣の中間に位置する。人妖あるいは妖人と呼ばれる妖の一種で、捨身木から生まれた女だけを特別に女怪と呼ぶ。
[編集] 霊獣
- 玄武
- 即位した王を、蓬山から自国の王宮へ運ぶ役目を果たす。甲羅の上には小さな祠が存在する。また、航跡は瑞雲となる。
- 白雉
- 各国に存在し、梧桐宮の中の二声宮にすむ。自国の王の即位・崩御を人の声で伝える。崩御を告げた場合はその場で死んでしまう。王がいない国では落ちた白雉の足を切って御璽の代わりとする。その生涯にたった2度だけ鳴くことから「二声」とも呼ばれる。また、即位を知らせる声を「一声」、崩御を知らせる声を「末声」と言い、末声を鳴くまで決して死ぬ事は無く、冬器で攻撃しても体をすり抜けてしまう。アニメ版での姿は文字通り白い雉。
- 鳳と凰
- 各国の梧桐宮にいる、つがいの鳥。凰は他国の凰と意思の疎通ができ、他国からの質問に答える。鳳は他国の大事を鳴く。鳳が鳴くことで他国の王が誕生した証明となるため、鳳が鳴くことなく王の即位の報が伝えられた場合は偽王と判断される材料となる。
- 鸞
- 所有者の王を発信元か受取人にする場合に限り、声を吹き込んで送ることのできる鳥。送り先を指定すれば、その者が旅の道中であってもちゃんと届けることができる。餌は一国を飛び越えるごとに銀一粒。梧桐宮に10羽から20羽程が住んでいる模様。個体によって尾羽の模様が違うため、尾羽を見ればどこの国の鸞かわかる。雲海を越えられないため、雲海の下で飛ばしたり受け取ったりする。
[編集] 妖
- 妖魔
- 十二国の世界では天の理に反する生き物たちを指し、蟲(むし)と呼ばれる小さくて無害なものから、大型で甚大な被害を及ぼすものまである。
- これまで様々な妖魔が確認されているが、全て牡(オス)しか存在しない。言葉は喋らないとされているが使令となった妖魔は喋ることが出来るし、人妖の中には人を騙すために簡単な会話くらいなら出来るものもいる。妖獣との決定的な違いは「飼えない」事とされ、殺そうとしてもなかなか死なないが、捕らえるとすぐに死んでしまう。通常は一匹で行動する妖魔でも同種の妖魔を呼ぶことが出来るし、無害な蟲を殺すとそれを察したかのように大物が現れるなど、その生態については謎に包まれている。一部の妖魔は酒、玉、貴金属などに酔うなど、妖魔の性質は断片的にはわかっているものの、全ての妖魔がそうなのかはわからない。使令となった妖魔も自らの出生や生態については、命令されても一切しゃべらない為、どのようにして生まれてくるのかすら分からない。黄朱の中には黄海の中に妖魔が生まれる木があるのではないかとして探す者もいるが、発見した者はいない。
- 基本的に金剛山を越えることは出来ず、したがって黄海のみに生息するはずであるが、王が天命を失うと何処とも無くその国内に妖魔や妖獣が出現するようになる。一説によると、天命がある内は地下で眠っているとも言われるが、所詮は憶測に過ぎない。
- 妖魔と妖獣の区分けは極めて主観的で曖昧であり、白雉87年の乗騎家禽の令により、雁州国においては妖魔は妖獣と同等の扱いとなった。
- 使令
- 麒麟に折伏されたものを特に使令と呼ぶ。折伏の際、麒麟と妖魔はどちらかが根負けするまでひたすら睨み合う。その際、麒麟は早九字や禹歩、易経や陰陽道の知識など、景麒曰く「少しずるい手段」を用いる。麒麟の肉体は霊力の塊であるため妖魔にとってはうまいらしく、折伏に失敗すると最悪の場合麒麟は妖魔に食べられてしまうこともあり、また、麒麟は自らの死体を食わせる事を条件に妖魔を使令に下す。使令の名前は、麒麟が折伏した際に麒麟の脳裏に流れ込んでくるものであり、字が浮かぶ事もあれば、音が浮かぶ事(この場合、字は当て字)もあるなど、どのような様式かは麒麟によって様々である。使令は麒麟の霊力の影響を受けて人語を話し、普段は麒麟の影に遁甲している。
- 妖獣
- 妖魔との区別が非常に難しく、その定義付けは人によって様々である。ただ概ね妖獣は、人間が飼い馴らして騎獣(きじゅう)にする事が可能で、また積極的に人間を襲う事はない(飼うことはできても、馴らす事はできない妖獣もいる)。騎獣となった妖獣は、人間に飼い馴らされる事により、本来妖獣として持つ能力が減っていくが、それでも他の騎乗可能な馬や牛と比べても、その移動速度は圧倒的に優れており、中には空を飛ぶことが可能な騎獣もいる。ただし、空行出来る獣(麒麟を含む)は総じて目方が軽く、輿などの重たいものを乗せて運べない。また、複数の人が一頭の騎獣を扱う事も可能だが、騎獣は主が増えるにつれて能力が弱まるとされている。騎獣を購入すると、匂いが強い香が焚かれた毬形の香炉を妖獣の首に掛けられて渡される。飼い主は香を焚きながら騎獣の調教を行う。日にちが経つにつれて徐々に香の量を減らして行き、人の臭いに慣れさせていく。
[編集] 蝕
- 蝕
- 時空間の乱れとでもいうべきものであり、これにより十二国世界と蓬莱・崑崙が一瞬つながってしまうことがある。この現象により、十二国世界で生まれるはずだった人間が、蓬莱・崑崙において生を受けることが稀にある。これらの人間を胎果(後述)と総称する。
- 雲海の上では蝕が自然発生することは無い。自然に起こる蝕以外にも、上位の仙、麒麟、一部の強力な妖魔は月の呪力を借り、月の影に門(呉剛の門)を開くことで蝕を起こし、蓬莱や崑崙へ渡ることができる。自然の蝕に比べれば小規模で被害も少ないが、王がこれを利用して十二国世界と蓬莱・崑崙を行き来すると双方に大災害が起こる。神籍にあるものや伯位以上の仙ならば行き来することが出来るが、胎果でない限り十二国世界の人間は蓬莱・崑崙では確固たる形で存在することができないとされているが、そもそも作中において十二国世界から蝕で流された例が存在しない(卵果が流される例は存在するが)。逆に海客・山客の例のように日本や中国からは蝕で流されても、十二国世界でも確固として存在することができる。
- 蓬莱・崑崙と十二国世界の間には「世界の狭間」と呼べる虚無の空間があるとされる。この空間を渡るのには約一日掛かるという。また、稀にこの空間に物質が取り残される場合もあるという。
- 鳴蝕(めいしょく)
- 麒麟だけが起こすことのできる蝕。麒麟の悲鳴が招く蝕であることからこれを鳴蝕という。通常は幼いころに感覚を覚え、同時によほどのことがなければ起こしてはいけないという認識を持つ。呉剛の門と違って月の力を借りずに麒麟の力だけで綻びを作るが、それだけに被害は甚大で本人も無事では済まない可能性がある。
[編集] 卵果
卵果(らんか)とは、十二国世界におけるあらゆる生き物の卵の総称である。木の実の形をしている。十二国世界では人間も動物も母親ではなく卵果から生まれる(鳥は卵を産むが、その卵から雛が孵ることは無い)。人間や家畜は里木、獣や魚や植物は野木、麒麟と女怪は蓬山の捨身木に実る。どの木も白銀のように白く、枝ばかりで葉も花も無い。また、妖魔が近づかない。いかなる動物も里木や野木の下では殺生が出来ない。食う食われるの関係にある動物は時期をずらして生まれてくる。
- 捨身木(しゃしんぼく)
- 蓬山の迷宮の奥にある、世界で唯一麒麟と女怪の卵果が実る里木。麒麟は捨身木の枝に、女怪は捨身木の根に実り、その位置は麒麟と対をなす。
- 路木(ろぼく)
- 国の王宮の福寿殿にある。王のみが祈りを捧げる事ができる。王の子供が実ると同時に、新しい穀物などの植物の実を付ける。路木に実った新植物は、次の年にその国の里木に種の入った卵果が実る。
- 野木(やぼく)
- 里木より小さい。枝は細いが怖ろしく堅牢で剣を以ってしても断ち切れない。枝に付いた黄金の実は溶接されたように取る事ができない。野木には勝手に卵果が実り、勝手に孵る。魚などの水棲動物の場合は水の中に野木がある。野木の中には、新しい植物を生みやすい木と生みにくい木が存在するらしく、そのため猟木師(プラントハンターを生業とする朱氏)は機密保持の為後を付いてきた者を殺す、と恐れられている。
- 里木(りぼく)
- 路木から枝分けされたものであり、里の存在の根拠である。
- 人間の場合、夫婦が縁起物の細帯を縫い上げ、それを里木の枝に結び付けて天に祈る。結べば確実に実るわけではなく、夫婦の人格が天に認められれば、その枝に卵果が実り子供が生まれる、とされる。細帯を結ぶ夫婦は同じ国に戸籍があり、正式な婚姻をしていなければならない。子供の場合は1つしか帯を結べず、故に十二国世界には双子は存在しない。家畜や農作物は一月後に、子供の場合は十月十日後に生まれる。帯を結んだところは一抱えもある黄金の卵果になる。
- 卵果は生命が生まれる前日にもぎ取る。親にしかもぎ取れない。子供の場合は早く生まれてくるように、と験を担いで卵果にヒビを入れる。その風習から転じて、甕棺を埋葬する際に「再び卵果に還れ」という意味で甕にヒビを入れる風習がある。
- なお、里木に祈る日は何を願うかによって決まり、月の何日であるかによって
- という風に決まっている。
[編集] 鉱物
金や銀、水晶などの玉は、主に戴国に湧出する金泉、銀泉、玉泉から採取する。泉の水が礫の地層を流れると稀に結晶化することがあり、その結晶を種石にして対応する泉に漬けて気長に待つと結晶が大きくなる。望んだ大きさになったところで採取する。そのため、十二国世界では宝飾品の値段は市井が思うほど高くは無く、心底高いのは真珠だけ。
[編集] 海客・山客・胎果
十二国世界には蝕によって蓬莱や崑崙から人間が流されてくる。蓬莱(日本)から来た人間を海客(かいきゃく)、崑崙(中国)から来た人間を山客(さんきゃく)と呼んで区別する。また本来は十二国に生まれるはずだった人間が、誤って卵果のとき異界に流され、そちらで育ち、再び十二国に戻ってくることもある。そのような人間を胎果(たいか)と呼ぶ。
海客は虚海の岸にたどり着き、山客は金剛山の麓にたどり着くとされている。海客が最も多くやってくるのは慶、次いで雁、次いで巧である。海客がやってくるときには触が発生するために、生きてたどり着く海客よりも死体で漂着する海客のほうが多い。生きてたどり着く海客は巧で3年に1人程度である。
海客や山客は仙になるか、十二国世界の言葉を習得しない限り、言葉で通じることができない。壁落人に拠れば、神仙以外は胎果といえども同じだという。初歩的な中国語の知識のあった東大生の壁落人でさえ最初はかろうじて筆談が出来た程度であり、松山老人に至っては十二国に来て半世紀たってもほとんど言葉がわからないまま生活していた。
海客や山客の扱いは大綱に定めが無いため、各国の政策にゆだねられている。多くの国ではおおむね浮民と同じ扱いであるが、雁・奏・漣等では紙・印刷技術・陶磁器・医術といった有用な技術をもたらすとされているため優遇されている。中でも雁では海客は役所に届ければ海客としての身分証明書を受け取ることが出来、それを使って一定の生活費を受け取ることが出来たり、学校や病院を利用することが出来たりする。雁では海客はこのように優遇されているため海客でないのに海客を名乗る偽物もいるらしく、郵便番号や市外局番を聞かれて本物(の日本人)かどうかを確かめられる。逆に巧では海客がやってきた時の蝕で被害が出たかどうかによって「よい海客」と「悪い海客」に分けられ、悪い海客(事実上ほとんどの海客)は「国を滅ぼす」として処刑されることになる。 また、芳国では山客によって仏教がもたらされており、その影響で祠廟が寺院風である。
十二国世界の卵果が蝕などによって蓬莱や崑崙に流されて女性の胎内に宿ることがある。胎果とは、そのまま誕生して蓬莱や崑崙の人間として生きていた人々が、本来の十二国に戻ってきた場合の総称である。 現在明らかになっている胎果は、景王赤子(中嶋陽子)・延王尚隆(小松三郎尚隆)・延麒六太(六太)・泰麒蒿里(高里要)の4人。蝕によって流される卵果はこの4人以外にも多数あると思われるが、王や麒麟のように十二国に不可欠な存在でない限り、捜索して連れ戻すことがないので、大多数の卵果は再度蝕に遭遇しない限り日本や中国で普通の人間として一生を終えることになる。なお、胎果は蓬莱や崑崙にいる間は胎殻(たいかく)と呼ばれる殻をかぶり、蓬莱や崑崙での父母に似た容姿をしているが、十二国に戻れば本来の姿に戻るとされている。実際、十二国にやってきた後の陽子は肌・髪・瞳の色が変化した上、微かに面影が残っている程度で、ほぼ完全に別人相になった。
[編集] 仙
仙(せん)とは仙籍(せんせき)と呼ばれる特別な戸籍に名前を記載された人間をいう。王と麒麟は神籍(しんせき)と呼ばれる仙籍とはまた別の戸籍に入るため厳密には仙とは区別されるが、総称して神仙(しんせん)と呼ばれ、単に「仙」と呼ばれることもある。海客や山客も仙になることが出来る。
仙になると、不老となると同時に病気にならず、冬器でなければ傷つけることもできない体になる。たとえ怪我をしても通常の人間と比べて回復が早く、多くの場合自然治癒する。また妖魔や獣の意思も感じ取れるようになり、海客や山客のような言語を異にする者とも言葉が通じるようになる。通常の仙はそれ以外に何か特殊な能力を持つようになるわけではないとされている。但し伯位以上の高位の仙は、虚海を越えることができるとされており、蓬山の女仙が仙の力の行使をほのめかして狼藉者を恫喝したように、仙の中には何らかの特殊な能力を持つ場合もあると考えられる。また清秀が鈴に死期の判別の可否を尋ねるなど、一般庶民は仙が何か特殊な能力を持っていると考えている場合もあるようである。なお、仙になると外からは見えないが額に第三の目と呼ばれる何らかの器官が生まれ、それが仙としての能力に関係しているとされている。
基本的に官吏は国官と州官、文官と武官を問わず仙籍に登録され、これが仙の大部分を占める地仙(ちせん)である。官吏になったことにより仙になった者は官吏を辞職すると同時に仙籍も返上するが、希に官を辞した者や神仙の親族、王の愛妾等、官以外の仙で王宮を離れた者がそれまでの功績によって仙籍をそのままにすることがある(梨耀がその例)。そうした王宮を離れたり自力昇仙した王に仕えていない仙は飛仙(ひせん)と総称される。飛仙の中でも特に伯位以上にある者(五山に仕える女仙男仙、自力昇仙の仙)は仙伯と呼ばれる。更に天界に属する仙は天仙(てんせん)と呼ばれ、王や麒麟と対等以上の存在として一般的に神と同列に扱われ、人界との交わりは制限される(天仙と神を総称して「天神」、天仙になる為の条件については不明)。
それぞれの関係は更夜を例にとると、雁国元州夏官射士に採用された時に雁国の仙籍に入り(地仙)、斡由の反乱後は仙籍はそのままで雁国を離れて(飛仙)、その後いつのまにか天仙(犬狼真君)へと変わっていた。また仙の種類や位は呼び名にも反映され、代表的なものとして自力昇仙した仙は「老」、伯位を持つ仙は「伯」を付けて呼ばれる。慶国の遠甫を例にとると、王に仕えていない飛仙としては老松、達王に仕えていた時期(伯位を持つ地仙)は松伯と呼ばれる。
ある者が王になった場合には親兄弟、親族を仙籍に入れることができ、特に王の息子は太子、娘は公主と呼ばれる。またある者が仙になった場合、親子と配偶者は一緒に仙になることが出来るが、兄弟縁者の昇仙は許されない(ただし縁者は優先的に官吏への登用がある)。しかし、不老不死の体を不気味がる者もおり、官吏は転勤が多い事もあって、官吏になると同時に離婚するケースがある。
[編集] 半獣
人の姿も獣の姿もとることが出来る人間のこと。半獣も普通の人間同士の子供として生まれて来るのだが、どのような場合に半獣になるのかは不明である。人間の姿であるときは普通の人間と全く区別出来ない。さまざまな獣と人間との半獣が存在する。自分の意思で人間の姿にも獣の姿にもなれるが、ほとんど獣の姿で過ごす者もいれば人間の姿で過ごす者もいる。
もともとはほとんどの国で制度的に差別されており、成人しても正丁になれない、学校へも行けない、官吏にもなれないという扱いを受けていた。そこまでの扱いをする国は次第に減り、戴で新王(驍宗)が制度を廃止し(但し国が混乱しているため徹底はされていないらしい)、慶でも新王(陽子)が初勅の反す刀で廃止したため、戸籍を与えないほどの法的差別が残っている国は巧だけになった。[7]慶では半獣は上大夫以上の官位には就けなかったが、陽子が勅命で廃止したため法律上は平等となったものの、巧ほどでは無いにしても半獣に対する差別は残っている。制度上では半獣に対する差別がほとんど無いことになっている雁国の大学でも、教師に半獣姿での受講を拒否されたり、本を囓ると思われたりするなど事実上の差別は根強く存在する。
[編集] 障害者への態度や男女の別
半獣や海客・山客、浮民への差別とは対照的に、障害者差別や男女差別はあまり無い。生まれ付き障害を持っている人への保護制度は整っており、妊娠・出産が発生しないため適性以外の目立った男女差がなく男女は共働きが当たり前となっている。職業も殆どの職種で男女半々であり、武官など体力的な理由で男性が多い職種も女性がいない訳ではない。王や麒麟も男女比を歴史書を調べて平均すると、世界中を見ても一国を見ても、時代によっては偏りが出るものの大体半々である。
[編集] 言語
十二国世界で使われる言語は、蓬莱や崑崙で用いる言語とは大幅に異なる言語である。文字は漢字(アニメ版では金文)を使っており、漢文を用いているため、壁落人の例のように漢文の筆談であれば辛うじて意思の疎通を図ることが可能な程度には中国語に近いが、会話に用いられる場合初歩的な現代中国語も通じない。かなり広い十二国世界だが、特定の地域でしか使われない慣用句がある以外は他国間で差異はない。
[編集] 暦
作品中の解説から推理すると、太陽太陰暦を使用している模様。各国毎に元号制を布いており、西暦のような、世界共通の年の数え方は十二国世界には無い。元号は王が即位した時に改元され、その後も時々改元が行われる。
[編集] 名前の構成
大筋において古代の中国の制度をもとにしていると思われるが、整った戸籍制度の存在が大きく影響している。
- 姓(本姓)
- 親から引き継いで生まれたときにつき、戸籍上に記載される姓のこと。婚姻しても終生変わらないが、戸籍が夫婦いずれかに統合され、生まれた子供はその姓を継ぐ。「前王と同姓の者は次の王にはならない」の基準以上の意味は持たない。
- 名(本名)
- 戸籍や仙籍簿に記載される正式な名。身分の高い人間の本名が呼ばれることはほとんど無い。昔気質の人を中心に目下から本名を呼ばれることを嫌がる人が多いが、特に気にしない人もいる。
- 氏
- 成人(数えで20歳)になったら自分で選んで付ける。そのため未成年は氏を持たない。親と子は同じ氏ではない。主に「氏+字」の組み合わせを名乗る。
- 字
- 呼び名、通称。普通、字というときは本字のみを指すが、広義には小字や別字を含む。
- 本字
- 親や本人が日常その人間を呼ぶためにきちんと決めたただ一つの字を指す。氏を選んだ際に自分で付ける。
- 小字
- 子供の時の呼び名。
- 別字
- 字がすでにあるときに改めて別に付けられた字のこと。狭義には本字に準じてきちんと決められたものだけを指すが、広義には他人が勝手に呼び始めたあだ名や通称のようなものも含まれる。主人(特に王)から別字を与えられることがあり、これは本来は名誉なことである。
目上からは姓名、目下からは氏字で呼ばれるのが慣わしだが、蘭玉曰く、昔気質の人は今でも姓名と氏字を使い分けるそうだが、若い人には気にしない人が居り、最近は氏字を使わない人も出てきていると言う。事実、蘭玉のように字風の名前をつけられる子供もいる。
[編集] 地理
世界の中央に金剛山で囲まれた円形の島があり、その大半が黄海と呼ばれる場所で、中央に五山がある。黄海の外周を二つの楕円形が直角に組み合わさった花形の4つの内海が囲んでおり、その外側に花の形の大陸がある。更に大陸の周囲を囲む海を虚海と言い、四州国の虚海側の沖合い(角の部分付近は四大国の沖合いにある)に二等辺直角三角形の四島が斜辺を大陸に向けた配置で存在している。内海と虚海には、大陸寄りの小島を除いて陸地と呼べる島は存在しない。陸地は総じて外海側は断崖が多くて良港が少なく、艀を使わないと上陸できない港が多いのに対し、内海側はなだらかであり外海に比べて良港が多い。各国は必ず九州で構成され、内陸に有る首都州の周りを他の八州が取り囲む形に配置されている。空の上には雲海と呼ばれる海があり、雲海上から下界を見下ろすと水底に街が有るように見える。陸には凌雲山と呼ばれる雲海を突き抜ける山が有る。五山の頂上や王宮・州城は凌雲山の雲海の上にある。それ以外の凌雲山は陵墓や離宮などといった王の所有物である。王宮がある凌雲山の名前は首都の名前と同じである。
人が住む世界は金剛山より外側の地域と定められ、金剛山には四箇所の門(四令門)が存在し、一般人は門以外から金剛山を越えることは出来ない。
十二国世界では、我々の世界の日本・中国はそれぞれ倭(倭国)・漢または蓬莱・崑崙と呼ばれ、それぞれ世界の東の果て・世界の影に位置するとされる。 なお、日本(蓬莱)から見た十二国については、作中で一度[8]だけ常世(とこよ)と呼ばれている。
[編集] 五山
黄海の中央にある崇山(「崇高」とも呼ばれる)と、その周囲にある蓬山、崋山、霍山、恒山の総称。女神の長である西王母が治める天界に属する領域。蓬山は崇山の東に位置する。五山には周囲の黄海に住む妖魔・妖獣は侵入できない。西王母ら神仙達を憚って山を飛び越えようとする人はいない。
五山の一つ、蓬山には天仙である碧霞玄君が居を構え、事実上人界と天界との橋渡し役となっている。また蓬山は神獣麒麟が生まれ、育てられる場所としても知られる。それらの事から、蓬山のみが人間が立ち入ることを許している。なお、「蓬山」は元々「泰山」と呼ばれていたが、戴国の王による暴挙(覿面の罪を参照)により戴国の国氏が代から泰に代わったために名前を変え、その後も凶事有る度に名前を変えて、ここ千年程は現在の名前に落ち着いている。
蓬山には以下の施設が存在する。
- 蓬廬宮
- 王と誓約していない麒麟が過ごす一帯を指す。捨身木を基点としたなだらかな地形にあり、様々な建物や園、用途別の池などがある。内部は防犯の為に迷路のようになっている。
-
- 丹桂宮
- 蓬廬宮の入口である青陽門近くの蓬廬宮内の建物。天勅を受ける王が、吉日までを過ごす。
- 雲梯宮
- 天勅を受ける儀式の際にだけ使用される建物。奥に朱塗りの扉があり、その向こうには普段は何も無いが、天勅を受ける儀式の時だけ雲海の上の山頂まで伸びる透明な階が現れる。王と麒麟はその階を一段昇るごとに天綱を「自らの中」に刻み込まれる。
- 甫渡宮
- 麒麟が昇山者と面会する建物。蓬廬宮の外にある。大きな広場に面している。
- 牌門
- 蓬山と黄海の境にある門。登山道に塀も何も無く建っている。
[編集] 黄海
五山の周囲に広がる領域。天帝の定める法則の外にあり、天界にも人界にも属さない(あるいは、天界と人界とを分け隔てる為の中間領域)。
「海」という呼称であっても、実際には海ではなく一国に匹敵する広大な土地で、多種多様な植生を育む起伏の富んだ地形に妖魔・妖獣が跳梁跋扈している。人間世界では南方に行くほど暖かかくなるのだが、黄海では中央に近いほど暖かい気候となる。蓬山付近の標高は凌雲山の8合目に相当する。黄海外延部は金剛山と呼ばれる登攀不可能な断崖絶壁の険しい山脈が存在し、黄海の妖魔・妖獣も越えることが出来ない。門は騎獣で飛び越える事は出来なくは無い高さだが、四令門の番人に撃ち落される可能性がある上に、西王母ら女仙達を憚って飛び越えようとする人自体が少ない。そのため、金剛山を越えて黄海内部に入ったり外に出たりするには、通常は金剛山に4つ存在する「門」を必ず通らなければならない。ただし王や麒麟、玉葉の招きを受けた者などは、雲海の上から金剛山を越えることが許される。
一般には人の住めない「人外の領域」と言われているが、出入り自体は門が開いている間は自由となっている。そのため蓬山に向う昇山者以外にも黄海に入る者達がいる。代表的な例としては、黄海を生活の場とする朱氏(騎獣を狩る)・剛氏(昇山者の護衛)と呼ばれる人達が知られている。また自身の駆る騎獣を求める武将なども、時折黄海を訪れている。
人外の領域であるため、黄海には本来道も里も存在しないとされるが、主に剛氏達によって各四令門から蓬山までの道が維持されている。更に小規模ながら朱氏や剛氏など戸籍を持たない「黄朱の民」の里があり、「黄海の守護者」犬狼神君によって里木がもたらされている(里木をもたらされた時の諸神との約束で、黄朱の民以外の者が里木に触れると枯れてしまうため、里については、黄朱の民以外には極秘)。
[編集] 四令門
金剛山の麓にある4つの「門」は四令門と呼ばれ、海を挟んだ対岸の国の首都州の「飛び地」になっており、1年に1回、それそれ定まった安闔日(あんこうじつ)(春分・夏至・秋分・冬至)にだけ開かれる。
北から時計回りに
- 令艮門 - 対岸は雁州国、安闔日は冬至
- 令巽門 - 対岸は巧州国、安闔日は秋分
- 令坤門 - 対岸は才州国、安闔日は夏至
- 令乾門 - 対岸は恭州国、安闔日は春分
が存在する。
金剛山全体から見れば、金剛山脈の切れ目の断崖の麓にある小さな砂州の様な、非常に限定された土地である。この「門」が開く時は、黄海の内部から妖魔が外部に向かって大量に溢れ出て来る可能性がある為、非常に厳重な警備体制が敷かれる。
[編集] 内海
黄海を取り巻いている4つの内海と4つの海峡からなる。北から時計回りに黒海、艮海門、青海、巽海門、赤海、坤海門、白海、乾海門と呼ばれている。なお、各海峡は四令門と対になっている。内海の色は名前の通りの色に見える。妖魔は総じて内海側からやってくる。
[編集] 八カ国
内海と外海を隔てる島に存在する国家群。北から時計回りに以下のように配置されている。
- 柳北国(りゅうほくこく)
- 雁州国(えんしゅうこく)
- 慶東国(けいとうこく)
- 巧州国(こうしゅうこく)
- 奏南国(そうなんこく)
- 才州国(さいしゅうこく)
- 範西国(はんせいこく)
- 恭州国(きょうしゅうこく)
慶東国・奏南国・範西国・柳北国の4国を四大国、雁州国・巧州国・才州国・恭州国の4国を四州国と呼ぶ。 国名は正式名称で呼ばれることはあまりなく、一般には慶国→慶のように略して呼ばれる。国の大きさは、一国を抜けるのに馬で3ヶ月、国境の山脈あるいは海を通るのにおおよそ1ヶ月かかるほどである。巧国の阿岸から浮壕経由で雁国の烏号まで3泊4日の船旅、と、陸路より海路の場合が早い場合が多い。
大陸の国と国は高岫山と総称される山脈によって仕切られており、国境の事を高岫(こうしゅう)とも呼ぶ。陸路で国境を越えるには高岫山に1つから3つある関所を通過しなければならない。
[編集] 四極国
虚海に浮かぶ島国。北東から時計回りに以下のように呼ばれている。
- 戴極国(たいきょくこく)
- 舜極国(しゅんきょくこく)
- 漣極国(れんきょくこく)
- 芳極国(ほうきょくこく)
[編集] 虚海
八カ国の外側に広がる外洋。物理的には虚海の外側には何も無く、果てしない海が広がっている。過去に虚海の果てを見ようと船を出した者がいたが、帰ってきたものは一人もいないという。芳国と大陸の間に有る海峡は乾海と呼ばれているが、あまりにも広いため普段は海峡も虚海と呼ばれる。灰色のどんよりとした海のように見えるが水に色が着いているわけではなく、むしろ恐ろしく澄んでいる。よく荒れる。夜になると深海に住む妖魚が発する光が星のように明滅して見える。妖魚は小さく見えるが実際は艀を飲み込むほどの大きさである。妖魚は嵐の時でもなければ決して浮いてこない。
また虚海には、十二国世界と他の世界(蓬莱や崑崙と呼ばれる世界)との境界線と言う意味もあり、王や麒麟、一部の高位の仙は虚海を渡って蓬莱や崑崙に行くことが出来る。
[編集] 気候
概要を述べると、北は寒く南は暑い。そのうち最も寒いのは北東の戴である。というのは冬になると北東から条風(季節風)が吹き、雪を降らせるからである。この風は北の国々を冬の間凍えさせる。他に柳、芳にも雪が多くつもる。雁も北東に位置するため、この風の影響を強く受け柳と同程度に寒い。恭も条風の影響を受けるが、山を越えるため、乾燥した風が吹く。
南方に目を転じると、非常に温暖であり、漣では二毛作が行なわれ、冬でも戴の春や秋の気候である。また奏の最南端では冬でも外で眠れるといわれる。
[編集] 法令
[編集] 天綱・地綱
- 天綱(てんこう)
- 天帝が定めたとされる、王を含めた十二国世界全体が守らなければならない法のこと。太綱(たいこう)や施予綱(せよこう)とも呼ばれる。その内容は創世神話とともに、蓬山において王が登極するときに王と麒麟の頭の中にすり込まれるが、「東の海神 西の滄海」には"王や宰輔が心得ておくべきことが「太綱の天の巻」に書いてある"、また「風の万里 黎明の空」には"井田法のことが「太綱の地の巻」に書いてある"といった記述もあることから、文書化されたものも存在すると考えられる。天綱の第一は「天下は仁道をもって治めなければならないこと」であるとされる。この天綱に背いた場合には、罰則が王や麒麟に下されることになるが、どのような罰則が下るかは記述が無く、実際に起こった過去の実例から推測するしかない。また天綱の記述は極めて簡潔であり、実際の事象が天綱に反するか否かの判断が難しい場合もあり、その際は玉葉が相談窓口になる。たとえば、『月の影 影の海』のラストで偽王を倒すため正当な景王である陽子を立てて雁国の王師が慶に攻め入る際、この行為が覿面の罪に触れないことを六太は知っていたが、これは以前に似たような出来事があった時に、玉葉に確認をとってあった故である。「黄昏の岸 暁の天」で六太は「陽子が初めてではない」とコメントしている。
- 作中にはこの世界の決まり事のいくつかについて「これは天の意思である」といった表現をとっていることがあるが、これらがすべて天綱のことを示しているのかどうかは不明である。
- 地綱(ちこう)
- 王が発布する法のこと。天綱に対してこう呼ばれる。国によって違う制度、王によって違う(変えられた)制度などは地綱によって定められていることになる。浮民・半獣・海客・山客などをどう扱うか、民にどれだけの税を課すかといったことは地綱で定められている。地綱は天綱に違反した内容をもつことは出来ない。例えば、かつてある国の王はその国に戸籍のない男女同士でも結婚し子供を作ってよいと定めたが、「同じ国に戸籍のある男女同士でないと結婚できない」という天綱の定めに反していたために誰も里木に帯を結ぶことが出来ず、子供を作ることも出来なかった。
- 王が法令を発布するには御璽が捺印された文章が必要である。王が斃れた時や、王や宰輔(さいほ)の許可がある場合など特別な場合を除いて他人が使用しようとすると印影が消えて使えないようになる(そのため、王が不在の間は落ちた白雉の足を切り取って御璽の代わりとする。御璽が悪用される心配は無いが、紛失すると国政に支障が出るのは避けられない事に変わりは無い)。
- 州候も自分の治める州に適用される法令を定めることが出来るが、その内容は天綱にも地綱にも反することが出来ない。州より下の行政組織も法を作る事ができるが、上の単位の行政組織が定めた法に反する法は作れない。ただし地綱に反した場合は天綱に反した場合と異なり、王宮に知られない限り無効となることはないようだ。実際、独断で地綱の定めより遥かに高い税を取り立てたり、国法に無い厳しい刑罰を処している州候や郷長も存在した。
[編集] 覿面の罪
覿面の罪(てきめんのつみ)は天綱に定められた最も重い罪の1つで、「軍兵を率いて他国に入ること」をいう。「王も麒麟も数日のうちに斃れる」とされる。[9]
過去の実例として、遵帝の故事が語り継がれている。慈悲深い名君として知られる才の遵帝は「相手国の民を救出するため」に出兵したのであり、天網に背く行為との認識は誰にも無かった。しかし軍の越境から程なく、王と麒麟が通常ではありえない突然の変死を遂げる。それが覿面の罪であるとは当初誰にも分からなかったが、次王が御璽の国氏の変化に気付いたことで覿面の罪が認識された。国氏が変わるということは王が非常に重い罪を犯したことを意味するものであり、過去に国氏が変わった同様の例としてあげられているのは、「失道で麒麟が死んだ事に逆上し、次の麒麟が生まれてこないようにするために蓬山に侵入して捨身木を焼き払い、女仙を皆殺しにした」かつての戴極国の王の事例である。さらにこの罪は軍隊の侵入にとどまらず、麒麟が使令だけを送り込むことも該当し、『月の影 影の海』では、失道の病で臥せっている塙麟がわざわざ雁まで赴いた。軍事力を以て他国を支援する場合は、その国の王から正式な依頼が無い限り許されない。
なお、アニメでは覿面の罪の定義そのものが原作と大きく異なっており、「天命に逆らい人道にもとる事」・「天命なしに死を選ぶ(≒禅譲する)事」・「他国に侵入する事」の3つが覿面の罪であるとされている。この3つは原作においても「王が行ってはならないこと」であるとはされてはいるものの、覿面の罪の結果国氏が変わるとすると「天命なしに死を選ぶ事」(禅譲)で国氏が変わることは無いため原作の記述とは両立できない。
[編集] 勅令・初勅
国が制定する普通の法は官からの奏上を王が裁可する形で制定されるのが殆どであるが、王が自ら制定して発する法令を特に勅令という。延王尚隆によれば一般的に勅令は王朝が形をなしていくはじめの頃と傾いていく終わりの頃に多い。中でも新王がはじめて発する勅令のことを初勅(しょちょく)と呼び、多くの場合は王がその国をどのような国にしたいのかという方針を示すものになっている。中にはとうとう初勅を出さなかった王もいる。実際に次のようなものが初勅として出されている。
- 慶東国景王赤子 - 伏礼を廃す
- 雁州国延王尚隆 - 四分一令(土地を4畝開墾した者にはそのうちの1畝を自地として与える)
- 漣極国廉王鴨世卓 - 万民は健康に暮らすこと
また、法令ではないその案件一回限りで有効な王の命令は勅命と呼ばれ、勅令とは区別される。官吏の任免などを行うのはこちらの勅命である。
[編集] 刑罰
- 五刑(ごけい)
- 殺しなどの大罪に対して用いられる、黥(げい、刺青を入れる)、劓(ぎ、鼻を削ぐ)、刖(げつ、足を切る)、宮(きゅう、去勢)、大辟(たいへき、死刑)の5つの刑を言う。野蛮に過ぎる仁道に悖る刑罰として忌避されるのが諸国の趨勢。
- 黥面(げいめん)
- 犯罪者に刑罰として入れられる刺青。裁かれた場所、年、服役した監獄、個人に与えられる文字の4文字を図案化した入れ墨を身体に入れられる。罪人の更生を妨げるとして奏が廃止して以来他国もそれに続いたが、王朝によっては復活することもあり、柳でも劉王が復活させた。柳では2度目までは頭に入れることで、髪が伸びれば隠すことができ、また10年ほど時間が経てば色が薄くなり消えていくように工夫されている。3度目以降はこめかみ・目の下など見える場所に入れるため隠しようがないが、4度以上これを施されると、全ての刺青が消えるまで徒刑(懲役)か拘制(禁錮)に処せられる。
[編集] 官位・官職
十二国世界の地位の別は、あくまで礼節の程度を示すものとされているが、上位の者は目下の者に礼儀を求める事ができる。
| 官位 | 天官 | 地官 | 春官 | 夏官 | 秋官 | 冬官 | 地方 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 王 (おう) |
王 | |||||||
| 公 (こう) |
宰輔 | |||||||
| 侯 (こう) |
冢宰 三公 |
州侯 | ||||||
| 伯 (はく) |
飛仙 | |||||||
| 卿伯 (けいはく) |
太宰 | 大司徒 | 大宗伯 | 大司馬 | 大司寇 | 大司空 | 令尹 牧伯 |
|
| 卿 (けい) |
将軍 | |||||||
| 上大夫 (じょうだいぶ) |
||||||||
| 中大夫 (ちゅうだいぶ) |
遂人 | |||||||
| 下大夫 (げだいぶ) |
大僕 | 朝士 | 郷長 | |||||
| 上士 | ||||||||
| 中士 | ||||||||
| 下士 |
王の朝議に出席することが許されるのは、高位の官のみである。
- 宰輔(さいほ)
- 王の補佐役。各国の麒麟がその役に就き、宰輔と呼ぶのは畏れ多いため台輔(たいほ)と呼ばれる。位としては唯一の公爵位を持ち、朝臣の筆頭である。元々麒麟は慈悲と正義の生き物であり、王が民に対して無慈悲な行いをするのを諫める役目も持つ。首都州の州候を兼任している。内宮の仁重殿に起居し、午前中は仁重殿の広徳殿にて州候の職務を行っている。麒麟の本性故に実権を持たないのが普通。
- 三公(さんこう)
- 宰輔の唯一の臣下。三公は位としては冢宰や諸侯と同等だが、政治介入力は持たず、王の相談役・教師となり、助言をする存在。次の3つの官職である。
- 三孤(さんこ)
- 三公の次官
- 傅相(ふしょう)
- 王や宰輔が幼いような時に教育係として、随時側で面倒を見る。
[編集] 六官
六官とは、「天官、地官、春官、夏官、秋官、冬官」の6つの官職のことである。六官長の位は卿伯。
- 冢宰(ちょうさい)
- 六官を取り纏める長である。この官職は、朝臣の筆頭である宰輔が、その本性が仁と慈悲である麒麟であるためと、首都州の州候を兼ねて非常に忙しい身分のため、現実的には朝臣の頂点になる宰相の職にあたる仕事を行う。古くは太宰が兼任していたが、「六官席を等しくす」という考えから別に置かれるようになった。
[編集] 天官
宮中諸事を掌る。
- 天官長太宰(てんかんちょうたいさい)
- 天官の長。古くは冢宰を兼ねた。
- 小宰(しょうさい)
- 天官長の次官
- 内宰(ないさい)
- 内宮を管理する。
- 内小臣(ないしょうしん)
- 内宰の下で王と宰輔の世話をする官。
- 閽人(こんじん)
- 門の側で控え、来訪者の素性を改め控え、取り次ぐ役を持つ官。
- 大行人(だいこうじん)
- 来訪者の案内をする官。内殿までは入れない。
- 掌舎(しょうしゃ)
- 宮中の建物の管理を行う。
[編集] 地官
土地戸籍を掌る。
- 地官長大司徒(ちかんちょうだいしと)
- 地官の長
- 小司徒(しょうしと)
- 地官長の次官
- 遂人(すいじん)
- 治水など山野を治める官。
- 田猟(でんりょう)
- 人民の管理と納税のための台帳整備する官。
[編集] 春官
祭祀を掌る。
- 春官長大宗伯(しゅんかんちょうだいそうはく)
- 春官の長
- 小宗伯(しょうそうはく)
- 春官長の次官
- 二声氏(にせいし)
- 大卜の下。その名の通り、白雉の世話をする。
- 鶏人(けいじん)
- 大卜の下。儀式に使う雉の世話をする。
[編集] 夏官
軍事を掌る。
- 夏官長大司馬(かかんちょうだいしば)
- 夏官の長
- 小司馬(しょうしば)
- 夏官長の次官
- 射人(しゃじん)
- 王の身辺警護の長官。
- 虎賁氏(こふんし)
- 公(外宮)においての王の警護をする官。射人である司右(しゆう)の下官である。
- 大僕(だいぼく)
- 内宮における王の身辺警護をする小臣の長。司馬の官。
- 小臣(しょうしん)
- 王の身辺警護をする官。
- 射鳥氏 (せきちょうし)
- 射儀を企図する。
- 羅氏 (らし)
- 射鳥氏の指示を受けて射儀の的にする陶鵲を羅人に発注し、製作を指揮する。射鳥氏の代わりに射儀の一切を取り仕切る事もある。国政とはほとんど関係が無い。
[編集] 秋官
法令・外交を掌る。
- 秋官長大司寇(しゅうかんちょうだいしこう)
- 秋官の長
- 小司寇(しょうしこう)
- 秋官長の次官
- 朝士(ちょうし)
- 警務法務を司る。特に諸官の行状を監督し、王に奏上できる官。
[編集] 冬官
造作を掌る。ここで製作される呪を掛けられた武器を冬器と呼び、妖魔を撃退する武器になり、唯一神仙を傷つけることが出来る。
- 冬官長大司空(とうかんちょうだいしくう)
- 冬官の長
- 小司空(しょうしくう)
- 冬官長の次官
- 匠師(しょうし)
- 物品を作る官。
- 玄師(げんし)
- 呪具を作る官。
- 技師(ぎし)
- 新しい技術を探す官。港を造ったりする。
- 三官が冬官長の下で、国のためにそれぞれの工匠を抱えている。
- 羅人(らじん)
- 羅人府の師匠。陶鵲を作る専任の工匠。
国官は必ず首都州のどこかに封じられ、そこから上がる租税から国への上納分を引いた残りが給与となる。つまり、官吏の給与は農作物の収穫量と必然的に連動する事になる。封領の単位は最低が里で上納分は半分、これに賦(人頭税)が付くため、一里を封領として与えられる官吏の収入は成人が田圃から得る収入より五割ほど多い事になる。最大は一県であり、封領の官府の長官は領主が任免することができる。そのため、民は官吏の封領の移動に一喜一憂する事となる。
[編集] 軍
十二国では天綱に覿面の罪が定められているために、基本的に他国との戦争が存在しない。その代わりに警察というものが存在せず犯罪者の取り締まりや貴人の警護、王宮や都市の警備なども全て軍がおこなう。さらに罪人が刑務作業で行う土木工事の監督などにも将兵が動員されることがあり、軍事以外にもいろいろな作業に従事する。
また軍の体系は天綱に定められており、王が勝手に拡張・増強するのはもちろん、削減する事も出来ない。そのため、兵を動かすとなると、特に慶国のような国力が弱い国では兵站(特に兵士の食料)をどうするかが問題になる。
[編集] 王師六将軍
禁軍三軍と首都州師三軍を合わせて王師(おうし)という。
- 禁軍
- 王直属の軍であり、王以外の者が統帥権を持ち命令を下す事は、まず有り得ない。また、その国で一番の強兵が集まった精鋭部隊であり、その軍の指揮官である将軍も優秀な人物であることが多い。
- 左将軍
- 中将軍
- 右将軍
- 首都州師
- 首都に配置された軍であり、統帥権は宰輔である麒麟にある。その為に、現実的には王も首都州師の統帥権を持っている事になる(この理由から、禁軍と首都州師を「王師」と呼ぶ)。ただ手続き上、宰輔の承認が必要な為、宰輔不在で承認が得られない場合には軍を動かすことは出来ない。
- 左将軍
- 中将軍
- 右将軍
[編集] 軍の編成体系
1つの国に存在する軍は、大きく2つに分けられる。1つは、禁軍と首都州師の「王師」であり、もう1つは、首都州以外の八州(余州)の「州師(しゅうし)」である。軍の名称は順に、「左軍、右軍、中軍」と呼称され、州師のみ更に「佐軍」が加わる。その軍の数は、王師がそれぞれ三軍、州師が二軍から四軍とされているが、これ以上の軍備は太綱によって禁じられている。
一州の反乱ならたやすく鎮圧されるが、余州八州が結託すれば王を討つ事も可能である。
軍の規模には、「黒備、白備、黄備、青備」の4種類が存在する。
- 黒備(こくび) 兵数:12,500
- 白備(はくび) 兵数:10,000
- 黄備(こうび) 兵数:7,500
- 青備(せいび) 兵数:2,500
王師六軍(禁軍三軍と首都州師三軍)は、黒備で常備するのが通常で、専業の兵卒があたる。それが不可能である場合は、白備、黄備とその規模を下げていくのが、通例になっている。 一方で州師は、通常は黄備の常備で、また佐軍に関しては、おおむね青備が常備となっている。急あって軍を動かす時には市民から兵を募り、更に火急の時には徴兵する事となっている。
軍の編成単位には、「師、旅、卒、両、伍」がある。
- 伍(ご) 兵数:5
- 両(りょう) 兵数:25 (5伍)
- 卒(そつ) 兵数:100 (4両)
- 旅(りょ) 兵数:500 (5卒)
- 師(し) 兵数:2,500 (5旅)
[編集] 地方
地方は、州、郡、郷、県、党、族、里という形で分けられている。国に州は9つと決まっており、4郷で1郡、5県で1郷だが、それ以外の単位については特に数の決まりはない(里は里家を含めて25家、郷は12500戸、などの名目上の数値は存在する)。
- 州候(しゅうこう)
- 各州で、州六官を任命し実際に統治する。
- 各国には州が9つあり、各州の州候は王が任命する。首都州の州候は、必然的にその国の麒麟がなる。
- 州宰 (しゅうさい)
- 州六官を統率する、国の冢宰に対応する官。
- 令尹(れいいん)
- 州候の輔佐役。
- 射士(しゃし)
- 州候の身辺警護の長。
- 牧伯(ぼくはく)
- 首都州の施政の監督官。各郷府、各県府にそれぞれ刺史を配して施政を監督させる。謀反など何か有った場合真っ先に殺されると言っていい危険と隣り合わせの職務。
- 太守(たいしゅ)
- 郡の長。
- 郷長(ごうちょう)
- 郷の長。
- 県正(けんせい)
- 県の長。
- 里宰(りさい)
- 里の長。里府を司る。
- 閭胥(ちょうろう)
- 里宰の相談役。里宰と共に里を運営する。必ずその里の最長老がなる。小学の学頭と里家の長も兼ねている。
[編集] 非常時の国権の継承順位
十二国において通常の(あるべき)状態として考えられている体制は、上記のとおり王が主権を持ち、補佐役の麒麟と冢宰を筆頭とする諸官がその下にあるというものだが、実際にはそうでない体制も歴史上存在している。なお、王や麒麟、高位の官の性質上、ここでは断りのない限り、死ぬ=欠けるとして扱う。
上記のとおり十二国では王を麒麟が選ぶが、王が死んだ後直ぐに麒麟が王たる人物を見つけられるとは限らず、また先王とともに麒麟が死ぬことも少なくないが、その時は新たな麒麟が生まれ、その後王を選定するため長い期間王位があく。このような空白期間に備え、国権の継承順位が定まっている。
麒麟が存命で、王がいない場合、麒麟と冢宰が協力して国を運営し、あわせて麒麟は王を探す。王と麒麟が同時に欠けた場合、冢宰が仮王となり、仮朝を開いて空白期の国を運営する。冢宰が何らかの理由で欠けている場合には、いくつかの選択肢がある。
- 王が欠け、麒麟が欠けていない場合、麒麟が新たに冢宰を任じ、麒麟と冢宰で国を運営する。
- 王が欠け、麒麟も欠けている場合、慣例として6官の長である天官長が繰り上がって冢宰を兼務し、自動的に仮王に納まる。
- 王も麒麟も欠け、天官長も欠けている場合、6官3公の残りの人物の合議によりふさわしい人物を新たな冢宰として選び、その人物が自動的に仮王に納まる。この場合、王が死んでいるので白雉の足を御璽の代わりとして使用する。
まとめると、王が欠けた後の国権の継承順位は、1麒麟(ただし実務は2が担当)、2冢宰、3天官長(2を自動的に兼務)、4六官三公の合議(2を選出するまで)となる。
このシステムでは、理論上4までの官吏がすべて同時に死んだ場合、空白期の国家の運営自体が不可能になるが、実際は謀反や反乱でなく、"平和的"な失道の場合、王と麒麟が同時に死ぬことは少なくないが、2の冢宰以下は天の条理とは関係がないため死ぬことはまずなく、空白期を仮朝を開いて乗り切ることが可能である。逆に4までの官吏がすべて同時に死ぬのは、実際上謀反や反乱の場合以外なく、その場合反乱の指導者が偽王として立つので、天の定めた条理からすれば逸脱ではあるが、空白期の国権を行使する存在が"問題なく"存在することができる。十二国の歴史を見ても、以下に述べる戴国の事例の前は国権の保有者自体に空きが出たことはないとされている[10]。
[編集] 戴国の事例
しかし、このシステムには抜けがひとつあった。王や麒麟に関して"欠ける"が、"死ぬ"を意味しない場合、すなわち王や麒麟が、何らかの理由(幽閉や事故)で朝廷と連絡をまったくとれないため、国権の担い手としてみれば欠けているが、死んだわけではなく(または生死不明)、かつ2から3までの官吏が事故で欠けてしまった場合である。 この場合、王や麒麟は個体としては死んでいない(またはその可能性がある)のだが、国権は担えず、それを捜索し、取り返そうとしても、その間国権を担い朝廷を纏めるべき、2や3に属する人間はいない。この場合、上の規則に従えば、4の六官三公の会議に国権が移るが、これは2を選ぶまでの暫定的なものであり、現実としても官の頂点に仮に立つべき人間を一人選ぶ必要がある。しかしここでは王と麒麟が存命(少なくともその可能性がある)なので、御璽の効力が消えておらず、白稚の足を使って2を選ぶことはできない。よって4の六官三公の会議が存在していたとしても、天綱と慣例に従う限り、最終的な決を定めるべき人間を選ぶことができず、国権保有者が空白になってしまう。 作中では、戴国で上記の事例が起こり、その結果残された高官たちはパニック状態に陥ったため、文字通り国権が停止してしまう事態に落ちた[11]。その隙をついた高官阿選により国権は奪われた[12]が、ここでも王や麒麟が個体としては死んでいないため、新しい王や麒麟は選べず、仙である阿選は天からの捌きとも死とも無縁であるため、通常の偽王以上に阿選の権力基盤は強くなっている。十二国の天の法と慣例の隙間をついた形になる。
[編集] 芳国の事例
上の戴における混乱ほどではないが、芳国の国政も天の条理と慣習(およびその鏡としての通常の偽朝)からは逸脱した体制をとっている。芳国は現在先王に対して反乱を起こした時の首領月渓が統治しているが、この反乱は冢宰以下の支持を受けていたため、正当な国権保有者である王を殺し、麒麟を殺したものの、上であげた国権の正当な継承が可能であった。月渓も当初は、反乱を起こして王と麒麟を殺しはしたものの、空白期の国権に関しては天の定めた順位に従うべきと考えており、国権の継承を渋っていたが、結局諸官に押される形で国権を担うことになった。上に挙げた天の条理と慣習からすれば、"偽王"であるが、本来なら正当な国権の継承者である人々の同意を得ており、彼らは月渓を仮王とみなしている。
[編集] 教育機関
- 小学(しょうがく)
- 里に一つ。里家に付設されている。主に読み書きと算数を教える。義務教育で数えの七歳、満の五歳から通うことになっているが、何歳までとは決められていないので大人も行くし、大人に抱かれて乳飲み子も行く。農閑期に開かれるため春から秋にかけては閉まってしまう。四方山話を少しは実のある話にしようと言った程度の場所。上の学校へ行くには長である閭胥の選挙が必要。
- 序学(じょがく)
- 県に一つ。
- 庠学(しょうがく)
- 郷に一つ。郷都にある。上庠への推挙者を上士 (じょうし)と言う。ここから上に上がろうとする頃から塾通いや家庭教師が必要になる。
- 上庠(じょうしょう)
- 郡に一つ。少学への推挙者を選士 (せんし)と言う。
- 少学(しょうがく)
- 州に一つ。州都に有る。基本的に戸籍のある州の少学にしか行けない。卒業すればちょっとした地方官になれ、ほとんどの卒業生が官吏になる。首席を決める際に成績が同じ場合、弓射で競うため、試験前には学生は弓射の練習をするという。
- 大学(だいがく)
- 国に一つ。首都にある。アニメ版では王宮がある凌雲山の北面に寮と一緒にへばりつくように存在している。国内から300人程度しか学生は選抜されない。国中の精鋭が集まる最高学府であり、国の威儀に直結した国官養成機関と言える。 出れば普通そのまま国府に入り、無条件に国官の下士に登用されるのが慣例。そのため、官吏の教養とされる馬術と弓射は必修科目らしい。入学するには少学の学頭かそれに匹敵する人物の推挙が必要で、成績だけでなく品格や人格も問われる。一度や二度試験を受けたぐらいでは入学できず、三十、四十になってからやっと入学する者も多い。入学する年齢も、卒業する年齢も決められてはいないので学生の年齢も二十代~四十代と幅広い。そのため、学生には既婚者も多く、配偶者の稼ぎに頼って生活や勉学をしている者もいる。卒業には数年掛かり、卒業するためには、定められた教科でそれぞれの教師から允許(いんきょ)(単位のこと)を貰わねばならない。卒業にはかなりの才覚と資金が必要なため、留まっているうちに学資が尽きて辞めていく者も多い。三年間一つも允許を貰えなければ除籍になってしまうので、三年目が来る前に自主的に辞めていく者も多い。その方が外部への通りがよく、大学へ行った経歴をよすがに職の探しようもあり、復学の道も残されている。十二月と一月は春の長期休業。
学校と言うものは上の学校に行くための準備をする場所ではなく、そこはそこで目標とする水準があり、それは進学するために必要とされる程度には足りず、この差は学生が自力で埋めなくてはならない。
他にも、以下の教育機関がある。
- 庠序 (しょうじょ)
- 雁にのみ存在する、処世などを教えている場所。庠学とは別の学校。郷にある。
- 少塾(しょうじゅく)
- 識者が開いた学塾。上の学校へ行くための学力を補う塾。雁では選士になれば塾費を国が補ってくれたり、公立のものもあり、元は私立だったのが公立になったものもある。
- 義塾(ぎじゅく)
- 識者が道を説く塾。
[編集] 国情
王や麒麟については十二国記の登場人物も参照。
[編集] 慶東国
首都は堯天、王宮は金波宮。景王 赤子、麒麟は景麒。崇山を中心に花びらのような形を配置された十二国の内、慶東国はその中央より真東(3時方向)をその領地とする。気候は日本に近いが冬はやや寒さが厳しく、雁国との国境近くでは雪が降る。夏が暑いため、民の多くは窓にガラスを入れることをせず、毎年、数名の凍死者が出ると言う。特産物と言えば白端の茶ぐらいしかなく、大きな鉱山や他国に輸出できる物は無く、資源的にはあまり恵まれていない。大陸の東端にあたる為、虚海から流れ着く海客が最も多いとされている。
現在、物語の主人公・中嶋陽子が王となっている。
昔、達王が300年間善政を布いたが、最近では3代続いて無能な女王が即位し、そのうち最後の予王舒覚の治世はわずか6年。さらに予王崩御後は妹の舒栄が偽王となっていた(そのため「慶は女王に恵まれない」と言われ、陽子が即位した当初は官や民から不安の声が上がっていたほど)。したがって達王崩御以来、王の統制が緩んだことで官の腐敗が横行する状況に陥り、国内の状態は悪化の一途をたどっていた。しかし陽子の登極から3年を経て国内体制も再建され、現在では雁国を始め国外に難民として避難していた人々も戻りつつある。とは言え、まだ復興の緒に就いたばかりであり、国力は貧弱の一言で足りる。
[編集] 雁州国
首都は関弓、王宮は玄英宮。延王 尚隆、麒麟は延麒 六太。王も麒麟も胎果で治世は500年に及び、現在北方で最も豊かな国。国土は崇山から1時半の方向、慶東国の北西に隣接する。主な産業は農業、商業。船舶や建造物の建造技術も高く、そのために必要な計測資材の関係で範西国とも関係が深い。
資源的には慶と同じく恵まれておらず、更に慶よりも北方に位置する為、寒さも厳しい。先代の梟王がその王朝末期に暴虐の限りを尽くし、さらに次代の麒麟が王を選べないまま崩御したために王の不在が長く、500年前に尚隆が登極した時の雁はわずか30万たらず(通常の1/10以下)の人民しか残っていなかった。まさに凌雲山すら折れようかというほどのその荒廃ぶりは「折山の荒」と呼ばれた。
現在は、十二国屈指の国力を誇り、この繁栄により尚隆は宗王と共に稀代の名君と称されるに至るが、他人の10倍は我慢強く、かつ有能な官吏たちの奮闘のおかげでもある。奏国の宗王一家も、麒麟以外に身内を持たない身で500年治世を行ってきた尚隆を賞賛しつつ、型破りな王と麒麟に振り回されながらも国をしっかり支え続けてきた官吏たちの能力を認めている。他国では一般的な農民が副業でやる乗合馬車や安宿などが存在しない程、平均的な国民の生活水準は高く、北方で唯一安定した国であるためにあてにされ難民が増加の傾向にあり、近隣諸国からの難民対策が大きな課題となっている。
十二国で唯一、妖魔を敵対生物としない法を制定し、家畜などにも妖魔の名を連ねている。また、半獣や海客に対しても最も差別の少ない国として知られている。
[編集] 戴極国
首都は鴻基、王宮は白圭宮。泰王 乍 驍宗、麒麟は泰麒 蒿里。北東の最も寒い国。玉を産出するが、驕王時代の乱掘と、現在の国土の荒廃が原因で枯渇している模様。国民性は鉱夫気質で、気が荒く喧嘩っ早いとされる。
先王崩御から10年も麒麟の不在で昇山すら出来ない状態が続いていたが、この期間は仮朝を中心に国内体制は維持され、国情の悪化は最小限に留まっていたと思われる。しかし、驍宗の治世下でようやく復興が始まった矢先に王と麒麟を失い、更に驍宗が任命した重臣のほとんどが行方不明となり、国内体制は崩壊する。
現在、実質的な支配者として"偽王"阿選が統治している形を取っているが、反阿選勢力の弾圧以外は妖魔が跳梁跋扈するに任せた放任状態が続いており、厳しい気象条件と相まって民の疲弊は激しく、国家滅亡の淵に立たされていると言って良い状態と思われる。
既に妖魔によって国外との連絡は途絶し、難民の国外脱出は不可能になっており、通常の王不在時と比べても妖魔の跳梁や国内の荒廃は不自然なほど酷く、しかも肝心の王は行方不明であったが崩御していない不可思議な状態に陥っている。また李斎の言によると、当初優勢だった反阿選勢力は突然の寝返り者が続出して四分五裂の末に壊滅したとの事。この突然の反乱と王の失踪、不可解な内部崩壊、それに続く速すぎる荒廃には何らかの異常な力が介在していると推測されている。
現在も泰王は消息不明のままだが、決死の脱出行を成功させた李斎の懇願を受け、景王陽子の提案で各国が協力して日本と中国を捜索、ついに泰麒を発見し連れ戻すことに成功した。
なお、一度国氏が変わっていることが作中で明言されている(経緯は覿面の罪を参照)。
[編集] 恭州国
首都は連檣、王宮は霜楓宮。供王 珠晶、麒麟は供麒。治世90年ほど。主な産業は林業など。黄海の北西部にある令乾門を飛び地として所有している。
先王崩御後27年間にわたって王不在による荒廃が進んでいたが、新王珠晶の下で国内の復興はほぼ目処が付き、現在は比較的安定している。そのため近年は王不在となっている芳国を支援したり、亡国の兆しを見せ始めた柳国に備え始めるなど近隣に目を向け始めているが、奏や雁などの大国はもちろん、隣国範と比べても国力はまだまだ弱い。
延王尚隆によれば、慶とは逆に過去に途方もなく長く在位した女王がいたため女王に対しては好意的で、むしろ新王が男だと民はがっかりするほどである。
珠晶は昇山の途中で、国王になったら恭全体を乾の街のような「妖魔に対する防備を備えた国」にして次の王不在期間に備える、更にそれは王がいる間でなければ出来ない、と語っていたが、その計画が今どうなっているか不明。
[編集] 漣極国
首都は重嶺、王宮は雨潦宮。廉王 鴨 世卓、麒麟は廉麟。南西に位置し、最も暖かい国。廉王は農民出身で「万民は健康に暮らすこと」と初勅を出したことで有名。本人の弁によると「国王はお役目、農夫が仕事」という認識らしい。泰麒は一度この国を訪問している。
国情については不明であるが、泰麒が訪問した際には国の中央部で謀反があった事が語られているため、決して安定した状態とは言えないようであった。その後、泰麒捜索の際に呉剛環蛇を持つ廉麟が比較的長期にわたって国を空けていた事から、少なくとも現在は差し迫った危機は無いと推測される。
[編集] 才州国
首都は揖寧、王宮は長閑宮。采王 黄姑、麒麟は采麟 揺籃。治世12年ほど。現在のところ特に国情に不安はない模様。
現王は采麟にとって2人目の王。先代は梧王砥尚といい、腐敗した王朝を刷新し理想の国を作り上げようと政務に挑んだ。しかし、実務経験が乏しく、また理想に高くはあったものの、その理想が真に国政を考え抜いた上で打ち立てられた物であったかどうかなど、国を担っていく上で本当の意味での信念と実行力が欠けていた。結果、砥尚の政策の多くは失敗に終り、王に明らかな非道はなかったものの国土は荒れ続け、王朝末期には采麟は失道。ついに王が禅譲して王朝が斃れる悲劇へと至った。
現王の黄姑は、この前王砥尚の叔母にあたる人物。采麟は、一見夢見るように無邪気さを漂わせているが、その発言に見え隠れする哀しさは悲劇的な最期を遂げた前王故でもある。 また、王朝の交代時に奏国の支援を受けており、その縁で奏国と誼を結んでいる。
なお、この国も国氏が少なくとも一度は変わったことが明示されている(詳細は覿面の罪を参照)。
[編集] 奏南国
首都は隆洽、王宮は清漢宮。宗王 櫨 先新、麒麟は宗麟 昭彰。治世は600年に及び、あと80年程で史上最長の王朝となるも未だ傾国の兆しは無く、磐石と言って良い統治体制を堅持している。ただ宗王によると、雁に比べ官が「のんびり」しているとの事。
国情が安定しているだけでなく、十二国全体を視野に入れた政策を採っている数少ない国。例えば、遠く離れた北方の柳国に亡国の兆しを見出すと、柳の隣国恭への具体的な支援策を考えたり、雁の負担を軽減するため巧北部の難民を船を使って奏に導く策を考えるなど、常に近い将来に起こり得る事象に対して十二国全体のバランスを考えた準備をしている。
十二国の中で入院制度を最初に取り入れた国。医療大国としても知られている。
赤海産の真珠が特産品。
[編集] 柳北国
首都は芝草、王宮は芬華宮。劉王 助 露峰、麒麟は劉麒。著名な法治国家であり、芳極国の先王である仲韃もこの国を範として法を整備したが、芳とは異なり民を直接取り締まる法律よりも、むしろ法が公正・厳格に施行されることを目的とした体制整備に重点が置かれていた。この体制が功を奏して、厳正な法治体制の下で安定した治世が120年間程続いていた。
しかし最近ではこれまでの法治体制を自ら崩すような政策が続き、地方にいくと公然と賄賂を要求する官吏が現れている。ただ未だ王と麒麟が健在で且つ法治体制の破綻も顕在化していない段階なのに、天候不順や虚海沿岸に妖魔が出没し始めるなど荒廃の兆しが現れ、巧国や戴国と同じように何か通常とは異なる事態が発生しているのではないかと危惧されている。
主要な産業は林業と石材。地下の石切り場の跡を地下街にしている街があり(北東部は雨が多いため地下室は少ない)、この街の場合は気温が安定していて風雪や妖魔の来襲を凌げるため地上より地下の方が賑やか。そのため、この国では建物に掛かる税金は地下室の広さで決められる。
[編集] 範西国
氾王 呉 藍滌、麒麟は氾麟 梨雪。治世はおよそ300年、この頃に斃れる王は多いが利広によれば特に問題なく先に進みそうとのことである。国土は慶からちょうど黄海を挟んで反対の位置にある。計測器具や芸術品などの細工物や船の梶などの細かい物を作る技術に秀でた、いわば技術立国。
他国から原材料を仕入れて、国内で加工して輸出するという国柄から、関連国の情勢には常に注意を払っている(泰麒捜索の際に、玉の産地でもある戴国の実情に最も精通していた)。
[編集] 芳極国
首都は蒲蘇、王宮は鷹隼宮。王も麒麟も不在。先の王は健仲韃(けんちゅうたつ)、麒麟は峯麟。あまりにも苛烈な法を敷いたため、60万に及ぶ民が処刑されるに至り、恵州侯月渓が中心となって八州全てが蜂起し、王と麒麟が共に殺害された。治世約30年であり、諡(おくりな)は冽王。
現在は、天の条理と慣習を逸脱したという点で形式上"偽王"でありながら、実際には内外から空白期の正当な国権の継承者(仮王)として認められた月渓が事実上国を治め、荒廃をよく押さえ込んでいると評価されている。ただし供王珠晶によると、蓬山にあるはずの峯果が行方不明という情報があり、詳しいことは不明ながら王不在が長期化する事が危惧されている(現在蓬山に麒麟は居らず、麒麟の卵果も塙果のみ)。
必王(12代目か13代目の王)の時代に山客によって仏教が伝えられ、最初に寺が建てられたのがこの国である。そのため死体は荼毘に付し里祠も建物の並びが廟堂風ではなく寺堂風になっている。
[編集] 巧州国
首都は傲霜、王宮は翠篁宮。王も麒麟も不在。海客は3番目に多く3年に1度ほど流れ着く。
自身の治世に劣等感を持っていた先の塙王は、雁に500年の繁栄をもたらした延王と同じ「胎果の王」が隣国慶に立つのを恐れ(=民に比較されるのを恐れ)、麒麟(塙麟)の反対を押し退けて陽子抹殺を試みる暴挙にでる。そのため塙麟が失道の病に罹かり、ついに塙麟共々崩御することになった。治世50年であり、錯王と諡(おくりな)される[13]。
現在は仮朝によって統治されているが、空を覆うほどの妖魔の出現で巧国と黄海の間の巽海門周辺の内海は船の運航が不能なほどの惨状になっており、巧国を脱出する難民も増え続けている。なお蓬山の捨身木には通常は1年未満で麒麟となる塙果が、既に3年以上実ったままになっている(陽子が登極した時に既に塙果が実っており、泰麒捜索時にも塙果のままだった)。
[編集] 舜極国
徇王、麒麟は徇麒[14]。治世は40年程。原作中唯一登場していない国。彰明産の硯が名産で、玉や薬水を産出するらしい。
多くの国が参加した泰麒捜索にも協力しなかったが、その理由は国で内乱が起こったからだとされ、詳しい状況は不明ながら余り安定した治世ではないと思われる。現在の徇王は登極前は官吏だったらしい。
[編集] 各国の宝重
[編集] 慶東国
- 水禺刀(すいぐうとう)
- この刀は真の所有者=景王のみしか使用不可能な名刀。魔力甚大な妖魔を滅ぼす代わりに封じ、剣と鞘に変えて宝重としている。封じこんだのは達王。
- 上手く支配できれば刃が輝いて、水鏡を覗く様に未来・過去・遠くの事象でも映し出すが、気を抜けばのべつまくなし幻を見せる為、鞘で封じている。鞘で封じる以前、当初は長い柄の偃月刀(えんげつとう)であり、水鑑刀(すいかんとう)と呼ばれていた。
- 鞘は、変じて禺(さる)を現す。禺は人の心の裏を読むが、こちらも気を抜けば、持ち主の心を読んで惑わす為、剣で封じている。
- 現在は陽子が我慢出来なくなって禺を殺した結果、鞘の方が力を無くしているため、景王でなくとも抜刀はできる。しかし持ち主以外が抜き身の剣を振るっても藁すら切れない。それでも、陽子にとっては切り札的な武器で、かつ貴重な情報源である。
- 碧双珠(へきそうじゅ)
- 怪我や病気を癒す力がある。空腹感を薄れさせることもできるようだ。
[編集] 漣極国
- 呉剛環蛇(ごごうかんだ)
- 銀の腕輪。蛇の形をしており、使用時には、蝕を起こさずに十二国と、蓬莱や崑崙に穴を通せる。二形を持たないもの(使令は可能)や人(仙を含む)は通せないし、一度に大勢も運べないなど制限も多い。しかし蝕を起こさない、つまり地上に被害をもたらさないため、泰麒捜索の際には大いに役立った。
[編集] 才州国
- 華胥華朶(かしょかだ)
- 宝玉で出来た桃の枝。枕元に差して寝ると花が開き、華胥の夢を見せて理想の国のあるべき姿を悟らせてくれると言われていたが、実際には自身が迷った時や自分の本音が分からなくなった時、その人自身の理想の国を夢で見せてくれる力を持つ。梧王・砥尚の時に、枝が折れて欠けた状態になったが、その後、采王・黄姑がどうしたのかは不明。
[編集] 範西国
- 蠱蛻衫(こせいさん)
- 薄い紗のような衣。纏った人の姿が、それを見る人にとって好ましいように見える衣。
- 鴻溶鏡(こうようきょう)
- 映った者を裂いて増やすことが出来る鏡。遁甲できる生き物に限り、理屈上は無限に裂くことが可能。ただし、裂いた分だけ、能力も弱まる。
[編集] 巧州国
- 腕輪(名称不明)
- 塙麟がつけている腕輪。詳細は不明。アニメ内では景麒の角に呪をかけ、霊力を封じるために使った。
なお、戴極国にも何らかの宝重が伝わっていると明言されているが、具体的に何であるかは不明。
[編集] 用語
- 失道(しつどう)
- 王が道を踏み外す(天意に背く)と麒麟がかかる病気。一度かかると滅多に治ることはなく、王が死ぬか道を正せば治るが、あまり例はない。病に臥してから死ぬまでは数ヶ月から1年の時間がかかり、麒麟が死ねばさらに数ヶ月から1年ほどで王も斃れる。
- 旌券(せいけん・りょけん)
- 戸籍のある土地を離れた人間の身分を証明する小さな木片。表には本人の姓名が記される。裏には発行した役所の名称か身元保証人の名前を書く。正式に旌券を発行するときは旌券を戸籍の上に重ねて小刀で3つの傷を付けておき、必要な場合には本物かどうか照合する。十二国世界では、隣町まで出かけただけでも戸籍と違う行政区分へ行くと身分保護を受けられないため、お使いをする年頃になると皆が旌券を所持している。
- 浮民(ふみん)
- 本来所属する里を離れた者のこと。もしくは旌券を持たずに旅をしている者のこと。広義では荒民を含む。また仮の旌券(朱線が入る)の発行を受けてそのまま旅をしながら生活する者を朱旌(しゅせい)あるいは朱民(しゅみん)と呼び、最低限の寝食を保証されるかわりに給金を得られない形(事実上の奴隷)で他人に雇用された者を家生(かせい)と呼ぶ。朱旌や家生となった者は役所へ保護を求めぬよう本来の旌券を割らされるため、浮民を割旌(かっせい)と呼ぶこともある。
- 荒民(なんみん)
- 戦乱や災害のために住んでいたところを逃げ出してきた者のこと。難民とほぼ同義。
- 黄民(こうみん)
- 「黄海の民」という意味での朱民(朱旌)の別称。また古くは旅券を黄色く塗っていたからだとも言う。黄朱の民、黄朱とも呼ばれる。
- 朱氏(しゅし)
- 黄海で騎獣を狩る朱民のこと。朱民の筆頭という意味。昇山者を護衛する剛氏と違い、誰に雇われている訳でもなく黄海で生活していることから。妖獣より仲間の屍を持ち帰ることのほうが多いことから、猟尸師(りょうしし)という蔑称もある。また四令門近くの街で狩をする(他人の騎獣を盗む)悪質な者もいる。
- 架戟(かげき)
- 冬器商のこと。入り口に官許の証として戟が立て掛けてあるから。
- 界身(かいしん)
- 銀行のような役割を果たす組織。「座」と呼ばれる強力な組織で繋がっており、烙款(らっかん)と呼ばれる焼き印があれば、他国であっても他都市であっても、同じく座に参加している界身のどこででも金銭を受領できる。
- 仮王(かおう)
- 王と麒麟の同時に欠けた国において、天綱と慣習の定めるところに従い空白期の国権を握った人物。天綱や慣習の詳細は上の官位の部分にある。これにそむいた場合、偽王となるが、実際には月渓のように形式上偽王であっても、民や官吏の信任がある場合、仮王と呼ばれる。
- 偽王(ぎおう)
- 王と麒麟の同時に欠けた国において、天綱と慣習の定める正当な則を破って空白期の国権を握った人物。多くは反乱の首長であるが、阿選のように則の隙間をかいくぐって国権を握る場合もある。実際には、王が非道でそれを倒し国権を握った者、先に偽王が立っておりそれを討伐して国権を握った者などは、形式上偽王であっても、民と官吏の支持があるため"仮王"と呼ばれる。
[編集] 脚注
- ^ 『図南の翼』講談社文庫版P330
- ^ 『黄昏の岸 暁の天』講談社文庫版P206-207
- ^ 『黄昏の岸 暁の天』講談社文庫版P271
- ^ 「帰山」『華胥の幽夢』講談社文庫版P309-310
- ^ 『図南の翼』講談社文庫版P378
- ^ 「帰山」『華胥の幽夢』講談社文庫版P307
- ^ 官吏への不採用、少学以上に行けないという差別は功、芳、舜の三国に残る。
- ^ 『東の海神 西の滄海』の冒頭
- ^ 『黄昏の岸 曉の天』講談社文庫版153ページ
- ^ 『黄昏の岸、暁の天』、上巻p206、207、芭墨の言
- ^ 『黄昏の岸、暁の天』、上巻p207、208
- ^ ちなみに、この時阿選は表立って反乱を起こしたわけではなく、形式上は残った高官からも一時的ではあるが国権を担うことを認められていたが、無論真の王でもなく、天綱と慣習に定められた継承順も踏まえていない。そのため『黄昏の岸、暁の天』上巻p215では、花影から偽王であると喝破されている
- ^ 原作には記述の無いアニメのみの設定
- ^ 原作には記述の無いアニメのみの設定


