単位の換算
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単位の換算(たんいのかんさん)とは、ある単位で表現された物理量を、別の単位に換算する操作のことである。「物理量の数値の換算」「数値方程式の単位換算」[1][2][3]について説明する。単位の換算のことを「単位換算」、「単位変換」、「単位の変換」ともいう。
目次 |
[編集] 概要と諸定義
同じ物理量であったとしても、その値の大きさを定量的に示すために使われている単位が異なる場合がある。例えば長さを表現する単位としては、m のほかに、km 、光年、Å などの様々な単位がある。通常は、「太陽と地球の距離」と「Siの共有結合半径」を比較することよりも、「太陽と地球の距離」と「太陽と木星の距離」を比較することが多いことから、同一スケールの現象の比較に便利なように、同一スケールの現象を有効数字2桁程度で比較ができるように最適な単位を選ぶ。従って、「太陽と地球の距離」と「Siの共有結合半径」のように異なるスケールの現象を物理量の値に基づいて比較せねばならない場合には、通常は単位の換算が必要である。 物理学をはじめとした定量科学では、物理量の値同士の関係を数式で表すことが多い。物理量の値同士の関係を、あらわした数式を「数値方程式」[4]という。しかし、異なる単位系で定式化された数値方程式に、数値を代入せねばならない場合がある。例えば、「m とkg とs に対して定量化された公式」に、「mm とg とmin で測定された値」を代入せねばならない場合がある。このような場合にも、単位の換算を行う必要がある。
[編集] 関連用語の定義
「物理量」に関する用語の定義は意外にも曖昧で、いくつかの異なる意味で使われているため、混乱をさけるため以下の用語を定義する。
- 物理量:「kg原器の重さ」、「光が1秒間にすすむ距離」、「Si原子の共有結合半径」、「地球の公転周期」、「光速」、「A氏の体重」などのように客観的に測定でき、定量的な議論が可能な量であり、かつ物理、化学等の自然科学や工学における議論の対象になるもの。あるいはそれの実数倍。物理量のことを「物理量の値」ともいう。
- 物理量の種類:具体的な物理量それぞれを、「相互に比較できるか否か」に基づきグループ分けしたときのグループの名前。「長さ」、「時間」など。
- 単位:「kg原器の重さ」、「光が1秒間にすすむ距離」のように具体的な物理量そのもの、あるいはそれの実数倍として定められる物理量で、特に再現性よく、誤差が少なく測定できるものであり、これと同一の種類の物理量に属する物理量を測定する際の基準となるもの。
- 物理量の数値:「私の体重」のような具体的な物理量を、それと比較可能な単位と比較したときに、その単位の何倍であるかを示した数。私の体重が53 kgであるときには、53という(単位の付かない)実数が、物理量の数値である。
教科書によっては、本記事でいうところの「物理量の種類」や、「単位」のことを「物理量」としている場合、あるいは、どれを指しているかあいまいな場合もある。また、「物理量の値」という用語は、物理量と同義でつかわれる場合が多いが、実は「物理量の数値」と同義で用いられることもある。
[編集] 「物理量の値」の表記の仕方
物理量の表記方法も、さまざまな流儀があるため、本記事における定義を明らかにしておく。
物理量の測定とは、異なる物理量の値を2つとり、そのどちらか片方を基準とした時に、もう片方が基準としたほうの何倍になるかを決める行為である。このとき基準とした方の物理量を単位と呼ぶ[5][4][6]。
一般に、物理学で扱う量(物理量)のは、同一種類の別の物理量(単位となる物理量)との比較で記述される。 ある物理量の値Lが、単位UのA倍であるときには、
(1-1)
の上下いずれかの表記をとる。 例えば、「学校と家の間の距離」という物理量(L)を単位 で表記す場合には
(1-2)
の上下いずれかの表記をとる。 (1-1), (1-2)において、上の表記は、物理量そのものを表記するときによくつかわれる。下の表記は、数値方程式においてよくつかわれる。数値方程式の定義については後述する。
本記事における
に相当する表記は、ISO,JISに準拠しており、ごく一部の教科書、論文を除き、「物理量の数値 半角スペース 単位」の形で記載されている。
本記事におけるL[km] = 3に相当する表記は、ISO,JISにおいては、
L / km = 3
あるいは
{X}km = 2
しかしながら、どちらの表記も日本の(検定教科書を含む)教科書においてはなされておらず[7]、論文などでも見かけないので[7]、本記事では、比較的なじみが深い、L[km] = 3を採用した。論文や教科書では、L(km) = 3という表記もよくなされる[7]が、記号「()」は数式においては計算順序の指定に用いられ、文中では略称の表記に使われるなど、別の用途が広いため、採用しなかった。
[編集] 単位換算の原理
単位U1と単位U2は同じ物理量を表す単位であるとし、
… 2-1)
の関係式が成り立っているとする(ここでkはただの実数である)。このkのことを単位の換算係数という。 このとき、両辺をA倍すれば
… 2-2)
となる。従って以下の式3-1の条件下では4つの命題は同値である。
- ある物理量の値XがX = AU1 である
- ある物理量の値XがX = kAU2 である
- L[U1] = Aである
- L[U2] = kAである
従って
L[U1] = A = [kA] / k = L[U2] / k … 2-3)
より
L[U1] = L[U2] / k … 2-4)
がわかる。従って以下の命題が同等であることがわかる。
- U1 = kU2 … 2-5)
- L[U1] = L[U2] / k … 2-6)
状況に応じて上記のどちらかを用いて単位の換算を行う。式2-5は主に物理量の数値の換算に用いられ、式2-6は主に数値方程式の換算に用いられる。
[編集] 「物理量の値」の単位の換算
単位Uと単位Vの間の関係が、
(3-1)
であらわされるとき、明らかに
(3-2)
が成立する。
実際の単位換算を行う場合には(3-1)式の両辺の比に着目し、
(3-4)
に示される形式を作っておき、
(3-5)
のように計算するのがミスが少なく複雑な場合にも計算が複雑になりにくい。この方法は、アメリカの大学初年級の物理学の教科書の最初のほうによく載っている。例えば、[8] [3]等を参照のこと。
例えば、
「時速360 km/hで飛行する飛行機の速さは、秒速に換算すると何m/sになるか」
という問題の場合、小学校、中学校(方程式の単元)で習う方法は、大筋での以下の解法1または解法2のどちらかである[7][9]。これらの方法は、計算過程を意識できるため、単位換算の計算過程を理解する上でよい。
解法1:
360km / h = xm / h
xm / h = ym / s と置き、
360km = xm から、

一方、
yh = xs から、
y = 3600x = 100
よって、360 km/h=100 m/s ■
解法2:
1km / h = 1000m / h = 1000m / 3600s = (10 / 36)m / s
よって
■
同じ問題を、(3-5)の方法を用いて計算すると
解法3:
、
より、
■
のようになる。解法1-3は、本質的な部分では同じ計算であるが、解法3のほうが、機械的でミスが少ないので実務家向けには「よい方法」とされている[8]。
[編集] 数値方程式における単位の換算
数値方程式とは
(4-1)
のように、物理量の値同士の定量的な関係(物理量の数値同士の関係)を示した式である。この式は、「加速度の値を単位 m / s2で表現したもの」と「質量の値を kg で表現したもの」から「力の値を N で表記したもの」を導き出す。
一般的な言い方をすると、数値方程式というのは説明変数としての物理量の数値
と、目的変数としての物理量の数値Y[V]の間の関係式である。
は、それぞれ(単位のついていない)ただの実数にすぎないことに注意すると、数値方程式は、数学的な関数(つまり、実数と実数の間の関係式)
(4-2)
の右辺と左辺にそれぞれ
xi = Xi[Ui] (4-3)
y = Y[U] (4-4)
を代入する形で
(4-5)
のように表現された数式であると考えることができる。 実際には、標準的な形(つまり公式集に載っている形)とは異なる形で数値方程式を使いたい場合がある。例えば。
t(トン)で表記された質量と、km/hsで表記された加速度に対し、kNで力の値を求めたい
という場合には、という順序で計算を進めていけば、値が得られる。
1)質量の値の単位換算
2)加速度の値の単位換算
3)運動方程式の計算
4)力の値の単位換算
一方、数値方程式そのものをあらかじめ「tであらわされた質量とkm/hsで表された加速度からkNで表記された力を求める」形に書き換えておくことができる。大量のデータを一括して処理する場合にはそのようにしたほうが楽である。以下、その方法を説明する。
単位Uと単位Vの間の関係について述べた以下の2式は同値である。 1U = kV (4-6)
(4-7)
実際、(3-6)式より
AU = kAV (4-8)
なので、(3-6)のとき、物理量の値Xの値に関して、以下の4命題
- X = AUである
- X = kAVである
- X[U] = Aである
- X[V] = kAである
が同値であることがわかり(「単位換算の原理」の項目を参照のこと)、
(4-9)
がわかる。
従って物理量の値
を与えると物理量の値Y[U]を返す数値方程式(4-5)、つまり
![Y[U]=f({{X}_{1}}[{{U}_{1}}]\ ,\cdots \ ,{{X}_{n}}[{{U}_{n}}])](/ja/math/2/d/9/2d9934dd21fb4f8c0fc68d7c18b60440.png)
に代入すると「変換前の単位系=変換係数×変換後の単位系」を示す式
(4-11)
を用いて変換すると、
(4-13)
となる。実際、 (4-9), (4-10) 式と同様に
(3-14)
であり、式(4-5)の右辺に(4-12)を代入すると、
(4-16)
が得られ、左辺に(3-14)を代入すると式(3-13)が得られる。
再び、以下の問題を考える。
t(トン)で表記された質量と、km/hsで表記された加速度に対し、kNで力の値を求めたい
(4-17)
を、

を用いて書き換えると、
(4-18)
(4-19)
より、
(4-20)
が分かる。
[編集] 単位換算の紛らわしさ
単位の換算は、その原理自体は単純で、小中学校の算数/数学の問題であるが、 単位の換算は本質的に紛らわしい問題である。異なる単位系で定式化された公式に、数値を代入せねばならない事態が重なると極めて優秀な研究者、技術者, 新聞記者の集団が単位の取扱に起因する結果の取り違いや計算ミスを行うケースもある[10]。たとえば1999年の秋にNASAのマーズクライメット・オービターが行方不明になった事件では、制御プログラムにメートルとマイルが混在したことが原因と言われている[3] 。また、ある新聞が、UTCとJSTを取り違え、 大誤報をした件が新しい [11]。このように、単位の換算は、理屈としては 小学校レベルではあるが、一流の研究者、技術者、 新聞記者でもミスを犯す可能性があり、その集団が 取り返しのつかない事態に至るまで気がつかないことがある 大変”怖い”ものである。
単位の換算の本質的な紛らわしさを端的に表現するため以下の3つの例を挙げる。下記のの3例は、実は全く同じことを言っている。以下の項目2と項目3の係数のかかり方が逆であることに単位換算の紛らわしさが端的にあらわれている[12]。
- 1 km=1000 m
- x km=1000x m
- L[km]=L[m]/1000
式2は、「数値xのあとに半角スペースをはさみ単位記号を記す」形であるため、両辺において xは数字である。つまり、左辺は 「数値xに、単位km(キロメートル)をかけたもの」であり、右辺は、「数値1000xに、単位m(メートル)をかけたもの」である。式3は、「記号Lのあとに括弧つきで単位を記す」形であり、したがって左辺のL[km]は、「長さ(の次元をもつ物理量)Lを、単位kmで表現した数値」のことであり、L [m]は、「長さ(の次元をもつ物理量)Lを、単位mで表現した数値」のことである。 式2、式3の関係を別の言い方で表現すれば
- L[km]=xである ⇔ 長さは x kmである ;(xは任意実数)
- L[m]=y である ⇔ 長さは y mである ;(yは任意実数)
- L[km]=x ⇔ L[m]=x/1000 ;
となる。
[編集] 参考文献
- ^ 日本機械工学会(編);「単位・物理定数・数学(機械工学便覧 基礎編 a9)」丸善(2005)
- ^ http://buturi.hiro.kindai.ac.jp/basic/phys/dim.pdf
- ^ い ろ は Wendy Stahler(著),山下 恵美子(訳)「ゲーム開発のための 数学・物理学入門」Softbank Criative(2005)
- ^ い ろ は JIS Z 8202-0:2000[1]
- ^ い ろ ISO 31-0:1992[2]
- ^ http://buturi.hiro.kindai.ac.jp/basic/buturi2003/unit.pdf
- ^ い ろ は に ほ 初等中等教育における量と単位について」常盤大学研究紀要 22,85(2002)[3]
- ^ い ろ Jearl Walker"HALLIDAT/RESNICK Foundamentals of Physics 8th.ed"John Willy
- ^ オンライン数学塾[4][5][6]
- ^ 中尾 政之(著)「失敗百選 41の原因から未来の失敗を予測する」
- ^ http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0811/19/news051.html
- ^ 意図的に紛らわしいルールを作ったわけではなく、慣例が積み重なって紛らわしいルールになったわけでもない。
最終更新 2009年11月7日 (土) 06:15 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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