単段式宇宙往還機

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SSTOの実験機 (DC-X)

単段式宇宙往還機SSTO: single-stage-to-orbit、"一段で軌道まで"の意味)とは、燃料推進剤のみを消費し、エンジンや燃料タンクなどの機材を切り離さずに軌道に到達できる宇宙船。必ずしも再使用できるものを指すわけではないが、通常は単段式の再使用型宇宙往還機の意味で用いられる。また、二段式宇宙往還機TSTO: two-stages-to-orbit、"二段で軌道まで"の意味)についても本項で述べる。

SSTOでは、多段式ロケットのような切り離し機構などが不要となり構造を簡素化でき、また1段目の再使用のみを考慮すればよいことから、再使用型宇宙往還機の形状として望ましいと言われている。しかし、ロケットエンジンによる設計ではツィオルコフスキーの公式により機体の大幅な軽量化が必要であること、さらにスクラムジェットエンジン等の開発が難航していることなどから、地球上でのSSTOは2009年現在実現していない。軌道への打ち上げには、多段式の使い捨て型ロケットや多段式で一部再利用のスペースシャトルが用いられている。デルタクリッパーX-33、ロトン等の数隻のSSTOが研究・設計されたが、いずれも軌道には到達していない。

なお、でのSSTOはアポロ計画で実現されている。月の低重力ならば、SSTOは難しいことではない。

目次

[編集] 概要

通常の乗り物は、出発から目的地への到着まで、燃料が減少することを除いては、機体(車体、船体)を大幅に変更したり切り捨てたりすることはない。しかし従来、地球上から地球周回軌道へ向かうロケットは多段式であり、軌道へ到達するのは機体の一部であるうえ、最終的に出発地へ戻る部分は回収の必要がある搭載物のみ(有人宇宙船など)で、機体は使い捨てであった。このことはロケットの飛行を複雑で高価なものとしており、出発から目的地到着、出発地への帰還まで主要部品を切り離さず、点検整備と推進剤充填だけで再度飛行できる機体であれば、航空機のように簡便で経済的な輸送手段になるとの考えが生まれた。

従来の宇宙ロケットが多段式であるのは、質量と比推力をツィオルコフスキーの公式に代入することで導かれる、単純な結論である。この結論を覆して単段で宇宙に到達するには、やはり単純な解決策が必要になる。すなわち、従来より軽い(離陸重量に占める推進剤の比率が大きい)機体と、従来より比推力が高い(同じ推力を得るのに必要な推進剤消費率が小さい)エンジンの組み合わせである。しかも従来の多段式ロケットは機体を使い捨てにすることで構造を簡素化しているのに対し、機体を出発地に帰還させ再使用するためには大気圏再突入と減速、着陸の機能が必要であり、これを加えてなお使い捨て機体より軽量な機体に仕上げる必要がある。

また、1機のSSTOの製造費用が、同等の能力を持つ1機の使い捨てロケットよりはるかに高額になることは当然であるから、SSTOは繰り返しの飛行により減価償却しなければ運行費用は安くならない。このため、SSTOは機体を喪失するような重大事故を起こす可能性が極めて低い(飛行中の故障があっても、安全に帰還できればよい)こと、簡便で経済的な整備により短期間で次の飛行が可能であること、主要部分の寿命が充分に長く償却までの飛行回数を確保できることが必要である。

以上のことを整理すると、SSTOの実現には、大きく次のような技術が必要と言える。

  • 比推力が高いエンジン
  • 充分に軽量であること
  • 大気圏再突入能力
  • 着陸能力
  • 簡便で経済的な整備により、繰り返し飛行可能であること
  • 故障を早期に検知し、拡大を防止して、残った正常な機能で飛行を継続できること
  • 主要部分の寿命が充分に長く、減価償却により建造費用を回収できること

[編集] 必要な技術

[編集] エンジン比推力の向上

[編集] ロケットエンジンの改良

ロケットエンジンの比推力の上限は、推進剤の種類により決定され、最も高性能な推進剤は液体水素液体酸素の組み合わせである。この場合の理論上の比推力は約460秒であるが、実際にはより低い値となる。その理由はいくつかあるが、SSTOでは特にノズルと大気圧の関係が問題になる。

ロケットエンジンの噴射ガスは、ノズル内で膨張・加速し、出口に向かって圧力が低下する。真空中ではできるだけ膨張・加速するよう長いノズルが望ましいが、大気中では圧力が大気圧を下回ると逆流が起きるため、ノズルを長くできない。このため、離陸時に使用するロケットエンジンはノズルを短くせざるを得ず、大気圏外では高性能を発揮できない。

そこで、ノズルの長さを変更できるエンジンが考えられる。ノズルを分割して先端部分を格納しておき、大気圏外では展開して長くするのである。この方法は、エンジンノズルを小さく格納する目的では実用化されている。

また、ノズルをベル型ではなく円錐状とし、そこに外側から噴射ガスを吹き付けるようにした型式のものをスパイクノズルと呼ぶ。スパイクノズルでは、噴射ガスは円錐状のノズル(スパイク)に沿って流れながら膨張するが、大気圏内では大気により小さく広がり、真空中では大きく広がるため、膨張が自然に最適化される。

スパイクノズルを円錐状ではなく壁状とし、複数のエンジンを連続的に取り付けられるようにしたものをリニアスパイクエンジンと呼ぶ。リニアスパイクエンジンはアメリカで試作されたが、これを使用する予定だった機体 (X-33) の開発が中止されたため実用化に至っていない。

[編集] 空気吸い込みエンジンによる性能向上

スペースプレーン X-30(想像図)

液体水素と液体酸素の組み合わせでは、液体酸素の重量が全体の2/3以上を占めるため、空気中の酸素を利用すれば推進剤を節約できる。

そこで、ジェットエンジンを使用する方法が考えられる。一般的なターボジェットエンジンの最大速度はマッハ3程度(秒速1km程度)であり、まったく足りない。そこで超音速に達してからは、衝撃波を利用して空気を圧縮し、燃料を混合して噴射するラムジェットエンジンを使用する。とくに、エンジン内の流速を超音速としたラムジェットエンジンをスクラムジェットエンジンと呼ぶ。これを使用して、大気圏内でできるだけ加速し、大気圏外に出てからはロケットエンジンを使用するのである。このような機体は通常の滑走路から水平に離陸できるため、特に宇宙航空機(スペースプレーン)と呼ばれる。

スペースプレーンは理想的な宇宙往復手段と考えられたため、1980年代以降盛んに研究が行われている。しかし、肝心のスクラムジェットエンジンの開発は難航しており、2007年現在でも実用化の目処は立っていない。また、3種類のエンジンを使い分けるため、整備を複雑にし、重量を増加させる。仮にスクラムジェットエンジンの開発に成功しても、スペースプレーンは大気圏外に出てからロケットエンジンで加速する方が効率的であり、またロケットエンジンは離陸時にも使用可能であるからジェットエンジンは必要なく、結局ただのロケットの方が合理的であるとの意見もある。

もうひとつの方法としては、空気液化サイクルエンジン (Liquefied Air Cycle Engine, LACE) がある。これは、超音速飛行で圧縮された空気を液体水素で冷却して液体空気にし、これを酸化剤としてロケットエンジンに供給するものである。燃料タンクには凍結した水素と液体水素の混合物(スラッシュ水素)を入れておき、空気液化で加熱された水素を戻して融解させ、液体になった水素をエンジンや空気液化装置に供給する。低速時と大気圏外では、ロケットエンジンは液体酸素を使用する。この方法では、エンジン本体はロケットエンジンのみとなり、スクラムジェットエンジンを使用するよりは簡素化される。しかし、空気を瞬時に液化したり、スラッシュ水素で燃料を供給する方法は基礎研究段階であり、実用化の目処は立っていない。

[編集] その他のエンジン

原子力を利用したり、機体外部からのエネルギーレーザーなど)を利用することで、化学反応では為し得ない比推力を実現すれば、SSTOの実現は容易になる。これらのエンジンはアイデアの域を出ておらず、本格的な研究は行われていないが、SFにおいてはこのようなエンジンを搭載したスペースプレーンがしばしば登場する。逆に、このようなエンジンが実現しなければ、SSTOの実用化は不可能であると考える者もいる。

[編集] 重量の軽減

従来の使い捨てロケットのような金属材料だけでは、SSTOに要求される軽量化を達成することは困難と考えられている。大気圏再突入や着陸のため複雑な形状を強いられることにより、重量軽減はさらに困難になる。

近年の航空機に用いられている複合材料の採用はSSTOにも欠かせないが、航空機とは適用範囲が大きく異なる。まず、航空機では機体外板にも多く適用されるが、SSTOは大気圏再突入の熱に晒されるため、このような部分に樹脂系複合材料を用いることはできない。従って、複合材料で軽量化を図るには、主要構造への適用が必須となる。

SSTOの機体は推進剤タンクが大半を占めるが、軽量化のためにはタンク自体が主要構造を兼ねることになる。しかし、タンクに複合材料を使用した場合、液体推進剤は極低温であるため、樹脂の弾性を損なう。また液体水素は分子量が小さいため、樹脂製タンクを透過して漏れてしまう。このため、樹脂と金属を張り合わせる方法が研究されている。

なお、エンジンや断熱材、その他の装備品の軽量化も、当然に必要である。

[編集] 大気圏再突入能力

リフティングボディ形状のX-33(想像図)

SSTOは機体全体が大気圏に再突入するため、全体が空力的に再突入に適した形状をし、また空力加熱に耐えられる必要がある。

再突入時には、揚力を発生して飛行経路を制御するため、超音速飛行に適した主翼を有する飛行機型、主翼を持たず機体全体で揚力を発生させるリフティングボディ釣鐘型の機体の底面を先に向けて突入する鈍頭型、先端を先に向けて突入する尖頭型などがある。いずれの場合も、使い捨てロケットでは一般的な円筒形ではないため、機体構造(とくに燃料タンク)が複雑になり、重量増加の要因となる。

空力加熱に耐える方法としては、使い捨てカプセルではアブレータを使う方法が一般的であるが、この方法は材料が溶融・気化する際の吸熱を利用するため、アブレータは使い捨てとなり、機体を再使用する場合は全面的な張り替えを必要とする。整備に必要な時間を考慮すれば、再使用可能な断熱材を使うことが望ましい。

現在スペースシャトルで実用化されているのは、発泡シリカ製のタイル炭素繊維強化炭素複合材料 (RCC) のパネルを張る方法である。このタイルは破損に弱く、飛行ごとに膨大な点検と張り替え作業を要するため、飛行費用の増大を招いた。RCCパネルはタイルより強く、高い温度に耐えることができるが、コロンビア号事故では飛行中に破損して致命傷となった。

X-33では、耐熱合金であるインコネルの薄板を、機体構造から離して張る方法が検討された。この方法ではタイルより丈夫で、整備も容易になると考えられている。

また、傾斜材料の使用も考えられている。耐熱性や断熱性に優れるセラミックは、その断熱性ゆえ、表面を加熱すると表面だけの温度が上昇し、膨張率の違いで割れてしまう。しかし、薄くすると強度が低下して使い物にならない。そこで、表面はセラミックスだが裏面は金属で、かつ2つの材料を張り合わせるのではなく、内部で徐々に混ざり合い変化するような材料が傾斜材料である。

これらの材料を導入したとしても、衛星軌道上では微少なデブリの衝突を完全に防ぐことは不可能であり、デブリによる破損が生じる危険への対処が必要となる。使い捨てロケットでは、軌道上で廃棄する部分を大気圏突入寸前まで装着したままとし、断熱材を保護する方法が採られていることから、この点でSSTOは使い捨てロケットに劣るとする意見もある。

[編集] 着陸能力

使い捨てロケットでは、有人であっても人が乗る最小限の部分だけしか帰還しないのに対し、SSTOは全体が安全に着陸する必要があり、大掛かりな着陸手段が必要になる。

[編集] 滑走路に着陸する方法

機体全体を飛行機型にすることで、滑走路に着陸することができる。また機体構成によっては離陸も水平に行うことで、通常の航空機と同様に空港から運行することが可能となり、前述のとおりスペースプレーンと呼ばれる。

しかし、機体形状の制約が大きく、翼など宇宙機としては不要な装備が増えるなど、重量の面では不利である。

[編集] 垂直に着陸する方法

機体の先頭を上に向けた姿勢でロケットエンジンを噴射し、後進するような格好で軟着陸する方法である。離陸時と同じ姿勢で着陸できるため機体構造が簡素化でき、重量の面で有利である。

しかし、大型機をロケットエンジンで(あるいは他のエンジンであっても)垂直に着陸させた実績はなく、エンジンや制御装置の信頼性に負う点が大きい。

なお、月など、空気のない天体に着陸する唯一の方法であるため、アポロ着陸船や各種無人探査機は全てこの方法を用いている。

[編集] パラフォイル等を使用する方法

パラフォイルにより減速・滑空し、地上または水上に降りる方法である。機体全体を飛行機型にするより、重量的に有利である。地上に着陸する場合はエアバッグにより衝撃を緩和するか、車輪を取り付けて滑走路に降りる。

機体が大型化するとパラフォイルも大型化するが、どの程度のパラフォイルが実現可能かにより機体の大きさが制約される。他の方法と比べて着陸・着水時の衝撃が大きいため、機体強度の点からも大型化は困難である。

[編集] 開発状況

かつて、アメリカ航空宇宙局 (NASA) にはX-30X-33の2つのSSTO開発計画が存在した。このうちX-30はスペースシャトルの後継のみならず大陸間輸送機も視野に入れたスペースプレーンであったが、要素技術の開発だけで断念した。X-33はロケットエンジンによる垂直離陸、水平着陸式の実験機であったが、開発中に判明した諸問題を解決する目処が立たず、機体製造途中にキャンセルされた。アメリカ以外ではSSTOの概念設計や要素技術研究は行われているものの、実験機の開発は行われていない。このため2009年現在、機体全体の開発は行われていない。

スペースプレーンの要素技術はアメリカ、日本、ヨーロッパで研究されており、将来の実用開発に向けて努力が続いているが、実用機の開発に着手する目処は立っていない。開発費や需要を考えると国際共同開発が想定されるが、それに向けた具体的な動きもなく、研究機関同士の情報交換や共同実験に留まっている。

一方、ロケットエンジンによる方式は比較的開発が容易と考えられている。アメリカでは民間資金によりSSTOを開発する構想も発表されている。

[編集] 日本におけるSSTO開発状況

日本では2009年現在、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が宇宙開発を一元的に担っているが、その統合母体となった3機関では、それぞれSSTOの開発構想を持っていた。

まず航空宇宙技術研究所 (NAL) は、スペースプレーンの開発を掲げ、スクラムジェットエンジンの研究に取り組んできた。この研究はそのままJAXAにも引き継がれている。2009年現在は、前述した複数のエンジンを搭載しなければならない問題に対処するため、スクラムジェットエンジンとロケットエンジンの機能を単一のエンジンで持つ、複合サイクルエンジンを研究している。

宇宙開発事業団 (NASDA) は、ロケットエンジンで垂直離陸し、水平着陸するロケットプレーンと称する構想を発表したことがある。この機体は開発構想というよりロケット式SSTOの開発に必要な技術を整理するためのスタディーと呼ぶべきものであった。この結果、ロケット式SSTOであっても、当時の技術では機体構造の重量超過とエンジン性能の不足により衛星軌道に到達できないことが判明した。

一方宇宙科学研究所 (ISAS) では、まずHIMESと呼ばれる水平着陸型SSTOの研究が行われた。これは、離陸に際してリニアモーターを使用したカタパルトや、気球による空中打ち上げを利用することで本体の性能を補おうとしたものであったが、実現しなかった。

その後、HIMESのエンジン技術を引き継いで、ATREXの研究が続けられている。ATREXの実用化についてISASならびにJAXAは、後述するようにTSTOの構想を示している。

垂直離着陸SSTOの要素技術としてはRVTを開発している。RVTは垂直離着陸SSTOの要素技術である、ロケットエンジンによる垂直離着陸と、そのような機体を繰り返し飛行させ、故障があっても飛行を中止して安全に帰還できる技術の開発を目的としている。本計画は統合後も継続されており、当面の目標として、微少重力実験や高層大気の観測を目的とした小型ロケットを代替する、低コストの準軌道機実用化を掲げている。

[編集] 二段式宇宙往還機 (TSTO)

TSTO (two-stages-to-orbit) は、完全再使用機を二段構成にすることで、SSTOの技術的難度を緩和することを狙ったコンセプトである。多段式ロケットでは各段の獲得速度の和が最終速度となる。使い捨て宇宙ロケットは全て多段式なのだから、再使用や着陸のためにより多くの装備を必要とする宇宙往還機を単段で実現することはそもそも過大な要求だったとも言え、まず二段式の宇宙往還機を開発しようと考えられたのは自然な流れと言えよう。

[編集] SSTOとTSTOの比較

[編集] TSTOの利点

  • 各段の速度増分を小さくできるため、重量や比推力の要求が緩和される。
  • 下段は軌道速度からの大気圏突入を行わないため、関連装備を省略できる。
  • 大気圏内用エンジンは下段に、大気圏外用エンジンは上段に搭載することで、大気圏内用エンジンを宇宙へ運ぶ無駄をなくすことができる。

[編集] TSTOの欠点

  • 機体が2機構成となり、整備の手間が倍増する。
  • 着陸後、再発進するために、2機を結合する作業が必要になる。
  • 下段は衛星軌道に乗らないため、離陸地点から遠く離れた場所に着陸するような飛行計画となった場合には、離陸地点まで戻る面倒が生じる。

[編集] TSTOの種類

いずれも、上段には液体水素と液体酸素を推進剤とするロケットエンジンを装備する。これは、主に真空中で使用するエンジンとしては、現時点で唯一無二の高比推力エンジンだからである。従って、下段の違いが種類を分ける。

[編集] 下段にロケットエンジンを使用するもの

下段に固体ロケットを使用するスペースシャトル

下段には大推力のロケットを使用し、分離後はパラシュートやロケットにより着陸・着水する。

アメリカのスペースシャトルは、この形態に近い。下段には大推力の固体ロケットを使用し、パラシュートで着水して再使用される。しかし、上段(オービタ)は使い捨ての推進剤タンクを外部装備しているため、不完全な再使用往還機と言える。

下段に液体燃料ロケットを使用してより大きな速度を得ると、上段の必要加速量が減少し、技術的難度が下がる。また、液体燃料は再充填が容易であり、再発進に必要な時間が短縮できる。このため、スペースシャトルの後継機として、NASAでこのような機体が検討されたことがある。上下段とも水平着陸するもの、上下段とも垂直着陸するものなどが検討された。また、太陽発電衛星の建設を想定した大重量打ち上げ機も検討されたが、実現には至らなかった。

2009年現在では、アメリカの民間企業を中心に、ロケットエンジンによるTSTOが検討されているなど、現時点でもっとも実現に近い構成と言える。

[編集] 下段に既存ジェット機を使用するもの

大型航空機に上段を搭載し、空中で分離する。このような用途に使える大型の既存ジェット機は亜音速のものに限られるため、下段で達成できる高度や速度は小さく、上段にはSSTOに近い性能が要求される。

かつてイギリスで構想されていたHOTOLと呼ばれるSSTOが、開発を容易にするためAn-225輸送機から空中発射する形態に改められ、TSTO化された(暫定HOTOLと呼ばれた)ことがあったが、後に計画全体が中止された。

この構成の利点は、離陸時には単なる「大きな貨物を搭載したジェット輸送機」に過ぎず、通常の空港から離陸できる点である。このため現在は、上段に使い捨てロケットを使用した、低コストの小型衛星打ち上げ機として実用化されつつある。

[編集] 下段に極超音速飛行機を使用するもの

極超音速飛行機を開発し、下段とするものである。下段が大きな速度を獲得しているため、上段の加速は少なく済む。

この構成は、前述した単段式スペースプレーンの問題点である、複数エンジンを順次使用する不合理さを緩和するため、下段にスクラムジェットエンジン、上段にロケットエンジンを搭載したものと考えることができるため、「二段式スペースプレーン」とも呼ばれる。

かつて、西ドイツ(当時)において、ゼンガーIIと呼ばれる二段式スペースプレーンが構想されたことがある。この機体の下段に必要な技術を開発するため、スクラムジェットエンジンを搭載した極超音速飛行機の開発が行われたが、ドイツ統一による予算減少などの影響で中止された。ただし、もし継続されていたとしても、スクラムジェットエンジンが2009年現在においても実現していないため、20世紀中の試験機開発は不可能だったと考えられる。

[編集] JAXAが構想するTSTO

前述のとおり、JAXAの母体となった各組織では、それぞれSSTOが研究されていた。これらを組み合わせる形で、TSTOの構想が発表された。

まず、HOPE-Xを大型化したような機体にロケットエンジンと推進剤を搭載したものを開発する。この機体はNASDAのロケットプレーンに類似しているが、ロケットプレーン検討時に判明したとおり軌道速度に達しないため、衛星軌道に乗らずそのまま大気圏に再突入して、滑走路に着陸する。この機体は技術実験機というだけでなく、使い捨てロケットを搭載して衛星を打ち上げることや、準軌道宇宙観光などに使用できるとしている。

次に、ジェットエンジンを搭載した極超音速飛行機を開発する。このエンジンはATREXと呼ばれ、ラム圧縮で高温になった空気を、液体水素を利用した熱交換器で冷却し、水素燃料ターボジェットエンジンに供給する。このためスクラムジェットエンジンとは異なり、最大速度はマッハ5程度にとどまる。この機体に、前述のロケットプレーン型機を背負い式に搭載し、空中発射することで二段式スペースプレーンを実現するというものである。

この構想の鍵を握るのはATREXエンジンの実用化であるが、エンジンを搭載した最初の実験機の開発が2015年前後と考えられていることから、TSTOの開発はそれより後になる。

[編集] フライバックブースター

TSTOの上段を使い捨てロケットとし、下段のみを再使用する場合、この下段をフライバックブースターと呼ぶ。フライバックブースターは衛星軌道に乗らないため大気圏再突入の速度が遅く、耐熱などの対策が楽であるため、上段と比べて開発が容易である。上段は既存の使い捨てロケットを流用することで、開発費を低減できる。

フライバックブースターは発射地点付近まで戻ってきたり、水平着陸や垂直着陸が可能な本格的なものも構想されているが、使い捨て下段を若干頑丈にしてパラシュートで回収するだけの簡素な構想もある。前述のスペースシャトルのブースターはこれに該当するが、固体燃料であるため再使用に相当の費用が掛かり、経済的ではなかったとの意見もある。また、将来の再使用化を想定して設計されているが、当面は使い捨てで使われているもの(ゼニットなど)もある。ロシアでは、水平着陸可能なフライバックブースターとしてバイカル(Baikal)が開発されている。バイカルはケロシンを燃料として、頭部にターボジェットエンジンを備え、ある程度の自律飛行が可能となっている。

[編集] 今後

2009年現在、SSTOの具体的な開発計画は存在していない。これは、スペースシャトルの運航経験や過去の研究状況から、現時点の技術では使い捨てロケットより経済的なSSTOの実現は不可能であると判断されているためである。SSTOが本来期待される、使い捨てロケットよりはるかに経済的で簡便な宇宙輸送手段として実現するには、材料などの要素技術が大幅に進歩しなければならないとする考えが一般的である。

空気吸い込み式の極超音速エンジンは、研究が行われているものの実用化の目処は立っておらず、これを搭載するSSTO、TSTOとも構想段階から踏み出していない。

一方、ロケットエンジンを使用するTSTOは比較的難易度が低いことから、2009年現在も検討や開発が行われている。また過渡的段階として、フライバックブースターや空中発射ロケットの開発も行われている。今後数年中に具体化ないしは実用化を目指している計画が複数あり、2010年に予定されるスペースシャトル退役に向けた開発レースが展開されている状況といえる。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年9月30日 (水) 14:27 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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