双極性障害

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双極性感情障害(そうきょくせいかんじょうしょうがい、: bipolar disorder)は、躁状態とうつ状態を繰り返す精神疾患であり、気分障害の一つである。躁鬱病(そううつびょう)あるいは双極性障害(そうきょくせいしょうがい)とも言う。WHO国際疾病分類第10版(ICD-10)ではF31。双極性障害の生涯有病率は0.2~1.0%であるとされ、うつ病の6~15%と比べると、かなり低めであり、珍しい疾患と言える。一旦回復しても、完治することはなく、再発することが多い。よって、生涯にわたる薬物投与による予防が必要となることが普通である。

目次

[編集] 症状と診断

双極性障害は、躁状態を伴う双極I型障害と、軽躁状態を伴う双極II型障害に区分される。

後述の躁状態が1回認められれば、双極I型障害と診断がなされる。1回の躁状態で終わる症例は稀であり[要出典]、一般には、うつ状態と躁状態のいずれかが、症状のない回復期を伴いつつ、繰り返していくことが多い。躁状態から次の躁状態までの間隔は数カ月単位という場合から、数十年という場合もある。また、うつ状態と躁状態が混ざって存在する混合病相が生じる場合もある。

これに対して、うつ状態と軽躁状態のみが認められる場合を、双極II型障害と呼ぶ。ただし、この双極II型障害については、軽躁状態そのものが、患者や家族には認識されていないことも多く、自覚的には反復性のうつ病であると考えている患者も多い。

症例によっては季節に左右されることもある。うつ状態から急に躁状態になること(躁転)はまれでなく、一晩のうちに躁転することもある。また1年のうちに4回以上うつ状態と躁状態を繰り返すものを急速交代型(Rapid Cycler)と呼ぶ。これがひどくなると、躁とうつが混ざった「躁鬱混合状態」に陥ることもある。この状態になると、錯乱したり、激しい破壊衝動に襲われ、非常に危険である。

[編集] 躁状態

躁状態とは、気分の異常な高揚が続く状態である。躁状態の初期には、患者は明るく開放的であることもあるが、症状が悪化するとイライラして怒りっぽくなる場合も多い。本人の自覚的には、エネルギーに満ち快いものである場合が多いが、社会的には、種々のトラブルを引き起こすことが多い。DSM-IV-TRによる躁状態の診断基準は、以下の症状が3ないし4つ以上みられる状態が1週間以上続き、社会活動や人間関係に著しい障害を生じることである。

  1. 自尊心の肥大:自分は何でもできるなどと気が大きくなる
  2. 睡眠欲求の減少:眠らなくてもいつも元気なまま過ごせる
  3. 多弁:一日中喋りまくったり、手当たり次第に色々な人に電話をかけまくる(メールのやりとりをするケースもある)
  4. 観念奔逸:次から次へ新しい考え(思考)が浮かんでくる
  5. 注意散漫:気が散って一つのことに集中できない
  6. 活動の増加:仕事などの活動が増加し、良く動く
  7. 快楽的活動に熱中:クレジットカードやお金を使いまくって買物をする、性的逸脱行動に出るケースもある

[編集] 経過

双極性障害は、うつ状態と躁状態を繰り返す場合が多く、一旦症状が回復しても、再発する可能性が高い。Angstらによる研究では、約20年間の追跡を行ったところ、経過観察の15~20年目の5年間の期間に再発のない症例は、双極性障害ではわずかに17%であったとされ、8割程度の症例において、長期の経過後も症状の繰り返しが続いていた[要出典]。Stanley Foundation Bipolar Network という最近の調査でも、調査開始後の1年間の観察で、双極性障害の約2/3は症状のため生活に大きな障害を受けていたという。 このように、双極性障害は、再発を繰り返し、慢性の経過をたどることが多い。このため、長期にわたる治療が必要となる。

[編集] 治療

躁-うつの変動を抑制するための気分安定薬と呼ばれる一群の薬剤を中心とした薬物療法が主体となる。また、再発をコントロールしたり再発の兆候をモニターするなどの疾患教育や、ストレス管理のためや社会復帰に向けてのカウンセリングも重要である。

[編集] 薬物療法

気分安定薬(あるいは感情調整剤)による再発予防を基本とする。その他、うつ病相では抗うつ薬の併用、躁病相においては強力な抗精神病薬の併用、不眠に対して強力な睡眠導入剤の併用などが行われる。制御不能な破壊衝動を鎮めるため、向精神薬を頓服として処方されることもある。

[編集] 気分安定薬

双極性障害の薬物療法の基本は、気分安定薬(mood stabilizer)による再発予防である。躁病相だけでなく、うつ病相もある程度予防することが知られている。炭酸リチウムカルバマゼピンバルプロ酸クロナゼパムなどがある。ある種類の気分安定薬が無効でも、他の気分安定薬が有効な場合もある。また2剤以上組み合わせることで有効な場合もある。服薬が不規則であると効果がないため、薬を規則的に飲み有効血中濃度に保つことが重要である。

  • リチウム塩(商品名リーマスなど)
    気分安定薬のうち、最も歴史が長く、その有効性について最も科学的研究が行われている薬物である。ただ、治療域と中毒域が近い為、血中濃度を定期的に測定する必要がある。全般的には副作用の少ない薬物であるが、一般的な副作用としては、手の指先の震えがあるほか、時に飲み始めの数週間に、極端な倦怠感が出て服用を止める患者もある。有効血中濃度を超えた場合、複視、ふらつき、意識障害、腎障害などの中毒症状が現れる。
    胎児に心臓奇形をおこす恐れがあることから妊婦への投与は禁忌とされている。心臓病腎臓病を患っている者への投与には注意を要する。筋力が著しく低下する恐れがあるため、アスリートなど、体を使って仕事をする者には注意が必要である。
  • カルバマゼピン(CBZ)(商品名テグレトールなど)
    元々はてんかん三叉神経痛の治療薬であり、双極性障害に用いられ始めたのは比較的最近である。一般的な副作用としては、眠気や倦怠感、めまいなどであるが、ごく稀に、全身性の薬疹・肝機能障害・造血機能障害などが生じることがあり、重篤な状態となる場合もある。リチウムと同様に、有効血中濃度を超えると中毒症状が現れるため、定期的な血中濃度測定が必要である。またグレープフルーツを摂取するとカルバマゼピンの濃度が上昇するため、服用中はグレープフルーツを食べないようにするべきである。なお、この薬の特徴的な副作用として、音が本来のものとずれた音程で感じられてしまう(半音の半分程度低く、あるいは高く感じられる)というものがある、。
  • バルプロ酸ナトリウム(VPA)(商品名デパケン、バレリンなど)
    これも元々はてんかんの治療薬であるが、近年、米国で気分安定薬として急速交代型(Rapid Cycler)に効果があるとみられ、日本でも用いられ始めた。副作用が比較的少ないため、使用しやすい薬物である。

[編集] 抗うつ薬

うつ病相の場合、抗うつ薬を併用することも多い。しかし、抗うつ薬の処方によって躁状態が誘発される場合もある。

抗うつ薬の項に述べられているので、詳しくは触れない。最近ではSSRISNRIなど新しいタイプの薬が出てきて、マスコミ等で副作用の極めて少ない薬であるように報じられているが、それなりの副作用はあり過大な期待は禁物である。また、症例によっては従来の三環系抗うつ薬四環系抗うつ薬の方が優れていることもある。三環系抗うつ薬はSSRIやSNRIに比べ躁転を引き起こしやすい。

抗うつ薬の一般的な副作用は、口の渇き、便秘、排尿困難、眠気、吐き気、嘔吐などである。

抗うつ薬の効果が現れるのは、個人差はあるものの2~3週間程度かかる。それまでの間、軽微な副作用(口の渇きなど)の方が先に現れることもある。この間、患者にとっては辛い状態がつづくことになる。

薬の効き方は個人差があるため、抗うつ薬によりうつ症状が完全に消失しにくい場合もあるが、その場合は薬剤の増量や他の抗うつ薬への変更を行うこともある。

[編集] 抗精神病薬・抗不安薬

詳しくは抗精神病薬抗不安薬を参照。メジャートランキライザー/マイナートランキライザーとも呼ばれる。興奮が強い場合(怒りや攻撃性が見られる場合)や不安・焦燥・緊張の緩和に用いることがある。また、気分安定薬の効果が現れるまでの間(2~3週間程度)躁状態を抑えるため併用することが多い。 睡眠導入薬としても処方される。 最近は非定型抗精神病薬を気分安定薬として使用することがある。

[編集] 服薬継続の必要性

  • 双極性障害の再発予防のためには、継続的に服薬することが重要である。医師の処方を守って服薬することを、服薬遵守あるいは英語でコンプライアンス(compliance)や、アドヒアランスと言う。
  • しかし、服薬の必要性が充分理解できていないこと、副作用を不快に感じること、一度に複数の種類の薬が処方されることで混乱することなどにより、服薬が不規則になったり中断することがある。このような状態が続いた場合、再発する可能性が高まる。
  • コンプライアンスを高めるために、医師や薬剤師から病状やそれに対して現在行われている治療がどのようなものであるのか十分な説明を受け理解すること、家族など周囲の人も服薬に協力することが重要である。他に、例えばビニールの小袋に一回分の薬をあらかじめ小分けにしておくなどの工夫を用いるのも手である。しかし、薬を飲まずに捨てたりすることから周囲の者が薬を飲み終わるまで管理し続けるといった場合、そうした管理、監視が原因で患者と周囲の者に軋轢が生じる(特に躁状態)場合もあり大変難しい問題である。

[編集] 疾患教育

再発予防のために、服薬の継続性を高め、ストレスを管理する際、以下のような内容を教育する[要出典]

  • 躁状態やうつ状態が病的なものであると認識することである。本人は、躁状態を心地良く感じ、病気であると思わないことや、躁状態に戻りたいとさえ考える人もいる。家族や友人などの周囲の人も、躁状態での言動を「本人の性格」などと解釈して嫌悪したり、うつ状態のことを「怠け」などと解釈することがある。しかし、このような姿勢を取っている間は、安定した治療継続は困難であり、家族からの協力も得にくい。そのため、まず病気であるという認識(いわゆる病識)を本人や家族が得る必要がある。
  • 再発を繰り返す可能性のある慢性疾患であり、長期的治療を必要とすること。例えば糖尿病・高血圧などの慢性疾患のように、完全に治癒(服薬が必要ない状態)することはなく、服薬継続が必要と説明する。
  • 再発の兆候を早期に発見する方法を考え、その際は医師と相談するよう教育する。
  • 再発につながりやすいストレスの多い状況の乗り越え方を考える。

[編集] その他の治療法

電気けいれん療法
難治性のうつ状態や、激しい躁状態に対して行うこともある。
断眠療法
うつ病と躁うつ病のうつ病相への効果が実証されている。特に薬物治療への効果が乏しく、うつ状態が長く続いているような場合に施行される。

[編集] 治療上の注意点など

  • 必ず精神科の医師にかかること。内科を含めて他科の医師のほとんどは双極性障害の治療の専門のトレーニングを受けておらず、かえって治療を難しくしてしまうこともある。ただし、多種多量の薬を出すことに抵抗がない精神科の医師もおり、セカンドオピニオンなどを積極的に得ることが好ましい。
  • 医療機関の選択に当たっては、通院しやすさも考慮するとよい。双極性障害の薬は一生飲み続けなければならないことが多く、続かなければ意味がないからである。
  • 職場の診療所に精神科医がいる場合はその医師にかかるのも手である。
  • なお官公庁や大手企業の場合、人事管理上の観点から職場の診療所もしくは指定病院の医師(産業医)の所見や診断書しか組織内で通用しない場合があるので注意を要する。
  • 職場の診療所で精神科医にかかった場合、(本人の不利益にならないであろうと思われる範囲で)本人の同意なしに人事部なり上司にその内容が漏れていると考えるべきである。
  • 上記のような場合、所属組織の指定医師(産業医)と自分の治療医師を別にするのもひとつの手である。
  • 医師と合わないなと思う場合は、担当医にその旨を率直に相談するのが大事である。「合わない」と感じる理由が精神症状によっている場合もあり、また合わないと思うことを解決していくことで信頼関係をより高めていくことができるからである。しかしながら病状は本人によって判断ができないことも多く、ほとんどの場合患者が通院できる精神状態(躁状態での通院はほぼ期待できない)でしか医師も診察できないので、治療には家族や親近者の協力が不可欠である。
  • 向精神薬を服用している場合、飲酒は作用を増強したりもうろう状態や錯乱を引き起こす可能性があるので、厳禁である。
  • うつ状態の場合、病気の症状の一つとして、あらゆることが悲観的に感じられ、過去の行動が後悔となって思い出される。この悲観的な思考によって、さらに気分が落ち込むという悪循環に陥ることが多い。そのため、うつ状態の時は努めて物事を深く考えない方がよい。適切な時間の睡眠をとる、脳と体を休ませることに集中し、新しいことには無理をして取り組もうとしないほうがよい。
  • また、うつ状態の場合、完全に良くなろうと思わず、うつ状態なりに生活できていれば、良くやっていると自分を評価するべきである。
  • 躁状態の患者は、怒りっぽいことが多く、些細なことでケンカをしたり、問題行動について、頭ごなしに注意したりすると時に暴力に及ぶこともあり注意を要する。手当たり次第に警察に被害届を出したり訴訟を起こしたりする例もある。また、多弁の症状と相まってそうした逸脱行為を武勇伝として語るため公私ともに人間関係に支障を来すことが多い。
  • 躁状態の場合、家族を含め周囲の者は受容的態度に徹しつつ、やんわりと注意し、お金やクレジットカード、実印などを取り上げるなどして早めに精神科を受診させ、薬物療法を開始することが必要である。

[編集] 子供の双極性障害

専門誌「臨床精神医学」2006年10月号が双極性障害を特集した際に取り上げられたが、掲載論文では子供の双極性障害とされている症例について懐疑的な結論を下している。[1]


[編集] 脚注

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[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

  • BipolArt - Living proof of why bipolars are so creative. A fantastic collection of drawings, paintings, inkings, photographies, music etc by artists who share this illness
  • 躁うつ病のホームページarz:ذهان الهوس و الاكتئاب

最終更新 2009年11月21日 (土) 04:15 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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