国会同意人事
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国会同意人事(こっかいどういじんじ)とは、日本の国会(衆議院・参議院)の本会議での同意を経て内閣、内閣総理大臣又は各省大臣が任命する人事。両院の同意が必要な点で、法律・予算・条約よりも厳格な手続要件となっている。行政機関等のうち合議制をとる委員会・審議会などの委員長・委員等の任命の要件とされる例が多い。すべての合議制機関が対象というわけではなく、民主的な運営担保(党派学閥等による偏向防止)の観点から特に国会が人事構成に関与すべきと考えられる重要なものをその対象としている。
目次 |
[編集] 概要
日本の法令により設置される行政機関等の役職者(委員長、会長、委員など)のうち一部のものは、任命権者である内閣、内閣総理大臣又は各省大臣が任命しようとする場合、あらかじめ衆参両院で同意を得なければ人事の発令をすることができない。この同意については衆議院の優越がないため、衆議院が同意しても参議院が不同意ならば、人事は不同意となる。
不同意となった場合は、後任者が任命されるまで欠員となるか、又は前任者がいる場合は当該前任者が後任者の任命まで引き続き職務を行うこととなる(欠員か前任者暫定存続かは各委員会等の設置根拠法令の規定により異なる。前任者がすべて存続できるわけではない)。同意が得られないために欠員が多くなり充足数を満たさなくなると、組織が運営できない可能性も出てくる。また、国会の閉会中又は衆議院の解散中のため事前の同意が得られない場合は暫定的に任命することも認められているが、あくまで次国会で同意を得るまでの暫定人事となり、同意が得られなければ地位喪失となる。
[編集] 人事
2008年5月現在、国会同意人事は36機関にのぼる。
| 機関 | 官職等 | 任命権者 | 根拠法 | |
|---|---|---|---|---|
| 会計検査院 | 会計検査院 | 検査官 | 内閣 | 会計検査院法 |
| 会計検査院情報公開・個人情報保護審査会 | 委員(執) | 会計検査院長 | ||
| 人事院 | 人事院 | 人事官 | 内閣 | 国家公務員法 |
| 国家公務員倫理審査会 | 会長及び委員のうち 人事官以外の者(執) |
内閣 | 国家公務員倫理法 | |
| 内閣府本府の 重要政策に関する会議 |
総合科学技術会議 | 委員のうち学識経験者枠の者のみ | 内閣総理大臣 | 内閣府設置法 |
| 内閣府本府の 審議会等 |
食品安全委員会 | 委員(執) | 内閣総理大臣 | 食品安全基本法 |
| 原子力委員会 | 委員長及び委員(執) | 内閣総理大臣 | 原子力委員会及び原子力安全委員会設置法 | |
| 原子力安全委員会 | 委員(執) | 内閣総理大臣 | ||
| 衆議院議員選挙区画定審議会 | 委員 | 内閣総理大臣 | 衆議院議員選挙区画定審議会設置法 | |
| 国会等移転審議会 | 委員 | 内閣総理大臣 | 国会等の移転に関する法律 | |
| 情報公開・個人情報保護審査会 | 委員(執) | 内閣総理大臣 | 情報公開・個人情報保護審査会設置法 | |
| 地方分権改革推進委員会 | 委員 | 内閣総理大臣 | 地方分権改革推進法 | |
| 再就職等監視委員会 | 委員長及び委員(執) | 内閣総理大臣 | 国家公務員法 | |
| 内閣府の外局 | 公正取引委員会 | 委員長及び委員 | 内閣総理大臣 | 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 |
| 国家公安委員会 | 委員のみ | 内閣総理大臣 | 警察法 | |
| 金融庁の審議会等 | 証券取引等監視委員会 | 委員長及び委員(執) | 内閣総理大臣 | 金融庁設置法 |
| 公認会計士・監査審査会 | 会長及び委員(執) | 内閣総理大臣 | 公認会計士法 | |
| 国家行政組織法第3条 第2項に基づく外局たる 委員会 |
公害等調整委員会 | 委員長及び委員 | 内閣総理大臣 | 公害等調整委員会設置法 |
| 公安審査委員会 | 委員長及び委員 | 内閣総理大臣 | 公安審査委員会設置法 | |
| 中央労働委員会 | 公益委員のみ(執) | 内閣総理大臣 | 労働組合法 | |
| 運輸安全委員会 | 委員長及び委員(執) | 国土交通大臣 | 運輸安全委員会設置法 | |
| 国家行政組織法第8条 に基づく審議会等 |
地方財政審議会 | 委員 | 総務大臣 | 総務省設置法 |
| 国地方係争処理委員会 | 委員(執) | 総務大臣 | 地方自治法 | |
| 電気通信事業紛争処理委員会 | 委員(執) | 総務大臣 | 電気通信事業法 | |
| 電波監理審議会 | 委員 | 総務大臣 | 電波法 | |
| 中央更生保護審査会 | 委員長及び委員 | 法務大臣 | 更生保護法 | |
| 宇宙開発委員会 | 委員長及び委員 | 文部科学大臣 | 文部科学省設置法 | |
| 社会保険審査会 | 委員長及び委員 | 厚生労働大臣 | 社会保険審査官及び社会保険審査会法 | |
| 労働保険審査会 | 委員(執) | 厚生労働大臣 | 労働保険審査官及び労働保険審査会法 | |
| 中央社会保険医療協議会 | 公益を代表する委員のみ | 厚生労働大臣 | 社会保険医療協議会法 | |
| 運輸審議会 | 委員 | 国土交通大臣 | 国土交通省設置法 | |
| 土地鑑定委員会 | 委員 | 国土交通大臣 | 地価公示法 | |
| 公害健康被害補償不服審査会 | 委員(執) | 環境大臣 | 公害健康被害の補償等に関する法律 | |
| 特殊法人等 | 日本銀行 | 総裁、副総裁及び 政策委員会審議委員 |
内閣 | 日本銀行法 |
| 日本放送協会経営委員会 | 委員(執) | 内閣総理大臣 | 放送法 | |
| 預金保険機構 | 理事長、理事及び監事 | 内閣総理大臣 | 預金保険法 | |
凡例
- 「委員長及び委員」「会長及び委員」とあるのは、委員長・会長が当初から委員とは別枠で任命される(委員からの互選ではない)が、いずれも両院の同意を要することを示す。
- 「委員」とあるのは、委員長たる委員又は会長たる委員(いずれも委員の中から互選)を含む。
- 「委員のみ」とあるのは、委員長が委員と別枠で両院の同意を要さず任命され、委員のみが同意対象となることを示す。
- (執)を付したものは、委員等の任期満了後にその後任者が定まらない場合に、そのまま当該満了委員等が(後任者が決まるまで)暫定的に職務執行する旨の経過措置が法令で規定されていることを示す。ただし、この暫定的続行は義務ではない(当該満了者が「暫定続行せず任期どおり退任したい」と申し出た場合は結局経過措置規定が機能せず欠員となる可能性もある)。
- (執)を付してないものは、後任者の人事の同意が得られないときは、得られるようになるまでその分の人員は欠員となる。
[編集] 不同意となった人事例
| 国会回次 | 本会議採決日 | 議院 | 対象人事 | 可 | 否 | 票差 | 他院の結果 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第10回・常会 | 1951年(昭和26年)5月31日 | 参議院 | 電波監理委員会委員(1人) | 少数 | 多数 | 不明 | 5月29日内閣から受領 本会議上程されず廃案 |
| 第168回・臨時会 | 2007年(平成19年)11月14日 | 参議院 | 労働保険審査会委員(1人) | 105 | 124 | 19 | 11月13日同意 (起立多数) |
| 運輸審議会委員(1人) | |||||||
| 公害健康被害補償不服審査会委員(1人) | |||||||
| 第169回・常会 | 2008年(平成20年)3月12日 | 参議院 | 日本銀行総裁 | 106 | 129 | 23 | 3月13日同意 (起立多数) |
| 日本銀行副総裁(1人) | 105 | 132 | 27 | ||||
| 2008年(平成20年)3月19日 | 参議院 | 日本銀行総裁 | 112 | 125 | 13 | 3月19日同意 (起立多数) |
|
| 2008年(平成20年)4月9日 | 参議院 | 日本銀行副総裁(1人) | 115 | 121 | 6 | 4月9日同意 (起立多数) |
|
| 2008年(平成20年)6月6日 | 参議院 | 再就職等監視委員会委員長 再就職等監視委員会委員(4人) |
99 | 132 | 33 | 6月6日同意 (起立多数) |
|
| 第170回・臨時会 | 2008年(平成20年)11月21日 | 参議院 | 再就職等監視委員会委員長(※A) 再就職等監視委員会委員(4人、※B) |
106 | 126 | 20 | 11月21日同意 (起立多数)(註) |
| 日本放送協会経営委員会委員(2人、※C) | |||||||
| 日本放送協会経営委員会委員(1人、※D) | 105 | 131 | 26 | ||||
| 第172回・常会 | 2009年(平成21年)2月23日 | 参議院 | 人事官(1人) | 99 | 128 | 29 | 2月20日同意 (起立多数) |
| 再就職等監視委員会委員長 再就職等監視委員会委員(3人) |
100 | 128 | 28 | ||||
| 中央社会保険医療協議会委員(1人) | |||||||
| 2009年(平成21年)6月5日 | 参議院 | 食品安全委員会委員(1人) | 100 | 125 | 25 | 6月4日同意 (起立採決) |
- 定員・定数が複数であるものについては、同意されなかった人数を付記する。
- (註)2008年11月21日の衆議院の起立採決は、参議院のボタン採決とは異なる分け方で行われた。(参議院が※A・※B・※C一括、※D単独の2回だったのに対し、衆議院は※A・※B・※D一括、※C単独の2回)
[編集] その他
[編集] 候補者の所信聴取
2008年3月以降、国会同意人事の中で特に重要な人事案件は、本会議での採決に先立って衆参の議院運営委員会において候補者が公開で所信表明を行うこととなった(その後の質疑応答は非公開)。検査官、人事官、公正取引委員会委員長、日本銀行総裁・副総裁が対象とされている。
[編集] 衆議院優越規定
国会同意人事は各法律で規定されているため、両議院の同意を原則としつつも、参議院が同意しない場合に「衆議院の同意を両議院の同意とする」旨の優越規定を設けることが可能であり、かつては次の官職等の任命について衆議院優越規定が存在した。
- 検査官 - 1947年5月3日(新)会計検査院法に基づき創設、1999年5月10日に同法の衆院優越規定削除
- 人事官 - 1948年12月3日国家公務員法に基づき創設、1948年12月21日に同法の衆院優越規定削除
- (旧)国家公安委員会委員 - 1948年3月7日(旧)警察法に基づき創設、1954年7月1日組織廃止(後継の(新)国家公安委員会委員は当初から両議院同意規定のみで衆院優越規定なし)
- 地方税審議会委員(※) - 1948年7月7日地方税法に基づき創設、1950年4月1日組織廃止
- 日本国有鉄道監理委員会委員(※) - 1949年4月1日日本国有鉄道法に基づき創設、1953年8月1日監理委員会廃止(後継は次行の経営委員会)
- 日本国有鉄道経営委員会委員(※) - 1953年8月1日日本国有鉄道法に基づき創設、1956年6月25日経営委員会廃止
- ※の委員には委員長(委員の中から互選)を含む(後述の「衆院のみ同意例」においても同じ)。
- 創設の年月日については当該官職等の制度・組織の発足日を記載。初代の委員等への両議院の同意手続については当該発足前に事前適用されたものがあり、この場合、同意に関する衆院優越規定の部分は当該創設前に既に効力を生じている。
- 人事官は当初(国の)人事委員会を構成する人事委員長及び人事委員の官職名で国家公務員法に「衆院優越のある両議院同意対象」として規定され、その条項自体は1948年7月1日に施行されたが、実際には同年12月3日に人事院及び人事官へ改称して発足するまで組織(人事委員会)としても官職(人事委員長及び人事委員)としても存在した実績がないため、上記には掲載しない。なお、その準備機関(前身機関)である臨時人事委員会の臨時人事委員長及び臨時人事委員については、両議院同意規定(当時の国家公務員法附則第5条第1項)は準用されたものの、衆院優越部分(同法附則第5条第2項)は準用対象からあらかじめはずされており、衆院優越事例には該当しない。
また、参議院の同意を要さず衆議院の同意のみを任命の要件とした例として次のものがある。この場合、参院に対しては政府からの同意要求書の提出自体が行われなかった。
- 公正取引委員会委員(旧制度)(※) - 1947年7月1日創設(衆院同意のみ要)、同月31日委員長及び委員に関する条項改正(次行に移行)
- 公正取引委員会委員長及び委員(新制度) - 1947年7月31日新制度発足(衆院同意のみ要)、1952年8月1日「衆議院の同意」から「両議院の同意」に条文改正(優越規定なし)
- 統計委員会委員長(委員から互選) - 1949年6月1日(旧)統計法に基づき創設(衆院同意のみ要)、1952年8月1日組織廃止(後継は行政管理庁の統計審議会)
[編集] 衆議院再議決による両院同意人事規定改定
国会同意人事は憲法で定められているものではなく、各法律で規定されているため、参議院の同意が得られない場合でも衆議院の同意をもって国会(又は両議院)の同意を得られたものと規定して、両院同意人事規定について衆議院の再議決によって衆議院の優越(参議院議決の弱力化・無力化)を認めるように法律改正をすることが不可能ではない。
参議院の制度や権能に関する事項の法改正について衆議院の再議決を制限する明白な憲法規定は存在しないが、参議院の制度や権能に関わる事項に関して参議院の示した意思に反して衆議院の再議決によって法律を改正することは、参議院の自律権を侵害するため(衆参相互独立の原則、議院規則と法律の関係など)、慎重に取り扱うべきとする意見がある。
[編集] 国会指名人事
政府側が人選する国会同意人事とは別に、国会が自ら(国会議員以外の者から)人選して国会の議決により指名する人事案件が規定されている。
例として、以下の人事がある。
| 機関 | 官職等 | 任命権者 | 根拠法 |
|---|---|---|---|
| 中央選挙管理会 | 委員及び予備委員 | 内閣総理大臣 | 公職選挙法 |
| 政治資金適正化委員会 | 委員 | 総務大臣 | 政治資金規正法 |
- 2機関とも委員には互選による委員長を含む。
- 2機関とも、前掲の国会同意人事一覧にあるような「後任者が任命されるまでは任期満了した前任者が引き続き在任する」旨の規定があるが、同意人事の例と異なり、その満了した時点が国会閉会中又は衆議院解散状態である場合(つまり国会の指名を受けたくとも物理的に受けられない場合)にのみ適用されるため、当該任期満了を国会会期中に迎えた場合は後任者未定であっても在任せず退任となる、という違いがある。
[編集] 関連項目
最終更新 2009年9月13日 (日) 22:20 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
【国会同意人事】変更履歴

