元首

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元首(げんしゅ)または国家元首は、国家の首長(Head of State)を指す。

君主制の国家では皇帝国王などの君主共和制の国家では大統領が元首とされることが通例である。社会主義国では大統領の他、中華人民共和国国家主席キューバ国家評議会議長、かつてのソ連最高会議幹部会議長東ドイツの国家評議会議長なども元首に該当する。

日本の天皇は「象徴」であり元首にあたるかは定義によるとされ、公式見解ではほぼ元首として差支えが無いとされるが、憲法学上では有力な反論があり争いがある。

Head of state(元首)の概念は国家有機体説に発し、独立の生命体として国家をとらえた場合の頭に相当する部分であることに由来する。一方、対称である社会契約説の国家観の下では象徴的な意味しか持たない[要出典]大日本帝国憲法は、国家有機体説の国家観に立脚していた。現在の日本国憲法社会契約説の国家観に基づく。

目次

[編集] 世界各国の元首

元首に関する規程を持たない国も少なくなく、そうした国での元首は慣習上のものである。各国の憲法により、元首が政治の実権を持つ場合も持たない場合もある。実権の有無、統治形態の違いにかかわらず、元首は国家の長としての特別な権威を持つべきだと考えられている。しかし同時に自由主義、および国民主権の立場からそうした権威は不要であるとする考えもある。

一般的に元首は一人とされるが、例外もいくつかある。

以下の項目において元首の大まかな分類を行う。なお、これらはあくまで大まかな区分である。各国の憲法には差異があり、元首の機能も多種多様である。

[編集] 絶対君主制国家・専制君主制国家の元首

皇帝、国王のような君主が、強大な政治的権限を有している。君主は世襲であることがほとんどである。憲法を制定していない場合(絶対君主制国家)や、憲法を制定していても実際的には君主の大権が憲法を超越している場合(専制君主制国家)などがある。このような国家では、君主が富裕で国家から歳費を支給されていないことが多い。そのため、政府や議会が歳費の支給を停止して、君主の権限である大権を制限させることができない。さらに、宣伝や教育によって君主による統治の正当化が行われている。

リヒテンシュタイン(侯)[1]は形式的には立憲君主制の君主であるが、実際的には強大な権限を握っており、絶対君主制または専制君主制の典型であるといわれる。

サウジアラビアアラブ首長国連邦を構成する7つの首長国アブダビドバイシャールジャアジュマーンウンム・アル=カイワインフジャイララアス・アル=ハイマ)、オマーンなどのスルターンは、絶対君主制の君主の典型である。君主の下に行政の実務を担当する首相が置かれる場合もあるが、君主が首相を兼任していたり、君主の一族(皇太子など)が首相となっている場合も多く、こうした事例では事実上、首相の権限は君主大権の中に包括されている。

アラブ首長国連邦の国家元首は大統領である。これは国家の最高意志決定機関である連邦最高評議会(FSC)で互選されるため、形の上では君主ではない。しかし、連邦最高評議会は絶対君主制を採る7首長国の首長から構成されるとともに、実際には大統領はアブダビ首長、副大統領兼首相はドバイ首長が世襲により継ぐのが慣例化している。さらに、アブダビは連邦の最大国家であるとともに連邦の中心国家である(連邦予算の8割を拠出、連邦最高評議会もアブダビとドバイの同意なしに決定をくだすことはできない仕組みになっている)ため、アブダビ首長が兼ねる連邦の大統領は事実上、絶対君主制国家の君主に比肩する強大な権限を行使している。

[編集] 立憲君主制国家の元首

[編集] 君主の政治的権限が強い立憲君主制国家の元首

議院内閣制を採用する立憲君主国であり、行政を担当する首相が存在するけれども、元首である君主が国政の実権を握っている。

ヨルダン・ハシミテ王国の国王などが、これに分類される。

[編集] 君主が儀礼上の存在となっている立憲君主制国家の元首

議院内閣制を採用する立憲君主国の君主(国王など)がこれにあたる。行政は議会に指名される首相に委ねられ、元首である君主は国政の実権を有さない。憲法上、元首に期待される役割は、内閣の助言と承認に基づく首相を始めとする官吏の任免や、外国元首・外交官の接受といった儀礼的なものである。これらの国の中には、イギリスの国王のように法律上は強力な権限を与えられているケースもあるが、そうした権限は長年の不行使により形骸化しており、実際には行使されないのが通例である。ただし、政争やクーデターによる国政の混乱時には、仲裁者としての役割を期待され、権限を行使する場合もある。上記のような理由から政治的発言の自制が求められる。

イギリス、オランダノルウェーデンマークカンボジアタイ王国などの国王が、これに分類される。日本の天皇もこれに分類されることがある。

アンドラ公国では、成立の歴史的な経緯によって、フランスの大統領ウルヘル司教が「共同元首」となる。行政の実権は議会が指名する首相にあり、共同元首の権限は儀礼的なものに限られる。さらに、共同元首がアンドラに来訪することはほとんどなく、それぞれの代行者が来訪して、または駐在代理官が委任を受けて、その権限を行使する。

イギリス連邦(コモンウェルス)所属の国の中には、イギリス国王(現在は女王エリザベス2世)を国家元首とし、国王から任命された総督が元首権を代行するところがある。カナダアンティグア・バーブーダグレナダジャマイカセントクリストファー・ネービスベリーズオーストラリアニュージーランドパプア・ニューギニアなど。これらイギリス連邦諸国の総督は儀礼的な役割のみを果たし、政治的な権限は行使しないのが通例となっている。ただ、例外もあり、1975年のオーストラリアでは、政治的混乱をうけて総督が首相を罷免し、議会の解散を命じるという事件がおこった。

[編集] 象徴君主制

立憲君主制のひとつではあるが、通常よりもさらに君主の権能を弱めた場合には、元首の役割は象徴的なものに限定される。こうした事例に対しては、象徴君主制という新たな区分で説明されることがある。

スウェーデンの国王は、首相の任命や議会の招集・解散の権限を形式的にも失っており、元首と行政府を完全に分離している。そのため、世界で最も象徴的な立憲君主制とされており、これを象徴君主制の典型とみなす説がある[2]

イギリスの国王(女王)もこれに分類されることがある[3]。イギリスの国王は形式的には強力な権限を持っているが、実際にはそれを行使しないのが通例となっているからである。

日本の天皇もこれに分類されることがある。日本国憲法第4条に「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と規定されているからである。

[編集] 共和制国家の元首

共和制国家では元首の権限は各国の政治体系によりまちまちであり、大統領が議会から独立した行政府の首長であって強大な権限を握っている場合(大統領制国家)、大統領は行政府の首長ではあるが、議会による一定の制限を受ける場合(半大統領制)、大統領は形式的な権限を行使する象徴的なものである場合(議会共和制または議院内閣制)、などがある。社会主義国は君主制でない点において共和制国家に分類されるが、元首の地位は形式的・象徴的であり、実権は共産党の書記長・総書記が握っていることが多い。また、元首の地位は独任の機関ではなく、合議体の長(ソ連最高会議幹部会議長東ドイツなど旧東欧圏やキューバ国家評議会議長など)であることが多い。東アジアの共産圏では、大統領に相当する職位がある場合でも、中国やベトナム、北朝鮮のように国家主席と称する。

[編集] 大統領制国家の元首

大統領は有権者の選挙により選出され(代議員制の場合もある)、一般に行政府の首長として強大な権限を有する。大統領は議会とは独立した地位にあり、議会の勢力と関係なく一定の任期が保障される。一般に大統領は議会の法案への拒否権をもつが、法案の提出権はない[4]。また閣僚の任免権を有する。閣僚は一般的に、国会議員との兼任はできない。議会の勢力が、大統領派の与党で占められている場合には強大なリーダーシップを発揮できるが、野党が多数派になった場合には厳しい議会運営が強いられる。

  • 大統領が行政を総覧し、首相を置かない場合:アメリカ合衆国フィリピン共和国など。
  • 大統領とは別に首相が置かれ、首相は大統領の補佐役として行政の実務を担当する場合:韓国中華民国がこれにあたる。正式には、前者は国務総理、後者は行政院長と呼ばれる。韓国の国務総理は国会議員である必要はなく、大統領を補佐しその命をうけ行政機関を統括し国務会議(日本の内閣に相当)の副議長をつとめる。

[編集] 半大統領制国家の元首

国家元首たる大統領は有権者による選挙で選出される。行政権の主体は大統領と首相(内閣)にあることが多く、内閣の首班たる首相は議会の承認を得て大統領に任命される。大統領は議会と独立した存在でその任期中は地位、身分を保障され、首相の任免権を通じて実質的に法案提出権を行使する。このように内閣は議会に責任を持ち、議院内閣制の枠組みが取り入れられているが、同時に大統領に対しても責任を負っている。大統領は議会解散権や法案拒否権、大統領令の発布など議院内閣制と比べより強大な権限を有することが多い。

議会で与党が多数を占めれば、大統領は内閣を自由に組織し、内政でも強大なリーダーシップを発揮できるが、野党が多数派を占めた場合は、野党の党首に組閣を命じて、外交・国防は大統領、内政は野党の首相が分担することとなる。このような状態をフランスではコアビタシオンと呼ぶ。

フランスロシア連邦の大統領が、半大統領制に分類される。

[編集] 議会共和制国家の元首

議院内閣制を採用する共和国の大統領がこれにあたる。行政は議会に指名される首相に委ねられ、元首である大統領は国政の実権を有さない。憲法上、元首に期待される役割は、内閣の助言と承認に基づく首相を始めとする官吏の任免や、外国元首・外交官の接受といった儀礼的なものである。大統領は直接選挙で選出される場合と、それによらずに議会の投票により功績のある長老政治家が選出される場合などがある。これらの国の中には、オーストリア連邦大統領のように法律上は強力な権限を与えられているケースもあるが、そうした権限は長年の不行使により形骸化しており、実際には行使されないのが通例である。

インドイタリアアイルランドアイスランドギリシアの大統領、ドイツ連邦大統領オーストリア連邦大統領などが、これに分類される。

スイス連邦では、行政府である連邦参事会(内閣)の7人の閣僚の中の1人が輪番制で就任する(任期1年)連邦大統領が存在する。連邦大統領は儀礼的な機能のみを果たしている。スイスの元首が連邦大統領なのか、それとも連邦参事会全体なのかについては議論があるが、連邦大統領が他国で国家元首が果たすとされている権能の一部を担っていることは確かである。

[編集] 社会主義国の元首

社会主義国の元首の権能は国によりまちまちであるが、通常は議会民主制国家における元首に相当する権能を有する[5]。元首自体は儀礼的な存在であり、実質的な最高指導者である共産党の党首(総書記)が兼任したり、長老幹部の棚上げポストに用いられるケースが多いが、元首の職権に実質的権限が由来するケースに毛沢東劉少奇が就任した時代の中華人民共和国主席や、ミハイル・ゴルバチョフが就任したソビエト連邦大統領がある。また、党中央が動揺する非常時に、儀礼的元首が自らの判断で重要な権限を行使する例[6]がある。

他に社会主義国の特徴としては、正式には国家の最高決議機関の常設委員会に元首権能が与えられ、実際上はその議長が代表として元首権限を執行するケースが見られる。

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)では、国家元首は最高人民会議常任委員会委員長である。この職の権能は儀礼的な部分にとどまり、最高権力は朝鮮労働党総書記、朝鮮人民軍最高司令官、朝鮮民主主義人民共和国国防委員長の金正日が掌握している。なお、同国憲法の序文では、金日成(1994年死去)を「永遠の主席と表記している。

キューバでは、国家元首は国家評議会議長であり、これは単に儀礼的地位にとどまらず強大な権限を有している。さらに、内閣に相当するのは閣僚評議会であり、閣僚評議会議長が行政権の担当者としての首相に相当する。機構上ではその両者は分離されているけれども、1976年以降現在にいたるまで、国家評議会議長と閣僚評議会議長の兼任(フィデル・カストロは1976年〜2008年、ラウル・カストロは2008年〜)が通例となっている。すなわち、事実上、国家元首と行政権の首長の権能は統合されており、そこに国家の最高指導権が集中することになる。

[編集] 専制国家・軍事国家・独裁政治国家の元首

形式的には共和制などの政体を採っているものの、実際には終身大統領のような独任制の元首が強大な政治的権限を有している。軍部・宗教団体・部族・外部勢力といった特定の集団が権力を掌握し、その代表者が元首に就任していることが多い。これらの場合、形式的に議会は存在していても、それは元首や特定集団の追認機関に過ぎない。民主的で公正な選挙がおこなわれていないこともよく見られる。北朝鮮、アフリカの多くの諸国や、いわゆる「開発独裁」制を敷く国家、かつての南米の多くが、これに分類される。

軍事国家では、軍部出身の大統領が国家元首となる場合や、軍事政権が樹立した「○○評議会」(革命評議会、救国評議会など)議長が国家元首の役割を果たす場合、などがある。

かつてのナチス・ドイツでは、総統であるアドルフ・ヒトラーが、国家元首、行政権の首長としての首相全権委任法のもとで立法権も掌握)、一党独裁下の支配政党(ナチス)の党首、国防軍最高司令官を兼ね、国家と党のすべてにわたっての最高指導権を握った(独裁政治)。

[編集] 特殊な政体を採る国家の元首

リビアジャマーヒリーヤ(直接民主制)という特異な政体を標榜しており、法的には国家元首は存在しない。しかし、事実上の国家元首は革命指導者ムアンマル・アル=カッザーフィーである。また、通常は国家元首の職務とされている権能の一部は、全国人民会議書記が担っており、同書記が事務的には元首代行ともいえる。

イランイスラム共和制を採っており、国家元首に相当するのはイスラーム聖職者である最高指導者である。それとは別に、直接選挙によって選ばれる大統領は存在するが、これは行政権の首長にすぎない。ただ、対外的にはイランの大統領も元首に準ずる存在として扱われている。

[編集] 日本国の元首

天皇制」および「象徴天皇制」も参照

日本国憲法は元首に関する規定が無く、日本国において元首が何であるかについては議論がある。戦前戦後を通じて儀礼における国事行為の場面で天皇は元首が果たすべき機能を担ってきた[7]。 天皇の権限は時代によって異なる。

[編集] 大日本帝国憲法における天皇の権限

大日本帝国憲法」も参照

大日本帝国憲法下の日本において天皇が国家元首であったことに争いはない。主権については万世一系の天皇が大日本帝国を統治する(第1条)とし、統治権についても「天皇は、国の元首にして、統治権を総攬し、この憲法の条規に依りてこれを行う(第4条 現代語訳)」と規定されていた。また無答責(天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス:第3条)や大権の行使(第9条、第13条)も規定されていた。このように、天皇は大きな権力を持っていたように見える。実際、第二次大戦終戦時の昭和天皇の決断など重要な政治的局面で影響力を行使することがあった。そのため、絶対君主制の元首に分類するべきという意見もある。しかし、憲法上、立法権については帝国議会の協賛(賛成)を要し、勅令には国務大臣の副署を必要とし、司法権は裁判所が行使することとなっているなどの制約があることは確かで、また天皇の権限に属することの多くは枢密院に諮問し審議させることとなっていたため、天皇が直接決断・命令して政治を行うことはほとんど無かった。そのため、「君臨すれども統治せず」という原則をとる現代の日本やイギリスなどの議会君主制に分類するべきという意見がある。

[編集] 日本国憲法における天皇の権限

天皇は、形式的な権限のみをもち、一切の権力をもたない。日本国憲法第4条には、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と規定されている。国事行為については、第7条で「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」と規定して、具体的な内容を列記している。

  1. 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
  2. 国会を召集すること。
  3. 衆議院を解散すること。
  4. 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
  5. 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
  6. 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
  7. 栄典を授与すること。
  8. 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
  9. 外国の大使及び公使を接受すること。
  10. 儀式を行ふこと。

これらの国事行為は、内閣や政府の助言と承認を必要とし、内閣が責任を負う(第3条)。国事行為は天皇が主催するものと解されるが内閣の助言と承認に基づいて行われる受動的かつ儀礼的なものである。政府が主催する公式行事への天皇の臨席や皇室の宮中行事についての内閣の助言と承認の有無・天皇の責任性については議論があり、国事行為以外の天皇の行為については天皇の象徴性を有しないものであるとする意見(二分説)と、国事行為、公的行為及びそれ以外の行為とに区分する意見(三分説)がある。

準国事行為として論じられる例としては国会開会時に参議院でおこなう開会宣言などがある。天皇の公的行為を容認する立場については、天皇の行為が無限定に広がっていくおそれがあり、国事行為以外の天皇の行為について内閣の統制の下に置こうとする意図から出ているものであっても、現在では、天皇が独走する危険性よりも、内閣が天皇を政治的に利用する危険性の方が高いとの意見がある[8]

[編集] 日本の元首は天皇か

天皇は、外国元首や外交官の接受、外交官認証(公証行為)といった対外代表性をもつほか、日本国の象徴(憲法第1条)であり、また国事行為を主催することが規定されている、など事実行為として元首の機能を有しているが、すべての公的行為には内閣の助言と承認(第3条)を必要とし、天皇は国事行為には無責任であることから議論がある。公式見解では、ほぼ天皇を元首としても差し支えないとする。しかし、戦後、天皇を元首とするかが長らく争点となっていた時期があり、天皇制の議論にまで発展していた。

元首(Head of state)の概念が国家有機体説の産物である以上、社会契約説に基づく国家観のもとでは元首という概念に無理があり、それを明確にすること自体がかえって規範的に社会のあり方を規制する可能性がある[9]。 いずれの機関が日本国の元首なのかは、複数の意見がある。

[編集] 公式見解

大日本帝国憲法は第4条で天皇を元首と規定した。一方、日本国憲法やそのほかの法律には、天皇を元首とする規定がない。ただ、元首の案件とされる国事行為についての規定はある。日本の公的機関の見解を以下に記述する。

  • 内閣法制局は、「立憲君主制と言っても差し支えないであろう」としている[10][11]。また、天皇は限定された意味における元首であるとする[12]。一方で、天皇を元首と呼びうるかは定義によると述べるにとどまっている[13]
  • 外務省は、日本は立憲君主国であるとしている[14][15]
  • 判例においては、プラカード事件第二審において天皇は元首であると判示している[16]

[編集] 公式見解を支持する立場

外国の大使・公使の接受を行うという意味で国を代表している側面があり、元首の性質を有しているとする立場がある。清宮四郎田上穣治[17]高柳賢三[17]らがこの立場にある。

[編集] 公式見解に反対する立場

公式見解に対する反論が、いくつかなされている。

[編集] 日本は立憲君主国か

公式見解では、日本は立憲君主国であるとしている。しかし、同時に公式見解は、国家を代表する機能の点からとらえて一番重要である行政権の主体として、天皇はいわゆる一般的な元首の性格をもたず、むしろ象徴という点に重点がある[18]ともしている。憲法学者芦部信喜によると、

  1. その地位が世襲で伝統的な権威を伴う
  2. 統治権、少なくとも行政権の一部を有する

などが君主の要件とされる[19]。 1.については日本の天皇は少なくとも千年以上の歴史を持ち、伝統的な権威を持っているので当てはまるが、2.については議論の余地がある。元首の要件で特に重要なものは、条約締結権など外に向かって国家を代表する権能である。しかし、天皇は、憲法第4条で、「象徴」という「国政に関する権能を有しない」者であると規定され、外交関係では「認証」「接受」という形式的・儀礼的行為しか憲法上は認められていない。このため「伝統的な概念によれば」日本国の元首は内閣または内閣総理大臣、とする。憲法第1条の象徴天皇制の規定の主眼は、国の形式的象徴の役割を強調するもので、他の権能、役割を否定する趣旨であると解される、とする。

[編集] 天皇を元首としない説

以下のような天皇を元首としない説がある[20]

  • 日本国には元首は存在しないとする説[21]
    • 準元首として天皇(「元首」としては存在しない)とする説[22]
  • 内閣あるいは内閣総理大臣であるとする説[23]


[編集] その他

[編集] 元首が宗教の首長を兼ねる例

現在の事例として、次のようなものがある。

かつての事例(近代以降)。

[編集] 古代ローマの「元首」

ここでいう「元首」は上記のものとは異なる意味である。古代ローマで元首(princeps)は、ローマの「市民の第一人者」の意味で、内戦を勝ち残ったオクタウィアヌスが共和政の形式を残して身に帯びた称号の一つである。これにちなみ、ローマ帝政の前半は元首政として時代区分される。

[編集] 兵は誰に忠誠を誓うか

古代ローマの昔より軍はインペリウムローマ法に承認された命令権)に対して忠誠の宣誓をおこなうことが政軍関係の基礎とされていた。日本では明治15年の軍人勅諭において、統帥権は天皇にあり忠節は国家・国権に尽くすものとした。戦後、この忠誠宣誓は自衛隊法施行規則(39-42条)により規定された[24]が、国、日本国憲法、法令および国民の負託に宣誓する体裁をとっており、天皇や内閣総理大臣に対する宣誓の体裁は採用していない[25]。一方で自衛隊法第7条により内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する、とされる。なお服務宣誓については国家公務員(国家公務員法97条[26])、地方公務員(地方公務員法31条[27])においても求められる。日本国憲法では明文上「軍隊」を保有しないことになっており、自衛隊の服務宣誓については議論が必要だろう。

[編集] 参考資料

象徴天皇制に関する基礎的資料(衆議院憲法調査会事務局 編)h15.2[8]

[編集] 関連項目

ウィクショナリー
ウィクショナリー元首の項目があります。

[編集] 注釈

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  1. ^ リヒテンシュタイン家は、ハプスブルク家の重臣として家産を蓄積した。つまり、公国とは無関係なので、「国民の財産を取り返す」というようなことができない。また、第二次大戦時、大権によって選挙を停止し、ナチズムの台頭を阻止した。そのため、今でも大権の行使が正当化されている。このような経緯で、象徴・儀礼的存在にとどまらず、強大な政治的権限を有している。そのため、ヨーロッパ最後の絶対君主制と言われる。
  2. ^ 『象徴君主制憲法の現代的展開--象徴的国家元首論の観点から見た日本とスウェーデンとの比較考察』下條芳明 憲法研究(38)2006 pp,29〜58
  3. ^ 『イギリスにおける象徴君主制の成立』浜林正夫 社会思想史研究1991 北樹出版pp,p6〜17
  4. ^ 米国では教書、韓国では議案提出権の形で立法素案が提示される。大統領は拒否権をもつため教書、議案に極端に反する立法はすべて拒否される。
  5. ^ いわゆる「社会主義国」の場合も一人の人物に権力が集中していることがあるが、その場合その人物が国家元首だからではなく一党独裁制をしく共産主義政党の書記長総書記だからという場合が大半であり、元首自体には権限が殆どない場合が多い。例えば、中国では、国家主席の地位にある人物が、外交・内政での強大な権力を行使している場合があるが、これはその人物が中国共産党の総書記をも兼任しているためである。国家主席は中共中央の決定を追認しているに過ぎず、実質的な権限を有さない。主席と総書記が別の人物である場合も当然にあり得る。
  6. ^ 六四天安門事件の際に戒厳令を発令した楊尚昆
  7. ^ 例えば、オリンピックの開会宣言は開催国の元首が行う慣例になっているが、日本で開催されたオリンピックでは天皇が開会宣言を行っている。また、CIA各国要覧の日本の項では、「chief of state: Emperor AKIHITO (since 7 January 1989)」と明記している。
  8. ^ 衆議院憲法調査会における「天皇」に関するこれまでの議論(平成17年2月衆議院憲法調査会事務局)[1]
  9. ^ 『基本法コンメンタール 憲法』(別冊法学セミナー)、第5版、2006年、23頁。
  10. ^ 1973年6月28日参議院内閣委員会、政府委員吉國一郎内閣法制局長官答弁
  11. ^ 1988年10月11日参議院内閣委員会、大出峻郎内閣法制局第一部長答弁
  12. ^ 1990年(平成元年)5月14日の参議院予算委員会における内閣法制局長官答弁。もっとも、「天皇は国の象徴であり、さらにはごく一部では…外交関係において国を代表する面」もあるという限定された意味における「元首」であるとする。
  13. ^ 2001年6月6日第151回国会参議院憲法調査会阪田雅裕内閣法制局第一部長答弁
  14. ^ 第154回衆議院憲法調査会5号平成14年07月04日『国民統合の象徴というのは、これは立憲君主の一つの機能に焦点を当てて表現したものでありますから、その他、我が国の元首はだれに当たるのかという議論はかねてから行われておりますけれども、政府解釈といいますか、少なくとも外務省の見解ですと天皇ということになっておりますので、この辺、堂々と憲法に明記したらどうだというふうに私は思っております。』(高崎経済大学助教授八木秀次)
  15. ^ 『・・・現在ブータンでは新憲法の制定が間近になっておりますが、立憲君主国という同じ政体を持つ日本国としましては、日本国憲法を様々な意味でご参考頂けるのではないかと考えております。』[2]
  16. ^ 第二審で天皇が元首であることが判示されている。ただし判決そのものは不敬罪を認定した上で新憲法公布に伴う大赦令により免訴の判決を下したものであり、上告審(最高裁)が上告棄却により日本国憲法と不敬罪というテーマを避ける形となった。事件発生時点において刑法第2編第1章(「皇室ニ對スル罪」、73条から76条まで)は有効であり(1947年(昭和22年)に削除)、明治憲法は新憲法発布により事実上失効していたことから、不敬罪が重要なテーマとなるはずであったが最高裁は免訴判決を下すことによって、この問題についての判断を避ける形となった。この判決には、現在の憲法においてどのような意味があるかは、議論が必要だろう。詳しくはプラカード事件参照。
  17. ^ 憲法調査会報告書付属文書第1号・憲法調査会における各委員の意見(憲法調査会)国立公文書館
  18. ^ 第71 回国会・S48.4.17 衆議院・内閣委員会 政府委員 高島益郎。末尾参考資料『象徴天皇制に関する基礎的資料(衆議院憲法調査会事務局 編)h15.2』PDF-P.10[3]
  19. ^ 「国家と法Ⅰ」放送大学出版会
  20. ^ 『基本法コンメンタール 憲法』(別冊法学セミナー)、第5版、2006年、23頁。
  21. ^ 天皇と内閣総理大臣が内外の代表性を分有するとしたうえで、単一の存在としての元首は存在しない、とする。清宮Ⅰ 186頁。当ページの末尾(参考資料)「象徴天皇制に関する基礎的資料」7頁に引用あり。
  22. ^ 小林直樹 憲法講義(上)155頁
  23. ^ 芦部信喜はこの説に立つ。芦部『憲法第三版』47頁。当ページの末尾(参考資料)「象徴天皇制に関する基礎的資料」7頁に引用あり。
  24. ^ 昭和29年6月30日総理府令第40号
  25. ^ 自衛隊法施行規則第39条 隊員となつた者は、次の宣誓文を記載した宣誓書に署名押印して服務の宣誓を行わなければならない。学生、予備自衛官等又は非常勤の隊員が隊員となつたときも同様とする。宣誓 私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法 及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。
  26. ^ 国家公務員法については[4]、および「職員の服務の宣誓に関する政令」[5]を参照のこと。
  27. ^ 地方公務員法については[6]、宣誓の内容については各自治体条例により制定。たとえば秋田県の場合は[7]を参照のこと。

最終更新 2009年9月26日 (土) 08:00 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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