国際人権法
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国際人権法(こくさいじんけんほう、International Human Rights Law; Droit international des droits de l'Homme)とは、国際法によって個人の人権を保障する、国際法の一分野をいい、第二次大戦後に急速に発展してきた分野である。第二次大戦前は、人権は国内問題として、国内問題不干渉義務(国際連盟規約15条8項)の下、各国の専属的事項とされていた。しかし、第二次大戦の反省から、国連憲章において人権保護が規定され、戦後急速に国際平面における人権保護が発展しだした。その端緒は、1948年の国連総会において採択された「世界人権宣言」(Universal Declaration of Human Rights)である。同宣言は、慣習国際法に成熟したとする、各国の国内裁判所の判例がある。
国際人権法は、二つに分類することができる。普遍的保障と地域的保障である。
[編集] 普遍的保障
第一に、普遍的保障であるが、これは、国連システムと条約制度に分けられ、いずれも強制力をもった履行手続きを備えていない。
国連システムでは、経済社会理事会が創設した「国連人権委員会」の制度があった。2006年に、同委員会は「国連人権理事会」(Human Rights Council)に発展した(国連総会決議60/251 A/RES/60/251、3 April 2006)。しかし、基本的な性格や目的は、維持されているといえる。すなわち、国連人権理事会は、テーマ別人権問題について対話の場を提供したり(同決議、5項(a))、各国による人権に関する義務の履行の普遍的な定期的審査を行ったり(同項(e))、法的拘束力のない「勧告」(recommendations)を行ったり(同項(i))するにとどまる。国連人権委員会での最大の問題点がその「政治性」であったが、人権理事会となった現状でも、独立した判断機関とはいえず、政治的組織の内部に属するものにとどまっているという他はない。
条約制度として、世界人権宣言を条約化したといわれる「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(「社会権規約」)と「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(「自由権規約」ICCPR)があるが、特に発達している「自由権規約」の制度においても、「自由権規約第一選択議定書」の下の個人通報制度では、「自由権規約人権委員会」(ICCPR Human Rights Committee)は、法的拘束力のない「見解」(views)を述べる権限を有するにとどまる。他にも、国連の下で作成された条約として、1965年の「人種差別撤廃条約」、1979年の「女子差別撤廃条約」、1989年の「児童の権利に関する条約」(「こどもの権利条約」)があるが、同様に、拘束力のある決定を下す機関はない。なお、1948年の「集団殺害罪の防止および処罰に関する条約」と1984年の「拷問禁止条約」も、ともに国連の下に作成されたが、これらは人権条約というよりは国際人道法に属する条約である。
[編集] 地域的保障
第二に、地域的保障は、欧州人権条約、米州人権条約、アフリカ人権憲章(正式名称、「人及び人民の権利に関するアフリカ憲章」)が非常に発達している。各制度は、独自の人権裁判所を有しており、法的拘束力のある判決を下して、その実効性を担保している点で、先の普遍的保障の制度と大きく異なる。なお、アジアにおいて、地域的人権条約を創設しようとする努力もなされたことがあるが、いまだ実現していない。
欧州人権条約は、「欧州審議会」(le Conseil de l'Europe; Council of Europe)の下、第二次世界大戦のような大規模な戦争を再び起こすことを防止する目的で1950年につくられた。加盟国は、広く、EU諸国から、ロシア、トルコまで含む。国家に加えて、個人や非政府団体も、ここに締約国の条約違反を直接訴えることができる(34条)「欧州人権裁判所」を有し、現在、大変活発に活動している。同裁判所の判決は、加盟国を直接、法的に拘束する。
米州人権条約は、1969年に欧州人権条約にほぼ倣ってつくられた制度であり、同様に「米州人権裁判所」を有する。同裁判所も活発に活動しており、国際法の観点からは、例えば、1998年に国際司法裁判所で争われた「ウィーン領事関係条約事件」(パラグアイ対米国)に関連して、独自に勧告的意見を出したことなどが、注目されている。
1981年に成立したアフリカ人権憲章は、人権の保護を目指すと同時に、人民の平等(19条)や発展の権利(22条)も目的としている。同条約が設置していた「アフリカ人権委員会」は、その後、2006年に「アフリカ人権裁判所」(正式名称、「人及び人民の権利のアフリカ裁判所」; la Cour africaine des droits de l'homme et des peuples)に代わり、他の地域的制度と同様に司法機関を持つようになった。しかし、条約の実効性については、未だ発展段階にあるといえる。2008年7月1日に、「アフリカ司法人権裁判所規程に関する議定書」(Protocol on the Statute of the African Court of Justice and Human Rights)が成立し、「アフリカ人権裁判所」と「アフリカ連合司法裁判所」の二つの裁判所が統一された。この新しい裁判所は、条約、慣習法、アフリカ諸国に共通の一般原則を適用するとされ、勧告的意見も発することができるものである。
[編集] 参考文献
主な教科書を挙げる。
- Steiner,H.J./Alston,Ph./Goodman,R., International Human Rights in Context, 3rd ed., Oxford, Oxford University Press, 2008, 1492pp.
- Sudre,F., Droit international et européen des droits de l'homme, 8e éd., Paris, P.U.F., 2006, 786pp.
- Buergenthal,Th./Shelton,D./Stewart,D., International Human Rights in a Nutshell, Minnesota, West Publishing, 1995, 450pp.
- 阿部浩己/今井 直/藤本俊明『テキストブック国際人権法』(第2版)(日本評論社、2002年、294頁)
- 畑 博行/水上千之編『国際人権法概論』(第3版)(有信堂、2002年、320頁)
最終更新 2009年11月21日 (土) 08:58 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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