地面効果
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地面効果(じめんこうか)とは、グラウンド・エフェクト(グランド・エフェクトと表記される場合もある)の日本語訳。「地表効果」と訳される場合もある。
地面効果は以下の2つの分野で言及されることが多い。
いずれも地面により空気の移動が制限されるため、車体や翼の下面に生じる圧力の変化がより顕著に現れる現象である。
似た現象に離対気流があるが、こちらは主に十分なボデー整形を行わずに車高だけを低く調整した一般車に多く発生し、車体に揚力を生む特有の現象である。
目次 |
[編集] 自動車における地面効果
[編集] 車におけるグラウンド・エフェクトとその出現
レーシングカーでは、車体下面をベンチュリ管形状に整形させることによって車体下面を負圧にして、ダウンフォースを発生させるタイプの車両を「グラウンド・エフェクト・カー(ウイングカー)」とよんでいる。いわゆるベルヌーイの定理を利用したものである。グランドエフェクト効果を狙ったと見られるアイデアは1970年代前半から存在したが、一般には1977年に登場したF1マシン、ロータス78が本格的なウイングカーの最初の実例とされている。
レーシングカーをはじめとする自動車は、空気抵抗を減らすため多くの場合は流線型にデザインされているが、流線型の自動車が高速で走ると揚力が発生しやすく、タイヤの接地力が失われてしまう。その結果、エンジンの駆動力を効率よく地面に伝えられないだけではなく、直進安定性やコーナー(カーブ)の旋回速度も低下してしまう。そこで1960年代以降のレーシングカーは、車体の前後にウイングを設けたり、車体全体を流線型ではなくクサビ型にしたりして、揚力の発生を防ぎダウンフォースを得ることを重視するようになった。ウイングや車体形状で強いダウンフォースを得ると、一般的には空気抵抗が増えてしまうのだが、タイヤの接地力が高まることでコーナーの旋回速度は上がり、結果としてサーキット一周のタイムは向上する場合が多い。
ウイングカーはこの方向性を極限まで追求したものと表現できる。ウイングカーは車体下面がベンチュリ管状に整形されており、車体と地面の間に強い負圧が発生するため、その力でタイヤが地面に強く押し付けられる。その結果、コーナーで車体に強い遠心力がかかってもタイヤが横滑りしづらくなり、ウイングカーではない通常の車両に比べて圧倒的に高いスピードでコーナーを通過できる。空気抵抗(および路面に垂らしたスカートの抵抗)が増えて直線スピードはやや落ちる傾向になるものの、コーナーでのスピードがそれを大幅に補うため、レースでは非常に有利になる。
グラウンド・エフェクトを獲得するためには、ウィング構造を保つサイドポンツーンなど車体(シャシー)全体が高い剛性を持ち、ダウンフォースを受けても容易に変型しないことが重要になった。ウイングカーの登場が、レーシングカーにカーボンファイバーなどの新素材が導入されるきっかけという表現もできる。
[編集] グラウンド・エフェクト・カーの問題点
[編集] ダウンフォース喪失時の危険性
グラウンド・エフェクトはサイドポンツーンの形状だけではなく、サイドポンツーン下面と地面との間の空間が外界と遮断され、閉じた状態になっていることに強く依存する。そのためグラウンド・エフェクト・カーは、サイドポンツーンの横に可動式の硬質のスカートを備え、スカートを地面に接触させて空気を遮断している。つまり車体の一部を地面にたらし、ガリガリと引きずりながら走っているという事になる。最初のグランド・エフェクト・カーであるロータス78では、ブラシを用いて遮断を行っていたが十分ではなく、硬質のスカートが採用されることになった。
スカートによる空気の遮断が何らかの原因によって阻害されると、ダウンフォースが急激に失われマシンは非常に危険な状態となる。グラウンド・エフェクトが発揮されている場合、タイヤのグリップ力が飛躍的に高まり横滑りしにくくなるため、コーナーリング時にも速度をそれほど落とさないで済む。これがグラウンド・エフェクト・カーの最大の利点であるが、その状態でグラウンド・エフェクトが失われるとマシンは超高速で横滑りしてコースアウトし、激しくクラッシュする(事故を起こす)可能性が高い。コーナーリング時のみならずストレート走行時であっても、グラウンド・エフェクト効果が失われた場合には、マシンはしばしばコントロール不能となる。場合によってはマシンが宙を舞うこともあるなど、ドライバーのみならずコースマーシャルや観客をも事故に巻き込む危険性を持つ。
[編集] ポーパシングの危険性
グラウンド・エフェクトの弊害としてはポーパシングも挙げられる。ポーパシングとは、マシンのピッチング(車両の前部と後部が激しく上下に揺さぶられること)をグラウンド・エフェクト効果が増幅させてしまう現象のこと。加減速や路面の凸凹などでマシンが上下に振動した際に、グラウンド・エフェクト効果が失われてマシンが大きく跳ね、その直後に効果が回復してマシンが強く路面に吸い付けられる場合がある。これが短いサイクルで激しく繰り返され、激しいピッチングを起こして止まらなくなってしまうという現象である。1999年のル・マン24時間レースに出場したメルセデスベンツ・CLRは、激しいポーパシングの末にコントロール不能となって宙を舞い大クラッシュを演じたが、これはウイングカーの悪癖が露呈した典型例だと語られている。
[編集] サスペンション性能の大幅な低下による運転手への負担増
グラウンド・エフェクト・カーには非常に強い下向きの力がかかるため、サスペンションのスプリングレート(バネの固さ)を極端に高く設定しなければならない。またサイドスカートが地面から離れないよう、サスペンションの作動する幅は短く制限する必要がある。つまりサスペンションが無いに等しい状態になる。ポーパシング解消もスプリングレートの硬化によって行われる場合が多い。その結果ドライバーの身体には、路面からの衝撃がほとんど直接伝わってしまうという過酷な状況が生まれてしまった。F1世界チャンピオンのニキ・ラウダは「グラウンド・エフェクト・カーはドライバーのテクニックの巧拙ではなく、高速のままコーナーに突っ込めるかどうかの度胸が問われるだけ。身体にかかる負担も大きく、非常に危険で非人間的」と激しく非難していた。
[編集] 一般車への技術的フィードバックが不可能
さらに、タイヤ以外の車体の一部(スカート)を常に地面に接触させ引きずっているというのは、一般車への技術的フィードバックが全くできない異常な状態であると表現できる。これは自動車レースというものの社会的な存在意義に抵触すると言えるだろう。
[編集] 各カテゴリにおける歴史
[編集] F1
ウイングカーの元祖と言えるロータス78と、その発展型であるロータス79は、1977年〜1978年のF1レースで大活躍した(1978年、ロータス79に乗るマリオ・アンドレッティがF1世界チャンピオンになった)。グランド・エフェクトのアイデアは他のチーム(マシン)にも急速に浸透し、当時のF1界ではグランド・エフェクトを用いなければ勝つことが困難となった。
しかしウイングカー構造に起因すると見られる事故が多発し、ドライバーの負担増や一般車への転用が不可能である点も問題視され、グランドエフェクトを禁止あるいは制限する動きも現れた。
1981年には、サイドスカート下部と地面の間に、6cm以上の間隔を空けることが義務づけられた。スカートを地面に接触させることを禁止し、グランドエフェクトを弱めることが狙いだったが、これは停車状態での車検でチェックされるだけだった。そこでチーム・ロータスは車体を2重構造にしたマシン「ロータス・88」を設計した。停車状態では車体のどこも地面に接触していないが、ある程度のスピードで走りダウンフォースが発生し始めると、2重の車体の一方が地面に下がって路面に接触し、可動スカートが存在するのと同じ状態になる。この機構は他のチームの反対があったことや、「空力装置は可動不可」という規制に抵触することから禁止された。ロータス88の2重車体構造は、グラウンド・エフェクトの追求によるサスペンションの硬化やポーパシングを解決し、ドライバビリティを向上させる目的もあると発表されていたが、多くの関係者は「ルールの抜け穴を探す行為」と見なしていた。
ロータス88と同様に規制をかいくぐろうとするアイディアはいくつか登場した。ブラバムは1981年のマシン「BT49C」に「ハイドロ・ニューマチック・サスペンション」という機構を搭載した。これは、油圧で車高を調整できる機構で、ピットイン時には車高を上げて車検に対応させ、走行時には車高を下げサイドスカートを地面に接触させグラウンド・エフェクトの効果を得るものであった。同機構は他チームも次々と採用したことから、サイドスカートの接触を禁止した規制は意味を成さなくなってしまった(この年、BT49Cに乗っていたネルソン・ピケがチャンピオンとなっている)。
1982年に発生したジル・ヴィルヌーヴの事故死やディディエ・ピローニの大事故による引退等も、グラウンド・エフェクト・カーの特性が一因だったと言えるかも知れない。それら数々の事故もあって、F1ではフラットボトム(車体底面の一部を平らにしなければならない)規制が行われ、事実上グラウンド・エフェクト・カーは参加できなくなっている。
F1でフラットボトム規制が行われた後、シャシー後部の底を跳ね上げた構造(ディフューザー)にすることで、限定的ではあるがグラウンド・エフェクトを得ることが可能となった。その後、シャシー後部のディフューザー設置にも制限が設けられたため、ギヤボックスケースをディフューザー形状にすることでグラウンド・エフェクトを得ようとするようになっている。サイドポンツーン部分の底を上げるステップドボトムへと規制が厳しくなった現在でも、この構造が使用されている。
[編集] 日本国内
日本国内レースでは、1983年の富士グランチャンピオンレースで、高橋徹のマシンがスピンした後に宙に舞い上がり観客席のフェンスに激突。高橋が事故死し、巻き込まれた観客も死傷するという大事故が発生している。これはグラウンド・エフェクト・カーが高速で後ろ向きに走ると、条件によってダウンフォースとは全く逆の力が発生するためと考えられている。高橋徹の事故の前にも佐藤文康が同様の事故で死亡し、松本恵二がマシン全損のクラッシュに見舞われるなど、同種の事故が発生しており、日本のレース界でもグラウンド・エフェクト・カーの危険性がささやかれていた。結果、日本レース界でもグラウンド・エフェクト・カーは禁止されることになった。
ただし1999年からフォーミュラ・ニッポンで採用されているシャーシーは事実上のグラウンド・エフェクト・カー構造となっており、2009年より導入されるスウィフト・FN09は完全なグラウンド・エフェクト・カーとなった。後述のGP2の動きなどもあり、日本でもグラウンド・エフェクト・カーの再導入の動きが始まりつつあるといえる。
[編集] その他
アメリカのオープンホイールレーシングにおいてはグラウンド・エフェクト・カー構造のシャシーが長らく使われており、2007年現在もインディ・レーシング・リーグ(IRL)やチャンプカーにおいてグラウンド・エフェクト・カーが使われている。しかし、1982年に起こったインディ500でのゴードン・スマイリーの死亡事故は、グラウンドエフェクトカー特有のハンドルの重さや、マシンの挙動が実際の操作よりも遅れる特性が原因といわれている。
近年ではフォーミュラカーのシャシーの安全性が大きく向上したこと、レーシングカーの空力に関する研究が進んだことなどを背景に、「フラットボトムのマシンよりも開発が容易で、かつ追い抜き時の姿勢の乱れが少ない」などの理由でグラウンド・エフェクト・カーを見直す動きも強まっており、GP2が2005年のカテゴリ発足当初からダラーラ製のグラウンド・エフェクト・カーを採用するなど、グラウンド・エフェクト・カーを再導入する動きもある。
[編集] 航空機等における地面効果
[編集] 翼による地面効果とその出現
航空機では、高度が主翼スパンの半分よりも低くなると顕著に影響が現れ、随伴渦と地面との干渉により自身への吹き下ろし(downwash)角が減少する結果誘導抗力係数が減少し,同様の理由により機体が同じピッチ角の場合は揚力係数が増加する。換言すれば、地上付近で揚力が発生している翼が飛行している状態は、地面を対称線とした翼の鏡像が存在している状態と等価で、地面との干渉は逆向きの2つの翼の相互作用として解釈することができる。 地面効果で現れるその他の現象としては、ピッチダウン傾向の増加が挙げられる。これは、地上との干渉によって翼後流に現れる吹き下し 量が小さくなり、水平尾翼の相対迎え角が小さくなってピッチアップ・モーメントが不足するためである。
[編集] 翼による地面効果の応用例
[編集] WIG
詳細は「地面効果翼機」を参照
地面効果は水面上でも同様に得られる。そこで、航空機に似た翼を持ち、水面上の低高度飛行によって揚抗比を改善する高速船が研究されている。 これらは地面効果翼船やWIG (Wing-In-Ground effect)、 水面効果翼船、表面効果翼船 (Wing-In-Surface-Effect-Ship)、Ground Effect Machine(GEM)と複数の呼称があるが、基本原理は同一である。ロシアでは、これを エクラノプラン (ekranoplan) と呼ぶ。 エクラノプランに見られる機首のジェットエンジン(またはプロペラ)は、離着水時に高速気流を翼下に吹き込み、高揚力を得るためである。異様に大きな水平尾翼は、地面効果内におけるピッチングモーメントの急激な変化を抑えるためである。
[編集] 人力飛行機
人力飛行機が飛行距離を稼ぐために、高度を低く保って飛行する場合が多い。これは典型的な地面効果を利用した飛行であり、地面効果による誘導抗力減少によって搭乗者の体力消耗が少なくて済むため、記録が出やすい。 人力飛行機は主に鳥人間コンテスト選手権大会で見ることができる。その開催場所である琵琶湖で行なわれるが、湖面で行なうために地面効果を水面効果と言われることもある。
ところが、人力飛行機はほとんどの場合が高翼機なので、主翼と地表の間が翼のコードよりも長いので地面効果がどれだけの影響を与えているかは疑問とされる。
[編集] その他の地面効果
- 地面と壁との間で発生する地面効果を利用し走行(飛行)するエアロトレインが存在する。現在研究段階ではあるが、2020年頃に時速500km、350人乗りの有人機体開発が目標となっている次世代の乗り物。実現すれば現在の鉄道に比べ格段に少ない資源で運用できる乗り物となる。
- パソコンなどに搭載されているHDDに利用されている。情報を読み書きする際に高速回転するプラッタからヘッドがわずかに浮く現象がそれに当たる。
- スロットレーシングの世界にもウィングカーが存在する。
最終更新 2009年11月15日 (日) 23:47 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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