境界例
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境界例(きょうかいれい。ボーダーラインの訳語)は精神医学の用語である。
境界例とは、旧来の境界例概念に基づく、人格障害における広義の疾患概念であり、主にB群人格障害(反社会性人格障害、境界性人格障害、自己愛性人格障害、演技性人格障害)の病理を持った患者を指す。境界性人格障害と混同されやすく、一般的に境界例と呼称される場合、現代では基本的に境界性人格障害を指すが、時には他の人格障害をも指している言葉として使用される事もあり、歴史的には人格障害全般を全て含む概念として使われていた。
目次 |
[編集] 語義
境界例と境界性人格障害は混同されがちであるが、同一の言葉ではない。
1930年代以降、境界例概念という疾患概念により人格障害の研究が進んだ。当時は、神経症と精神病の中間に位置する者全てを包括的に境界例として捉えていた。その後1980年代に入り、DSM-3により、境界例概念の症状が具体的に細分化され、境界性人格障害、反社会性人格障害、自己愛性人格障害等、人格障害の診断名が明確に規定された(具体的な診断名は人格障害を参照)。よって境界例とは広義の疾患概念であり、境界性人格障害とはその一部に属するものである。
[編集] 典型例
境界例の最も中心的な患者とされている、境界性人格障害における症状は以下の通りである。
- 不安定な対人関係 - 理想化とこき下ろしを激しく往復する。
- 原始的な防衛機制 - 分裂、投影性同一視、否認などの多用。
- 衝動性 - 乱用、依存、攻撃性、自殺企図、浪費、性的乱交など。
- 自己同一性の拡散 - 過去から現在に至る一貫した自己像が抱けない、慢性的に空虚感を持つ、など。
境界例はアルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症、リストカット、過呼吸、幼児虐待、摂食障害、うつ病などさまざまな表現形・症状で表面化することが多い。症状に応じて抗うつ薬、抗精神病薬などを対症的に投与することがある。自殺企図などで生命が危機にさらされている場合などには入院が必要な場合もある。
これは飽くまでも境界性人格障害の典型例であり、他の人格障害においてもこの特徴が全般的に確認されている。そのため他の人格障害における症状は若干異なる。また治療技法も異なる。
[編集] 原因
下のように諸説あるが、まだ原因ははっきりとは分かっていない。
[編集] 遺伝的要因
カーンバーグなどは環境よりも生まれながらの素質に注目している。例えば赤ちゃんは個々人によって親に求める欲求の強さが違う。それなりに世話をすれば満足する子供もいれば、沢山世話をしても満足してくれない子供がいる。この生来的な欲求の強さは主に遺伝(素質)によって決まるため、この元々の素質が強ければ、親は子供に対して面倒な感情を抱くかもしれない。その結果親の養育が少し粗雑になるかもしれない。このように子供の生来的な素質(遺伝的要因)が養育(母親という環境)に対して何らかの影響を及ぼしている可能性があると言われている。
またこのような子供は、環境が自分に適切に反応してくれない事を過剰に感じてしまうかもしれない可能性がある。子供自身が元々非常に環境の反応に対して敏感な素質を持っているかもしれない。よって可能性としては遺伝的要因も時には指摘される。
[編集] 育った家庭環境
マスターソン、コフートなどが育った環境を原因であると分析している。現時点では「利己的な対人関係が基本となり、対等の人間関係が無く上下関係のみの環境」しか存在しない家庭に育った人間が、すべての人間関係をそうであると認識し、なおかつ「自分の家族は利己的ではなく良い家族であった」と無理な虚像の認識を幼少時に強いられたことが根本的な原因であると考えられている[要出典]。
アメリカでは幼児虐待を受ける家庭環境における境界例が多く報告されている[要出典]。したがって成人後も対人関係は上下関係、従属関係が基本であり、対等の人間関係の構築が出来ない。
[編集] 現代精神医学における見解
ただし上記のような典型的な境界例になる原因があっても必ずしも発症するとは限らない。明らかに幼少期において酷い環境に置かれた子供でも境界例(人格障害)にならないケースは沢山想定されている。実際に人格障害と診断されるような人でもしっかりと現実適応している人は少なからずいる。上記の境界例になる素質や酷い環境は誰にでも必ずあるのであり、極論に走れば誰もが人格障害になる素因を持っている事になる。もしくは人格障害になっている部分があると考えられる。しかしそれは一般的には否定されている[要出典]。
[編集] 参考文献
- オットー・カーンバーグ『重症パーソナリティ障害』岩崎学術出版社
- ジェームズ・マスターソン『青年期境界例の治療』金剛出版
- ハインツ・コフート『自己の治癒』みすず書房
[編集] 関連項目

