大量絶滅

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大量絶滅(たいりょうぜつめつ)とは、ある時期に多種類の生物が同時に絶滅することで、地質時代において幾度か見られる。多細胞生物が現れたベント紀以降、5度の大量絶滅(オルドビス紀末、デボン紀末、ペルム紀末(P-T境界)、三畳紀末、白亜期末(K-T境界))と、それよりは若干規模の小さい絶滅が数度あった[1]とされる。大量絶滅の原因については、K-T境界のように隕石や彗星などの天体の衝突説が有力視されている事件や、P-T境界のように超大陸の形成と分裂に際する大規模な火山活動による環境変化(プルームテクトニクスも参照のこと)が有力視されている事件など様々であり、その原因は一定しているわけではない。

大量絶滅の直後には、空席になったニッチ(生態的地位)を埋めるべく、生き延びた生物による急激な適応放散がおきる。例えば恐竜が絶滅したことにより、白亜紀には少数派であった哺乳類は、急速に多様化・大型化が進み、生態系の上位の存在として繁栄を享受することとなる。

目次

[編集] 原生代末の大量絶滅

V-C境界と呼ばれ、最近の研究で大量絶滅があったことが判明しつつある。下に述べる古生代末の大量絶滅(P-T境界)と同じく、超大陸の形成と分裂が原因と推定されている事件。ゴンドワナと呼ばれている超大陸が形成・分裂した時期に相当する。超大陸の分裂に際してはスーパープルームが地上まで上昇してきて非常に大規模な火山活動が起こり、地球表面の環境が激変するため、大量絶滅が起こると考えられている。

原生代のベンド紀にはエディアカラ生物群が存在していた。この生物群はオーストラリアのエディアカラで多数の化石が発見されたことから命名されたが、生物体は全て軟組織で出来ており体表を保護する硬い骨格を有していなかった。エディアカラ生物群は約5億4500万年前のV-C境界を境に殆ど見つからなくなるが、以後三葉虫のような硬骨格を有する生物が出現する。

[編集] オルドビス紀末の大量絶滅

古生代オルドビス紀末(約4億3500万年前)に大量絶滅が発生し、それまで大いに繁栄していた三葉虫の種が半減してしまった。当時生息していた全ての生物種の85%が絶滅したと考えられている[2]

2005年NASAカンザス大学の研究者により、近く(6000光年以内)で起こった超新星爆発によるガンマ線バーストを地球が受けたことが大量絶滅の引き金となった、という説が出されている[3]

[編集] デボン紀後期の大量絶滅

古生代のデボン紀後期(約3億6000万年前)には、甲冑魚をはじめとした多くの海生生物が絶滅している。全ての生物種の82%が絶滅したと考えられている。

[編集] ペルム紀末の大量絶滅

古生代後期のペルム紀末、P-T境界(約2億5千万年前)に地球の歴史上最大の大量絶滅がおこった。海生生物のうち最大96%、全ての生物種で見ても90%から95%が絶滅した。古生代に繁栄した三葉虫もこのときに絶滅した。

この大量絶滅は化石生物の変化から実証されているが、絶滅の原因には幾つかの仮説がある。

  1. 全世界規模で海岸線が後退した痕跡がみられ、これにより食物連鎖のバランスが崩れ、大量絶滅を引き起こしたという説がある。
  2. 巨大なマントルの上昇流である「スーパープルーム」によって発生した大規模な火山活動が、大量絶滅の原因になったという説もある。超大陸であるパンゲア大陸の形成が、スーパープルームを引き起こしたとされる。

実際、シベリアにはシベリア洪水玄武岩と呼ばれる火山岩が広い範囲に残されており、これが当時の火山活動の痕跡と考えられている。火山活動で発生した大量の二酸化炭素温室効果による気温の上昇を引き起こした。これによって深海のメタンハイドレートが大量に気化し、さらに温室効果が促進されるという悪循環が発生し、環境が激変したと考えられる。

また、大気中に放出されたメタン酸素が化学反応を起こし酸素濃度が著しく低下した。このことも大量絶滅の重要な要因となった。古生代に繁栄した単弓類(哺乳類型爬虫類)はこの際に多くが死に絶え、この時代を生き延びて三畳紀に繁栄した主竜類の中で、気嚢により低酸素環境への適応度を先に身に付けていた恐竜が後の時代に繁栄していく基礎となったとされる。

なお、単弓類の中で横隔膜を生じて腹式呼吸を身につけたグループは低酸素時代の危機を乗り越え、哺乳類の先祖となった。

[編集] 三畳紀末の大量絶滅

中生代三畳紀末(約2億1200万年前)の大量絶滅でアンモナイトの多くの種が絶滅してしまった。また、爬虫類単弓類も大型動物を中心に多くの系統が絶え、当時はまだ比較的小型だった恐竜が以降、急速に発展していく。全ての生物種の76%が絶滅したと考えられている。

絶滅の原因としては、中央大西洋マグマ分布域(Central Atlantic Magmatic Province)における火山活動との関連が有力視されている。[4] [5] [6]

[編集] 白亜紀末の大量絶滅

三畳紀からジュラ紀白亜紀に繁栄していた恐竜は約6500万年前に突如として絶滅してしまった。アンモナイトが完全に絶滅したのもこの時期である。全ての生物種の70%が絶滅したと考えられている。

その原因については諸説あるが、巨大隕石が地球に衝突、発生した火災と衝突時に巻き上げられた塵埃が太陽の光を遮ることで、全地球規模の気温低下を引き起こし、大量絶滅につながったという説(隕石説)が最も有力である。

白亜紀とそれにつづく第三紀の地層の境界は、全世界的に共通して分布する薄い粘土層によって規定される。この粘土層(K-T境界)からは、全世界的に高濃度のイリジウムが検出されている。イリジウムは地表では希少な元素である反面、隕石には多く含まれている。K-T境界のイリジウムは地球に衝突した隕石によって全世界にばら撒かれたと考えられ、これが隕石説の最初の有力な証拠とされた。後に、同じ層からは、衝撃に伴う高圧環境の発生を示す衝撃石英(Shocked Quartz)やダイヤモンド、大規模な火災が発生したことを示す「すす」も見つかっており、これらの証拠によって、隕石説は検証され補強された(イリジウムに関しては、衝突時の衝撃で捲り上げられた地殻深部由来であると考える説もある)。

この推論に疑問を呈する意見もあるが、有力な説とはなっていない。疑問の証拠として、恐竜について言えば、絶滅のはるか以前から種の数(個体数ではない)が急速に減少したとされていて、隕石のみに絶滅原因を求めると理由が説明できないことが挙げられていたが、現在では種の数の急速な減少を示す証拠は無い。また、ユカタン半島付近にある隕石落下跡はK-T境界線よりもかなり深く(つまり古い時代に)入り込んでおり、隕石が落下した後も恐竜は相当期間にわたって生きていたのではないかという説さえある。 

同じ白亜紀末にインド亜大陸に大量の溶岩が噴出した痕跡が残されている(デカントラップ)。この大規模な火山活動が大量絶滅につながったとの説(火山説)もある。

過去においては、伝染病植物の変化、超新星爆発による被曝、磁極の移動による気候変動、原始的な哺乳類による恐竜の卵乱獲説などが提示されたが、それらを支持する有力な証拠は見つかっていない。また、こういった説は恐竜などの地上の生物だけでなく、海中の生物にも広範にわたって起きた、この時期の大規模絶滅を説明できていないものが多い。

現在は隕石説を中心に大規模火山活動などによる地球の内面的な要因が複合的に重なったとする説が主張されている。

[編集] 完新世の大量絶滅

1998年のアメリカ自然史博物館による調査によると、70%の生物学者は、現在、大量絶滅が起こっていると見ている。

例えば、ハーバード大学のE. O. ウィルソンは、人類が引き起こしている生物圏の破壊によって、これから100年間の間に、地球上の半分の種が絶滅するのではないかと予想している。また、国際自然保護連合は「レッドリスト」として、毎年絶滅に瀕している種を発表しているが、こうした調査の多くは大量絶滅が進行していることを示している。

一部の調査には、種の絶滅はもっとゆっくりで、まだ破局的な状態にまで至るには長い時間がかかると予想しているものもある。また、氷河期の最後に多くの巨型動物類が絶滅したことも、完新世の絶滅の一部とも考えられることもある。

[編集] 脚注

  1. ^ ウォード(2005)による。
  2. ^ 以下、絶滅率については、パウエル(2001)による。
  3. ^ Wanjek, Christopher (April 6, 2005). "Explosions in Space May Have Initiated Ancient Extinction on Earth". NASA. 2008-06-15 閲覧。
  4. ^ Hesselbo, S.P.; Robinson, S.A.; Surlyk, S.; Piasecki (2002), “Terrestrial and marine extinction at the Triassic-Jurassic boundary. synchoronized with major carbon cycle perturbation: A link to initiation of massive volcanism”, Geology 30: 251-254 .
  5. ^ McElwain, J.C.; Beerling, D.J.; Woodward, F.I. (1999), “Fossilplants and global warming at the Triassic-Jurassic boundary.”, Science 285: 1386-1390 .
  6. ^ McElwain, J.C.; Hesselbo, S.P.; Haworth, M.; Surlyk, F. (2007), “Macroecological responses of terrestrial vegetation to climatic and atmospheric change across the Triassic/Jurassic boundary in East Greenland.”, Paleobiology 33: 547-573 .

[編集] 参考文献

  • リチャード・フォーティ 『生命40億年全史』 草思社、2003年。ISBN 4794211899
  • ジェームズ・ローレンス・パウエル 『白亜紀に夜がくる-恐竜の絶滅と現代地質学』 寺嶋英志・瀬戸口烈司訳、青土社、2001年。ISBN 4791759079
  • ピーター・ダグラス・ウォード 『生きた化石と大量絶滅-メトセラの軌跡』 瀬戸口烈司・原田憲一・大野照文訳、青土社、2005年。ISBN 4791761839

[編集] 関連項目

最終更新 2009年10月13日 (火) 09:15 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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