好中球

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好中球(中央紫色の核を持つ物体)の光学顕微鏡写真

好中球(こうちゅうきゅう、neutrophil、neutrophile)は、白血球の一種である顆粒球の1つ。中性色素に染まる特殊顆粒を持つ顆粒球である。 盛んな遊走運動(アメーバ様運動)を行い、主に生体内に侵入してきた細菌や真菌類を貪食(飲み込む事)殺菌を行うことで感染を防ぐ役割をはたす。

目次

[編集] 形状

無色半透明のおおむね球状であるが、偽足を出し盛んにアメーバ様運動をするので形は定まっていない。標準の血液細胞染色であるギムザ染色で中性色素に染まる特殊顆粒を持ち、成熟すると核が分かれる(分葉)ので多核白血球といわれることもある。最終完成形の好中球は分葉核球と呼ばれ、核は分れるが核の間は核糸で繋がっている。分葉核球になる前には核が大きく曲がったジェリービーンズ様の桿状である段階がある(桿状核球)。好中性顆粒はリゾチームの一種であり、ゴルジ体(内網装置)でつくられる。 直径は12~15μmであり、白血球の中ではリンパ球より大きく、単球・マクロファージより小さい。

アルコール固定・染色された顕微鏡像

 

[編集] 数量・寿命

末梢血内には1マイクロリットル当たり1500から7000個程度の好中球が含まれ、成人の末梢血内には概ね 10の10乗個のオーダー(桁)の好中球が存在する。おおよそ100億個から300億個程度の数量である。

しかしながら好中球は血管壁や組織、脾臓肝臓などにも末梢血内に匹敵する量の好中球が存在する。さらに骨髄には末梢血内の10から20倍もの量の貯留プールが存在し、生体内すべてでは10の11乗のオーダー、数千億個の桁の好中球が存在する。

大きな貯留プールがある為、細菌感染時など貯留プール内の好中球が動員される事態には末梢血内の好中球数は速やかに増加する。 また、食事や運動、ストレスなどのわずかな体の変化でも好中球数は変化しやすい。 細菌感染時には炎症性のサイトカインの働きで骨髄内での生産も亢進される。

感染が無い時でも一部の好中球は血管から組織内に移動し存在する。

血液内での好中球の寿命は1日以内、概ね10時間程とされる。 組織内では数日である。

好中球は骨髄内で生産されるが、1日当たり10の11乗個(1千億個)程度作られる。

[編集] 好中球の生体防御のしくみ

生体に細菌などが感染すると、好中球は感染した炎症部位に遊走して集まり、細菌を貪食殺菌する。

[編集] 遊走

細菌真菌類が侵入した組織では、組織内のマクロファージ肥満細胞がただちに反応しインターロイキン1(IL-1)などのサイトカインを放出し、それらのサイトカインにより組織内の細胞は炎症性変化を起こす。また。それ以外の過程を含め、炎症性変化を起こした組織はインターロイキン8(IL-8)を代表とする多種類のケモカイン(サイトカイン)やその他の多種類の好中球遊走刺激因子を放出する。それらの刺激因子を表面のレセプターで感じ取った好中球は遊走運動を活発化させる。 好中球は表面に多数あるレセプターで刺激因子の濃度の濃い薄いを感じ取り、因子の濃度の濃い方向に遊走し感染巣に集結する。 多くの場合、感染巣は血管外であり、好中球は血管壁を通過しなければならない。 炎症箇所に近い抹消血管壁で好中球は血管上皮に粘着し、血管上皮細胞と好中球それぞれが各種因子によって変化を起こし、好中球は血管上皮細胞の間をすり抜ける。 血管外に出た好中球は組織内を遊走し感染巣に到達する。

炎症組織からの遊走刺激因子により、骨髄内の貯留プールなどに存在する好中球も刺激を受け遊走運動を開始し、また骨髄では好中球の生産が亢進される。 それらによって細菌類の感染には大量の好中球が動員されることになる。

[編集] 貪食・殺菌

感染巣に到達した好中球は細菌類への接触から貪食を行い、飲み込んだ細菌類を殺菌する。

好中球は細菌類に接触すると表面のレセプターを介して異物と認識し、接着結合する。 結合した異物を好中球形質膜がこれを包むようにして、好中球内に取り込む。

好中球内に取り込まれた細菌類は2つの手段で殺菌される。 一つは、NADPH酸化酵素系の働きで活性酸素を発生させて殺菌する。 もう一つは、顆粒から放出される加水分解酵素などで殺菌する。

細菌を飲み込んだ好中球はやがて死亡し、死体は膿になって体外に放出されるか、組織内のマクロファージなどにより処理される。

[編集] 分化過程

好中球を含め、全ての血球は骨髄の中に存在する造血幹細胞に由来する。骨髄中において造血幹細胞赤血球・各種の白血球血小板に分化するが、最終的に好中球に分化する場合は骨髄系幹細胞前駆細胞骨髄芽球前骨髄球骨髄球後骨髄球の順に分化成熟する。さらに桿状核球を経て分葉核球へと分化するが、この最後の2つをもって好中球と呼ぶ。

造血幹細胞から分裂し分化し始めた細胞は盛んに分裂し数を増やしながら少しずつ分化の方向を進めていく。 幹細胞から前駆細胞、骨髄芽球の段階までは顕微鏡による形態学的観察では最終的に好中球などの顆粒球系に分化する細胞であるか識別は困難であるが、骨髄芽球の段階からは顆粒が生じ始め顆粒球系の細胞と形態学的にも判断できるようになる。前骨髄球の段階になると好中球への分化傾向があきらかになる。

骨髄芽球の段階から一次顆粒(アズール顆粒)が生じはじめ、前骨髄球では豊富な一次顆粒(アズール顆粒)を持つようになる。 骨髄球の段階では一次顆粒は見えなくなり(見えないが存在はする)代わりに二次顆粒(特殊顆粒)が発現する。 さらに三次顆粒など好中球には各種の顆粒が存在するようになる。

顆粒球系と判断できるようになった段階以降も、骨髄芽球で1回、前骨髄球で2回、骨髄球で2回ほどの細胞分裂を起こし数を増す。後骨髄球の段階になると細胞分裂する能力は失われる。 通常時には骨髄芽球以降の段階でおよそ11日の時間をかけ成熟する。

骨髄芽球や前骨髄球など幼若な段階では細胞の核は大きく丸く、核内構造(クロマチン構造)は繊細であるが、 分化・成熟が進むほど核は小さくいびつになり、構造は粗くなる。 核がゆがんだジェリービーンズ形である桿状核球と呼ばれる段階になると完成した好中球と認識されるが、さらに成熟が進み、核の形が複数に別れた分葉核球となる。分葉核球が好中球の分化の最終成熟段階となる。

末梢血に見られる好中球の大多数は分葉核球であるが、炎症時など好中球の大量の動員が必要な時などには桿状核球の割合が増える。

[編集] 白血球の核形の左方推移

好中球は、正常な状態では末梢血中に分葉核球(2~3葉が多い)が多く認められる。

感染症等の場合、免疫応答による好中球増加が見られるが、その初期の段階では桿状核球が増加し更に幼若な後骨髄球や骨髄球が末梢血に出現することがある。出血貧血や、医療行為による骨髄抑制などによる汎血球減少からの回復期にも同様のことが起きる。このような一核細胞の増加を核の左方推移と呼ぶ。 好中球を大量に動員しなければならない事態のために最終成熟形態でない好中球も動員される為と思われる。

上記は「造血の立ち上がり」にみられる一過性の左方推移の例であるが、骨髄異形成症候群慢性骨髄性白血病などの場合は骨髄球-顆粒球系細胞の分化成熟能力自体に異常を生じているため、左方推移状態が持続する。

なお、逆に分葉核球の比率が増えた状態=右方推移は、悪性貧血などのときに起こる。

[編集] 好中球の異物貪食動画像

[1] Neutrophils display highly directional amoeboid motility in infected footpad and phalanges. Intravital imaging was performed in the footpad path of LysM-eGFP mice 20 min after infection with LM. [1]

  1. ^ Public Library of Science 


[編集] 走査型電子顕微鏡写真

[編集] 参照文献

(1) 浅野 茂隆, 内山 卓, 池田 康夫 監修、三輪血液病学 第3版、文光堂、2006

(2) 日本検査血液学会編、スタンダード検査血液学第二版、医歯薬出版、2008

最終更新 2009年11月23日 (月) 11:14 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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