学歴ロンダリング
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学歴ロンダリングとは、マネーロンダリング(違法な資金を多国間の経由によって正常な資金と見せかける詐欺行為)と学歴をかけた造語である[1]。
大学編入や大学院進学における入試形態は多種多様であり、編入、進学目的にも個々人によって異なるが[2]、一般的に18歳時に選択した進路よりも、さらに高い受験偏差値に分類される大学への進学を揶揄する表現である[3]。
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[編集] 背景となる学歴制度の比較
次にあげる学歴制度の比較から分かるとおり、学歴ロンダリングとは日本特有の概念であると考えられる。
[編集] アメリカ[4][5]
アメリカでは大学間が私立・州立を問わずに教育機関として緊密に協力関係を構築しており、在学中に別の大学へ転学・編入する事は珍しくない。日本の様に学部入学の為に足踏み(浪人)するケースは稀であり、進学を志した年に何らかの大学に入学するケースが殆どで、在学中に更なるレベルの高い授業を受けたいと感じれば気軽に転学によって大学を変更できるという柔軟な大学選択が可能である。また日本にあるような大学側も他大学と対立して生徒の「囲い込み」やその為のブランドイメージ作りに勤しむよりも、より質の高い中身のある教育を行う事で生徒を集めようとする傾向が強い。その結果として優れた人材が育ち易く、こうした教育の場として大学が機能しているからこそ、アメリカでは学歴が最も信頼に足る資格と認知されている。こうした社会の学歴に対する捉え方(=中身のある教育機関)と、その地盤となっている大学制度から大学院進学に対しても同様の柔軟性を持ち、大学院進学でより上の大学へ進む事は編入と同じく実力の向上として好意的に評価される。
SAT(日本で言うところのセンター試験に該当。ただし年6回開催される上に、いずれの得点も同評価を受けるので一発勝負のセンターとは大きく異なる)と小論文・面接などによる審査が殆どであり、「入試日」に該当するものも無く、基本的に何時でも入学審査を受ける事が出来る。これもより多くの人間に学歴向上の機会を与えんが為であり、こうした点からも学歴に対する再評価制度の充実が伺える。
[編集] 日本
日本では学歴による評価は大学(学部)、18歳時点で進学した学部で固定されてしまうケースが多い。近年になって漸く複数大学が合同しての学部運営や単位交換など大学同士の協力が検討され始めているとはいえ、依然として大学間の対立は根深いものがある。大学間での転学も極めて困難で、どうしても大学を移りたい場合は編入学試験が一般的な選択肢となる。しかしその場合でも大学院進学と同じく、「学歴の不当な更新」と見なされて学歴ロンダリングと揶揄されてしまう場合もあると考えられる。
このような状況の背景には戦前・戦後日本の終身雇用制が深く関係している。最近までの日本は学卒者を一括して採用し、一度正社員として就職を果たした人間は(大企業・中小企業の別を問わず)基本的に一生を保障され、そのまま変化の無い階級で生き続ける事が一般的だった。一方で、転職をすると企業における経験の蓄積がリセットされるなど、中途入社者にとって極めて不利な人事管理が行われていた。
[編集] 問題点[6][7][8][9][10]
戦後の日本の終身雇用制度で確立した社会では、22歳までに一つの大学を卒業した者への評価と、前述の4種類の経歴を経ている者への評価を、どのように取り扱うかが明確に定まっていない。例えば、旧来からの日本的な社会においては、社会人になった後に得た学位の取得は想定されていないため、その評価は所属する組織によって異なる。
ここで、戦後の日本の終身雇用制度で確立した、22歳までに大学を卒業した者への評価と、前述の4種類の経歴を経ている者への評価を、どのように取り扱うかが問題となる。
本来ならばより高い教育を求めて他大学の学部・大学院を受験し学位を得た者や、社会人になった後に学位を得た者も評価されるが、旧来からの日本的な社会においては、学力水準はあくまで18歳時に合格し、進学した大学が基準であるため、仮面浪人、他大学への編入、大学院への進学、社会人になった後に得た学位等は評価されない場合が多い。例えば、日本型の文化では、より高い教育を求めて、他大学へ編入したり、社会人を経て夜間学部に進学し学位を得た者の評価は、18歳までに同レベルの学部に進学した者よりも低い。また、より高い教育を求めて、18歳時に進学した大学から他大学の大学院に進学した場合や、社会人を経て、大学院に進学し専門性を有した者であっても、18歳で同じ大学の学部に入学した者より評価が低い。
すなわち、日本社会では「何を学んできたか、どのような専門性を身につけたか」よりも、学部入学試験の難易度、偏差値のみで学歴の高低が決定されるという、皮相的な評価のみがなされる傾向が強い。
このような日本的な文化から、一部においては18歳当時に進学した学部の学歴までを有効として取り扱う企業もある。また企業も社会人学生に対して職務怠慢であるとして批判的に対応するケースが多く、職場で協力どころか不当な差別を受けたとする声も散見される。
この社会的背景には、大学院入試等には、学部入試のような「統一的指標」(例:各受験予備校が算出するいわゆる偏差値)が存在しないことも関係していると思われる。一部では、「大学内の課程で培われるはずの論考・分析・問題解決能力」より、「18歳の学部入試時点での処理能力」が重要視され、それに基づいて優秀か否かを判断する向きがある。しかし現実には、学部入試を突破した内部進学希望者が大学院入試で不合格となり、外部受験者が合格しているという事実が散見される[11]。
大学院を受験する者は、各大学での公募に出願、受験し、各大学が実施する入学試験に合格して入学する。適正な手続きに従って入学しているにも関わらず、「学歴の不当な更新」として批判される。つまり、「大学内の課程で培われるはずの論考・分析・問題解決能力」がないがしろにされており、批判されるべきはその実効性ないし肩書としての学歴が重視される風潮である。
多くの法科大学院(専門職大学院)は社会人を多く受け入れており、卒業後に再び企業に就職することも珍しいものではない。他にも専門職大学院の会計大学院や、MBA及びMOTにおいて、二部の学部(夜間学部)と同様、夜間開講を実施する大学も多く、多くの社会人を、会社等の勤務とスクーリングとの両立を可能にしている。これらは、社会人のための専門教育機関の役割を果たし、あるいは補完するなど、専門性が不足している社会人のニーズに応えている、という側面がある(会計大学院は公認会計士受験のための大学院でもあるが、企業経理としてのコースも併存する大学院である。しかし公認会計士試験自体が若者、主に大学学部生が大多数受ける国家資格であるため平均年齢は学部卒の年齢に偏る)。
ただし、大学院が多数設立されたこと、あるいは大学院の定員数の増加等により、大学院の質そのものが落ちているという指摘(学歴のインフレ、また、修士論文は10年前の学卒論文程度のレベルである[12])もあり、学歴ロンダリングという呼び名が、該当者の地位を不当に貶めているとは一概には言えない面もある。しかし、大学教育の質その物の問題は、大学院に限った話しではなく、少子化の影響で大学全入時代を迎えた学部にも当てはまる[13]。そのため、現在のマーチはバブル期の日東駒専レベルとする指摘もある。[14]
欧米においても学歴社会は存在するが、欧米においては日本と比較した場合「入学は易しいが卒業は難しい」と言われる。加えて修士・博士号などの学位が、その人の専門性の高さを表す指標として信頼のおけるものになりうるため、学歴=学位≒実力という形で評価する社会と言える。
一方で、日本の大学(とくに学部段階)では逆に「入学は難しく卒業は易しい」とされている。「有名大学卒」「大学院修了」という肩書きが一人歩きし、欧米ほど、本当に質の高い教育を受け、専門性を獲得しているかどうかの指標となりにくいという問題もある。
[編集] 関連項目
- 教育社会学
- 学歴コンプレックス - 学歴難民
- ディプロマミル
- 学歴
- 編入学
- 高度専門士
- 専攻ロンダリング - この言葉から派生し、就職状況の悪い非実学系学科から就職状況の良い実学系専攻に移ることを指す
[編集] 脚注
- ^ http://allabout.co.jp/study/adultedu/closeup/CU20051006A/
- ^ 参考書籍 INR
- ^ 参考書籍 月刊日本語
- ^ http://www.kufs.ac.jp/toshokan/bibl/bibl153/pdf/p03.pdf
- ^ http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/molecular-recognition/touhara/essay0.html
- ^ http://www.shidaikyo.or.jp/riihe/research/arcadia/0346.html
- ^ http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/18pdf/1812.pdf
- ^ 参考書籍 筑波フォーラム参照
- ^ 参考書籍 教育社会学研究 187-199頁「Values in Modern Society and "Hensachi"」参照
- ^ 「専門職大学院の教育とその効果」日本教育社会学会大会発表要旨集録60号211-214
- ^ 参考:東京大学大学院入試結果参照
- ^ 参考:学歴ロンダリング- Yahoo!辞書
- ^ 全入時代に変わる大学
- ^ 参考:代ゼミ偏差値参照
[編集] 参考書籍
- 橘木俊詔『格差社会―何が問題なのか』岩波新書 ISBN 4004310334
- 山田昌弘『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』筑摩書房 ISBN 4480863605
- 萩原金美『法の支配と司法制度改革』商事法務 ISBN 4785710233
- 『筑波フォーラム』9号(1980)
- 『教育社会学研究 第39集』ISBN 4491004676
- 『INR』141号(2009) ASIN B002NVLZ3U
- 『月刊日本語』247号(2008) ASIN B001VGQPTC
[編集] 外部リンク
最終更新 2009年11月7日 (土) 14:11 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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