宇宙ステーション補給機

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宇宙ステーション補給機(うちゅうステーションほきゅうき H-II Transfer Vehicle、 略称: HTV)は、国際宇宙ステーション (ISS) に長期滞在している宇宙飛行士食糧衣類、各種実験装置などを補給する輸送業務を目的とした、無人の軌道間輸送機である。宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が開発を進めており、製造は三菱重工業三菱電機IHIエアロスペースなど、大小100社程度の企業で行う。

2009年9月11日H-IIAロケットの能力増強型であるH-IIBロケットによって技術実証機(初号機)が打ち上げられ、午前2時16分、無事に軌道に投入された。9月18日午前10時49分、ISSとの結合に成功した[1][2]

宇宙ステーション補給機
H-II Transfer Vehicle

国際宇宙ステーションに接近するHTV初号機
詳細
目的: 国際宇宙ステーションへ食糧や衣類、与圧及び非与圧問わず各種実験装置などの補給物資を送り届ける
乗員: 無人
諸元
高さ: 9.6 m
直径: 4.4 m
ペイロード: 約6トン(船内用物資:約4.5トン、船外用物資:約1.5トン)
能力
持続性: ISSと最大30日間滞在可能
遠地点: 460 km
近地点: 350 km
軌道傾斜角: 51.6 度

目次

[編集] 概要

H-IIBロケットに搭載されて打ち上げられ、高度約400キロメートル上空の軌道上にある国際宇宙ステーションへ食糧や衣類、各種実験装置などの最大6トンの補給物資を送り届ける。その後、使わなくなった実験機器や使用後の衣類などを積み込み、大気圏に再突入させて燃やす計画である。宇宙ステーションにはハーモニー付近に設置されたロボットアームでつかんでドッキングさせる方法が採られる。

なお、「ひまわり」や「はやぶさ」のような他の日本国産人工衛星に付けられる愛称は存在しないが、この理由は使い捨てという用途のためである[3]

[編集] 開発の経緯

宇宙ステーションとドッキングするHTVの当時の予想図

日本はISSに実験モジュール「きぼう」を設置することで参加しているが、その利用や維持のためには、物資を送り届け、不要品を廃棄する必要がある。そこで、物資の輸送や廃棄は日本独自の輸送手段を開発して自ら行うことが考えられた。また、「きぼう」はアメリカが設置するモジュールから電力や水、空気などの供給を受けており、その費用をアメリカに支払う必要があるが、アメリカが必要とする物資を日本が輸送することで、費用を相殺することができる。こうすれば、費用をアメリカに支払うのではなく日本国内で使うことができ、日本の宇宙技術や産業の発展にとって良いと考えられた。

日本ではISSに物資を輸送する手段としては、まず HOPE(ホープ、H‐II Orbiting Plane)の開発が進められていた。しかしHOPEは再使用可能な宇宙船であり、物資の回収が可能である代わりに、一度に輸送できる物資は比較的少なかった。そこで、ISSへの物資輸送と不用品廃棄に特化した使い捨ての無人貨物機を開発し、前述の所要輸送量をまかなうことが考えられた。これがHTVである。なお、予算削減などの理由からHOPEの開発は凍結されたため、HTVは日本にとって唯一の輸送手段となってしまった。

当初、HTVはH-IIAロケット液体ロケットブースター (LRB) 1基を追加した212型で打ち上げる前提で開発が進められていた。しかし再検討の結果、LRBを追加するより、1段目を大型化する方が経済性、確実性、輸送能力などの点でより優れていると判断され、H-IIBロケットの開発が決定した。

[編集] 構成

HTVは当初から、補給キャリアの組み替えにより様々な輸送需要に対応したり、将来は有人宇宙船や軌道間輸送機に発展させることを容易にするため、モジュール設計が行われている。まずは与圧物資と非与圧物資を搭載する「混載型」のみ開発したため、組み替え形態の開発は将来構想となったが、モジュール単位で開発して後で組み合わせることが可能になり、開発の効率化にも役立った。

大きく分けると、前側2/3程度が補給キャリア、後側1/3程度が電気・推進モジュールである。

[編集] 補給キャリア

ISSに補給する物資を搭載する区画。与圧部と非与圧部からなる。ISSに補給品を送り届けた後、不要品を搭載して大気圏に突入し、焼却処分する役割も持つ。 なお、開発初期段階では非与圧部がなく与圧部を大きくした構成も発表されていたが、公開された地上試験機や初号機は与圧部と非与圧部を持つ混載型である。最近の構想図でも、与圧部のみの構成や非与圧部のみの構成が掲載されているが、将来このような構成を使用する予定があるのかは未公表である。以下、混載型の補給キャリアについて解説する。

[編集] 補給キャリア与圧部

ISSの船内用補給品を搭載する区画。国際標準実験ラック (ISPR) またはHTV補給ラック (HRR) を合計8個搭載することができる。HRRは飲料水、食料、衣類等を輸送する際に用いるラックで、物資はCTBと呼ばれるISS標準のバッグでHRRに収められる。補給品は、ISS乗員が乗り込んで搬出するため、内部はISSと同じ1気圧の環境に保たれる。ISSを離れる際には、ISSの不要品(使用済みラック等の廃棄物)を積み込み、HTVごと大気圏に突入して廃棄される。 補給キャリア与圧部は、HTVとISSの結合部でもある。先端部分には共通結合機構(CBM)を装備しており、ISSのモジュールに結合することができる。通常、HTVはハーモニー(ノード2)の地球側結合部に接続される。

[編集] 補給キャリア非与圧部

ISSの船外の宇宙空間に設置される部品や補給品を搭載する区画。2.7m × 2.5mの開口部に曝露パレットを収納することができ、曝露パレットは「I型」、「III型」と「MP (multi‐purpose) 型」の3種類が用意される。

I型は、きぼうの船外実験部に取り付けるための実験装置を2〜3個搭載する。HTVがISSに接続されると、パレットはカナダアーム2により引き出され、きぼうの船外実験部に取り付けられる。

III型は、ISSの軌道上交換ユニット (ORU) を搭載する。I型と同様にカナダアーム2により引き出され、トラス上に取り付けられる。ORUには様々なものがあるが、バッテリーの場合は6個搭載することができる。

[編集] 電気モジュール

誘導制御系・電力供給系・通信データ処理系・通信系の電子機器を搭載する。なお、太陽電池はプログレスATVと異なり、パドルを突き出す形状ではなく、電気モジュールや補給キャリアの外面に取り付けられる。これはHTVがプログレスやATVのように自らドッキングするのではなく、カナダアームで捕まえてもらうため、パドルがあると邪魔になるからである。

[編集] 推進モジュール

軌道変更や姿勢制御のための推進装置を装備する区画。燃料(MMH: モノメチルヒドラジン)タンク2基、酸化剤(MON3: 窒素添加四酸化二窒素)タンク2基、軌道変換用メインエンジン4基、姿勢制御用RCSスラスタ28基を装備する。 なお、メインエンジン(R-4D)とスラスタ(R-1E)は全て、米Aerojet社製である[4]

[編集] フェアリング

フェアリングはHTVではなくH-IIBロケットの一部ではあるが、HTV打ち上げの際は専用の5S-H型を使用する。5S-H型フェアリングは通常の5S型フェアリングより全長が長いだけでなく、上部に1.4m四方のハッチを有することが特徴である。このハッチを利用することで、HTVをフェアリングに収めた後も補給キャリアに入室することが可能であり、打ち上げ直前に搭載したい試料を搬入することができる。

[編集] 運用

[編集] 打ち上げ〜ランデブ

H-IIBロケットで打ち上げられたHTVは、NASAのデータ中継衛星TDRSとの通信を開始し、筑波宇宙センターにあるHTV管制センター(HTV-CC)の管制を受ける。HTVが正常であることが確認されると、約3日間掛けてISSから23kmの位置まで接近する。

この距離では、きぼうに設置された近傍域通信システム(PROX)との通信が可能になる。きぼうに搭載されているGPS受信機を利用したGPS相対航法(RGPS)により、ISSと同じ高度で、ISSの7km後方の接近開始点 (Approach Initiation Point) に投入される。AI点まで正常な状態が確認できれば、AI Maneuver により接近を継続する。何らかの理由で接近を中断したい場合は、AI点にて相対的に停止(ISSと一定の位置関係を保持)する。なお、初号機(技術実証機)は、チェックアウトのためAI点で停止する。

[編集] 接近〜ドッキング

まず、RGPSによりISSの下方500mのRバー投入点 (R‐bar Injection Point) に接近する。きぼう (JEM) の下部には反射板(コーナーキューブリフレクタ)が取り付けられており、HTVはこれにレーザーを当てて正確な位置を測定しながら、ゆっくりと接近する(ランデブセンサ航法)。接近速度は毎分1〜10mで、ISSもしくは地上から接近の一時停止や一旦後退、中止などの操作ができる。途中300mの位置で一旦停止し、ヨーマヌーバを実施してヨー姿勢を0°に戻し、接近を再開する。最終的に、きぼう (JEM) の下方約10mの把持点 (Berthing Point) で、HTVは停止する。

プログレスやATVと異なり、HTVは自動ドッキングは行わない。他のCBMを使用するモジュールと同様、HTVはカナダアーム2で握持されて手動でドッキングする。まず、HTVは全てのスラスタを停止して待機する。次に、カナダアーム2がHTVを握持し、ハーモニーの地球側結合部に取り付ける。

[編集] 手動でのドッキング

HTVが自動ではなく手動でのドッキングを採用したのは、そもそもHTVがドッキングに利用する共通結合機構(CBM)にはターゲットマーカーが無く、自動でのドッキングに対応していないからである。よって、一部で囁かれている「安全性のため」や「技術力がないから」といった憶測は正しくない。

HTVはこのCBMへの接続を採用することにより、プログレスやATVとは違い、遥かに大きい物資の搬出が可能となる[2]

[編集] 係留中

HTVのドッキング位置

HTVがドッキングするハーモニーはISSの最前部であり、HTVを使用してISSのリブーストを行うことはない。前述の通り、補給キャリアから補給品の取り出しと不要品の積み込みが行われると、HTVはISSから離脱する。

HTVの係留中にスペースシャトルがドッキングする場合、HTVのすぐ隣にシャトルのペイロードベイが位置してしまい、物資搬出に支障を来す。特にMLPMを輸送するミッションの場合、MLPMが使用するハーモニー地球側結合部をHTVが塞いでしまっていることになる。このような場合は、あらかじめHTVをハーモニーの天頂側結合部に移しておく場合がある。[5]ハーモニー天頂側はセントリフュージが使用する予定だったが、セントリフュージの計画中止で空いており、過去にはきぼう船内保管室の仮設置に使われたことがある。

[編集] 分離、廃棄

CBMを分離すると、HTVはカナダアーム2でISSの姿勢から離れた場所に置かれた後、ISSから遠ざかる。軌道離脱の噴射を行い、通常は南太平洋、場合によってはインド洋に再突入する軌道に入る。 再突入時に発生する1000度以上の高温に耐えられる耐熱金属等でできた一部の部品(噴射ノズルやタンク等)を除き、確実に燃え尽きるように設計されおり、アルミ合金・特殊樹脂などでできた本体、廃棄された不要品ともども大部分が燃え尽きその任を終える[2]。燃え尽きなかったごくわずかの部品は南太平洋、またはインド洋の海中に消えることになる。

[編集] 諸元

HTV 初号機
  • 全長 9.6m
  • 直径 4.4m
  • 質量 約10.5トン(補給品除く)
  • 補給能力 約6トン(船内用物資:約4.5トン、船外用物資:約1.5トン)
  • 廃棄品搭載能力 約6トン
  • 目標軌道(ISS軌道)
    • 高度:350km-460km
    • 軌道傾斜角:約51.6度
  • ミッション時間
    • 単独飛行能力:約100時間
    • 軌道上待機能力:1週間以上
    • ISS滞在可能期間:最大30日間

[編集] 実績

[編集] HTV-1

HTV-1ミッションは、打ち上げロケットともども最初のフライトであり、H-IIBロケット1号機は試験機、HTV初号機は技術実証機とも呼ばれている。 9月11日午前2時1分、H-IIBロケット1号機にて打ち上げられ、9月18日(日本時間9月18日午前4時51分)、ISSとドッキングした[2]。 フライト期間は2009年(平成21年)9月11日から11月2日までである。

[編集] 積荷

与圧部
  • ISPR1基(NASA実験装置)
  • 各種補給品を搭載するHRR7基
非与圧部

搭載量は与圧、曝露合わせて約4.6tであり、本来の能力6tからは余裕がある[6]

[編集] 記録

日付 時刻 項目 結果
9月11日 午前2時1分 H-IIBロケット1号機にて打ち上げ 成功
午前2時42分 二軸姿勢の確立 成功
午前3時16分 三軸姿勢の確立 成功
午前9時33分 - 11時49分 ランデブ用軌道調整マヌーバの実施 成功
9月12日 午前10時12分 - 午後4時34分 運用検証試験の実施 成功
9月15日 - 最終接近運用承認判断 承認
9月16日 午前9時04分 第一回高度調整マヌーバ実施 成功
9月17日 午後10時59分 接近開始点(ISSの後方5km)に到着 成功
9月18日 午前1時38分 Rバー開始点(ISSの下方500m)に到着 成功
午前1時48分 ホールドポイント(ISSの下方300m)に到着 成功
午前2時55分 - 午前3時44分 パーキングポイント(ISSの下方30m)に移動 成功
午前4時05分 - 午前4時27分 バーシングポイント(ISSの下方10m)に移動 成功
午前6時41分 - 10時49分 ISSへのドッキング作業の実施
ロボットアーム操縦:ニコール・ストット宇宙飛行士(アメリカ)
成功
9月21日 - 与圧部内搭載品の搬出開始 -
9月23日 午後10時33分 曝露パレットをきぼう船外実験プラットフォームに設置 成功
10月20日 - 与圧部内搭載品の搬出完了 -
10月30日 午前2時32分 与圧部ハッチを閉じる -
10月31日 午前0時02分 ロボットアームにてISSから取り外し。係留時間:42日16時間35分 成功
10月31日 午前2時32分 ロボットアームから切り離し、およびISSからの離脱 成功
- - 第一回軌道離脱マヌーバ実施 成功
11月2日 午前1時25分 - 午前1時34分 第二回軌道離脱マヌーバ実施 成功
11月2日 午前5時53分 - 午前6時01分 第三回軌道離脱マヌーバ実施 成功
11月2日 午前6時26分頃 大気圏突入。ミッション終了 成功

[編集] 予定

[編集] HTV-2

2010年度(平成22年度)冬季打ち上げ予定[7]

勾配炉ラックを搭載することが公表されているが、それ以外の積荷は未公表。

以降の打ち上げ予定は未公表だが、年1機のペースで2015年まで、計7機の打ち上げを見込んでいる[2]

[編集] 他の輸送手段との比較

スペースシャトルが退役する2010年時点で、ISSへ物資を輸送する手段は、HTVのほかロシアのプログレス補給船と、プログレスの後継機である欧州補給機 (ATV) がある。しかしプログレスとATVは、共通結合機構 (CBM、1.2m × 1.2mの正方形) より小さなドッキング装置(直径80cm)を用いるため、国際標準実験ラック (ISPR) はドッキング装置のハッチを通過することができず、輸送できない。また、定期的に交換するバッテリーなどの軌道上交換ユニット(ORU)も輸送することができない。これらの補給品は従来、スペースシャトルの多目的補給モジュール (MPLM) や曝露機器輸送用キャリア (ICC-VLD) で輸送しているが、シャトル退役以降はHTVのみに頼ることになる。

なおプログレスとATVは、ハッチを通過できる小型の補給品のほか、ISSの推進剤を補給するためのタンクとパイプを搭載しているが、HTVでは推進剤を輸送することはできない。

小型の実験機材や食料、衣料などは、HTVやプログレス、ATVのいずれでも輸送することができる。これらは与圧室内に搭載され、ISS搭乗員が運搬する。廃棄も同様である。

[編集] ランデブー・ドッキングシステム

宇宙船とISSとのドッキングシステムが従来のものと異なっている。他の宇宙船はロシア製の自動ドッキングシステムであるが、HTVは世界で初めて「ランデブー飛行により、相対的に停止させロボットアームで把持しドッキングする」という手法をとっている。

[編集] NASAによる利用の可能性

NASAはシャトル後継機としてオリオンの開発を進めているが、現在の予定でも就航は2015年以降となっている。この空白期のISSへのアメリカ担当分補給の手段として、NASAは民間開発の宇宙船COTSを利用する予定だが、こちらの開発も順調ではないとみられている。このような経緯から、NASAからJAXAに対してHTV購入の打診を行ったとの報道があったが、この件についてNASAは否定している。JAXAも購入の打診については否定しているが、HTVでしか運べない物資はあるとコメントしており、将来の可能性には含みを残した。また、COTSにおいてロッキード社アトラスロケットを用いてHTVを打ち上げる事を視野に入れたが、すぐに断念した。なお、HTVはもともと日本だけの物資を輸送するための輸送機ではなく、NASAの実験装置や各種補給品も搭載するため[8]、購入はともかく利用は予定の範囲内である。

[編集] 改良

HTVの打ち上げは2015年までに7機を予定しており、この間にも改良が検討されている。以下に公表されている改良内容(採用未定のものを含む)を挙げる。

[編集] LED照明の採用

補給部与圧区内の照明には、ISS共通の蛍光灯が使用されている。この蛍光灯はアメリカ製で、割れてもガラス水銀が飛散しないなど宇宙での使用に対応した特別品だが、ISS計画の遅れで劣化していることもあり、ISS内で点灯しなくなるものが相次いでいる。そこでHTV用に、発光ダイオード (LED) を使用した照明装置が開発され、2010年打ち上げの2号機から搭載されることになった。この照明装置はパナソニック電工がJAXAの事業公募制度「宇宙オープンラボ」 に応募して採用されたもので、LEDは蛍光灯と比べて劣化や故障が起きにくく、万一故障しても20個のLEDと2組の電源回路を使用するため完全に不点灯になる可能性が低いとされている。まずHTVで使用されるが、引き続きISS本体にも採用するため、検討が行われている。[9]

[編集] 蓄電池の改良

HTVは当初、一次電池のみを搭載する予定だったが、開発途中で太陽電池と蓄電池を追加した。その後、高性能の宇宙用1次電池が入手できなくなったため、どちらも同じリチウムイオン二次電池を使用することになった。しかし当初の設計を引き継いでいるため、1次電池の代わりに搭載した電池は太陽電池で充電することができず、電池が重複して搭載された設計になってしまっている。そこで、地上で充電した蓄電池に、軌道上で太陽電池から充電できるよう回路の設計を変更し、総重量の1割程度を占めている蓄電池を削減することが検討されている。

[編集] 太陽電池のパドル化

HTVは表面に太陽電池を貼り付けているため、結果的にこれが放熱特性を悪化させている。太陽電池をパドル化することで、放熱特性改善による軽量化や、発電効率改善による太陽電池軽量化、飛行姿勢の自由度改善を図ることが検討されている。

[編集] H-IIBロケットとの接続部改善

H-IIBの第2段はH-IIAと共通のため、衛星搭載部の直径が3.2mしかなく、直径4mのHTVは裾を絞った形状になっている。H-IIBの衛星搭載部を4mに拡大すれば、HTVの構造を簡素化でき、軽量化につながる。また、H-IIBの2段目自体を1段目と同じ直径5.2m程度に大型化すれば、推進剤を増量してHTVの総重量を増加することも可能になる。これらの改良で補給品搭載量を増加できるほか、後述する発展型の開発にも活用できる。

[編集] 発展型の展望

HTVは人間を乗せての打ち上げこそ行わないものの、ISS係留中に人が立ち入ることができる安全性を有し、無人での単独飛行が可能な宇宙船であることから、HTVを基点とした発展型が構想されている。なお、これらの構想は論文等で公表されているが、正式に開発が決定したものではないことに留意されたい。[10][11]

[編集] HTV搭載型回収システム

スペースシャトルの退役により、ISSから実験試料などを持ち帰る手段が減少する。2010年の時点で確実に使用可能な手段はソユーズ宇宙船のみであり、搭載できる物資は1機あたり60kgに限られることから、日本独自の回収手段が構想されている。また、将来の有人宇宙船開発に向けて、大気圏再突入の経験を積むことにもなる。

HTVに物資回収機能を付加するため、補給キャリア非与圧部に再突入カプセルを納めることが検討されている[12]。ISSの乗員は、補給キャリア与圧部を経由して再突入カプセルに出入りすることができる。ISSから離脱し、さらに軌道を離脱すると、再突入カプセルは他のブロックを切り離して大気圏に再突入する。

[編集] 月軌道間輸送機

HTVの推進系を性能向上することで、ISSと月軌道などを連絡する、月軌道間輸送機を開発することが構想されている。また、開発中のLNG推進系は、液体水素より宇宙空間での保存が容易で、ヒドラジンより性能や安全性が高いことから、月軌道間輸送機の推進剤にも適しているとして、HTVと組み合わせることで月軌道間輸送機を実現する構想となっている。

[編集] 有人宇宙船

JAXAは、2015年に有人宇宙船開発の判断を行い、2025年に実用化することを掲げている。HTVはISS係留中に宇宙飛行士が立ち入るため、有人宇宙船に相当する安全性を備えていることから、日本の有人宇宙船開発の基本になるものと位置付けられている。 このため、上記のHTV搭載型回収システムを実用化するなど、有人宇宙船の要素技術を開発し、2015年までに有人宇宙船の開発計画をまとめる方針である。構想では、2020年までにHTV搭載型回収システムを発展させた有人回収カプセルと、無人の有翼再使用型回収システムを開発する。これらを統合し、2025年までに再使用型有人宇宙船を開発するとしている。

2008年6月に発表された構想[13]によれば、HTVの推進モジュールに4人乗りの有人カプセルを組み合わせることを基本とする。最小構成の重量は6tで、H-IIA202型ロケットでの打ち上げも可能だが、脱出ロケットを持たないため有人打ち上げはできない。最大構成では、脱出ロケットや居住モジュールも搭載され、H-IIBロケットの2段目を大型化して対応する。なお、この構想は2001年にNASDA先端ミッション研究センターが構想を発表した「ふじ」と共通点が多い。[14]

ソユーズ神舟は上から順に脱出ロケット、居住モジュールに相当する部分、有人カプセル、電気・推進部の順なので、脱出ロケットは補給キャリアごとカプセルを脱出させる。HTV有人型は有人カプセル、推進モジュール、居住モジュールの順になるので、脱出時は有人カプセルのみを脱出させる。軌道に到達すると、補給キャリアを後方から前方に入れ替え、ソユーズなどと同じ構成になる。

[編集] 日本単独宇宙ステーション

HTVを基に、日本独自の宇宙ステーションを建設する構想も存在している。補給キャリアの代わりに宇宙ステーションのモジュールを搭載して打ち上げたり、HTV自体を宇宙ステーションの推進機能として利用することが考えられている。

これは、ロシアの宇宙ステーションと同じ手法である。ミールやISSのロシア製モジュールの多くはTKS宇宙船を基に開発したため、自力でISSにドッキングすることが可能で、ISSの高度や姿勢を制御するのにも使われている。また中国の神舟宇宙船も、軌道船と組み合わせて宇宙ステーションとして使用することが想定されている。

JAXAの一案では、HTVを基にした推進モジュールや、HTVで輸送される太陽電池アレイ、居住モジュールを打ち上げ、これと既存のきぼうを組み合わせることで日本独自の小型宇宙ステーション(JSS)を実現する。なお、宇宙政策シンクタンク「宙の会」がこれとほぼ同じ趣旨の構想を発表しているが、こちらはきぼう以外にもISSのモジュールを流用しているため、より大型である。

[編集] 備考

  • HTVのアイデアそのものは古く、H-IIロケット開発時のイラストには、先端に共通結合機構(CBM)を装備した与圧キャリアらしきものを搭載したH-IIロケットもある。また、五代富文NASDA副理事長(当時)は、H-IIの能力を向上して宇宙ステーションの日本モジュール(現在のきぼう)を独自に打ち上げることも提案したが、これは実現しなかった。

[編集] 脚注

  1. ^ JAXA|宇宙ステーション補給機(HTV)技術実証機の国際宇宙ステーションとの結合完了について 2009年9月18日 宇宙航空研究開発機構
  2. ^ 補給機HTV、宇宙基地接続成功 物資輸送の第一歩 - 47NEWS 2009年9月18日
  3. ^ “[[1]]”. 毎日新聞. (2009-11-21). http://mainichi.jp/select/science/news/20091121k0000e040048000c.html 2009-11-21 閲覧。 
  4. ^ "Aerojet Engines Power Japanese HTV Mission to International Space Station" 2009年9月17日
  5. ^ 「STS-127(2J/A)プレスキット」 2009年6月12日 宇宙航空研究開発機構
  6. ^ 「宇宙ステーション補給機(HTV)技術実証機開発状況について」 2009年6月10日 宇宙航空研究開発機構
  7. ^ H2Bロケット 2011年1月にも2号機打ち上げ - 南日本新聞 / 2009年10月15日10:50
  8. ^ 宇宙作家クラブ ニュース掲示板
  9. ^ パナソニック電工プレスリリース
  10. ^ 「宇宙輸送系の現状と展望」宇宙航空研究開発機構(JAXA)将来宇宙輸送系研究センター 中安英彦[2]
  11. ^ 「Preliminary Study for Manned Spacecraft with Escape System and H-IIB Rocket」Takane Imada, Michio Ito, Shinichi Takata[3]
  12. ^ 平成16年度HTV搭載型回収カプセルシステム検討成果報告書PDF
  13. ^ 「Preliminary Study for Manned Spacecraft with Escape System and H-IIB Rocket」Takane Imada, Michio Ito, Shinichi Takata[4]
  14. ^ 「日本独自の有人宇宙船構想」宇宙開発事業団先端ミッション研究センター 野田篤司[5]

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

ウィキメディア・コモンズ

最終更新 2009年11月21日 (土) 13:45 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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