定数変化法
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定数変化法(ていすうへんかほう、method of variation of constants)は非斉次線形常微分方程式の解法の一つである。非斉次方程式を解くにあたり、対応する斉次方程式の一般解がわかればその任意定数を関数で置き換えたものが非斉次方程式の解である。 この性質を利用すると、求積法によって非斉次方程式の一般解を求めることができる。
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[編集] 概要
独立変数tのスカラー値、またはベクトル値の未知関数x(t)が満たす 方程式が

と書けるとき、これを(一階の)線形常微分方程式という。特に
のときは 斉次方程式、そうでないときは非斉次方程式という。 ここで、A(t)はスカラー値または行列値、p(t)は スカラー値またはベクトル値の関数である。
非斉次方程式が与えられたとき、p(t)をゼロで置き換えると斉次方程式が得られる (これを「属する斉次方程式」という)。
斉次方程式の独立な解ξj(t),...,ξn(t)を基本解と言う。 斉次方程式の一般解は適当な定数C1,...,Cnによって x(t) = ΣjCjξj(t)と書ける。
非斉次方程式の一般解は斉次方程式の基本解と適当な関数γ1(t),...,γn(t)によって x(t) = Σjγj(t)ξj(t)と書ける。
すなわち、ちょうど、斉次方程式の一般解で定数を関数で置き換えたものが非斉次方程式の解になって いる。このため定数変化法の名前がある。
[編集] 解法の使い分け
一元一階の微分方程式の場合は、公式の記憶などの手間がない分、定数変化法が便利であろう。 一元高階、多元連立一階の場合、定数係数であれば、記号法、ラプラス変換法、 演算子法などが便利であろう。他方、関数係数の場合は定数変化法以外で扱うのは 難しい。
[編集] あらぬ誤解
多くの教科書に「斉次方程式の一般解 Cξ(t)が得られた時、 非斉次方程式の解がC(t)ξ(t)と表せるならば、云々」と書いてあるので 初学者の中には「運よくそう表せる場合にしか適用できない」と勘違いしている人が いるが、これは間違い。 いかなる場合もそのように表せることが証明できる。
以下に詳しく述べる。
[編集] 例題による助走
[編集] 一元一階線形常微分方程式の場合
以下では独立変数を t とし、未知関数 x(t) を求める。

対応する斉次方程式は

これを変形すると、
または
かつ 
後者の場合は積分して
![x(t) = C \exp \left [ \int^t a(s) ds \right ]](/ja/math/3/c/f/3cf5f978025dc309d3031928ef88c08e.png)
これは
の場合も含む。
が基本解である。
非斉次方程式の解 x に対し
とおくと、
で、 斉次方程式の解 Cx(t)において 任意定数Cを関数C(t)で置き換えたものが非斉次方程式の解になる。
![\dot C \exp \left [ \int^t a(s) ds \right ]
+ C a(t) \exp \left [ \int^t a(s) ds \right ]
= a(t) C \exp \left [ \int^t a(s) ds \right ] + p(t)](/ja/math/f/4/d/f4d5d37f4708c91d4414d1e5ac25da89.png)
整理すると
、すなわち
。
よって
。
これにより
![x = c \exp \left [ \int^t a(t) dt \right ]
+ \int^ t \exp \left [ \int_\tau^t a(s) ds \right ] p(\tau) d\tau .](/ja/math/0/8/9/08932477fc557a06c5f255bd314b94ed.png)
となって、非斉次方程式の解が求まる。
[編集] 定数変化法の根拠
一元一階の場合は斉次方程式の基本解が非ゼロ関数なので、非斉次方程式の解を定数変化法の形に 書けることが明らかに保証されている。
[編集] 二元連立一階の場合

まず、斉次方程式を考える。 斉次方程式の解空間は2次元線形空間であるから2つの基本解

によって一般解は x = C1ξ1(t) + C2ξ2(t), y = C1η1(t) + C2η2(t)と書ける。
次の節で示すように、定数変化法が必ず適用できて、非斉次方程式の解が x(t) = C1(t)ξ1(t) + C2(t)ξ2(t), y(t) = C1(t)η1(t) + C2η2(t) と書ける。これを元の方程式に代入して

基本解は斉次方程式の解であったことを思い出すとこの式は整理できて

次節で示すように行列式
がゼロでないので
は基本解と既知関数によって代数的に表せる。 これを積分することで一般解が求まる。
[編集] 一元二階の場合

これは
とすると

と二元連立一階の場合に帰着される。
一元二階の斉次方程式
の基本解を ξ1,ξ2 とすれば、二元連立一階の斉次方程式の2つの基本解は
および
で与えられる。(y= の式ではξi のドットに注意。)
よって定数変化法の条件式は

となる。ここまでくれば二元一階の場合と同様に求積法で解くことができる。
[編集] 多元連立一階線形常微分方程式の場合
n次元数ベクトルおよびn×n行列を使うと方程式は
.
これに属する斉次方程式
の線形独立な解(ベクトル値関数)を ξi,(i = 1,...,n)とする。これを基本解という。 このとき
をロンスキー行列(Wronski matrix)という。 また、その行列式をロンスキアン(Wronskian)という。
ロンスキー行列は各列が
を満たすから
.
次の定理に示すようにロンスキー行列は、常に正則である。 ゆえに、 非斉次解 x(t) に対して C(t) = X − 1(t)x(t)と置くことができて、 
ゆえに
.
これを積分すればC(t)、さらには x(t) = X(t)C(t) を求めることができる。
[編集] ロンスキー行列が正則な理由
まず次の補題を示す:
[編集] 補題:行列式の微分
一般に行列値関数X(t)に対し

なぜならば、クラメルの公式により
。 ここで行列 adj Xの第ij要素は X の第ji余因子である。(ijの順序に注意。 一般に行列 X の第hk余因子は X から 第h行と第k列を除いてで きる(n-1)次正方行列の行列式のこと。)また、id は単位行列である。
ゆえに任意の ij について

(adjX)kiはXijを含まないから
上式
ゆえに 

(補題証明終)
[編集] 定理:ロンスキー行列の正則性
(証明)
ロンスキー行列 X(t) があるt * で非正則であったと仮定してみる。 detX(t * ) = 0
このとき、補題により 
ゆえに
となって、基本解の線形独立性に反する。 以上によりロンスキー行列は常に正則である。
(証明終)
[編集] 一元高階の場合
一元二階を二元連立一階に還元したのと同様に多元連立一階の場合に 還元できる。 得られる定数変化法の条件式も同様である。
一元n階の方程式を考える:
.
ここで、
,


と書くと

となって、n元連立一階方程式に還元される。
一元n階斉次方程式の基本解をξj(t),(j = 1,...,n)とするとき、
とすればこれらはn元一階斉次方程式の基本解をなす。
ロンスキー行列を X とすると
。
成分で書き下すと

ロンスキー行列は正則だからこれを解いてCj(t)を求めることができて、 非斉次方程式の一般解を求めることができる。
[編集] 例(ルジャンドルの方程式)

属する斉次方程式の基本解は 1 と
である。
斉次方程式の一般解は
。
定数変化法により


これを解いてまず C2(t) = t − t3 + c2。

第二項
。
よって元の非斉次方程式の解は
。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 東京大学応用物理学教室編:微分方程式(東京大学基礎工学2), 東大出版会 (1960)
最終更新 2009年9月13日 (日) 00:40 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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