実行の着手

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実行の着手(じっこう - ちゃくしゅ)は、刑法用語であり、犯罪の成立要件のひとつである構成要件を構成する実行行為の開始を指す概念である。

目次

[編集] 意義

[編集] 未遂罪の成立

未遂罪は「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった」(刑法43条)と定義されるため、未遂罪の規定のあるものについては、実行の着手が認められると未遂犯として処罰しうる。逆に、実行の着手に至っていなければ、未遂罪に問えず、犯罪不成立又は予備罪が規定されている場合に予備罪が成立するのみである。

[編集] 結果的加重犯の成立

結果的加重犯においては、実行の着手後、重大な結果が発生すれば、元の犯罪につき既遂か否かを問わず、元の犯罪を含んだ結果的加重犯が成立する。

一例を挙げると、強姦罪において実行の着手は、強姦の手段としての暴行又は脅迫行為の一部を行ったときとされており、このときに被害者に致傷があれば、強姦罪が既遂(交接の事実を要する)ではなくとも、強姦致傷罪が成立することとなる。

[編集] 実行の着手時期

実行の着手は、必ずしも「観察上、実行行為の始まる時点」を指すということはできない。実行の着手時期の定義は、「どの時点から未遂を処罰するか」という、政策的な意味合いを持つこととなるためである。この実行の着手時期については、以下のような学説が対立している。

主観説
犯意の明確化(犯罪を犯す意思が明確になること)を基準とする説。具体的には、「犯意の成立が確定的となる行動が行われたとき」や「犯意の飛躍的な表動が認められたとき」を実行の着手時期とする。例としては、「人を殺すために、ピストルを持って、建物に侵入した時点」が考えられる。
形式的行為説
構成要件の一部の実行の開始を基準とする説。「観察上、実行行為の始まる時点」にほぼ等しい。例としては、「人を殺すために、ピストルを人に向けて、引き金を引いた時点」が考えられる。
実質的行為説
構成要件の実現に至る現実的危険性を含む行為の開始を基準とする説。例としては、「人を殺すために、ピストルを人に向けて、引き金に手をかけた時点」が考えられる。
結果説
法益侵害の危険性が一定程度に達した時点を基準とする説。実質的行為説と同様に危険性の概念を含むが、実質的行為説が危険性を生じさせる行為を基準とするのに対し、結果説は結果として危険性が高められたことを基準とする点で異なる。例としては、「一年後に爆発する時限爆弾を仕掛けた後に、その残り時間が短くなることで爆発の危険が一定程度に高まった時点」(この時点に「行為」と呼べるものは存在しない)が考えられる。

[編集] 不作為犯の着手時期

不作為犯の場合、「一定の作為を働かないこと」が実行行為とされるため、その実行の着手時期をどの時点とするかが問題となる。

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[編集] 参考文献

  • 前田雅英 『刑法総論講義 第3版 』 東京大学出版会、1998年、145-148頁。

最終更新 2008年7月21日 (月) 16:35 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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