射出座席
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射出座席(しゃしゅつざせき)とは航空機から非常時に脱出するための装置。作動させると、搭乗者は座席ごとロケットモーター等によって機外へと投げ出され、パラシュートで降下する。主に戦闘機など小型の軍用機に装備されている。
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[編集] 歴史
航空機が開発された初期の頃から第二次世界大戦の頃までは、航空機の速度は比較的低速であり、脱出はそれほど困難ではなかった。そのため射出座席はほとんど使用されず、脱出はパラシュートを搭乗前にあらかじめ装備しておき、脱出時は自力でコクピットから飛び降りる方式がほとんどであった。[1]しかしこのような脱出方法だとコクピットから飛び出した後に自機の尾翼にぶつかる可能性があり、実際にその様な事故が多発したため第二次世界大戦中のドイツの一部の航空機には圧縮空気で打ち出すタイプの射出座席が装備されていた。
射出座席を本格的に実用化したのは、イギリスのマーチン・ベイカー社で、第二次世界大戦中から開発を行っていた。マーチン・ベイカー社が開発をしていた射出座席はドイツが採用していた圧縮空気より力のある火薬式のものだった。なおマーチン・ベイカー社は現在でも射出座席の代表的メーカーのひとつである。
射出座席が一般的に使用されるようになったのは、航空機がレシプロ機からジェット機になり急激に高速化した第二次世界大戦後である。空気抵抗は速度の2乗に比例するため、速度が2倍になった場合、体が受ける抵抗は4倍にもなる。そうなると機体から自力で脱出するのは非常に困難であるため射出座席が装備されるようになった。
[編集] 現況
現代の射出座席は大きく進化を遂げた。 射出可能な速度域が広がり、高度0速度0の状態からでも、パラシュートが十分開く高度までパイロットを打ち上げる「ゼロゼロ射出」が可能な射出座席がほとんどとなっている。 また、座席を打ち出すための推進装置としては、火薬よりもパイロットにかかるGが小さいロケットモーターが多く使われている。 脱出時には、キャノピーへの衝突を防ぐため、火薬を使って、ハッチやキャノピーを丸ごと投棄したり、あるいは、プリマコードを埋め込んでおき、キャノピーのグラスを砕く様になっている。
しかし、火薬よりかかるGが小さくなったといってもパイロットには15 - 20 Gがかかるため、適切な姿勢をとっていない場合、背骨などが折れて死亡する可能性も十分ある。 そのため射出座席が使用された場合、打ち出される直前に全身がシートベルトで固定され適切な姿勢が保たれるようなものが多い。 悪条件が重なった場合、先に投棄されたキャノピーに射出されたパイロットが衝突する危険性や、コクピット内に発生するロケットモーターの高温の噴出ガスでパイロットが火傷を負うこともある。 このような危険性と取り扱い上の注意事項から、アメリカ軍では戦闘機などの射出座席を装備する航空機へ搭乗する人間には射出座席の訓練を修了することを義務付けている。 これは操縦も操作も行わないただ乗っているだけの人間であっても義務があるため、観光客などが突然にやってきて戦闘機に乗ることは出来ない。 ハリウッドでは映画撮影で俳優を戦闘機に乗せるために射出座席の訓練を受けさせたことがある。 ロシアなど一部では義務が無いため、戦闘機に観光客を乗せている国もある。
射出後はパラシュート降下するため、当然パラシュートの操作ができることも要求される。
射出座席は使用する人間にある程度の技量が必要であるため、民間航空機などに装備してもかえって空中に放り出された乗客が死亡したり行方不明なったりするリスクが高いだけで安全性の向上にならないことから民間の乗客が使用することは無い。 まして、海上でなんの訓練も受けていない一般人が海にパラシュートで撒かれれば大半が行方不明になることは確実であり、不時着水する方が遙かに安全であることが明確であるため、民間の旅客機に射出座席やパラシュートは搭載されない。
脱出後、水上に着水した場合でも、ハーネスに内蔵されたライフジャケットで最低限の浮力は得られる。 ただし、着水前にパラシュートの切り離しに失敗した場合は、(ライフジャケットのせいで潜れないので)パラシュートのコードが絡まって溺死する場合もある。
射出座席が進化したといっても、殆どの射出座席は、音速以上の速度では脱出ができない。 現行の射出座席として、公式に音速以上での射出をサポートしている例として、ロシアのSu-27やMiG-31、Tu-160などに装備されている、ズヴェズダ製のK-36が存在している。
脱出後に救出されるまでの間生存できるよう、射出座席には、一人用の簡易な浮き台や非常食、自衛用の拳銃、サバイバルキット、救出部隊との連絡用の無線機などが同梱されている。 東西冷戦時代は特に、これらに加えてアメリカのU-2偵察機のパイロットのように敵に捕まった時、秘密を守るための毒薬まで持たされていた例もある。
現在の射出座席は主に戦闘機など小型の航空機を中心として使用されているが、ヘリコプターに射出座席を搭載する計画もあった。 しかし、殆どのヘリコプターは射出の際にメインローターが干渉してしまう関係上搭載されず、射出座席が装備されたのはロシアのカモフ設計局が開発したKa-50位しかない。 Ka-50は、脱出時に障害となるメインローターを火薬で吹き飛ばしてから射出される。
その他、特殊なものとしては座席のみが飛び出すのでは無く、モジュール式脱出装置と言ってF-111やB-1A(試作機)の様にコクピットごと飛び出すものや、風圧に耐えるようシールドが出る様なものもある。 高々度超音速爆撃機の試作機XB-70やその護衛機として計画されたXF-108(実機が制作されないままキャンセル)では、与圧を保ったまま超音速下でも脱出可能な機構として、座席の周囲が非常時に脱出カプセルとなるシステムが採用されていた。 XB-70の脱出カプセルは空中衝突事故で実際に使用されたことがある。 F-104A初期型の様に上方では無く下方に向って飛び出すものもあった。 しかし、これらの方式は上方に放り投げる方式でないが故に低空飛行時の脱出は不可能である。 安全性の目安にされる、ゼロゼロ射出とは当然無縁の方式であった故に、現在ではオーストラリアでのみ運用されているF-111以外に採用例は無い。
[編集] 宇宙船への装備
射出座席は、有人の宇宙船にも搭載されている。
世界最初の有人宇宙船であるボストークは、重量の関係からカプセル全体を安全に減速できるだけの大きさを持つパラシュートを搭載できなかったため、大気圏再突入後、高度7000mで搭乗者を座席ごとカプセルから射出し搭乗者のみパラシュートで降下する設計となっていた。 ボストーク1号で初の宇宙飛行を行ったユーリイ・ガガーリンもこの方式で帰還したが、当初ソ連は国際航空連盟でガガーリンの宇宙飛行が認められないことを懸念し、連盟で認められるまで、射出座席が搭載されていることは語っていたがそれを使ったことを隠していた。
さらにアメリカではジェミニ宇宙船において射出座席を装備している。これは大気圏内における非常脱出用に用いられる[2]。
やがて、安全に着陸できるだけのパラシュートが搭載できるようになると、射出座席はなくなったが、後にスペースシャトルに再び搭載されることとなった。 ただこれは、試験飛行の期間に限定されて搭載されただけであり、正式な運用が開始されると重量増や機構の複雑さから取り外されてしまっている。
[編集] 脚注
- ^ もちろん現在でも、射出座席が装備されていない航空機では、この方式はいまだ現役である。
- ^ http://www.astronautix.com/craft/gemini.htm
[編集] 関連項目
最終更新 2009年9月26日 (土) 18:24 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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