児童虐待
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児童虐待(じどうぎゃくたい、child abuse)とは、子供・未成年者に対する虐待である。
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[編集] 法律による定義
日本では「児童虐待の防止等に関する法律」(平成12年法律第82号)において、
「保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう)がその監護する児童(18歳に満たない者)に対し、次に掲げる行為をすること」と定義されている(第2条)。そして、同条各号において列記されている行為は、次のとおりである。
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- 児童の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること。
- 例えば、一方的に暴力を振るう、食事を与えない、冬は戸外に締め出す、部屋に閉じ込める。
- ネグレクト(育児放棄、監護放棄)
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- 児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。心理的外傷は、児童の健全な発育を阻害し、場合によっては心的外傷後ストレス障害 (PTSD) の症状を生ぜしめるため禁じられている。
- 例えば、言葉による暴力、一方的な恫喝、無視や拒否、自尊心を踏みにじる。
[編集] 要因・状況
2008年度の児童虐待相談件数は40,639件[1]で、統計開始の2002年と比較すると40倍の数字に増加している[2]。アメリカの被虐待児童数は約88万人(2000年)、ドイツ31,000人、フランス18,000人と報告されている[3]。
現在、良く知られている要因としては
- 望まない出産や望まれない子供への苛立ち
- 配偶者の出産や子育てへの不協力や無理解に対する怒り
- 育児に対するストレス
- 再婚者の連れ子に対する嫉妬・憎悪
- 離婚後、新たに生計を共にする者(再婚者や「内縁の夫・妻」)との生活にとって邪魔
などが挙げられるが、これらがなくても児童虐待が起こりうることは銘記するべきである。
また、虐待を行う親の一部には、自らも虐待を受けた経験がある場合が多い。その割合については9.1% - 39.6%と報告により様々である[4][5]。このような現象を斎藤学は「世代間伝達」で説明している[6]。また長谷川博一は、親へのケアが遅れている現状を鑑み、世代連鎖を断つことを理念の柱に据えて、1999年から親の治療グループ「親子連鎖を断つ会」を立ち上げ現在に至っている[7]。
被虐待児が病院を受診し、虐待を受けたと思われた場合には担当でなくとも速やかに警察に通報する義務がある。[8]
[編集] 無自覚の虐待
虐待行為の中には、必ずしも自覚を伴わないものもある。ネグレクトなどではパチンコ関連で社会問題化もしているが、自動車内への放置などが「危険な行為」という認識もなく行われる事例が後を絶たず、業界団体より注意が呼びかけられ、また各店舗でも保護者に注意を呼びかけるといった活動が見られる。又、自覚のない心理的虐待としては過干渉といった例もあげられる。
揺さぶられっ子症候群に見るように、本人はあやしているつもりで負傷させるケースも警告されている。こちらでは、子煩悩ぶりを発揮して子供を喜ばせようと張り切り過ぎ、結果的に負傷させてしまうケースも報告されている。
[編集] 将来への影響
日本では児童虐待が社会問題化したのは比較的近年のため基本的データが不備であるが、児童虐待の「先進国」である欧米においては、虐待を受けた児童が成長した後の犯罪率が、平均よりも極めて高いこと、および虐待を受けた児童が将来家庭を設けたとき、自らの子供に対して虐待行為に及ぶ率が極めて高いということが分かっている。虐待は当該虐待を受けた児童にとどまらず、次世代の子供にも影響を及ぼすのである。
[編集] 対策と課題
こうした子供の救済、保護を担当するのは、児童相談所であるが、特に緊急を要する場合は、警察がまず加害者である側から児童を引き離して保護し、しかる後に児童相談所に事態の収拾を預ける事もある。しかし令状なしに強制処分を行う権限を警察に与えることは危険すぎる為、現実的ではない。 行政警察活動の一環として警察が動くことは可能であるが、相手方親権者の同意を得ることができなければ警察もそれ以上手を出せないため、実際にはさほど行われていないのが実情である[9]。児童相談所では、それぞれのケースを調査し、親に対するアドバイスや援助を行ったり、児童に必要な医療措置を手配したり、必要な場合には、親権の剥奪や児童養護施設への児童収容を手配する事もある。
また、いずれも家庭内や施設内などの閉鎖環境において行われている事もあり、その大部分が暗数となっている。児童を保護する児童相談所にしても、事実関係の調査中に親権を盾に両親が保護した児童を連れ去ったり、醜聞を恐れて引越しをしてしまう・児童が親を庇おうとして被害を訴えたがらない・両親の親が介入して児童を親元に戻してしまう等の問題もあって、手遅れになるケースも少なく無い。
躾と体罰においては、現代でこそ度を越した体罰はトラウマの要因として問題視されてはいるが、近年までは全ての肉体的な苦痛を与え得る体罰が有効な教育方針として考えられていた背景があり、特に躾の名の下に単なる暴行を行う保護者の存在が、事態を悪化させる要因になっている。なお1980年代のアメリカでは菓子の包装紙にすら「ストップ・ザ・チャイルド・アビュゥズ」という標語が記されていた。児童虐待問題の社会的取り組みが行われているアメリカでは、「子供は社会で育てるもの」という意識のもと、警察・病院・民間団体など、社会全体で問題の解決に取り組んでいるのに対し、日本では「子供は親が育てるもの」という意識が根強いため、問題が潜行し、発覚した時には重大な事態に陥っている場合が少なくない。また都会はもとより、地方都市ですら地域全体で子育てを支えるという意識が希薄なため、虐待問題の負担が行政、特に児童相談所に集中するという問題が起きている。
このため近年では、増加する傾向にある日本国内の児童虐待に的確に対処すべく、従来は育児全般に関する相談を受け付けていた児童相談所だが、2003年9月に厚生労働省は「児童虐待と非行問題を中心に対応する機関」とする位置付けの変更を決定した。特に事件報道が増えるにつれ、社会的にも児童虐待に対する認識が広まり、隣人などからの通報により、事件が発覚するケースが増えている。
[編集] 児童虐待の「発見」
児童虐待が社会問題として浮上したのは比較的近年である[10]。特に近代以前においては、児童は親の所有物という考えが社会通念としてあったために、人身売買や、果ては口減らし(間引き)とする子殺しすら行われていた。平成7年の刑法改正により削除になるまで尊属殺で子が親を殺すのは厳罰であったのに、親が子を殺すのに対しては格別罰則を設けていなかったり、推定103人を虐待死させた寿産院事件では、主犯に下された判決は懲役8年であった。
また、民法においても、親権者による「必要な範囲内」での体罰は認められているため、現実に虐待と体罰の区別を明確にすることは難しいとされている。
- 旧刑法第200条(平成7年刑法改正により削除)
- 自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス
- 民法第822条
- 親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。
[編集] 過去に確認された事例
[編集] 何らかの影響を残した事件
- メアリ・エレン・ウィルソン事件(1874年4月)
- ニューヨーク市で起きた当時8歳であったメアリ・エレンに養母のメアリー・マコーマック・コノリーが約6年に及ぶ心身的虐待を行ったという事実が世間に出ることに至った事件。この事件がきっかけとなり児童虐待防止法が生まれ、ニューヨーク児童虐待防止協会 (New York Society for the Prevention of Cruelty to Children) が創立され、児童を虐待から救う活動が広がる。
[編集] 脚注
- ^ 青少年白書2008
- ^ 平成18年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数等 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv16/index.html
- ^ 原田綾子著「「虐待大国」アメリカの苦闘」
- ^ 「児童虐待の実態II」東京都福祉局 2007.12月 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/jicen/site_map/files/hakusho2.pdf
- ^ 慶應義塾大学加藤久雄研究会 http://www.law.keio.ac.jp/~hkatoh/gyakutai/2_1_B.htm
- ^ 「虐待(家庭内暴力)の世代間伝達の暴力を断つ-レジリエンスの視点から-」治療: 87:pp3155-3161, 2005.
- ^ 「たすけて! 私は子どもを虐待したくない-世代連鎖を断ち切る支援-」2003.径書房
- ^ 「児童虐待の防止等に関する法律」においては、発見した者全てが児童相談所等に通報の義務がある(第6条)と定められている。また、通告義務は他の法が定める守秘義務より優先される(同条2項)ことも同時に定められている
- ^ 警察の援助については児童虐待防止法第10条で規定されているが、現実的に児童相談所と警察が連携した対応はほとんど行われていない。
- ^ 「親は子供に折檻を行うもの」という常識が世界的に受け入れられ、最近までは全く問題視されなかったという側面もある。
[編集] 関連項目
- 児童虐待の防止等に関する法律
- 児童の権利に関する条約
- 被虐待児症候群
- 兄弟姉妹間の虐待
- 児童相談所
- 子ども虐待防止民間ネットワーク
- 過干渉
- 児童買春
- 家庭内暴力
- アダルトチルドレン
- 機能不全家族
- 動物虐待 - ペットのいる児童虐待の見られる家庭では、その6割に動物虐待行為(内3割は被虐待児によるもの)が見られるとする統計もあり、兎角世間から気付かれ難い児童虐待行為のシグナルとして、これに注目する向きがある。
- 家庭問題
- 教育問題
- 社会問題
- オレンジリボン運動
[編集] 外部リンク
- 児童虐待って何?児童養護の現場から
- 特定非営利活動法人あきらめない
- NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク
最終更新 2009年11月6日 (金) 07:44 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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