広島・長崎オリンピック構想

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上: 広島の原爆ドーム下: 長崎の平和祈念像
 
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上: 広島の原爆ドーム
下: 長崎の平和祈念像

広島・長崎オリンピック構想(ひろしまながさきオリンピックこうそう)とは、2020年開催の夏季オリンピック2013年に開催都市決定)を広島市長崎市に招致し、開催する構想である[1][2][3]2009年10月11日に広島・長崎両市が正式発表した[4] [5]

目次

[編集] 意思表明

「平和の祭典」と呼ばれているオリンピックを被爆地である広島市と長崎市で開催することで「核兵器廃絶」と平和の尊さを世界に訴えるというものである。広島市長の秋葉忠利は、2008年9月、広島市の広報誌のコラムのなかで「将来の夢」として広島と長崎が共催してオリンピックを行いたいと明かした。この時点では「現実からは遠い夢」と記していた。しかし2008年11月10日にベルギーで開催された平和市長会議のなかで秋葉市長は広島と長崎で2020年のオリンピック招致に名乗りを挙げたいと語った。これは「核なき世界」を公約にしたバラク・オバマが米大統領に当選したのが契機であったといわれている。

2009年8月に開催された平和市長会議でも招致の意思を表明するなど、オリンピック開催の夢を温めてきた[6]。この構想は、秋葉市長が同構想を提案し、田上市長はこれを了承した[1]。そして2009年4月にバラク・オバマ米大統領がプラハでの核兵器廃絶に向けた演説を行ったことが構想のきっかけとなった[7]。結果、総会の行動計画に「2020年までに核兵器廃絶を実現した暁には、オリンピックを広島・長崎両市で開催して祝うことができれば喜ばしい」という一文が盛り込まれたが、しかし、この時点では2016年の開催都市に東京が決定する可能性もあり、その場合には同じ日本で連続開催されることはありえないため、総会後の記者会見ではオリンピックのことは触れることは無かった。

2009年10月2日デンマークコペンハーゲンで開かれた第121次IOC総会2016年夏季オリンピックの開催都市がリオデジャネイロに決定した[8]ことを受け、10月11日、秋葉市長と田上富久長崎市長2020年の夏季オリンピック共同開催に向けて招致検討委員会を設置することを正式に表明した[4][5]。なお、9日にはプラハ演説を行ったバラク・オバマ米大統領へのノーベル平和賞授与が発表されている[9]

[編集] 招致活動

両市長によれば2010年春までに正式に名乗りを上げるかどうかを最終判断する[10]。また秋葉市長は広島と長崎を中心とする複数都市への招致を念頭に置いており「これまで大都市の単独開催が慣例だった五輪を複数都市で共同開催することで、五輪の新たな可能性や展望が提案できる」としており、田上市長も「被爆地ができる新しいチャレンジだ」としている[11]。なお、後述のようにJOCだけでなく広島県にも事前に招致の意向を伝えず、東京の落選から10日後のタイミングで発表したことについて「国内の候補都市決定まであと1年しかない、時間の制約があった」ためとしている[12]

同時に両市長は、地理的に双方の間に位置する都市やその近隣、あるいはこの五輪開催の意味を判りあえる自治体に、今回の五輪招致検討委員会への参加を呼びかけた。その中で、福岡市は委員会には参加せず福岡オリンピック構想でのノウハウを提供するアドバイザーの立場で協力する、北九州市は共催はしない事を前提に委員会には参加する、と答え、大村市は正式に参加すると表明した。更には東京都大阪府にも協力を呼びかけた。[13][14][15][16]

これに対し同年11月10日、東京都の石原慎太郎都知事は、2020年のオリンピックに再立候補することをJOCに正式に表明した。あわせて、もし東京に決まった場合は一部競技を広島で開催することを示唆した。[17]

橋下徹大阪府知事は当初、2008年にオリンピック招致に失敗した大阪市の再立候補に関心を見せていた[18]が、広島・長崎オリンピック構想が発表されると一転して「日本中が一致団結して、広島と長崎を応援しなきゃいけない。やれることはなんでもしたい」と述べた[18]。同年11月13日には、広島・長崎側が呼びかけていた五輪招致検討委員会への参加についても、「広島、長崎での五輪と聞いたとき心が震えた。平和という理念は世界に伝わると思う」と述べ、大阪市と共に参加を快諾した[19]

一方で、双方ともに事前に関係機関に根回しをしていなかったため、唐突だとする批判が噴出した。

広島県の有岡宏副知事[20]は「連絡や相談を受けていない」と当惑を隠しておらず[21]、また2009年11月に退任が決定している藤田雄山広島県知事は、「オリンピック、あれフライング」と発言、不快感を示し地元が一致して招致活動を進めることが難しくなったと批判した[22]長崎県金子原二郎知事は、批判はしなかったが財政的な問題を懸念し静観する考えを表明した[23]

藤田博之広島市議会議長は「夢のある話だが、複数都市で立候補できるのか。落選した東京も多大な財政負担だったと聞く」と財政面における危惧を表明している[24]。なお、藤田議長は招致検討委員会設置を事前に説明されていたが、他の市議会議員には説明はなかったという[25]。中田剛長崎市議会副議長は「いかなる事情があろうとも、議会に報告し意見を聞くべきだった」と批判した[23]。10月13日長崎市議会が、事前に説明がなかったことや財源などを追求されたのに対し、田上市長が時間が無かったと釈明した。また10月15日広島市議会でも、オバマ大統領のノーベル賞受賞に便乗したのではないか、そもそも2020年に核廃絶を祝う事が可能なのかといった意見も出た。

また双方の地元住民は、賛同する意見がある一方で、悲惨な被爆体験とにぎやかな祭典とのギャップがありすぎるといった意見や、財政的負担はどうするのかと言った否定的な意見もある。なお広島の放送局・中国放送(RCC)が市民200人に対面世論調査をした結果では賛成が63.5%に対し反対が18.0%という結果であった[26]

秋葉市長は10月13日に長崎市の関係者とともに上京し、総理官邸松野頼久官房副長官と会談しオリンピックを被爆地で開催することの意義を説明し、JOC市原則之専務理事と面会し、検討委の設置を報告するとともに「アドバイスをいただきながらできるだけ早いうちに(招致の)結論を出したい」と伝えた。これに対し竹田恒和JOC会長は「新しい都市がオリンピック開催を希望していただいたということを歓迎したい」としたうえで、東京落選の原因分析を終えてから検討すると慎重な姿勢を見せた[27]

ちなみに広島市は、同時期に2018 FIFAワールドカップおよび2022 FIFAワールドカップ開催候補地に立候補する予定であったが、今回の五輪招致活動に専念するため、W杯開催は断念した[28]

[編集] 招致の強みと問題点

[編集] 強み

[編集] 問題点

  • オリンピック憲章では開催都市は原則として1つとしており、複数の都市の開催はきわめて例外的である[1]。ただし、近年のオリンピックではサッカー予選を国内各地の別の都市で行う場合や一部の競技を別の都市で開催する場合もある。例えば馬術競技は東京オリンピックでは軽井沢[29]北京オリンピックでは香港青島で開催されている。またヨット漕艇カヌーなど親水性スポーツは開催都市が内陸である場合は水環境がある、近くの他の地域でする。また実現はしなかったが1988年ソウルオリンピックでは、一部種目を北朝鮮平壌で実施する共催が検討されたことがある。2009年10月12日、IOCのジルベール・フェリ・オリンピック統括部長は、オリンピック憲章憲章では1都市での開催を定めていることに触れ「共同開催は認めておらず、現時点で答えはノーになる」と否定的な見解を示す一方、一部の競技の分散開催は容認することを示唆している[30]
  • 2016年夏季オリンピック招致に敗れた東京都が再び招致に名乗りを上げる可能性もあり、JOCは難しい選択を迫られる可能性がある[1][3]。またJOCの内部にも2020年に東京が再挑戦することを願う声もある[31]2009年11月6日、石原都知事は朝日新聞社とのインタビューの中で五輪招致に再挑戦する考えを示したが、その一方で「(招致を)実行するかは次の知事が決めること」とも発言[32]。秋葉広島市長と田上長崎市長は冷静に受け止めつつも、東京都の「共催」案に含みを示した[33]
  • 広島市は財政難であり誘致や開催に伴う財政負担に対する不安がある[24]。なお平成21年度一般会計予算規模は東京都が6兆円強であり、大会予算見込み3100億円に対し4000億円のオリンピック積立金をしていたが、広島市の一般会計は5500億円であるため差が歴然としている[31]2002年サッカーワールドカップ日韓大会では財政難のためFIFAが求めていた約150億円かかるバックスタンドへの屋根の架設と座席改修工事[34]を、アジア大会のメインスタジアムだった広島広域公園陸上競技場(広島ビッグアーチ)に施工することを、当時の平岡敬市長が拒否したため、開催地を返上した経緯もある[35][36]
  • 東京など大都市に比べ宿泊施設がはるかに少ない。立候補都市はIOCより半径50km圏内に4万室の客席の確保を求められる[31]。2016年の国内選考で争った福岡市も基準ぎりぎりだった。なお東京は約14万室を予定していた。
  • 関連施設や交通網整備など課題は東京よりも多い。またアジア大会の際に建設した施設の維持も重い財政負担となっている[37]。また北京オリンピックのメインスタジアムであった国家体育場は91,000人収容であるのに対し、広島広域公園陸上競技場は5万人収容で5分の3の規模である。これに対し秋葉市長は「環境面から考えて、巨大な施設を建て続ける時代なのか。オリンピックをするのに十分な仮設の施設だって技術的に可能」と主張[31]しているが、仮設をIOCの理解を得られるかは未知数との指摘[31]もある。
  • 広島市と長崎市は約300km離れているが、直通する航空路や鉄道がない。鉄道の場合、博多駅新鳥栖駅で乗り換える必要がある。秋葉市長は九州新幹線が出来れば2時間もかからないと主張し、また長崎・博多間は2018年にフリーゲージトレイン新幹線による営業開始が予定されている。だが、博多・広島間を含む山陽新幹線を運行しているJR西日本は、ダイヤ編成上他より遅い車両を走らせるのは難しいことや線路保守費の増大などへの懸念から山陽新幹線へのフリーゲージトレイン乗り入れに難色を示している[38][31]
  • 平和へのメッセージで共感を呼べる反面、理念や政治色が前面に出すぎることによってマイナスに働く危険性もある[31]

[編集] 開催概要

具体的なことはまだ決まっていない。2016年の東京オリンピック構想のように、メインスタジアムを中心として競技会場が集中するコンパクトなものではなく、広島と長崎を中心とした広域開催になる可能性がある。招致に成功すれば124年続く近代オリンピックの歴史で初めての複数都市での共同開催が実現することになる。

[編集] 開催都市決定までの流れ

予想される開催都市決定までの流れは以下のとおりである[31](途中で招致が断念されないと仮定)。

  1. 2010年中に日本国内の立候補都市を決定。
  2. 2011年にIOCが立候補都市を発表。
  3. 2012年中に立候補都市からIOCに開催計画署を提出、一次選考で立候補都市を絞り込む。
  4. 2013年前半に二次選考に進んだ都市が精査した開催計画をIOCに提出し、評価委員会が立候補都市を視察。
  5. 2013年のIOC総会で開催地が決定する。

[編集] 脚注

  1. ^ [[1]]. 朝日新聞. (2009年10月11日). http://www.asahi.com/sports/update/1010/TKY200910100271.html 2009-10-11 閲覧。 
  2. ^ [[2]]. 産経新聞. (2009-10-11). http://sankei.jp.msn.com/sports/other/091011/oth0910111026003-n1.htm 2009-10-11 閲覧。 
  3. ^ [[3]]. 読売新聞. (2009-10-11). http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20091010-OYT1T01027.htm 2009-10-11 閲覧。 
  4. ^ [[4]]. 朝日新聞. (2009-10-11). http://www.asahi.com/sports/update/1011/OSK200910110037.html 2009-10-12 閲覧。 
  5. ^ [[5]]. 読売新聞. (2009-10-12). http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20091011-OYT1T00399.htm 2009-10-12 閲覧。 
  6. ^ 毎日新聞2009年10月12日朝刊
  7. ^ [[6]]. 読売新聞. (2009-10-12). http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20091011-OYT1T00905.htm 2009-10-13 閲覧。 
  8. ^ [[7]]. 朝日新聞. (2009-10-03). http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR200910030020.html 2009-10-13 閲覧。 
  9. ^ [[8]]. 朝日新聞. (2009-10-10). http://www.asahi.com/international/update/1009/TKY200910090366.html?ref=reca 2009-10-13 閲覧。 
  10. ^ 五輪招致検討委を近く設置 広島・長崎市長発表 中国新聞2009年10月13日、同日閲覧
  11. ^ 長崎、広島市長が2020年夏季五輪招致を表明 長崎新聞2009年10月12日配信、同日確認
  12. ^ RCCニュース6 中国放送 2009年10月12日放送
  13. ^ 【五輪招致】広島市長の福岡、北九州市にも協力依頼 JOCは懸念 MSN産経ニュース 2009年10月21日閲覧
  14. ^ 五輪招致検討委への参加を要請 長崎市長が大村、諫早市長に 長崎新聞 2009年10月29日閲覧
  15. ^ 福岡市は五輪検討委不参加 中国新聞 2009年10月30日閲覧
  16. ^ 五輪招致検討委が始動 広島 中国新聞 2009年11月1日閲覧
  17. ^ 石原都知事、20年五輪に再び立候補の考え 読売新聞 2009年11月10日閲覧
  18. ^ [[9]]. 朝日新聞. (2009-10-11). http://www.asahi.com/national/update/1011/OSK200910110110.html 2009-10-12 閲覧。 
  19. ^ 2020年五輪検討委へ参加、大阪府・市が表明読売新聞 2009年11月13日閲覧
  20. ^ 同月現在、県は城納一昭と副知事2人体制を採用しており、有岡は観光や福祉などを管轄している。
  21. ^ 広島市、五輪招致検討を説明 県などに 知事「非常に唐突」 読売新聞 2009年10月14日閲覧
  22. ^ 「知事が不快感」 RCCニュース 中国放送 2009年10月13日配信、10月14日確認
  23. ^ 長崎市の五輪招致検討を唐突と市議が批判 ニッカンスポーツ 2009年11月1日閲覧
  24. ^ 「平和発信の好機」「財源は」 広島・長崎検討の五輪検討、中国新聞、2009年10月12日配信。同日確認。
  25. ^ [市会議長「ええと思う」 RCCニュース 2009年10月13日配信 中国放送
  26. ^ RCCニュース6 中国放送 2009年10月12日放送
  27. ^ 「可能性、皆無でない」 asahi.com 2009年10月14日配信
  28. ^ W杯立候補を広島市が断念 中国新聞 2009年11月5日配信
  29. ^ [[10]]. 読売新聞. (2009-1010). http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20091010-OYT1T00941.htm 2009-10-12 閲覧。 
  30. ^ [[11]]. 毎日新聞. (2009-10-13). http://www.mainichi.jp/select/today/news/20091013k0000e040064000c.html 2009-11-10 閲覧。 
  31. ^ 『時時刻刻「平和五輪道開けるか」 朝日新聞2009年10月13日大阪本社
  32. ^ "2020年五輪招致、石原都知事が「名乗り上げる」". 朝日新聞 (2009-11-07). 2009-11-10 閲覧。
  33. ^ "「五輪再挑戦」石原発言に波紋 広島は「粛々と検討」". 朝日新聞 (2009-11-08). 2009-11-10 閲覧。
  34. ^ FIFAの規則で、ワールドカップを開催するスタジアムの観客席の4分の3以上に屋根が取り付けられていることが条件とされている。
  35. ^ "広島・長崎五輪 意欲はわかるが課題も多い". 読売新聞 (2009-10-12). 2009-10-12 閲覧。
  36. ^ 広島におけるサッカー専用スタジアム構想もあわせて参照
  37. ^ 中国新聞 (1998-01-03). "自治体クライシス、ア大会投資が財政圧迫-活性化の手法曲がり角". 2009-10-13 閲覧。
  38. ^ 新幹線、山陽と長崎「直通困難」 会見でJR西社長 asahi.com 2008年11月28日

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月14日 (土) 06:35 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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