広汎性発達障害
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広汎性発達障害(こうはんせいはったつしょうがい、pervasive developmental disorders , PDD)とは、対人・コミュニケーション・行動などが定型的に発達していないことより生ずる障害のことである。
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[編集] 概要
広汎性発達障害には、知能指数が低い場合と高い場合の双方が見られる。知能指数が低い場合の方が、発見が比較的容易だったとされることから旧来より認知されてきており、知能指数の高い場合については、1980年以降からしばしば認知されるようになった。なお、定型的に発達していなくても、本人や本人でない者がどのような生活・職業などの場面においても、他者と同じくらいの負担しか感じず、特に辛いと思わない場合は、障害としないこともある。
広汎性発達障害の「広汎性」というのは、「特異的」のものに対する概念のことである。「広汎性」という語が含まれることから、広汎性発達障害という語の方が発達障害という語より広義であるような印象を持たれることもあるが、日本においては、単に「発達障害」と呼んだ方が広義である。「広汎性発達障害」というのは、世界保健機関が定めたICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類 第10版)、アメリカ精神医学会が刊行したDSM-IV-TR(精神疾患の分類と診断の手引 第4版新訂版)などにおける分類上の概念である。いずれも日本における「発達障害」より狭義である。
知能指数が知的障害の領域にないものは、高機能広汎性発達障害と呼ばれることもあり、軽度発達障害に分類されるものの、「高機能」「軽度」の要素・尺度について完全に決着がついているとはいえない。自閉症には、知的障害をともなう場合と、知的障害をともなわない場合である高機能自閉症があり、これらは、別個の障害ではなく一連の要素を含む先天性認知障害である。
世界保健機関 (WHO) のICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)においては、症状がいつ認められるかについて統一性がない。自閉症は遅くとも生後30ヶ月以内に症状が認められる症候群であるとされているが、小児期崩壊性障害(レット障害)はそうではない。
また、広汎性発達機能障害、高機能自閉症、アスペルガー症候群などを合わせて、発達機能障害と呼ばれることもある。
[編集] 種類
ICD-10に基づいて分類すると、下記のものが概ね該当する。
- F84.0 自閉症
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- カナー症候群、高機能自閉症、児童精神病、自閉症、小児自閉症、小児精神病
- 診断基準としては、3つの点が基本障害とされている。
- てんかんなどの脳波異常や脳室拡大が合併する事もある。
- 難治性ではあるが特定の症例を除き進行性ではなく、一患者に於いては発達が見られる。古典的タイプのカナー型自閉症の発症率は約1,000人に1人で男:女=4:1とされる。人種による差はない。
- アスペルガー症候群を除き言葉の発達の障害が見られるため聴覚障害と鑑別しなければならない。聴覚障害や癲癇(てんかん)は脳波を取ることで客観的に検査 できる。治療は、コミュニケーションを促す療育的対応を基本として、個別一過性の症状には対症的な薬物療法を行う。薬物療法は、自傷行為に対して向精神薬を用いる等する。
- 予後は、社会の受け入れ態勢の整備と共に徐々に改善してきており、幼児期にIQが高かったり、意味を持つ言葉の発達が良好であったりその消失がなければ、予後は比較的良いとされるが、その症例は十人十色、さまざまであり個別のケアが望まれる。
- F84.1 非定型自閉症
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- 自閉的特徴を伴う精神遅滞、非定型自閉症、非定型小児精神病
- F84.2 レット症候群
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- レット症候群
- 1966年、ウイーンの小児神経科の医師 Andreas Rett(アンドレアス・レット)博士によって一つの症例が発表され、彼の名を取って「レット症候群」と名付けられた。ほとんど女児に起こる進行性の神経 疾患で、知能や言語・運動能力が遅れ、常に手をもむような動作や、手をたたいたり、手を口に入れたりなどの動作を繰り返すことが特徴。
- 生後六ヶ月から一年六ヶ月の頃に発症。児童期には体幹失調・脊椎変形・舞踏病様運動・てんかん発作が現れ、進行性。運動機能が崩壊する。精神遅滞は重度。ほとんど女児に発症。発症率は、女児一万人から一万五千人に一人といわれている。
- F84.3 その他の小児期崩壊性障害・児童期崩壊性障害
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- ヘラー症候群、共生精神病、崩壊精神病
- F84.5 アスペルガー症候群
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- アスペルガー症候群、自閉的精神病質、小児シゾイド障害、小児期型統合失調症
- 一般的には自閉症の軽度例と考えられているが、自閉傾向が強い場合は社会生活での対人関係に大きな問題が起きるため、必ずしも知的障害がないから問題も軽度であるとは限らない。言語・認知的発達の遅滞はない点で、自閉症から区別される。
- F84.8 その他の広汎性発達障害
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- 自閉性精神発達遅滞
- F84.9 広汎性発達障害,詳細不明
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- 広汎性発達障害
- 上記の広汎性発達障害のいずれにも分類されないものを指す。DSM-IV-TRでは、特定不能の広汎性発達障害が該当する。
[編集] 広汎性発達障害と犯罪
[編集] 総説
医統計学においては、健常者と広汎性発達障害の診断を受けた者との犯罪率に有意差はないと考えられているが[1]、その一方で法医学の実務分野においては、広汎性発達障害の資質と関連が深い事件も存在すると考えられている[2][3]。この相反する見解に関しては、司法の場における広汎性発達障害の医療的解釈には、遺伝や器質といった医療的要素のほかに、家庭や学校などの生育環境や情緒的要因などの非医療的な要素が含まれており、医療現場における医療的解釈と司法現場における法医学的解釈に差異が生じているとの指摘がある[4]。 また、責任能力の有無に限定されずに純粋に事件の因果関係を示すには、当人のプロフィールや当人が置かれた環境を考慮する必要があると考えられている。これは、広汎性発達障害が多種多様な様態を示すことから、診断名だけで判断をすることは難しいからである。ただし、現在のところは、臨床医学上の知見が乏しいこともあり、明らかにできることは少ない。
司法判断においては、一般的に法医学上の緒論(精神鑑定の結果等)を選択して採用することによって責任能力等の判断を行う。これは法における手続きであり、刑事事件においては、有罪・無罪の区別、有罪の際は量刑を決定するための手段である。医学全般において広汎性発達障害は、未知な領域であるものの、それを理由に法手続きを保留にすること(刑事事件であれば、有罪・無罪のどちらかにあたるかどうかの判断を保留にすること等)は、認められていない。このため、司法判断には、限界があることを留意しておく必要がある。
広汎性発達障害と犯罪との関係性については、個別の事例・事件も参考されるが、その際も司法判断のほかに、広い分野の知見が求められる。また、刑事事件として立件されたものだけを対象とするのに留まらず、種々の事例・事象にあたる必要が臨床医学をはじめとして多くの諸科学で主張されている。
[編集] 疾患との関係性が思案された事件
- 2000年5月1日 豊川市主婦殺人事件[5]
- 2000年5月3日 西鉄バスジャック事件[6]
- 2000年6月21日 岡山金属バット母親殺害事件
- 2001年4月30日 レッサーパンダ帽男殺人事件[7]
- 2003年7月1日 長崎男児誘拐殺人事件[8]
- 家庭裁判所の審判において「少年は、男性性器への関心と家庭環境で増強された他人への共感性の乏しさがあいまって被害者に暴行。防犯カメラを発見したことで 動転し、衝動的行動に出やすいという資質と共感性の乏しさがあいまって被害者を屋上から突き落とすという行為に及んだと考えられる。」と結論している。
- 2004年6月1日 佐世保小6女児同級生殺害事件[9]
- 加害女児は、収容先の自立支援施設で医師からアスペルガー症候群と診断された。
- 2005年2月14日 寝屋川教職員殺傷事件[10]
- 2005年10月31日 女子高生母親毒殺未遂事件
- 2005年11月10日 町田女子高生殺害事件[11]
- 事件当時、被害者が灰皿を持って向かってきたことで加害者は広汎性発達障害の影響でパニックを起こしたと弁護側は述べている。
- 2005年12月10日 宇治学習塾小6女児殺害事件[12]
- 精神科医は「(被告は)アスペルガー症候群で、犯行当時は反応性幻覚妄想障害に陥り、剣を持った被害者の像などの幻視があった」と証言。「生徒としての被害者に腹を立てただけでなく、幻覚に影響されたからこそ犯行に至った」と述べた。
- 2006年6月22日 奈良高一放火殺人事件[13]
- 2006年4月15日 埼玉猫虐待事件[14]
- 裁判官は判決で「猫を悪い動物と思いこみ、踏んだり蹴ったりした凄惨な犯行。インターネットに画像を供し、動物を愛する人たちの気持ちも傷つけた」と指摘。弁護人が「アスペルガー症候群による思いこみと、抗うつ剤の副作用による犯行」と主張した点については「責任能力には影響しないが(事件の)一因」とした。
- 2007年1月3日 渋谷区短大生切断遺体事件[15]
- 2007年4月4日 小田原母子刺殺事件[16]
- 2008年3月25日 岡山駅突き落とし事件[17]
- 容疑者の少年は、岡山地検の簡易精神鑑定でアスペルガー症候群と診断された。
- 2009年3月23日 JR東京駅女性突き落とし事件[18]
- 弁護側は、被告は広汎性発達障害の影響で思い込みが強く事件当時も行動をコントロールしにくい状態にあったと主張している。
[編集] 脚注
- ^ 山崎晃資、『少年事件: おとなは何ができるか』、22ページ、同人社、2008年07月
- ^ 太田昌孝・永井洋子『自閉症治療の到達点』、347ページ、日本文化科学社、1992年12月
- ^ 愛知教育大学教育実践総合センター紀要 第12号, pp.37-51, 2009
- ^ 少年非行と障害の関連性の語られ方 : DSM型診断における解釈の特徴と限界, 人間文化創成科学論叢, 11: 227-236
- ^ 北海道新聞2006年10月19日夕刊。
- ^ 草薙厚子、『追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」』、講談社。
- ^ 毎日新聞2004年11月26日夕刊。北海道新聞2006年10月19日夕刊。
- ^ 西日本新聞2003年9月20日朝刊。北海道新聞2006年10月19日夕刊。
- ^ 共同通信2006年1月16日。
- ^ 朝日新聞2006年2月10日朝刊。北海道新聞2006年10月19日夕刊。
- ^ CHUNICHI Web2007年7月31日。
- ^ 読売新聞2007年3月6日朝刊。
- ^ 産経新聞2006年10月26日夕刊。
- ^ 中日新聞2007年2月9日
- ^ 産経ニュース2008年5月27日
- ^ 読売新聞2008年12月23日
- ^ 産経ニュース2008年4月23日23時47分。
- ^ 時事通信2009年11月4日。
[編集] 関連項目
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[編集] 外部リンク
最終更新 2009年12月7日 (月) 20:39 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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