弱アイソスピン

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弱アイソスピン(じゃくあいそすぴん、weak isospin)は、弱い相互作用が働く素粒子のみが持つ量子数である。

弱い相互作用によって起こる代表的な現象であるベータ崩壊

d \longrightarrow u + e + \overline{\nu_e}

と表すことができる。(u:アップクォーク、d:ダウンクォーク、e:電子、νe:電子ニュートリノでオーバーラインは反粒子を表す。)

ある粒子はその反粒子が時間をさかのぼる姿と解釈できるので、

d + \nu_e \longrightarrow u + e

と書き換えることができる。 すなわち、ダウンクォークが電子ニュートリノと衝突し、弱い相互作用によってダウンクォークがアップクォークに、電子ニュートリノが電子に転換したと考えることができる。

さらに考えをおしすすめると、弱い相互作用において相互転換する2つの素粒子は、同じ素粒子の電荷や質量が異なる状態と見なし、弱い相互作用によってその状態間の転換が起こったものと考えることができる。 アイソスピンにおいて陽子中性子が同じ素粒子の電荷のみが異なる状態だと考えたのと同様である。 この状態を表すパラメータとして弱アイソスピンが導入される。

ただし、この弱アイソスピン二重項を作る2つの状態は一般に質量が異なっており、この2つを入れ替える変換(ゲージ変換)に対して物理は不変ではないように見える。これはヒッグス粒子との結合によって自発的対称性の破れが起こっているためである。

弱アイソスピンのカレントには正負の荷電カレントと中性カレントが存在し、それぞれW±、W0と結合する。W0は超電荷ゲージボソンBと混合し、Zボソンとなる。

弱アイソスピンにはスピン、アイソスピンと同様パウリ行列による数学的記述が成立し、弱い相互作用において相互転換する2つの素粒子は弱アイソスピン1/2を持ち、そのz成分は1/2、-1/2の2つの値をとる。 通常はこのz成分が弱アイソスピン量子数と呼ばれる。 例えば電子は弱アイソスピン量子数1/2、電子ニュートリノは弱アイソスピン量子数-1/2を持つ。

レプトンについては、電子-電子ニュートリノ、ミュー粒子-ミューニュートリノ、タウ粒子-タウニュートリノがこの対を作っており、対の中でのみ転換が起こる。[1] それに対しクォークについてはダウンクォークだけでなくストレンジクォークがアップクォークに転換する現象も知られている。 それ故にアップクォークと対を作っているのはダウンクォークとストレンジクォークが混合した粒子ということになる。 この粒子の混合現象をカビボ混合という。

この考えをさらに推し進めた小林誠益川敏英は、混合する粒子が三世代あった場合には弱い相互作用においてCP対称性の破れが起こりうる事を示した。(小林・益川理論

また、ベータ崩壊で生成する反電子ニュートリノはすべてヘリシティーが1/2(右巻き)である。 そのため、弱い相互作用はヘリシティー1/2の反粒子、あるいはヘリシティー-1/2(左巻き)の粒子のみにしか働かず、弱アイソスピンを持つのも同様と考えられている。

[編集] 脚注

  1. ^ ただしこれはニュートリノを質量ゼロと考えた場合である。現在はニュートリノ質量が観測された事によってレプトンの場合も混合を考える。この混合によりニュートリノ振動が起こる。

[編集] 参考文献

  • E Abers, B Lee "Gauge theories", Physics Reports (1973)

[編集] 関連項目

最終更新 2009年9月25日 (金) 18:36 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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