徴農制度
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徴農制度(ちょうのうせいど)は、軍事における徴兵制度と同様に農業への従事を国民の義務として定める制度。
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[編集] 概説
国民を徴用して農業に従事させる制度である。歴史上では国民ないし庶民を徴用し生産労働に強制従事させる事例は多くみられるが、それらは徴用ないしは戦中下などでの奉仕活動であり、いわゆる制度としての「徴農制度」として話題となる議論は21世紀の日本で取り上げられることの多いニートや若年労働者の失業、非正規雇用の問題、あるいは農業従事者の後継者不足や高齢化、食糧自給率、食育に関する論題についてであり、あるいは俗流若者論として「近頃の若い者に性根を入れ叩きなおす、鍛え上げる」ための制度として徴兵制度の代替案として話題に挙げられることが多い。同様なものに徴林制度などがある。在籍者 (学習者)などに農業体験学習をさせる場として「徴農」という語が用いられることもある。
[編集] 過去の類似例
本来は第一次産業に従事する人員数の強制的確保を目的としているが、毛沢東時代の中国における下放のような“人格形成カリキュラム”や、“美しい田園で人間性をとりもどす生活”といった根拠の無いイメージで美化され、その実態を理解しない(或いは隠蔽する意図を持った)人々から礼賛されるのが常である。
人格形成の面から農村での生活が道徳的・精神的に好ましいという信頼できるデータは存在せず、徴用といった強制手段により住みなれた場所から離れて集団生活を送ることによってPTSDに陥る危険や、閉鎖的な集団での生活が深刻かつ残酷ないじめを生むなどといった可能性が意図的に無視されている可能性がある。
明確な根拠なく、農業労働を無条件に礼賛する傾向は極左・極右双方に存在してきたため、農業徴用(下放・ナロードニキ)は左翼・右翼双方の国家主義に支持される政策となる事が多く、社会主義圏でも農業への依存度が高い東欧やキューバなどの国家では、頻繁に農村での勤労奉仕が都市の住民に強制された。
また、ポル・ポト政権下の民主カンプチアのように、最初から都市住民の抹殺を企図して、農村部への下放が行われたケースも存在した。
日本においては農本主義と右翼が強く結びつく傾向とともに、1960年代に流行した毛沢東思想や米国のヒッピー達のコミューン運動が無批判に受け入れられた事もあって、徴農のもたらす影響への警戒感が概して低いという特徴がある。
実際に、コミューン志向を有した危険なカルト宗教団体であるオウム真理教が、財産を絞り尽くした自教団の信徒を農村部の施設に移住させて強制労働に従事させて更に利益を搾り取り、人口過疎の山村内で信徒が多数派となる事によって、地方自治体を乗っ取ろうとしたケースが発生した。
オウム真理教のケースでは、脱走者に過酷な制裁を加えるといった監禁・人権侵害が発生しながら、人口過疎地であった事と、宗教団体への警察当局の消極姿勢から野放しになっていたという経緯もあった。
農業が本来、植生や農耕技術、土壌や気温、日照管理、水利管理、農業機械取扱などといった高度に知識集約的労働であるといった側面を無視し、単に伝統的労働であるからよい物であるといった誤謬(伝統に訴える論証)に基づく安易な発想から強制労働として導入され、結果として悲惨な事態を招いた事例がある。毛沢東時代の中国における下放では、適不適を無視した一律的な労働が課せられ効率的でなかったことや、強制的な労働による勤労意欲の低下、農業に慣れるまでの時間などから経済的に大きな損失を出し、徴農実施時の農業生産は大きく低下し多数の餓死者を出す悲惨な結果に終わった。
また、希望しない下放で強制的に農村へ移住させられた人々が、毛沢東時代の終結とともに都市への帰還を要求しながら、長期に渡って放置されるという結果をもたらし、これに抗議する“回城”運動が下放青年達の間で展開された。
[編集] 日本における議論
近年の日本では、政治家や実業家、知識人(稲田朋美、東国原英夫、勝谷誠彦、水野正人・ミズノ社長[1]、曽野綾子[2]など)が「ニートを徴農制で叩き直す」「18歳の青少年全員に農業奉仕をさせるべき」と言ったプランを主張する事例が見られるようになっているが[3]、国民の徴用を前提とした制度の義務化は日本国憲法第18条(刑罰以外の奴隷的拘束及び苦役からの自由)に反する可能性があり、国民の義務として制度化するためには憲法改正が必要となるかもしれない。失業・無業という状態を罪悪とみなす倫理観は西欧とくにプロテスタントに特徴的であり、また日本人でも「働かざるもの食うべからず」の倫理観からニートを罪悪視するかのような論調が見られることはあるが、おおむね極論や笑い話の領域を出ることは無く[要出典]、むろんニートや無業を刑事罰として断罪し、農業従事を罰則として課すとすれば、明文・不文律として体系化されている現行の憲法体系そのものの大幅な改訂が必要となり、あるいは自然法を基礎とした近代法体系そのものの見直しが必要となるかもしれない[4]。
伊藤忠商事会長丹羽宇一郎は、他の先進国と比べても国土に占める耕作地率が低いことを問題視し、農家に安価な労働力の提供し、また、若者に農業を志すきっかけを与えることを目的として、現在普通農学部の専門課程として開講される農業実習を、 国立大学の教養課程必修科目とすることで多くの学生に実際に自然の中で農作物を作る喜びを体験させることを主張している[5]。本人はイタンビューの中でこの制度を「大学生が農繁期に農家を手助けする制度」と言っている。
「徴農制度」に対する社会の漠然とした共感に便乗し、コミューン的な環境がカルト団体に悪用され、遠隔地・過疎地に隔離された多くの参加者が、自律的な判断力を放棄して操られていた様を見て、これを参考とした“ビジネスモデル”を企図する悪質な起業家の存在が指弾されることがある。
[編集] 脚注
- ^ 『日本経済新聞』2007年11月19日朝刊。
- ^ 西尾幹二『 「教育基本法見直し会議」緊急報告 すべての18歳に「奉仕義務」を』所収「日本人へ」。
- ^ "東国原知事が発言撤回…やっぱり徴農制". デイリースポーツ (2007-11-29). 2008-04-23 閲覧。
- ^ 近世イギリスの救貧法は無業者を懲罰的労働に従事させる傾向の強いものであった。現代史においても旧東ドイツでは一定期間定職に就かずにいた者は収容所送りの上で労働を強制されていた
- ^ 『日本経済新聞』2009年9月14日朝刊5面、『インタビュー領空侵犯 「徴農制」の導入を』
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 飛岡健・伊藤正規 『徴農制度が日本を救う ―明日を担う若者を“農業”を通じて育てる―』、伊藤ハムマーケティング研究所。伊藤は伊藤ハム社長。
最終更新 2009年9月14日 (月) 14:02 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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