性的少数者
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性的少数者(せいてきしょうすうしゃ)とは、何らかの意味で「性」のあり方が非典型的な人のこと。英語のSexualMinorityの日本語訳である。欧米、とくに英語においては少数派(Minority)とは社会的弱者を意味するため性的に少数派にあたるということは社会的・政治的に弱者であるという意味がある。
性的少数派、セクシュアル・マイノリティ、性的マイノリティとも言う。同性愛者、両性愛者、半陰陽者(医学的には「性分化疾患」)、トランスジェンダー(性同一性障害を含む)などが含まれると考えられている。
同性愛、両性愛、トランスジェンダー、半陰陽は、現象としてはかなり異なったものであるが、幾つかの理由から総じて論じる必要もあることから、性的少数者という概念が用いられる。理由としては次のようなものがある。
- 人間の性にまつわる活動を、単純に2種類に分類できると想定した諸制度において、不都合を生じるという点では、一致している。
- これらの概念に関して知識の無い人物からは、しばしば混同されがちであり、混同した上で蔑視する者もいる。
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[編集] LGBT
性的マイノリティとよく似た言葉で、しばしば混同される概念・言葉として、LGBT がある。これは、レズビアン(Lesbian・女性の同性愛者)、ゲイ(Gay・男性の同性愛者)、バイセクシュアル(Bisexual・両性愛者)、トランスジェンダー(Transgender・性同一性障害を含む)の頭文字から作られた頭字語である。性的少数者と LGBT の概念上の違いは、性的少数者が社会学的に、外部から性におけるマイノリティを定義しているのに対し、LGBT は、ゲイのコミュニティ、トランスジェンダーのコミュニティ等に属する人々が、自らを呼ぶ言葉としてこの名称を選んだということである。LGBT は、インターセクシュアル(Intersexual・半陰陽)を加えて LGBTI と言ったり、クィア(Queer)を加えて LGBTQ と言ったりもする。
[編集] LGB / TT / I
LGBT は、性的指向と、ジェンダー・アイデンティティ(性自認)という、全く異なるもので形成されている。
● LGB は、レズビアン(女性同性愛者) / ゲイ(男性同性愛者) / バイセクシュアル(両性愛者)の性的指向によって決まる、三つとされる。
● TT は、トランスジェンダー / トランスセクシュアル(性転換症)のジェンダー・アイデンティティ(性自認)によって決まるものである。
● I は、医学的な診断で認定されるインターセクシュアル(半陰陽)のことである。
その中でも特に、ゲイ・コミュニティの権利主張の声が大きいため、安直に「LGBT=ゲイ・コミュニティ」を、意味してしまう場合がある。以下に説明するレインボー・フラッグが典型であるが、これは本来「ゲイ・コミュニティの多様性」の象徴であった。しかし、LGBT の象徴として使用されることが多く、性的マイノリティのなかで、性的指向の極、すなわち LGB が多数派を形成し、少数者の中の更に少数者として、TT や I の極が位置付けられる現実がある。これは、同性愛者の人口比がきわめて大きく、統計によって異なるが、おおよそ、人口の5%程度が先天的な同性愛指向を持つと考えられるのに対し、トランスジェンダーやインターセクシュアルは、人口比ではるかに少数であるという事実からも言える。
[編集] 象徴としての「虹(レインボー)」
性的少数者の象徴として、現在、合意されたフラッグやシンボルは存在していない。「虹(レインボー)」を LGBT の象徴・代名詞として使用しようとする意見もあるが、「虹(レインボー)」は以下に述べるような特徴を持つため、様々な意味が内含され、性的多様性とは別の場面でも様々に使用されているため、これを LGBT の象徴とすることは未だ合意されていない。例えば、オリンピックの五輪旗も「虹(レインボー)」の五色を使ってデザインされており、この場合は人種や民族の多様性・平等性を示している。それ以外にも、様々な政治的スローガンの象徴として「虹(レインボー)」は使用される。
ゲイ・コミュニティは、「虹(レインボー)」を自分たちのプライド表現であるとして、これを採用している。「虹(レインボー)」の色はセクシュアリティの多様性を象徴するものと解釈されている。
- 虹には様々な色が含まれ、共存している。
- 虹を構成する色は連続的であり、明確な境界を引くことはできない。
- しかし、「虹の七色」というように人間は便宜的に境界線を引いて区別している。
- 時代・地域によっては「虹は五色」であり、境界線の引き方は文化に依存する。
- 境界線を重視しすぎると科学的には正しくないことがある。
[編集] レインボー・フラッグ
レインボー・フラッグ(虹をモチーフとした旗)は、しばしば性的少数者ないし LGBT の象徴と見なされるが、元々はゲイ・コミュニティの象徴であった。別名「ゲイ・プライド・フラッグ」(ゲイの尊厳の旗)とも呼ばれる。同性愛者団体の活動などでは虹色の旗(レインボーフラッグ)が用いられ、日本の東京・新宿二丁目で2000年から行われている「東京レインボー祭り」の名称もこれに由来する。レインボー・フラッグは、1978年にゲイ・コミュニティの象徴となる旗のデザインを依頼されたギルバート・ベイカーが考案した。
現在のレインボーフラッグにおいては赤、橙、黄、緑、青、紫の6色で虹を表している。ただし、ベイカーによるオリジナルの旗はピンク、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の8色であった。製造上うまく発色しないことからまずピンクが削除された。次に、1979年のサンフランシスコのゲイ・パレードにおいて、虹色の横断幕を左右に分割できるようにと、藍が削除された。
[編集] (サムウェア・)オーヴァー・ザ・レインボー
(Somewhere) Over the Rainbow (虹の彼方に)は、性的少数者のテーマソング的名曲。E・H・ハーブルグ作詞、ハロルド・アーレン作曲。アメリカのミュージカル映画「オズの魔法使い」(MGM・1939年)の中で、主人公のドロシー(ジュディ・ガーランド)が、カンザス州の自宅の庭で、虹の彼方(オーヴァー・ザ・レインボー)を夢見て歌う。なお、この場面はモノクロである。
後年、ジュディの娘であるライザ・ミネリがゲイの作曲家ピーター・アレンと結婚するなど、性的少数者が身近にいたことから、彼らに対して理解の深かったジュディは彼らのアイコンとなり、1969年6月22日に亡くなった彼女を追悼するためにニューヨークのパブ・「ストーンウォール・イン(Stonewall Inn)」に集まった同性愛者たちが警察と衝突した事件が、有名な「ストーンウォールの反乱」(同年6月27日)である。また、両性愛者の歌手エルトン・ジョンは、ジュディの死を悼んでグッバイ・イエロー・ブリック・ロードを作曲したが、これは映画の中でオズへ続く「黄色いレンガの道」を指している。
[編集] 性的嗜好の少数者
性的マイノリティと呼ぶときには、LGBT の範疇とは別のカテゴリに入る、性的に非典型的な傾向を持つ人々も含まれる。ここにも、LGBT と性的少数者の概念的な違いが現れる。具体的には、性的嗜好が極端化するか、または人格の変容・障害の結果として性的な嗜好において極端な偏倚が見られる人々も、性において非典型な人たちとして、性的少数者に入る。
- ペドフィリアのうち、性嗜好障害、すなわち精神疾患の域にまで達している場合、やはり性的マイノリティとなる。社会の偏見があり、また自己の内部で葛藤があり、孤立せざるを得ない。
- BDSM などのうち、やはり精神障害の域に達している者たちは、パラフィリア(性的倒錯)の人物として、性的マイノリティに数えられる。
英語の「セクシュアル・マイノリティ(sexual minority)」は、性的指向や性同一性に関する非典型者を意味するのみではなく、文字通り「性における少数者」を意味するのだと考えれば、LGBT とは自ずから異なった意味になる。社会的少数者と同様、人たる権利(人権)において何らかの意味で不利な立場に立つ者として、性的マイノリティは意味が広い言葉だとも言える(参照)。
[編集] 文化の問題
性的少数者の概念を支えているのは LGBT の存在であり、その中でも同性愛とトランスジェンダーが中心的な役割を持つ。しかし、同性愛については、ストーンウォールの反乱においてゲイの権利運動を活発化させたアメリカやヨーロッパにおける概念把握が、グローバルな世界の諸文化では必ずしも妥当しないと言う事実を考慮に入れなければ、無意味である。欧米における同性愛概念は、世界の様々な社会や文化において、そのままの形では適用できない[1]。
また、アルフレッド・キンゼイ(キンゼイ報告)とシェア・ハイト(ハイト・リポート)の調査結果は、現実には多数の人が男女の両性に性的魅惑を感じており、両性愛者はマイノリティではなく、数の上で最も多いマジョリティであることを示している。にも拘らず、両性愛の人が自分が両性愛であるとカムアウト(カミングアウト)することは稀である。その理由は、同性愛の部分で社会からの圧力を感じるためである[2]。両性愛者であることを公言することは則ち、欧米では同性愛者のなかに数えられるという現状が存在する。しかし、ヴァネッサ・ベアードが記すように、性的少数者に対する抑圧・権利侵害などは、むしろ西欧社会が促したものだという主張もある。
LGBT の中で、もう一つの重要な項であるトランスジェンダーは、それ自体が空の星のように限りないもので、欧米の文化内部で見ても数え切れないヴァリエーションが存在し、「第三の性」を歴史的・文化的に認めて来た社会の存在なども考慮すると、「性の多様性」は無限に発散するとも言って過言ではない。トランスジェンダーのレンジには異性装を含むが[3]、日本においても、男色(同性愛)が何らの問題もなかったように、女装の伝統文化が存在する。
文化的に、トランスジェンダーに「第三の性」を認める社会も存在する。インターセクシュアルは、数え方の方法にもよるが、男女判断の難しい外性器や内性器の混乱を持つ幼児が2000人に一人の割合で存在するという統計からは[4]、完全に男女分化していない嬰児の数は遙かに多いのであり、これを外科的に修正しようとして結果的にアメリカは数多くの失敗を犯している(デイヴィッド・ライマーの実験例も存在する)。更に「トランスジェンダーとは何なのか」の基準自体が、依然として曖昧なままである。
欧米が提供し主張する「性的マイノリティ」の概念・主張は、グローバルな広がりにおける地理的・文化的な多様性の中では、一般性を持たないことが確認され、また歴史的にアメリカや西ヨーロッパ自体の歴史を振り返っても、一般性を持たないことが明らかである。「性の多様性」は星の数ほど存在するが、それぞれの社会・文化には、セクシュアリティやジェンダーの問題に対する固有の思想・伝統が存在するというべきである。
[編集] 用語法
日本語の「少数者」・「少数派」は、「マイノリティ」に比べて「政治的・制度的に不都合を被っている」というニュアンスが希薄であり、単に「少数である」という事実を述べているに過ぎない、と考える人もいる。彼らの中にはセクシュアル・マイノリティの語を使うことが、よりポリティカル・コレクトネスに合致すると主張する者もいる。
[編集] 脚注
[編集] 参考文献
- ヴァネッサ・ベアード 『性的マイノリティの基礎知識』 作品社 2005年 ISBN 4-86182-012-X C0036
[編集] 関連項目
最終更新 2009年10月26日 (月) 15:19 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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