恍惚の人

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恍惚の人』(こうこつのひと)は、有吉佐和子の長編小説1972年新潮社から「純文学書き下ろし特別作品」として出版され、1973年には森繁久彌主演で映画化された。たびたび舞台化されており、1990年には日本テレビで、1999年にはテレビ東京で、2006年10月には三國連太郎主演でテレビドラマが放映された。

目次

[編集] 概要

本作は痴呆症(認知症および老年学)をいち早く扱った文学作品である。高齢者介護に奮闘する家族の姿は現代にも十分通じるものがあり、介護医療の難しさは不変であることを思い知らされる作品といえる。出版当時空前のベストセラーとなり、痴呆・高齢者介護問題にスポットが当てられることになった。その関心度の高さから「恍惚の人」は当時の流行語にもなった。題は『日本外史』に三好長慶が「老いて病み恍惚として人を知らず」とあるのを見てひらめいたものである。

[編集] 主な登場人物

  • 立花昭子:立花家の嫁。弁護士事務所で働き、家事をこなしながら舅の介護に忙殺される。
  • 立花茂造:昭子の舅。昭子を何かといじめていたが、妻が急死した後に認知症が進んでいることが家族に分かり、一転昭子に頼りきりの生活になる。
  • 立花信利:昭子の夫。商社に勤め多忙を極める上、認知症の進行する父の状態が自分の未来に重なって見えるためやりきれず、最後まで介護には関わらない。
  • 立花敏:信利・昭子夫婦の一人息子。大学受験勉強中だが、敬老会館への送り迎えもし、茂造が徘徊して行方不明になったときには探しに行くなど、介護にはわりと協力的。
  • 門谷家の老女:立花家の近所に住む。茂造を老人クラブに連れて行き、さらに茂造の住む離れで一日世話を焼くなど、一時は茂造に「老いらくの恋」をするが、茂造の様子を見て愛想を尽かす。その後寝たきりになるが、嫁に面倒を見てもらうことに耐えられず愚痴をこぼす。
  • エミ:大学生。恋人の山岸と共に、昼間茂造の面倒を見る条件で離れを借りる。茂造の病状が進んで手がかからなくなっていたため、茂造には比較的好意を持つ。

[編集] 反響と批評

ベストセラーとして世に迎えられたが、文壇からは「あんなもの小説じゃない」との声や、丹羽文雄の『嫌がらせの年齢』には及ばないなどの批評があがったほか、文学賞選考からも外されるなどの冷遇を受け、有吉はショックを受けた。さらに印税1億円を老人ホームに寄付しようとしたところ多額の贈与税を課されることが分かり、有吉は新聞広告を打ってその不合理を訴えた。

刊行後34年を経た現在(2006年)と比べると、仕事を抱えながら自分が茂造の面倒をほぼ一手に見ることについて、嫁の昭子が不満を抱くだけで結局はそのまま破綻をきたさないところに時代状況の違いが見られる。また認知症になった茂造が不可解な「他者」として描かれ、その内面心理の動きに全く関心が払われないところは、現在の認知症介護の観点からすると問題を含むであろう。

[編集] 映画(1973年)

1973年公開。配給は東宝。モノクロ作品として制作・公開された。

森繁演ずる痴呆を抱えた老父が、排泄物を投げつけるといった真に迫る演技が話題となった。森繁によると、撮影中は役に入り込みすぎ、簡単な演技でもスタッフに「いいですね、あそこまで歩いていくんですよ」と指示してもらわなくてはならないほどであったという。

[編集] 主要キャスト

[編集] スタッフ

[編集] ドラマ(1990年)

1990年10月3日に日本テレビ水曜グランドロマンにて放映。

[編集] 主要キャスト

ほか

[編集] スタッフ

[編集] ドラマ(1999年)

1999年1月1日テレビ東京にて放映。

[編集] 主要キャスト

ほか

[編集] スタッフ

[編集] ドラマ(2006年)

2006年10月17日21:00~22:54(JST)に日本テレビドラマ・コンプレックスにて放映。

[編集] 主要キャスト

[編集] スタッフ

[編集] 参考文献

  • 恍惚の人(新潮文庫版、1982年)ISBN 4101132186
  • 石田仁志「<恍惚>の奥にあるもの -『恍惚の人』」井上謙ほか編『有吉佐和子の世界』翰林書房、2004年、58-62ページ。ISBN 4877371931

最終更新 2009年9月22日 (火) 01:31 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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