悪魔の手毬唄

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悪魔の手毬唄』(あくまのてまりうた)は、推理作家横溝正史が著した長編推理小説。およびそれを原作とした映画テレビドラマ作品である。2009年1月までに映画2本、テレビドラマ5作品が制作されている。


注意以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。


目次

[編集] ストーリー

昭和30年7月下旬、金田一耕助は一ヶ月ばかり静養できる辺鄙な田舎を探して、岡山県警に磯川常次郎警部を訪ねた。磯川警部は耕助に、岡山と兵庫の県境にある寒村、鬼首村(おにこべむら)の温泉宿「亀の湯」を紹介する。磯川の話では、23年前の昭和7年、亀の湯の女主人・青池リカの夫である青池源治郎が殺害され、犯人と目される詐欺師・恩田幾三はいまだに行方不明だという。

亀の湯に滞在した耕助は、リカの息子の歌名雄、リカの娘・里子、村の有力者・仁礼嘉平、庄屋の一族の末裔・多々羅放庵らと顔を合わせる。美男子で歌が上手い歌名雄は村の人気者。旧家、由良家の娘で美人の泰子と交際していたが、嘉平の娘・文子はそれに嫉妬していた。それでも村の若者達は、村出身の人気歌手・大空ゆかりが里帰りするという噂で持ちきりとなっていた。実はゆかり(本名 別所千恵子)は、恩田が村の鍛冶屋の娘・別所春江に産ませた子供で、幼少時は「詐欺師で人殺しの子供」として周囲から迫害されていた。

一方、耕助は親しくなった放庵から、手紙の代筆を頼まれる。昭和7年、放庵の元を出奔した彼の5人目の妻・おりんが、和解を求めてきたのだという。放庵の口述どおり、耕助は和解を受け入れる手紙を書く。

耕助が亀の湯に滞在して2週間ほど経った8月10日。用事で山向こうの総社の町に向かう途中の耕助は、放庵の5番目の妻、おりんと名のる老婆と峠道ですれ違う。ところが、着いた先の総社の町で宿屋の女将・おいとから、おりんは昨年、すでに死んでいると聞かされる。驚いた耕助とおいとは放庵の草庵を尋ねるが、そこには放庵やおりんの姿は無く、来客があったことを伺わせる稲荷寿司の皿や濁酒の杯とともに、微量の吐血の痕が残されているのみだった。


8月13日、里帰りしたゆかりを囲んでの、村総出の歓迎会が催される。ところが、ゆかりの元同級生として歓迎会に出席するはずの泰子が見当たらない。夜を徹した山狩りの末、泰子は村内の滝つぼの中で絞殺死体となって発見される。遺体の口には、何故か漏斗が差し込まれていた。滝の水が崖の途中に置かれたを満たした後、漏斗に注がれるような状態になっていた。

泰子の通夜が行われた晩、今度は仁礼家の娘・文子が行方不明となり、翌朝に村内の葡萄酒工場の中で絞殺死体となって発見される。遺体の腰には竿秤が差し込まれ、秤の皿には正月飾りに使われる作り物の大判小判が置かれていた。

耕助や警察、村人が奇妙な姿の遺体に悩む中、泰子の祖母・五百子は村に古くから伝わる手毬唄を皆に唄って聞かせるのだった。

[編集] 概要

連続殺人事件が村に伝承の手毬唄(手鞠歌)になぞらえて行われるという趣向は、獄門島俳句に見立てた殺人と同一系譜にあるものである。ただしこちらは実在しない創作品であるため、これを引っ張り出すストーリー展開にも工夫がなされている。作者によると、元々は実在の伝承に基づくものを考えていたが、なかなか都合の良いものが無く、苦労していたときに深沢七郎楢山節考を知り、「無いなら作れば良いんだ」と気がついたという。山間の田舎が舞台なだけに、サワギキョウオオサンショウウオも登場、演出に一役買っている。

[編集] 登場人物

金田一耕助(きんだいち こうすけ)
私立探偵。

[編集] 警察

磯川常次郎(いそかわ つねじろう)
岡山県警警部。
立花(たちばな)
岡山県警警部補、捜査主任。金田一に対して猛烈なライバル心を抱く。
乾(いぬい)
岡山県警刑事、立花の部下。
山本(やまもと)
岡山県警刑事、立花の部下。
木村(きむら)
鬼首村駐在巡査。

[編集] 亀の湯

実在する「青池」姓の読み方は本来は「あおいけ」であるが、1977年の映画、及び2009年のテレビドラマでは「あおち」と発音していた。ここでは原作に準拠し「あおいけ」とする。

青池源治郎(あおいけ げんじろう)
小学校卒業後に神戸市に出て、「青柳史郎」の芸名で活弁士をしていた。23年前の昭和7年、殺害される。遺体は囲炉裏の中に倒れこんで顔が焼かれ、相好の区別がつかなくなっていた。
青池リカ(あおいけ りか)
源治郎の妻、亀の湯女将。凛とした京都風の美人。
青池歌名雄(あおいけ かなお)
源治郎の息子、鬼首村青年団副団長。美男子で歌唱力もあり、村の娘たちの人気者。
青池里子(あおいけ さとこ)
源治郎の娘。顔の造作そのものは美しいが、左半身の赤痣を気にしてあまり人前に出ない。
お幹(おみき)
亀の湯女中。実家の屋号は「笊屋」。大空ゆかりを嫌っている。

[編集] 仁礼家

屋号は「秤屋」。

仁礼仁平(にれ にへい)
仁礼家先代当主、故人。鬼首村に新しい産業としてブドウの栽培を持ち込み、一代で財産を築く。
仁礼嘉平(にれ かへい)
仁礼家当主。父の事業をさらに広げ、村の「えらもん」として君臨している。リカに、文子と歌名雄との縁談を持ちかける。
次子(つぎこ)
嘉平の妹。神戸に嫁いでいる。
咲枝(さきえ)
嘉平の妹。鳥取県に嫁いでいる。
仁礼直平(にれ なおへい)
嘉平の息子。
仁礼路子(にれ みちこ)
直平の妻。
仁礼勝平(にれ かつへい)
嘉平の息子、鬼首村青年団団長。歌名雄と仲が良い。
仁礼文子(にれ ふみこ)
嘉平の娘。歌名雄と交際する由良泰子に嫉妬している。

[編集] 由良家

屋号は「枡屋」。

由良卯太郎(ゆら うたろう)
由良家先代当主、故人。仁礼家の繁栄に危機感を抱き、対抗策を講じようとする中で恩田幾三に騙され、悲嘆のうちに命を落とす。
由良五百子(ゆら いおこ)
卯太郎の母。手毬唄の歌詞を知る数少ない人物。
由良敦子(ゆら あつこ)
卯太郎の妻。仁礼嘉平に対抗意識を燃やしている。
由良敏郎(ゆら としろう)
卯太郎の息子、由良家当主。風采の上がらない男。
由良栄子(ゆら えいこ)
敏郎の妻。
由良泰子(ゆら やすこ)
卯太郎の娘、歌名雄の恋人。両親や兄弟とは容姿が全く似ていない。

[編集] 別所家

屋号は「錠前屋」。

別所辰蔵(べっしょ たつぞう)
仁礼家の葡萄酒酒造工場工場長。飲んだくれで金に汚く、春江や千恵子から嫌われている。
別所蓼太(べっしょ りょうた)
辰蔵・春江の父、千恵子の戸籍上の父。
別所松子(べっしょ まつこ)
辰蔵・春江の母、千恵子の戸籍上の母。
別所五郎(べっしょ ごろう)
辰蔵の息子、鬼首村青年団団員。歌名雄や勝平と仲が良い。
別所春江(べっしょ はるえ)
千恵子の母。村に滞在していた恩田の世話をするなかで関係を持ち、千恵子を産む。
別所千恵子(べっしょ ちえこ)
春江の娘。女優。芸名は大空ゆかり。蓼太や松子のために、村に「ゆかり御殿」と呼ばれる大邸宅を建設する。

[編集] その他

日下部是哉(くさかべ これや)
大空ゆかりのマネージャー。
本多(大先生)
医者だが現在は引退している。昭和7年の事件時、青池源治郎の遺体を検死する。
本多(先生)
大先生の息子、医者。
本多一子(ほんだ かずこ)
本多(先生)の妻。
多々羅放庵(たたら ほうあん)
庄屋の末裔だが現在は没落している、本名は多々羅一義。妻を7回も取り替えたり、芝居に入れあげたりと、放蕩三昧の人生を送っている。鬼首村の手毬唄を発掘し、民俗学の雑誌に投稿する。
おいと
総社の町の旅館「井筒」の女将。放庵やおりんの知人。
栗林りん(くりばやし りん)
多々羅放庵の5番目の妻。通称「おりん」。昭和7年、放庵の元から出奔する。
恩田幾三(おんだ いくぞう)
別所千恵子の実の父親。村にクリスマス飾り用のモール作りの内職を紹介する。23年前、昭和7年の青池源治郎殺害事件の容疑者。         

[編集] 映像化リスト

[編集] 映画

  • 悪魔の手毬唄 (1961年11月15日・東映渡辺邦男監督、金田一:高倉健
    • 出演:北原しげみ(白木静子)、神田隆(磯川警部)、小野透(遠藤和雄)、永田靖(仁礼剛造)、大村文武(仁礼源一郎)、志村妙子(仁礼里子)、不忍郷子(仁礼宮子)、八代万智子(和泉須磨子)、石黒達也(石山伍堂)、花沢徳衛(多々羅放庵)、中村是好(辰蔵)、菅原壮吉(五郎)、山口勇(日下部)、増田順司(吉田)、山本麟一(栗林)ほか。
    • 原作の設定とは人名や血縁関係などにかなりの差異が見られる。脚本家はストーリーを口伝で聞いただけで原作を読まずに書いたと述懐している。
  • 悪魔の手毬唄 (1977年4月2日・東宝市川崑監督、金田一:石坂浩二
    • 出演:岸惠子(青池リカ)、北公次(青池歌名雄)、永島暎子(青池里子)、仁科明子(別所千恵)、渡辺美佐子(別所春江)、小林昭二(日下部是哉)、常田富士男(別所辰蔵)、大和田獏(別所五郎)、高橋洋子(由良泰子)、草笛光子(由良敦子)、頭師孝雄(由良敏郎)、原ひさ子(由良五百子)、川口節子(由良栄子)、永野裕紀子(仁礼文子)、辰巳柳太郎(仁礼嘉平)、大羽五朗(仁礼直太)、潮哲也(仁礼流次)、富田恵子(仁礼路子)、白石加代子(司咲枝)、中村伸郎(多々羅放庵)、林美智子(お幹)、加藤武(立花捜査主任)、大滝秀治(権堂医師)、三木のり平(野呂十兵衛)、山岡久乃(井筒いと)、岡本信人(中村巡査)、辻萬長(野津刑事)、若山富三郎(磯川警部)、他
    • この作品では、季節が夏ではなく冬に変更(撮影時期に合わせたもの)されているほか、おりんの名前がおはんになっている。同時期の東宝配給作品「はなれ瞽女おりん」(市川と親しい長谷部慶治の脚本でもある)に遠慮したものと思われる。また、劇中には米映画『モロッコ』の一場面が登場する。
    • 金田一が汽車の発車間際に磯川に「・・・(犯人)を愛してらしたんですね」と問いかけるが、汽笛に邪魔され伝わらないという「望郷」風のラストは、原作(汽笛の邪魔は入らない)の大阪駅から伯備線総社駅に場所が変更されており、駅名をYES(そうじゃ)に引っ掛けた演出という指摘もある。

[編集] テレビドラマ

[編集] 漫画

つのだじろうにより漫画化されている。かなりオカルト方向にデフォルメされたストーリーとなっていた。

[編集] 関連項目

  • わらべ唄(手毬歌)
  • 人間椅子 (バンド) - 江戸川乱歩に傾倒するバンド、人間椅子には題をこの作品から取ったと思われる『悪魔の手毬唄』という曲がある。また『あやかしの鼓』(夢野久作の小説から取った題だと思われる)という曲では、この作品の章題である「生きているのか 死んでいるのか」というフレーズが使われている。

最終更新 2009年11月8日 (日) 12:36 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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