感染症学
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感染症学(かんせんしょうがく)とは、微生物学・免疫学・薬理学・疫学などの基礎医学の成果を活用しながら、細菌に限らずさまざまな病原微生物が主にヒトに惹き起こす感染症の病態について、宿主の側に立って原因を追究し、最適な治療法を考案するための実学(実用的学問)。さらには、入院や旅行などヒトの置かれた環境、術後や免疫抑制などの病態に関連した感染症の発症を予防したり、社会全体で感染症の流行を食い止めるための予防接種・監視活動など、予防医学・社会医学的な側面も持つ。
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[編集] 概論
[編集] 歴史
イブン=スィーナーが感染症の伝染性について発見したのは11世紀初頭であった。その功績から彼は近代医学の父と伝えられている。彼は1020年にその著作「The Canon of Medicine(医学典範)」の中で隔離が感染症の拡大を止める事を紹介した[1]。さらに彼は体液が何らかの天然物によって汚染されることで感染性を獲得すると記述しているが、その物質が病気の直接原因になるとは考えていなかった[2] 。
黒死病(ペスト)がイベリア半島のアンダルス地方を襲った14世紀、Ibn KhatimaとIbn al-Khatibの二人のイスラム学者は、「感染症は微生物がヒトの体内に侵入することによって発症する」との仮説を打ち立てた[2]。この考えはルネッサンス期のヨーロッパではイタリアの修道士・科学者ジローラモ・フラカストロの著作によってさらに一層広く受け入れられた[3]。
アントニ・ファン・レーウェンフック(1632年 - 1723年)は顕微鏡の改良に大きく貢献し、細菌を肉眼で容易に観察できるようになった。
ルイ・パスツール(1822年 - 1895年)は、病気の中には病原体によって生じるものがあることを証明し、狂犬病のワクチンを開発した。
ロベルト・コッホ(1843年 - 1910年)は感染症の病原体を証明するための基本指針となるコッホの原則を提唱し、近代感染症学の基礎となる科学的な考え方を打ち立てた。
エドワード・ジェンナー、ジョナス・ソーク、アルバート・サビンの3氏は、天然痘やポリオに有効なワクチンを開発し、後にそれぞれを地球上から根絶、もしくはほぼ制圧するために大きな一歩を踏み出した。
アレクサンダー・フレミング(1881年 - 1955年)は世界初の抗生物質であるペニシリンを発見した。
ゲルハルト・ドーマク(1895年 - 1964年)は初の広域合成抗菌薬であるサルファ薬を開発した。
なお、感染症の流行の歴史に関しては感染症の歴史に詳しい。
[編集] 今日の感染症学
今日の世界的趨勢では、感染症の治療は感染症科が主に扱い、こと感染症の伝播を扱う場合には疫学もまた大きな役割を果たしている。日常臨床では、感染症は一般に家庭医や内科医によって診断される。例えば単純性肺炎は内科医や呼吸器科医によって治療を受ける。従って、感染症学者・感染症科医は臨床医・基礎医学研究者・免疫学者・細菌学者といった各分野の研究者や検査技師と関わっている。
感染症科医が要求されるケースとしては、次の例がある。
- 初期の診察・検査で確定診断がつけられない場合。
- HIV感染や化学療法による易感染性宿主
- 熱帯感染症などの稀な病原体
- 感染症が第一選択の抗菌薬に反応しない場合
- 感染症が他の患者にも危険を及ぼす恐れがあり、隔離の必要が疑われる場合
[編集] 国内外の感染症対策に関する法律と整備
[編集] 日本
感染症を予防するための法律には以下のようなものがある。
- 検疫法
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)
- 結核予防法(2007年3月31日に廃止)
- 予防接種法
- 学校保健法
[編集] 世界
- 世界レベルでの感染症サーベイランスは、世界保健機関が中心となって行なっている。
[編集] 感染症の予防
[編集] 消毒と滅菌
消毒と滅菌は同じような意味合いの言葉であるが、感染症学を扱う臨床現場では若干、意味合いが異なる。消毒・滅菌は医療現場を中心に行われ、感染症予防対策に有効である。
- 消毒
- 病原微生物を殺すこと、または病原微生物の能力を減退させ病原性をなくすことである。よって、すべての微生物を殺すことではない。一般に消毒に用いられる物質を消毒剤という。詳細は消毒の項を参照してください。
- 滅菌
- 病原体と非病原体の有無に関わらず、すべての微生物を殺すこと、またはそれらを除去することである。手術の際はこの滅菌が必要で、無菌操作と呼ばれる。詳細は滅菌の項を参照してください。
[編集] 予防接種
予防接種は、感染症の蔓延を予防する上で重要な手段である。予防接種は、ワクチン(力を弱めた病原体や毒素)を接種することで、免疫力をつけることにより発病を予防したり、症状を軽くしたりする方法である。
[編集] 感染症の管理に必要な知識・スキル
[編集] 疫学
感染管理を参照のこと
[編集] 感染症サーベイランス
感染症サーベイランスは、感染症の発生状況を調査・集計することにより、感染症の蔓延と予防に役立てるシステムのことである。詳細は該当記事を参照のこと。
[編集] 感染症治療と管理の実際
- 細菌に対する治療
- 細菌感染に対する治療としては、ドレナージや感染巣の切除などの手術手技が行われる他、抗生物質や合成抗菌薬を使用した薬物療法がある。このような薬物療法を施行して治療を行うことを化学療法(ただし抗癌剤による治療でも使われる)と呼ぶ。この薬物療法に関しては化学療法 (細菌)を参照のこと。
- ウイルスに対する治療
- 多くのウイルスは細菌と異なり、一部を除いてウイルスに対して特異的に働く薬物は限られる。そのため、対症療法が主な治療となる。
- ウイルスに対する治療法に関しては抗ウイルス治療を参照のこと。
[編集] 感染症学における今後の課題
[編集] 薬剤耐性菌の問題
薬剤耐性の項目を参照してください。
[編集] 新しい抗生物質の開発
[編集] 感染症のグローバル化
細菌は交通手段の発達により、海外の様々な危険な病原体が日本に持ち込まれるケースも多い。輸入感染症とも呼ばれる。
[編集] バイオテロリズム
生物兵器に関しては、専門の医師や薬剤師との協力が必要であり、感染症学分野でも研究が進んでいる。
[編集] ヒト以外の感染症学
- 獣医感染症学
- 植物病理学
[編集] 関連項目
- 感染/感染症/伝染病
- 呼吸器感染症/尿路感染症
- 微生物学/細菌学(口腔細菌学)/ウイルス学/真菌学/免疫学/薬理学
- 感染制御学/感染管理
- 医学/予防医学/社会医学/公衆衛生学
- 歯学/獣医学
- 薬学/薬理学/抗菌薬
[編集] 参考文献
- ^ David W. Tschanz, MSPH, PhD (August 2003). "Arab Roots of European Medicine", Heart Views 4 (2).
- ^ い ろ Ibrahim B. Syed, Ph.D. (2002). "Islamic Medicine: 1000 years ahead of its times", Journal of the Islamic Medical Association 2, p. 2-9.
- ^ Beretta M (2003). “The revival of Lucretian atomism and contagious diseases during the renaissance”. Medicina nei secoli 15 (2): 129-54. PMID 15309812.
[編集] 関連学会
- 日本感染症学会[1]
- 日本環境感染学会[2]
- 日本口腔感染症学会[3]
- 日本小児感染症学会
- 日本性感染症学会
- 日本眼感染症学会
- 日本外科感染症学会
- 日本結核病学会
- 日本エイズ学会
- 日本ハンセン病学会
- 日本骨・関節感染症研究会
- 日本産婦人科感染症研究会
- 日本耳鼻咽喉科感染症研究会
- 日本臨床微生物学会[4]
- 日本細菌学会[5]
- 日本ウイルス学会[6]
- 日本医真菌学会
- 日本寄生虫学会
- 日本臨床寄生虫学会
- 臨床微生物迅速診断研究会
[編集] 外部リンク
最終更新 2009年9月14日 (月) 08:24 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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