慢性疲労症候群

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慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎
ICD-10 G93.9
ICD-9 780.71
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慢性疲労症候群(まんせいひろうしょうこうぐん)は、原因不明の強度の疲労が長期間(一般的に6ヶ月以上)に及び継続する病気である。この疾患の概念はアメリカで生まれたので、英語 Chronic Fatigue Syndrome や Myalgic Encephalomyelitis(筋痛性脳脊髄炎)、 Post-viral fatigue syndrome(ウイルス感染後疲労症候群)のアクロニムからCFS、ME、PVFSと呼ばれる。また重篤度が伝わらない・慢性疲労と区別がつきにくいということから、Chronic Fatigue and Immune Dysfunction Syndrome(慢性疲労免疫不全症候群)という呼称を患者団体が提案してもいる。以下CFSと略す。

主訴は、身体及び思考力両方が激しく疲労し、日常生活を著しく阻害する。

長期間の疲労感の他に次の症状等を呈することがある。

  • 微熱 ・咽頭痛 ・頸部あるいはリンパ節の腫張・原因不明の筋力低下
  • 羞明 ・思考力の低下・関節障害 ・睡眠障害

原因不明の疾患で、通常、血液検査等も含む全身の検査を受けても他の病気が見つからなく、精神疾患も当たらない場合に初めて疑われる(除外診断)病気である。しかし、詳細に検査をすると神経系、免疫系、内分泌系などに異常が認められる場合もある。

アメリカ疾病予防センター(CDC)によると、完治は希で5〜10%であるものの、治療により改善したり、ある程度回復するとされている。日本では、約38万人(0.3%)がCFSを罹患していると推定されているが、認知度の低さにより、適切な診断を受けていないか、うつ病神経症更年期障害自律神経失調症等に誤診されている患者が多いと思われる。

また、よく間違われることであるが、疲労が蓄積された慢性疲労とは別のものである。体内の不快苦痛・不自由さは生活の障害となっている場合も多く、故に疾病としてのケア・休養・治療、が必要である。 更に、慢性疲労症候群という名称も誤解されやすいものとして、改名を求める声があるが、現時点で改名のコンセンサスは得られていない。 20代から50代のうちに発症するケースが多く、患者全体のうち女性が6〜7割程度を占め、アレルギー疾患を併発するCFS患者が多いと言われている。


目次

[編集] 症状

  • 疲労感: 身体・精神両方に激しい疲労感が生じる。運動・精神活動によって疲労感が増すが、休息や睡眠による回復は遅い。疲労の程度には個人差があり、何とか働ける程度から寝返りも打てない者もいる。患者の約4分の1は、外出が困難か寝たきりの状態である。CDCの調査[1]によると身体的活動レベルは、多発性硬化症(MS)・後天性免疫不全症候群全身性エリテマトーデス関節リウマチ・最終段階の腎不全慢性閉塞性肺疾患等の病気と匹敵すると報告されている。
  • 痛み: 筋肉痛や関節痛(発赤や腫れがなく、移動性)・頭痛・リンパ節の痛み・喉の腫れ・腹痛・顎関節症候群・顔面筋疼痛症候群
  • 知的活動障害: 健忘・混乱・思考力の低下・記憶力の低下
  • 過敏性: 羞明・音への過敏・化学物質や食べ物への過敏。アレルギー症状の悪化。
  • 体温調節失調: 悪寒や逆に暑く感じることがある・微熱
  • 睡眠障害: 睡眠により疲れがとれない・不眠・過眠・はっきりした夢を見やすい。
  • 精神障害: 感情が変わりやすい・不安・抑鬱・興奮・錯乱・ミオクローヌス(レストレスレッグ症候群)
  • 中枢神経障害: アルコール不耐性・筋肉の痙攣・筋力低下・振戦・耳鳴り・視力の変化
  • 全身症状: 口内炎・朝のこわばり・頻尿・体重の変化・動悸甲状腺の炎症・寝汗・息切れ・低血糖の発作・不整脈過敏性腸症候群月経前症候群発疹

[編集] 診断基準

[編集] 厚生省診断基準案

  1. 大クライテリア(大基準)
    1. 生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6ヵ月以上の期間持続ないし再発を繰り返す(50%以上の期間認められること)。
    2. 病歴、身体所見、検査所見で別表に挙けられている疾患を除外する。
  2. 小クライテリア(小基準)
    1. 症状クライテリア(症状基準)-(以下の症状が6ヵ月以上にわたり持続または繰り返し生ずること)
      1. 徴熱(腋窩温37.2~38.3℃)ないし悪寒
      2. 咽頭痛
      3. 頚部あるいは腋窩リンパ節の腫張
      4. 原因不明の筋力低下
      5. 筋肉痛ないし不快感
      6. 軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感
      7. 頭痛
      8. 腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛
      9. 精神神経症状(いずれか1つ以上): 光過敏、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、混乱、思考力低下、集中力低下、抑うつ
      10. 睡眠障害(過眠、不眠)
      11. 発症時、主たる症状が数時間から数日の間に出現
    2. 身体所見クライテリア(身体所見基準) - (少なくとも1ヵ月以上の間隔をおいて2回以上医師が確認)
      1. 微熱
      2. 非浸出性咽頭炎
      3. リンパ節の腫大(頚部、腋窩リンパ節)または圧痛
  • CFSと診断する場合
    大基準2項目に加えて、小基準の「症状基準8項目」以上か、「症状基準6項目+身体基準2項目」以上を満たす
  • CFS疑いとする場合
    大基準2項目に該当するが、小基準で診断基準を満たさない
  • 感染後CFS
    上記基準で診断されたCFS(「疑い」は除く)のうち、感染症が確診された後、それに続発して症状が発現した例

但し、以上の基準は初期研究段階において、研究対象にする患者を厳格にふるい分けるために作られたものであり、小クライテリアが多く、また、精神疾患を持っていればCFSから除外という問題のある診断基準であるので、実際の診断にはもっと基準を緩めてもいいのではないかという意見が、一線の研究者からも出ている。

また、CFS患者特定の検査は、近年諸処現れているものの血液などの化学検査でそれ一つで確定できるようなものはない。現在では、症状を示す他の疾患である可能性を除外する除外診断が一般的である。このため、客観的にCFSを鑑別できるバイオマーカーの必要性が叫ばれていたが、大阪大学大阪市立大学共同チームにより、血液 1,2mlに近赤外線をあて、約95%の確率で鑑別できる近赤外線分光法が最近開発された(しかし、CFS患者特有のスペクトルを起こす血液中の物質はまだ特定できておらず、研究プロジェクトを立ち上げる予定)。

[編集] アメリカCDC診断基準(fukuda) 1994

  1. 医学的に説明がつかない、持続的にあるいは繰り返し起こる疲労感で、6カ月以上持続し、新たにまたは明確に発症したもの。運動が原因ではなく、休養によって軽減されず、仕事や勉強、社会的行動や個人的行動を事実上妨げる疲労感。
  2. 下記の症状のうち4つ以上があてはまる場合(疲労感が起こる前ではなく、疲労感に伴って、持続的にあるいは繰り返し認められること)。
    1. 最近の出来事をよく覚えていない。あるいは仕事や勉強、社会的行動や個人的行動に支障が出るほどひどい集中力の低下がみられる
    2. のどの痛み
    3. 首またはわきの下のリンパ節に圧痛がある
    4. 筋肉痛
    5. 2カ所以上の関節に痛みがあるが、腫れや圧痛は認められない
    6. 過去の頭痛とは種類、パターン、程度などが異なる頭痛
    7. 眠っても疲れがとれない
    8. 運動後24時間以上、体調不良が持続する

[編集] PS値

疲労・侮怠の程度は、PS(パフォーマンス・ステイタス)により判断される。CFS患者は、PS値が3-9の間である。

  • 0 - 倦怠感がなく平常の社会生活ができ、制限を受けることなく行動できる。
  • 1 - 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労を感ずるときがしばしばある。
  • 2 - 通常の社会生活はでき、労働も可能であるが、全身倦怠感のため、しばしば休息が必要である。
  • 3 - 全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
  • 4 - 全身倦怠感のため、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
  • 5 - 通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である。
  • 6 - 調子のよい日には軽作業は可能であるが、週のうち50%以上は自宅にて休息している。
  • 7 - 身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である。
  • 8 - 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している。
  • 9 - 身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている。

[編集] 原因諸説

CFSの機序・病原については、国内外とも、生理学・疫学的な研究を含む多くの研究がされているがはっきりしない。 アメリカの医療従事者向けの治療ガイドには、3,000以上の研究報告が存在し、CFSは生理学的な病気である十分な科学的証拠がある[2]と記されている。また、2008年発刊されるトキシコロジージャーナルには、CFSは、主として神経・内分泌・免疫系統の機能不全の一群であるとし、外因性の化合物・感染症・ストレス・幼少期の虐待等がCFSを起こす要因である可能性があると述べている。[3]しかし依然、明確に説明できるような原因は見つかっていない。

過去、発症要因と考えられたものには以下のようなものがある(患者により異なる)

風邪インフルエンザストレストラウマ感染症細菌、真菌、ウイルス)、 遺伝、 外傷、 紫外線、 化学物質、 アレルギー、 環境、 リケッチアウイルス、 外科手術出産  など

また、患者の疲労の主因として以下のようなものが考えられている。

遺伝子異常、サイトカイン異常、 ・神経系の機能障害、 ホルモン異常 など

[編集] 遺伝子の異常に関する研究

CFS患者にはある遺伝子の異常が起こっていることがCDCから報告されている。 遺伝子のオン・オフを切り替える仕組みに異常が生じ、適切でない時にオンになることが、極度の疲労感に関与するのではないかと考えられている。 身体がストレスに対応するのを助ける12の遺伝子群に、特別な変化のセットを持つ人々に生じている「身体疾患」である事が強く示唆されている。 CFS患者では健康な人と比較して、特殊な遺伝子表現があるとされ、CFSは多発性硬化症や運動ニューロン病とおなじ分類にされるべきであるとされている。

マーカー遺伝子の発現解析結果を検査することで、高精度でCFSの診断が出来るとされる。これは、遺伝子の異常がCFSに深く関わっていることを示唆する。 このことにより、診断が困難であったCFSの確定診断としての利用が期待される。また、有効な治療法が無かった病気だが、新薬の開発への糸口になる可能性がある。

[編集] 免疫の異常に関する研究

人が疲労を感じる際、そのシグナルとなる疲労伝達物質であるサイトカインが産生されるとされる。CFS患者では、このサイトカインTGF-β 及び インターフェロン)の産生異常といった免疫機能障害によって、異常な疲労感が引き起こされると考えられている。

サイトカインの産生異常の原因として、患者の中には免疫の指標であるNK活性が、低下している者がおり、体内のウイルスが再活性化してサイトカインが産生されているという考え方がある。 ただ、現状ではNK活性の低下やウイルスは一部のCFS患者に見られるのみで、特定できるような原因は発見されておらず様々な研究が行われている段階である。

[編集] 内分泌の異常に関する研究

TGF-βの産生異常により、神経ホルモンDHEA-Sの低下・アシルカルニチン異常・グルタミン酸・γ-アミノ酪酸 (GABA) の産生低下が起こっていると考えられている。 患者の約半数の血液中に、自己免疫疾患の患者の血液中だけにみられるCHRM1(ムスカリン1型アセチルコリン受容体)抗体という特殊たんぱくが見つかっており、その他 OPRM1(オピオイドμ受容体)、 HTR1A(セロトニン1A受容体)、DRD2(ドーパミンD2受容体)も血液中に存在する患者が存在する。アセチルコリン受容体に対する自己抗体は、重症筋無力症と関連があり、CHRM1が血中に存在する患者は脱力感・思考力低下の症状が強い。

[編集] 神経学的な異常に関する研究

CFS患者で、脳内の神経細胞の活動性が下がっている部位が幾つかある患者が居る。前頭前野(ブロードマン24,32,33と9/46d野)の部位に限定してのアセチルカルニチン取り込みが低下しており、この前帯状回の神経細胞は、自律神経系の中枢部であり、グルタミン酸などの合成が上手く行われていない可能性があり、このことにより自律神経系の諸症状がでることにつながっていると考えられている。また、血中アセチルカルニチンの濃度低下により、倦怠感・思考力・集中力の低下なども引き起こす原因とされている。

また、ポジトロン断層法 (PET) による脳の血流を調べたところ、前帯状回眼窩前頭野(意欲やうつ状態と関係している)・背外側前頭前野(新しい計画を立てたり新たな行動の意欲と関係)・側頭葉(記憶に関連している)・後頭葉(視覚と関連)・脳幹部(意識を調節する部分や筋肉との共同運動を調節し、呼吸・心拍・体温調節などの基本的な生命現象の中枢)などの血流が大幅に低下し、神経細胞の活動レベルが下がっている患者が見つかっている。一部の患者の不定愁訴はこれらによるものと推測できる。

[編集] 病名呼称各種

  • 筋痛性脳脊髄炎(ME) : 1938年から医療文献に記されている。1988年に、イギリス衛生省・英国医療協会により、公的にMEを真に存在する・重症の病気であるとした。脳脊髄炎と名前に含まれているが、炎症がないから不適切だと主張するものもいるが、患者に炎症が見つかっているケースがある。イギリス・カナダ等では、CFSよりMEという呼称が利用されている。
  • 慢性疲労症候群(CFS) : 1988年に、CDCにより名付けられた病名。アメリカ・日本等ではこの呼称は利用されている。しかし重傷度が伝わらない[4]等の理由により、多くの患者・医師等は改名を望んでいる。
  • ヤッピー・フルー : ヤッピー・フルー(裕福層のインフルエンザ)という蔑称である。1990年のニューズ・ウィークの記事で取り上げられた。裕福層にCFS患者が多く、仮病・バーンアウト症候群だと思われていたからである。現在では、裕福層だけに発症するわけではなく、あらゆる階級・人種に発症することが分かっている。この呼称は、世にCFSを精神疾患・怠惰なだけだという偏見を生み出してしまった。
  • 慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS):アメリカの患者団体が、慢性疲労と間違われやすい・重症度が伝わらないということで提案している病名。
  • 慢性活動性EBウイルス感染症(CEBV)

[編集] 他の疾患とCFSの鑑別・関連

アメリカン・ファミリー・フィジシャン in 2002によると、いくつかの病気とかなりのオーバーラップがみられる。多発性硬化症(MS),甲状腺病,貧血,糖尿病などとは、その病気にふさわしい症状があれば、CFSから除外されるとある。[5]

  1. うつ病 : CFSとうつ病とのオーバーラップが指摘されており、CFSという疾患概念そのものの存在に疑義を投げかける見解もあるが、CFS患者の体内では、コルチゾールバソプレッシン等のホルモン量が少ないこと・運動・精神活動後に著しく疲労を感じる・buspirone負荷試験でセロトニン受容体の上方調節が認められない・MHPGが減少している・発症年齢が20〜40代という若い年代に多い・患者の2/3が女性・睡眠時の脳波異常・喉とリンパ節の腫れがある・罪業妄想がない・感染症で集団発生する・突如発症することが多いなど、うつ病とは異なる病態であることを示している。しかし、反応性のうつ病との合併例は多い。
  2. 線維筋痛症(FMS): CFSの症状と同様の症状 筋肉痛・疲労・睡眠障害等がある。CFSとの合併例が非常に多い。CFS・FMS両方同様の病気として扱う医師もいる。
  3. 化学物質過敏症(MCS): 患者は、化学物質に過敏に反応し、睡眠障害がある。
  4. 湾岸戦争症候群(GWS): 症状はCFS患者の症状と酷似している。劣化ウラン弾化学兵器マイコプラズマ・神経症などが原因ではないかといわれている。患者の約半数に、マイコプラズマの抗体が見つかっている。
  5. 伝染性単核症:伝染性単核症発症後、約1割がCFSを発症する。
  6. ライム病
  7. 過敏性腸症候群(IBS)
  8. 多発性硬化症(MS)
  9. 膠原病
  10. 甲状腺機能低下症
  11. 後天性免疫不全症候群(AIDS)
  12. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  13. 身体表現性障害
  14. 不安障害
  15. セリアック病
  16. 神経衰弱

[編集] 治療法

心身共に休養させる必要がある。薬剤に関しては、漢方薬補中益気湯十全大補湯六君子湯等)・ビタミンC・メチコバール・抗うつ薬免疫グロブリン。眠剤等の処方・認知行動療法・段階的行動療法・ペイシングなどで多少の効果が見られる場合があるが、特効薬は見つかっておらず、長期に渡って苦しみ続けている患者は今なお多い。近年、病因として患者の多くに遺伝子の働きに異常があるということがわかってきており、これにより新たな治療法が期待されるとCDCより報告されている。また、ストレスが遺伝子の異常の原因に関わっていることからストレスの緩和といった精神的な治療や周囲の病気への理解が重要である。また、患者の中には体内のウィルスが再活性化している者がおり、このような場合抗ウィルス薬・抗菌剤が効く例もある。アンプリジェン・バルガンシクロビルが研究段階で有効という報告があるが、病状によって慎重な判断が必要とされる。なお、アンプリジェンは現段階では認可されていない。調子がよくなってきて早めに復職など無理をすると、症状が最悪時の状態に戻ってしまうことがあるので、療養は、徐々に確実に治していくことが大事である。

  • 補中益気湯は補剤と呼ばれており、病後や術後の免疫低下や、微熱・全身倦怠感などにCFSの症状に似ている症状の場合処方されており、患者の4割に有効とされている。
  • ビタミンC(アスコルビン酸)を大量(1,000mg 毎食後)を服用することにより、活性酸素を除去し、組織障害を減少させることができ、微熱が軽減する例がある。ビタミンCは酸性であり、大量に服用すると胃を痛めることがあるので、セルベックス等の胃薬を併用する。
  • メチコバール(毎食後 1,000μg)は、ビタミンB12であり、元来、末梢神経炎の治療薬として用いられていたが、睡眠障害にも有効であると報告があり、脱力感・疲労感を軽減し、思考力を回復する例がある。
  • 代替医療 : コエンザイムカルニチンNADH必須脂肪酸リンゴ酸マグネシウム等のサプリメントで症状が緩和することもあり、自律神経系の乱れには、緑の香りのアロマテラピーが効き、脳の疲労が軽減する。また温熱療法鍼灸ヨガ太極拳等も効果のある場合がある。また、加工食品の扱いになるが、反鼻(マムシの肉)・蝮胆(マムシの胆嚢)には、セロトニン前駆物質トリプトファン・各種ビタミン・ニコチン酸などが含まれているためそれらの相乗効果により単体でそれぞれを摂取するよりも症状を緩和させる場合がある(マムシ丸ごと一匹のものとは性能が異なるため注意)。

理解されにくく社会的に孤立しやすい難病なので、周囲からのストレスを受け2次的な苦痛を受けることが多いが、周囲が理解することにより患者の苦痛を和らげることができる。

[編集] 医療機関の対応

現在、CFSの診察を積極的に行っている医師はごく少数である。また、医師の間でCFSの認識は薄く、専門医でなければこの病気の可能性を見いだせなかったり、的確に診断できない場合がある。精神疾患等に誤診される場合があり、患者は多くの病院を訪れ(ドクターショッピング)、長年の後CFSの診断を受けることが多い。それでもここ数年は、政府の疲労プロジェクト・海外の研究報告によってCFSの研究が進んだこと、各メディアが取り上げるようになったことなどによって、認識が広まってきている。また、アメリカ政府が公的にCFSを認めたこともあり、今後の認知は深まると考えられる。

研究者としては倉恒弘彦氏(現在 関西福祉科学大学教授・大阪市立大学 客員教授)など。

[編集] 経過

[編集] 発症

突然にインフルエンザのような症状を呈し発症するか、疲労やストレス等の蓄積で発症し徐々に悪化するケースも多くある。

[編集] 突然の発症

突然にCFSを発症し、ある日・ある時間に発症するということを覚えている患者もいる。

しばしば、他の病気と一緒に、または、他の病気によって引き起こされる。インフルエンザや気管支炎などへの感染、アレルゲン(ペンキ・新しいペット・建設物の埃)への曝露後、CFSの症状が現れるようになる。組み替え型のB型肝炎ワクチンがCFSの発症原因の一つではないかという説もある。

[編集] 徐々な発症

いくつかのケースでは、ゆっくりとしたペースで(何年にも渡るケースがある)進行する。こうした患者は、発症時にはCFSに気が付きにくい。ストレスや過労からだと思い、しばらくすれば治ると思ってしまうが、長く症状が続くので治療を求めるようになるようである。

[編集] 予後

一般的に、予後は良くない。発症が突然である場合、数年である程度症状が改善することもある。完治は希であり、数十年もの期間症状が続くケースも多く、寝たきりの状態が続いている患者も多い。早期治療を受けたケースでは予後が良いが、治療を受けずに自然治癒することはあまりない[6]。激しい運動・ストレス・他の病気などにより症状は悪化しやすい。免疫が落ちていることが多いため感染症に罹患しやすく、エイズ患者にしかならないような病気も合併する例があり注意が必要である。また、CFS患者は、平均寿命が短いという報告がなされている。心不全自殺などが主な理由だとされる。2006年6月13日、32才イギリス人女性が死亡し、厳格な検死鑑定が行われ、CFSにより尿を産生することができず脱水症状を起こし死亡したとされ、初の公的なCFSによる死とされた[7]。彼女の脊髄には炎症が発見された。

[編集] 歴史

CFSは比較的新しい疾病概念であるが、古代医学の巨人ガレン(AD130?201年)の著書の中にもCFSの病態のように思われる記述が残っている。18世紀にも裕福層に多く同様の病態の患者がいた記録が残っており、著名人の中でも、フローレンス・ナイチンゲール、チャールズ・ダーウィン等も同様の病状のようであったようだという記録が残っている。

1930年代から1950年代にかけて、世界各国60ヶ所以上で発症例が報告された。主な国はアメリカ・イギリス・オーストラリア・アイスランド・ドイツである。当時はCFSという概念がなく、発症した病院名や地域の名をとり、ロイヤルフリー病・アイスランド病などと呼ばれ、異形ポリオ・集団ヒステリーなどではないかと推察されていた。

1930年代後半に、筋痛性脳脊髄炎(Myalgic Encephalomyelitis)という名で免疫・神経学的な研究がなされ、WHOによりCFSは、中枢神経系の病気であると、1969年に分類されている。そして、1992、1993年には、"ME(筋痛性脳脊髄炎)"と"CFS(慢性疲労症候群)" 両疾病概念は、WHOの国際疾病分類 ICD-10 G93.3 PVFS(感染症後疲労症候群)にまとめられた。

1984年には、アメリカ・ネバダ州にある人口約2万人のインクラインで、人口の約1%にあたる約200名が強い疲労などを訴えた(ネバダ・ミステリー)。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が調査に乗り出し、病名を慢性疲労症候群 (Chronic Fatigue Syndrome) とした。1988年には診断基準も作成された。当初、未知のウイルスの関連が考えられていたが、現在は否定されている。 ただ、一部の症例ではウイルスや他の病原体が原因となっている可能性があると報告されている。

現在、CFSの発症には様々な仮説が提案されており、原因解明の研究を行っている段階である。患者には脳(前頭葉、後頭葉領域)の血流低下が多く見られることがわかってきており、脳の機能障害が異常な疲労感と同様にCFSに共通した症状とされ、免疫系、内分泌系、神経系の異常が密接に関係してると考えられている。また、患者にはある遺伝子群においてCFSを発症させる遺伝子構成発見が見られることがわかってきており病因との関係が研究されている[要出典]

日本ではあまり関心を持たれてはいなかったが、1991年に、厚生省のCFS調査研究班が発足。1993年には、日本における診断基準を満たす患者が、474例報告された。以後、阪大を中心に、CFSの研究・診察が行われた。2005年には、大阪市立大学医学部に疲労クリニカルセンターが設立された。一般的な疲労を含み、CFSの研究・診察を行っている。

諸外国でも研究が進められ、生理学的な異常が多く報告されるようになっている。2001年には、イギリスの保健省首席医務官が、すべての医師はCFSを深刻な病気とみなし治療するように指導した[7]。アメリカ・ヨーロッパ諸国・韓国等でも同様の動きがある。だが、医師の間ではCFSが身体的疾患か精神疾患か、またそもそもCFSという疾患が存在するのかといった議論が絶えない。しかし、徐々にではあるが世界の医療従事者の中でも認知が深まりつつある。

2006年には、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が、C3(CFS Computational Challenge)[8][9]と題された、ゲノム学者・分子生物学者・数学者・エンジニア等で行った大々的な研究結果を報告し、CFSが存在すること、精神疾患であることを否定し身体的な病気であると宣言をした[10]。これに合わせ、アメリカ国内で Get informed. Get diagnosed. Get help. [11][12]と題された認知キャンペーンを400万ドルをかけて開始し、アメリカ疾病予防管理センター長も、CFSを深刻な病として扱うことを訴えた[13][14]。病名の変更もアメリカで議論され、変更される予定である。2007年度、イギリス政府が再び、医師に真剣に治療するように指導し、新しい治療ガイドライン[15]を発布した。

日本においては、厚生労働省CFS研究班がなくなり、未だ政府によりCFSを医療従事者に診察・治療を行う指導は行っていない。

[編集] 社会的問題

1900年代前半には内科的な病気である可能性が高いと思われていた。だが、当時の診断技術では患者特有の異常が見つからず、精神疾患だと医療従事者の中でも思われるようになった。CFS患者は、心の中の問題だけにされてしまう傾向がある。本来なら神経内科医が診る疾病であるが、仮病や心気症的な振る舞い(注意をひいている)・時には詐病とまでされ精神科にまわされることが多く、診察を拒否する医師さえいるので、患者は診断を受けるために長期の時間苦しむことになり、病気を難治化・長期化してしまっている。また、多くの患者は働くこともできず、障害年金も受給されないことが多く、経済的に困窮することになる。周囲の人々から理解を得られにくく、怠けている・精神的[8]に問題があるなどとされる傾向がある。CFS患者の自殺率は非常に高いという報告がある[9]が、こうした周辺環境が関与している可能性がある。CFSは日本全体においても大きな経済負担になっており、CFSによる日本の経済的損失は1.2兆円[10]と推定されている。

[編集] CFS患者・元患者の著名人

[編集] 脚注

[ヘルプ]
  1. ^ CDC Press Conference November 3,2006 - The Chronic Fatigue and Immune Dysfunction Syndrome Association of America and The Centers For Disease Control and Prevention Press Conference at The National Press Club to Launch a Chronic Fatigue Syndrome Awareness Campaign
  2. ^ CDC - CFS Basic Overview (PDF file, 31 KB)
  3. ^ Dietert, RR, Dietert JM (2008 Feb 8). “Possible role for early-life immune insult including developmental immunotoxicity in chronic fatigue syndrome (CFS) or myalgic encephalomyelitis (ME)”. Toxicology. PMID 18336982.
  4. ^ TXT formal Jason LA, Taylor RR. (2001). Measuring Attributions About Chronic Fatigue Syndrome. J Chronic Fatigue Syndr 8 (3/4); 31-40
  5. ^ Fukuda K, Straus S, Hickie I, Sharpe M, Dobbins J, Komaroff A (1994). "The chronic fatigue syndrome: a comprehensive approach to its definition and study. International Chronic Fatigue Syndrome Study Group.". Ann Intern Med 121 (12): 953–9. PMID 7978722.
  6. ^ R. Cairns and M. Hotopf "A systematic review describing the prognosis of chronic fatigue syndrome Vol. 55 No. 1 Society of Occupational Medicine 2005"
  7. ^ Sophia's Story 06
  8. ^ CDC>Chronic Fatigue Syndrome > Awareness Campaign > Public Service Announcements (PSAs)
  9. ^ Jason LA, Corradi K, Gress S, Williams S, Torres-Harding S. "Causes of death among patients with chronic fatigue syndrome." Health Care Women Int. 2006 Aug;27(7):615-26.
  10. ^ 倉恒弘彦ほか:慢性疲労症候群に対する治療法の確立.科学技術振興調整費 生活ニーズ対応研究「疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防衛に関する総合研究」平成16年度研究業績報告書,2005.

[編集] CFS関連図書

[編集] 外部リンク

[編集] 国内のリンク


[編集] 諸外国政府のCFSのHP

[編集] 外国のHP

[編集] 患者団体のHP

アメリカ

イギリス

[編集] 動画

最終更新 2009年10月29日 (木) 15:19 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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