抗うつ薬

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抗うつ薬(こううつやく)とは、主としてうつ症状を緩和する薬剤である。うつ病、うつ状態、パニック障害強迫性障害摂食障害、ある種の不眠、慢性疼痛などに投与される。

目次

[編集] うつ病における薬物療法

うつ病の治療には精神療法が必要であり、必ず病気の説明や見通しを説明する必要がある。抗うつ薬におけるうつ病改善率は80%程度と言われている[誰?]。抗うつ効果としてはどの薬物も大差はないと考えられている。適切に治療を行っても30%程度で反応せず難治性となることも知られている。抗うつ薬は副作用が生じるなどの理由がない限り徐々に増やし、最大用量まで用いるのが一般的である。殆どの抗うつ薬は2~3週投与を行わなければ効果が発現しないといわれている[誰?]。そのため即効性のある抗不安薬を併用する場合が多いのだが抗不安薬は単独では抗うつ作用がないとされている。また抗うつ薬の併用も一般的には意味がないとされている。

[編集] 主な抗うつ薬

抗うつ薬は、次のような種類がある。

[編集] 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

詳細は「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」を参照

第三世代の抗うつ薬と呼ばれるものであり、フルボキサミンデプロメールルボックス)、パロキセチンパキシルセルトラリンジェイゾロフト)が知られている。副作用が非常に少なく、扱いやすく強迫性障害、社会不安障害、パニック障害に適応がある。躁うつ病には禁忌であるが大うつ病では第一選択となる。効果発現に数週間必要であるため、即効性のある抗不安薬を4週間ほど併用するのが一般的である。投与初期(1~2週間程度)は悪心、嘔吐、不安、焦燥、不眠といった症状が出現することがあるが継続投与で軽快、消失する。セロトニン受容体に対する急性刺激と考えられている。少量ではセロトニン選択性であるが、高用量となるとノルアドレナリンの再取り込みも阻害するようになる。


[編集] セロトニン・ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害薬(SNRI)

詳細は「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」を参照

第四世代の抗うつ薬と言われるもので、ミルナシプラントレドミン)、ヴェンラファキシン(エフェクサー)、デュロキセチン(シンバルタ)、ネファゾドン(サーゾーン)が含まれる。SSRIよりも意欲を高めるといった効果が期待されている。TCAのイミプラミンに近い作用となるがセロトニンとノルエピネフリン以外の受容体と相互作用をしないため副作用は非常に少ない。頭痛、口渇、排尿障害といった副作用は報告されている。


[編集] 三環系抗うつ薬(TCA)

詳細は「三環系抗うつ薬」を参照

もっとも古い抗うつ薬で1950年代に登場した。セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みの阻害が抗うつ作用にかかわると考えられている。第1世代としては塩酸アミトリプチリントリプタノールラントロン)、塩酸イミプラミンイミドールトフラニール)、塩酸クロミプラミンアナフラニール)、マレイン酸トリミプラミン (スルモンチール)、塩酸ノルトリプチリンノリトレン)。第2世代としてはアモキサピンアモキサン)、塩酸ドスレピン (プロチアデン)、塩酸ロフェプラミン (アンプリット)が知られている。第3世代としての選択的セロトニン再取り込み阻害薬が登場してからは軽症、中等症のうつ病の第一選択からは外れたが2008年現在も使われている薬である。その理由としては抗コリン作用をはじめとした多くの副作用が存在するがうつ病の改善率が70~80%と非常に高いことが理由にあげられる。TCAの抗うつ作用はほとんど差がないと言われているが[誰?]、患者によって特異的に有効なTCAが存在するのも事実である。抗コリン作用が軽快している第二世代の薬物から使用し、副作用に合わせて変えていくのが一般的である。特徴としては三級アミンは二級アミンと比べると、鎮静作用、抗コリン作用が強く、起立性低血圧も起こしやすい。鎮静と体重増加の作用はヒスタミンH1受容体に対する親和性と相関している。起立性低血圧はアドレナリンα1受容体との親和性に相関しているといったところである。またTCAは内服中断後、1週間は体内にとどまると考えられている。危険な副作用としてはキニジン様作用といわれる心臓障害がある。

アミトリプチリントリプタノールラントロン

抗コリン作用、鎮静作用が最も強いTCAである。若年者で入眠障害がある患者で好まれる傾向がある。就寝前に多く飲ませることが多い。

イミプラミンイミドールトフラニール

最初に作られたTCAである。アミトリプチリン よりも抗コリン作用、鎮静作用が弱いがノルトリプチリンよりは強い。起立性低血圧も比較的少ない。パニック障害に効果があることもある。

クロミプラミンアナフラニール

セロトニンの再取り込み阻害作用が強い。強迫性障害に有効であるといわれている[誰?]痙攣がおこる頻度が他のTCAよりも強いため、抗けいれん作用の強い抗不安薬を併用することが多い。注射薬があるため、うつ病による不穏、焦燥に対して3時間程度で25mgを点滴静注することもある。

ノルトリプチリンノリトレン

セロトニンよりもノルアドレナリンの再取り込みを強く抑制する。焦燥感を起こすことが少ない。有効治療量の幅が狭く処方が難しい。

アモキサピンアモキサン

第二世代のTCAであり、副作用、特に抗コリン作用が軽減されている。他のTCAよりも効果発現が早いといわれている。妄想性うつ病に効果があるといわれている[誰?]


[編集] 四環系抗うつ薬

詳細は「四環系抗うつ薬」を参照

ノルエピネフリンの再取り込みを選択的に阻害し、セロトニンの再取り込みは阻害しない。抗コリン作用はTCAよりも軽減されている傾向があるが、痙攣を起こしやすく、抗けいれん作用の強い抗不安薬(ジアゼパムやニトラゼパム)を併用することが多い。塩酸マプロチリン(ルジオミール)、塩酸ミアンセリン(テトラミド)、マレイン酸セチプチリン(テシプール)が有名である。

ミアンセリン(テトラミド)

α2受容体を遮断することでノルアドレナリンの放出を促進する。抗ヒスタミン作用が強い薬物である。心毒性がないため非常に使いやすい抗うつ薬である。呼吸抑制と鎮静という副作用がある。SSRIとの併用による増強効果が報告されている数少ない薬物である。

セチプチリン(テシプール)

ミアンセリンを改良した薬物。中枢性セロトニン作用をもつ。鎮静の副作用はまれ。


[編集] トリアゾロピリジン系抗うつ薬(SARI)

塩酸トラゾドン(商品名レスリン、デジレル)が有名である。5-HTの取り込みを阻害する薬物である。

[編集] モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)

詳細は「モノアミン酸化酵素阻害薬」を参照

三環系抗うつ薬とほぼ同時期に抗うつ薬として使われ始めたが副作用が強かったため扱いにくく、現在は抗うつ薬としてはほとんど使われない。パーキンソン病治療薬として専ら用いられている。

[編集] ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSa)

NaSSaはNoradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressantの略。2009年9月7日から使用が開始された。これまで日本にはなかった作用機序の薬で、抗鬱薬分野での新規作用機序の新薬は10年ぶりとなる[1]。これまでのようにシナプスにおける神経伝達物質の再取り込みを阻害して濃度を上げるのではなく、セロトニン、ノルアドレナリンの分泌量そのものを増やす作用がある。すなわち、α2ヘテロ受容体とα2受容体をふさぎ、セロトニンやノルアドレナリンが出ていないと錯覚させ、分泌を促す。また、5-HT1受容体にセロトニンが結びつきやすくするために、5-HT1以外のセロトニン受容体をふさぐ。

2009年9月7日から国内での処方が解禁された。開発元のN.V.オルガノンと統合したシェリング・プラウからレメロン[2]明治製菓からリフレックス[3]として発売されている。2009年9月現在、90カ国で既に使用されている。

[編集] ノルエピネフリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI)

日本国内においては未承認である。塩酸ブプロピオン(商品名ウェルブトリン)が知られている。

[編集] その他

  • スルピリド(商品名ドグマチール、アビリット、ミラドール) - 150~300mgの低用量では抗うつ薬、300~1200mgの高用量では抗精神病薬として作用する。
  • リチウム塩(商品名リーマス) - リチウム塩の抗うつ作用は日本では承認されていないが、海外では一般的に用いられている。国内では承認されてはいないものの、抗鬱剤の効果が思わしくない場合などに、多くの精神科医が抗鬱剤と併用してリチウム塩を処方しているのが現状である。

[編集] 副作用

抗うつ薬が効果を表すのは、セロトニンノルアドレナリンドパミンなどの神経伝達物質に作用するからであるとされている。しかし、三環系四環系抗うつ薬では、抗コリン作用、抗α1作用なども併せ持っており、そのために以下のような副作用が生じることがある。副作用は薬の種類によって細かく異なる為、注意が必要である。

  • 抗コリン作用による口渇、便秘、目のかすみ、排尿困難など。
  • アドレナリンα1受容体遮断作用による低血圧、めまいなど。
  • 抗ヒスタミン作用による眠気、体重増加。

新しい世代の薬であるSSRISNRIではこれらの副作用は少ないが、振戦、吐き気、性欲減退、セロトニン症候群悪性症候群と言った副作用が報告されている。性欲減退についてはDNRIとの併用で解消できる場合があることが報告されている。

また、年齢に関わりなく、抗うつ薬(特にSSRI)の処方開始直後に、未遂を含めた自殺のリスクが上昇するという報告があり、アメリカ食品医薬品局(FDA)から警告が発せられた[4]。これは機序不明であるが、余りにも重症で自殺を行う意欲すらなかった患者が部分的に改善することで、自殺を図るエネルギーを得てしまうという説や、また、SSRIは受容体のダウンレギュレーションを行う為、開始直後には一時的にうつ病の症状が悪化するなどという説がある。

さらに、うつ状態を呈する患者に抗うつ薬を投与した後に、躁状態を惹起することが(疫学上の反証があるものの)経験上知られており、躁状態が顕著でない場合、とりわけ双極II型と単極性うつ病の鑑別を要する。

[編集] 注意点

抗うつ剤を「ハッピードラッグ」と称し、前向きに生きる気分を持つ事を目的として服用する例が、近年増加している。しかし抗うつ剤はその作用の複雑さから、必ず専門医による判断に基づいた処方が必要である。安易な服用は本来の脳の機能を失調し、深刻な副作用を招くことが有るので避けるべきである。

[編集] 抗うつ剤を使用しない治療方法

抗うつ薬が投与されるのは主にうつ病、うつ状態の患者に対してである。しかし、これらの疾患の治療は薬物療法のみではない。軽症の場合には精神療法のみを行われる場合もあるし、より重症であっても、薬物療法以外の治療を併用することは有効である。ただし、余りにも症状が重い場合は、無理に精神療法などを行うことは逆効果であり注意を要する。いずれにせよ、精神科医の指示のもとで行われることが絶対である。

薬物療法以外の治療法の例。

[編集] 脚注

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

最終更新 2009年11月21日 (土) 01:23 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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