新卒一括採用
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新卒一括採用(しんそついっかつさいよう)とは、企業が学校を卒業した者(新卒者)を対象に、その時点でのみ一括して労働者として採用し、雇用する制度である。
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[編集] 概要
高度経済成長時代に普及した日本独特の採用方式。なお、日本以外で新卒一括採用を行っている国には韓国がある。他国では通年採用が一般的で、卒業後、就職活動を行う者も多くいる。
[編集] 新卒一括採用に関する論点
新卒一括採用には功罪両面がある。
問題点
かつて高度成長期から安定成長期にかけては、右肩上がりの経済のなかで人員の補充を絶えず必要としていたため、新卒一括採用は特に大きな問題もなく行われていた。実際に、「良い大学」とされる大学を卒業さえすれば、「良い企業」とされる企業に就職できるのが世間の共通認識であった。しかし、バブル崩壊以降、企業が軒並み人員過剰となった昨今では、この新卒一括採用制度が様々な社会問題を生んでいる。
一番大きな問題として指摘されているのは、新卒のみに偏った採用では、新卒時に就職できないとやり直すのが非常に難しいという問題である。中央大学教授で家族社会学者の山田昌弘は、報道ステーションの中で、「はっきり言って、日本の就職活動は一発勝負の要素が強過ぎます」と述べている。法政大学大学院政策科学専攻教授の小峰隆夫は、「少なくとも採用面での新卒主義は改めるべきだ。たまたま卒業時に景気が悪ければ就職できないという不平等があり、その時点ではじき出された年齢層がそのまま社会で滞留してしまう」と述べる。 学習院大学法学部教授の数土直紀は、新卒一括採用が終身雇用とセットになると閉鎖的な労働市場を生み、そのため再就職が困難な社会になるため、理由なき服従を産み出す結果になっていると指摘する。また東京大学教授で社会学者の本田由紀は、新卒一括採用から学習成果と職務内容との適合性を重視して、卒業後に採用選抜を行う方式へと変わるべきだと主張している。内閣府のホームページの国民生活白書には現在の新卒者の採用制度についての問題点が挙げられている。
氷河世代と呼ばれる世代には、新卒時に就職出来なくて、そのままずっとやり直しが出来ずに、フリーターなどの不安定な仕事に就かざるを得ない者が多くいる。OECDの報告によると、2007年の日本における15~24歳の長期失業率は21.3%と、OECD平均の19.6%を上回った。5年前に比べやや改善したものの、依然として10年前の18.2%を上回っており、若者は定職確保が困難になっていると感じていると分析する。報告は、日本の派遣労働について低い収入、低い社会保障水準で技能・キャリア開発の可能性もほとんどないと厳しく指摘し、若者を助けるために、日本にはもっとできることがあるのではないかと強調する。
また就職活動の早期化が顕著になり、学生の大学での勉強が疎かになってしまう弊害が生じている。内定を出す時期が早いため、企業の業績の悪化などが原因で内定取り消しという事態が、全国で数多く起こっている。バブル崩壊直後の1992年から1993年にかけてと、世界金融危機が顕在化した2008年から2009年にかけては特に内定取り消しの件数が多く、大きな社会問題となった。
脳内科学者である東京工業大学大学院連携教授、茂木健一郎のクオリア日記には、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)工学部中村修二教授、東京工業大学伊賀健一学長との東京工業大学大岡山キャンパスでのシンポジウムが以下のように記述されている。
たとえば、大学3年の今頃から就職活動を一斉にして、それを何の疑問に持たない。 中村修二さんは明快である。 「そんなもん、年齢や経歴による就職差別だから、訴訟すればいい」 まったくその通りで、企業が何の合理的な根拠もなく、いわゆる「新卒者」だけに 就職を限っているのは、アメリカ的な感覚で言えばただちに訴訟の対象となり、 そして企業は負けるのだろう。 何よりも、本当に優秀な人材を採用するという企業努力を怠っていることになる。 (以下略)
やり直しが利かない社会を生むので、秋葉原通り魔事件で見られるような社会に対して恨みを抱く者が現れるなど多様な問題が生じ、時代に合わなくなってきた感がある。既卒者には職業訓練が提供されず、転職者と同様の扱いになってしまうので、既卒者も十分な職業訓練が受けられるような制度の構築が望まれる。
利点
2006年の内閣府の調査によると新卒一括採用する上位2つの理由は、「社員の年齢構成を維持する」「他社の風習に染まっていない人材確保」であった。企業側としては、新卒一括採用により愛社精神と忠誠心を植えつけることができるため、ジョブホッピングのリスクを回避することのできる有用な手段であり、儒教の影響により上下関係の意識の強い日本の産業構造かつ社会構造に適合したシステムとして重宝される。また、採用された新卒者とっても、新卒一括採用というシステムで採用されることによって年功序列と終身雇用の道が開け、それで得られるしっかりとした社会的信用によって住宅ローンを組む際の審査が通りやすいなど将来の人生設計が確実に立てられるようになるため、生活のあらゆる面において圧倒的に有利となる。
[編集] 機会不均等
新卒一括採用は機会均等の原則に反しているという見方もある。日本では、既卒と新卒が同様には扱われないのが現実である。新卒時、病気などのやむを得ない事情で就職活動が出来なかった者も既卒として扱われることにより、多くの機会を損失してしまう。
[編集] 統一性から多様性へ
仏教の中心思想には多様なものの共存というものがあるが、第二次世界大戦あたりから統一性が過大視されるようになった。現代のグローバル社会において、統一性は目指すべき方向ではない。時代錯誤である。将来、沢山の移民が入ってくるかもしれないが、その時に統一性では対応できない。また高度成長はおろか、安定成長でさえも望めない時代になった時代においては、統一性は逆に非効率になりうる。
[編集] リスクの観点から見た新卒一括採用
日本の雇用スタイルは、新卒一括採用で大量採用し、終身雇用で見られるような長期雇用を前提としている。従って、アウトサイダーが参入出来にくい形になっている。この形は求職者にとり、リスクを新卒時に集中させる形になる。それ故に、新卒時に何かしらの理由で就職活動出来なかった者や、景気が悪い時に卒業した者は、一生新卒時の事を引きずる事が多い。求職者のリスクは、生涯に渡り分散させるのが好ましい。
[編集] 大学院卒が敬遠される国
本来、博士というのは欧米、中国、シンガポールに見られるように就職市場では経歴として優位性を持つものとされる。しかしながら日本や韓国では、これと逆の現象が見られる。つまり博士、修士が敬遠される。修士が強みを持つのは、一部の自然科学系研究職に限られる。 企業によっては修士の経歴を学歴と見なさず、浪人又は留年と同等の経歴として審査する場合もある。新卒一括採用で、学士を中心に採る為、年齢が高い博士は敬遠される傾向にある。 これらは、企業の一括採用は企業内で低コストで職業教育を行うことへの動機づけを促すだけでなく、大学院卒の受入れが拒まれるのは、学士卒一括採用のキャリアシステムを脅かすものとされていることにも繋がっている。
[編集] 個々の利益の最適化≠全体の利益の最適化
個々の企業にとって、既卒者を採らなくてもそれほど大きな損失にならないかもしれない。しかし新卒一括採用は全体経済では、多大な損失をもたらす。既卒が職業訓練を与えられることも無く、ニートやフリーターになっていくのは国家の大きな損失である。
[編集] 縦割型労働市場の打破
日本総合研究所は「雇用危機のマグニチュードと対応策の在り方」の中で、新卒一括採用を見直し、縦割型労働市場を横断的労働市場に変革すべきだと述べている。職種限定型社員の増加を職種別労働市場の整備とともに進め、職種を軸とする企業横断的な労働移動を円滑かすべきだと主張している。
[編集] 世界各国での新卒者の就職
[編集] アメリカ
アメリカでも将来のキャリア模索に熱心な者は大学・大学院に在学中から学内で開催されるキャリア・デベロップメント・セミナーなどに積極的に参加、そしてジョブインタビュー(いわゆる面接)を行う現状が見られる。これは転職を繰り返しキャリアアップをすることが一般化している為で、十分な学位を得た暁には一年でも早く職業訓練を受けて職歴を身に付け、将来の転職を有利にするための一つの方法である。アメリカの就職活動に最も必要となるのは学歴(学位)・専攻・職歴の3つであり、日本よりも学歴社会の傾向が強く、全学部全学科を採用対象とする日本企業が多いのに反し特化された知識・技術が好まれる傾向が強い(必ずしもではない)。職歴は最も重要なファクターであるため、職歴を持てない大学生はインターンシップを行いそれを職歴の代わりとしレジュメに記載する。その為、インターンシップ制度が非常に盛んで多くの学生・大学・企業が参加している。「新卒」や「中途採用」といった概念すらないアメリカにおいて「雇用」は誰にとっても均等な「雇用」であり、大学生でも既卒でもフリーターでも社会人でも全て同じ枠で扱われ、その中で最も優秀な者が採用される。むしろ年齢や現在の社会的ステータスのみで履歴書すら受け付けない、というのは社会倫理上許されない。要は学歴・専攻・職歴が優れており人間性も問題ないとなれば万人に雇用のチャンスが設けられている(注:人種・宗教差別などを考慮しない場合)。採用時期は企業にもよるが通年を通して不定期で行っている場合がほとんどで、ポジションに空きが出たり好景気によりさらなる雇用が必要な場合は随時募集が行われる。基本的に終身雇用システムは無いため一旦就職しても不適当な人材と判断されればワン・マンス・ノーティス(「翌月解雇」の告知)がなされ、すぐに切られる、そして新たな募集がかけられる。このような社会のため労働力の流動性が非常に激しい。
[編集] ドイツ
ドイツの学生は卒業後、就職活動を開始するのが一般的。大学の教育の一部に、企業での実務実習が組み込まれている事も多い。特に新卒者用の求人はない。新卒者の多くは、最初の1、2年間は期限付きの雇用契約しか結べないことが多い。
[編集] フランス
スタージュと呼ばれるインターンシップ制度が充実していて、これにより職務経験を得て就職することになる。インターンシップ後、正式採用されることもあるが、期限付きの雇用契約しか結べないことが多い。
[編集] 韓国
日本同様に新卒一括採用があるが、新入社員募集時の年齢差別禁止が義務付けられるようになった。非正規が非常に多く、正規の仕事に就くのは日本よりはるかに難しい。日本同様に、留年をして既卒にならないようにする現象も見られる。2009年から施行される年齢差別禁止法では、事業主が社員募集広告を出す時「xx歳以下」等の年齢制限をすると罰則または過怠金を受けることになる。この法が施行されれば募集・採用で退職・解雇に至るまで、雇用のすべての段階で、年齢を理由とした差別行為が禁止される。例えば、募集・採用広告に「xxxx年度以後出生者」、「満30歳以下」、「満25 歳以上29歳以下」 「2009年卒業(予定)者」、「大学卒業後2年以内」のような表現が入っていると差別になる。
[編集] 著名な新卒一括採用否定論者
[編集] 参考文献
- 『新卒ゼロ社会』(角川書店、2005年)- 法政大学大学院政策創造研究科講師、岩間夏樹の著作。新卒一括採用の歴史、問題点について言及されている。
[編集] 外部リンク
最終更新 2009年10月20日 (火) 10:56 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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