日本語教育

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日本語教育(にほんごきょういく)は、外国語としての日本語第二言語としての日本語についての教育の総称。

目次

[編集] 概要

日本語教育とは通常、日本語を母語としない人(主に外国人)に対し、日本国内外で、日本語を指導することを指す。ただし、日本語を母語とする人を対象とする「国語教育」を「日本語教育」と表す場合[1]もある。

日本国外での日本語教育は126カ国・7地域で行われており、学習者は約300万人である[2]。日本国内での日本語教育は、大学等の高等教育機関や日本語教育機関(主に日本語学校)の他、地域の日本語教室などで行われており、学習者は、成人が約166,000人[3]、児童生徒約28,000人[4]と報告されている。

[編集] 日本語教師

例えば、「私は同僚に車を貸してもらった」という文で、「私」は車を借りたのに、どうして「貸す」を使うのだろうか、「貸してもらった」と「貸してくれた」は何が違うのかなど、生まれながらに日本語が普通に使えるのに説明に苦しむことからもわかるように、日本語を母語とする者なら誰でも日本語が教えられるというわけではない。日本語教師は日本語を含む言語の音声文法意味運用などといった言語学的な知識だけではなく、語学教授法や言語習得理論、さらには異文化コミュニケーション、言語政策などといった広範な知識に精通している必要がある。以上のように、日本語教師には、さまざまな技能が必要なため、就業のハードルは高く、大学卒業であることを前提に、日本語教育能力検定試験に合格していること、大学院で日本語教育を専攻していることを採用条件にしている教育機関もある。1990年代後半以降、各地の大学文学部日本文学科ならぬ外国語学部日本語学科が次々に登場したのも、日本語教師育成に主たる狙いがあった。

世界各地の日本語教育の需要に応じて、日本人の日本語教師も、日本国内をはじめ、世界中で活躍している。日本の近隣、特に、大韓民国中華人民共和国、そして、オーストラリアなど日本との交流や友好関係の深い国、地域では、日本語学習者の数も多く、教育機関も整備され、現地の(日本語が母語ではない)教師やスタッフも揃っていることから、教師養成機関の実習やアシスタントなどとして活躍している日本人の教師も多い。

一方、アジア開発途上国など多くの国や地域では、教材や施設、現地の教師・スタッフが揃わず、日本人の教師が大きな役割を果たす機関も多い。例えば、カリキュラムを自分で作成したり、現地の教師や教育関係者との連携をとったり、現地の教師の育成を行ったりと、授業以外の業務に携わることも多い。国際交流基金JICAなどといった機関は「専門家」や「青年海外協力隊」などとしてこのような地域に重点的に日本語教師を派遣したり、教師研修として現地の教師を日本へ招聘したりすることで、現地の日本語教育の充実を目指している。

  • 日本国外の日本語教師数[5]  44,321人(内、日本語母語話者約3割)

また、日本国内の日本語教育機関に勤務する教師は非常勤の比率が大きい。日本語教師のみを職業として生計を立てるには、非常勤をかけ持ちしても満足した収入が得られないという問題がある。専任として勤務する場合には、一定の教育経験などが必要であるところが多い。大学など高等教育機関の専任の場合はそれに加えて相当の研究実績も必要で、しかも、専任ポストの空きがそれほど多くないことから、非常に高いハードルであるといえる。

反面、日本語教師の始まりが現地の小学校日本語学級であったり、ボランティア等による国間親善交流が根底にあることもあり、ボランティア活動を先に行っていた人たちの存在を鑑み、実習は必要であるが日本語教育能力検定合格者以外の者が日本語を教えることも認められている。日本語教師を職業とは考えない人たちの存在を無視できない、つまり日本語教師資格が検定試験合格者のみに与えられる資格であると、そのような人たちの活動が中断もしくは休止してしまうこともあって、日本語教師資格国家試験などは、現在設けられていない。

  • 国内の日本語教師数[6]  30,959人
    • 機関別 大学等機関 5,227人、一般の施設・団体 25,732人
    • 形態別 常勤講師 4,165人、非常勤講師 10,729人、ボランティア等 16,065人

[編集] 日本語教師の資格について

就学生を受け入れる日本語教育施設の審査・認定を行う(財)日本語教育振興協会は、日本語教師になるために、この資格を取得しなければいけないというものではない、と前置きした上で、以下の基準を示している。

  1. 大学において日本語教育に関する主専攻を修了し、卒業した者
  2. 大学において日本語教育に関する科目を26単位以上取得し、卒業した者
  3. 日本語教育能力検定試験に合格した者
  4. 次のいずれかに該当する者で日本語教育に関し、専門的な知識、能力等を有する者
    1. 学士の学位を有する者
    2. 短期大学または高等専門学校を卒業した後、2年以上、学校、専修学校、各種学校等(以下「学校等」という)において日本語に関する教育または研究に関する業務に従事した者
    3. 専修学校の専門課程を修了した後、学校等において日本語に関する教育または研究に従事した者であって、当該専門課程の修業年限と当該教育に従事した期間とを通算して4年以上となる者
    4. 高等学校において教諭の経験のある者
  5. その他これらの者と同等以上の能力があると認められる者

また文化庁は、「教員養成のための教育内容についての報告」で標準的なシラバスの内容を修得するには420時間以上の履修が必要としている。これは俗に「新シラバス420時間」といわれ、日本語教育必修科目の最低修得時間とされていて、多くの学校がこれを日本語教師の採用条件としている。また、「日本語教育能力検定」の他に現在、「全養協日本語教師検定」(2006年~)が設けられている。

以上により、日本語教師に対しては今のところ正式な教員免許状等は交付されていない。このため、教師の採用に当たっては、その人物が現況では日本語教師養成教育機関での履修課程を420時間以上履修し、日本語教育能力検定試験に合格していれば、日本語学校に採用される可能性が高いとみられるが、各々の学校によって採用条件は異なり、日本語教育能力検定試験合否よりも、実習、実践、教授法に重きをおく日本語学校もある。

  • 日本語教師養成施設数[7] 521
    • 機関・施設別 大学院 33、大学 190、短期大学 13、高等専門学校 0、一般の施設・団体 285

[編集] 日本語教育の歴史

[編集] 幕末まで

  • 日本国内
キリシタン宣教師が渡来してきた16世紀後半に日本語教育が行われていたことが文献により確認される。キリスト教布教という目的を達するため、宣教師たちはまず日本語を身につける必要があったからである。当初は辞書も文法書もなく個人の努力によって日本語が習得されていたが、1581年のヴァリニャーノの来日後は、宣教師や修道士のための教育機関が設立され、日本語教育も組織化された。江戸幕府による鎖国政策が開始されるまでに、日本語ポルトガル語の対訳辞書『日葡辞書』(1603年)やロドリゲスによる文法書『日本大文典』(1608年)などが刊行されている。
鎖国後、江戸幕府は日本にいる外国人の日本語学習を厳しく取り締まった。そのため、日本国内で公に日本語教育が行われることはなくなり、オランダ商館関係者が秘密裏に日本語学習を行う程度に衰退した。
江戸時代末の開国以降、欧米各国の公使館が開設され、再び外国人が多数来日することとなった。キリシタン宣教師の時と同じく、当初は手探りの日本語学習となったが、数年後には、来日欧米人により日本語学習書や辞書の刊行が始まった。「ヘボン式ローマ字」の創始者であるヘボンが執筆した和英辞典『和英語林集成』(1867年)は、日本語学習者だけでなく日本人英語学習者からも好評を得た。
  • 日本国外
15世紀1414年に外交上の必要から朝鮮王朝が司訳院で日本語通訳の養成を始めている。18世紀には帝政ロシアピョートル大帝1705年ペテルブルグに日本語学校を設立した。これは、鎖国中の日本との国交を目指したためで、漂着した日本人を教師にしていた。1754年イルクーツクに移転するが、国交開始の目途が立たず、1816年に閉鎖されている。
19世紀に入り、シーボルトの来日(1823年)・国外追放(1829年)により日本・日本語の膨大な資料がヨーロッパにもたらされた。ホフマンはこの資料をもとに日本語研究を行い、1851年オランダ・ライデン大学初の日本語教授となった。フランスでは東洋研究の一環として日本・日本語に興味が向けられ、キリシタン資料の『日本小文典』[8]『日葡辞書』などが仏訳され刊行されている。このような日本・日本語研究の高まりをうけ、大学や付属機関で日本語教育が始まった。

[編集] 明治以降1945年まで

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[編集] 1945年以降

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[編集] 日本国内における日本語教育

日本の高等教育機関(大学、大学院、短大、高専)が受け入れた外国人留学生数は2004年に過去最高の9万人を超えた。これら留学生は日本国外の教育課程で日本語を履修した者が中心であるが、大学ごとに留学生のための日本語教育が行われる。

  • 留学生数[9] 123,829人。うち日本語学習を行っている留学生[10] 45,310人
    • 機関別内訳 大学42,728人、短期大学1,382人、大学院900人、高等専門学校300人[11]

日本国外で日本語を履修していないが、日本の大学へ留学を目指す者は日本語教育振興協会に認可された日本語教育機関、いわゆる日本語学校に入学することになる。

  • 日本語教育機関の学生数 34,937人(日本語教育振興協会調べ)[12]
2008年の状況[13]
順位 国名 人数 割合
1 中国 17,968人 51.4%
2 韓国 10,528人 30.1%
3 台湾 2,228人 6.4%
4 ベトナム 607人 1.7%
5 タイ 597人 1.7%
6 ネパール 517人 1.5%
7 インドネシア 328人 1.0%
8 ミャンマー 249人 0.7%
9 マレーシア 216人 0.6%
10 スウェーデン 145人 0.4%
その他 1,554人 4.5%

さらに在住外国人のために各地の自治体やNPOがボランティア教師による日本語講座や日本語教室を開催している。対象者は中国残留日本人孤児帰国者や日系人国際結婚により来住した外国人女性などが多い。

在住外国人増加につれ、同伴されてきたり日本で生まれたりした、日本語が母語ではない子どもたちが地域の小・中学校等に在籍することが増えてきている。日本語指導が必要な外国人児童生徒は、2008年9月現在28,575人で、約 70 % が小学校に在籍していると報告されている[14]。多数在籍する学校には日本語指導を行う教員を加配する措置がある。少数在籍の学校では、ボランティア指導員が派遣される場合もある一方、全く日本語指導を受けられない場合もある。母語が確立していないこと、教科学習を行わなければならないことなど、子どもたちへの日本語教育は留学生や成人への日本語教育と異なる条件があるため、「年少者日本語教育」と呼ばれることもある。

[編集] 日本国外における日本語教育

日本語は中国語と並んでアジアの主要な言語であり、日本国外の主要な大学には日本語学科が設置され、日本語を第二外国語として教える学校も多い。さらに大韓民国オーストラリアフランスなどでは初等中等教育でも日本語教育が行われており、学習者数は格段に増加する。

韓国の高校では日本語が第二外国語のひとつになっており、履修率も高く、大学などでの履修者も含め学習者総数は約90万人となり、世界最大の日本語学習国である。中華人民共和国の日本語教育は大学が中心だが、人口が多いので日本語学習者総数は39万人に達し韓国に次ぐ日本語学習国である。

オーストラリアではLOTEプログラムのもと小学校から日本語を教えるところもあり、初等中等教育での日本語教育が充実しており、学習者数は約38万人で第3位である。モンゴルは人口は少ないものの、国民人口あたりの日本への留学率は世界一である。フランスの高校やアメリカ合衆国のいくつかの州の高校でも日本語が外国語選択科目として提供されているが、印欧語話者には難しい言語なので履修率はそれほど高くない。それでも米国の日本語学習者総数は14万人に達し、第4位となっている。国別日本語学習者数は以下、台湾12.8万人、インドネシア8.5万人、タイ王国5.5万人などとなり、世界全体の日本語学習者数は約230万人と算定されている。[15]

2006年の状況[16]
順位 国名 人数 割合
1 大韓民国 910,957人 30.6%
2 中華人民共和国 684,366人 23.0%
3 オーストラリア 366,165人 12.3%
4 インドネシア 272,719人 9.2%
5 (台湾) 191,367人 6.4%
6 アメリカ合衆国 117,969人 4.0%
その他 436,277人 14.6%
合計 2,979,820人

[編集] 国語教育との違い

日本語教育 国語教育
日本語の捉え方 世界の言語の1つ 日本国で使用している日本の言語
学習者 日本語が外国語、第二言語である人。ただし日本語が母語であっても日本国外で生まれ育った人は日本語教育の対象になる場合もある。 日本語が母語である人。主たる対象は、学齢期の子どもたち。
目的 外国語(あるいは第二言語)としての日本語を学習者のニーズに応じたレベルに到達させること。 母語としての日本語をより良く使用できるようになること。また、思考能力を向上させること。
文法 日本語教育用の文法 国文法学校文法
教師 日本国内では免許制度はない。 学校で教える場合、教員免許状が必要である。

[編集] 教授法

学習者にとって日本語は外国語(あるいは第二言語)であるので、指導に際しては外国語教授法が用いられる。言語学や学習理論、変形文法、認知学習理論、第二言語習得理論など様々な理論に基づいている。

  • 媒介語を用いるか用いないか。
  1. 翻訳法 - 日本語以外の言語を使って日本語を教える方法。日本国外では、学習者も教師も同じ言語の使用者であるので、こちらが採用されやすい。
  2. 直接法 - 日本語だけで日本語を教える方法。国内では、学習者の母語が多岐に渡る場合が多く、公平を期すためにも、こちらが採用されやすい。

[編集] 脚注

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  1. ^ 日本教職員組合自由の森学園など。
  2. ^ 独立行政法人国際交流基金「『2006年海外日本語教育機関調査』結果概要(速報)」
  3. ^ 文化庁「日本語教育実態調査平成20年度国内の日本語教育の概要」
  4. ^ 文部科学省「日本語指導が必要な外国人児童生徒の受入れ状況に関する調査(平成20年度)」
  5. ^ 国際交流基金「『2006年海外日本語教育機関調査』結果概要(速報)」より作成
  6. ^ 文化庁「日本語教育実態調査平成20年度国内の日本語教育の概要」より作成
  7. ^ 文化庁「日本語教育実態調査等平成20年度国内の日本語教育の概要」
  8. ^ ロドリゲスの『日本大文典』の簡約版で、マカオ追放後に出版された。
  9. ^ 独立行政法人日本学生支援機構「平成20年度外国人留学生在籍状況調査結果」による
  10. ^ 文化庁「日本語教育実態調査等平成20年度国内の日本語教育の概要」
  11. ^ 留学生数は、「大学院・大学(学部)・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)・準備教育課程」に在籍する人数の合計である。一方、日本語学習者数のカテゴリーには専修学校と準備教育課程がない。したがって、専修学校で日本語学習を受けている(かもしれない)留学生は含まれていない。また、「準備教育課程」は大学に併設されているため「大学」の人数に含まれている可能性がある。
  12. ^ (財)日本語教育振興協会「平成20年度日本語教育機関実態調査」による。文化庁「日本語教育実態調査等平成20年度国内の日本語教育の概要」の「日本語教育振興協会認定施設」の学生数は47,949人である。
  13. ^ 日本語教育振興協会「平成20年度日本語教育機関実態調査」により作成
  14. ^ 文部科学省「日本語指導が必要な外国人児童生徒の受入れ状況に関する調査(平成20年度)」
  15. ^ ここまでの数字の出典は国際交流基金『海外の日本語教育の現状-日本語教育機関調査・2003年-概要』(外部リンク参照)
  16. ^ 国際交流基金「『2006年海外日本語教育機関調査』結果概要(速報)」より作成

[編集] 参考文献

  • 石橋玲子『日本語教師をめざす人の日本語教授入門』凡人社、1993年
  • 木村宗男編『講座日本語と日本語教育 第15巻日本語教育の歴史』明治書院、1998年

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月22日 (日) 16:05 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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