朝日新聞珊瑚記事捏造事件

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朝日新聞珊瑚記事捏造事件(あさひしんぶんさんごきじねつぞうじけん)とは、1989年沖縄県西表島にて、朝日新聞社のカメラマンが珊瑚に落書きし、その落書きについて事実と異なる新聞記事を捏造した事件のことである。

目次

[編集] 概要

[編集] 記事掲載

1989年4月20日朝日新聞夕刊(大阪本社版は除く)に、「沖縄県西表島のアザミサンゴにKYの落書きがされている。これは80年代の日本人の記念碑になるに違いない」という記事が載った。これはダイバーのモラルの低さを批判し、環境破壊に対して警鐘をならす記事であった。しかしその後、これを不審に思った地元の沖縄県竹富町ダイビング組合が「サンゴに書かれた落書きは、取材者によるものではないか」との指摘を行った。

[編集] 二度の謝罪記事

これに対して朝日新聞は5月16日の朝刊で「撮影効果をあげるため、うっすらと残っていた部分をストロボの柄でこすった」とし、行き過ぎた報道があった点に関して謝罪記事を掲載した。しかし、その後の継続的な調査を経て「カメラマンが無傷の状態であったサンゴに文字を刻み付けた」との判断を発表し、ようやく虚偽報道であったことを認め、5月20日の朝刊で再び謝罪した。

[編集] 朝日新聞社の対応

5月19日付で珊瑚に傷をつけた東京本社写真部員・本田嘉郎は退社(懲戒解雇)処分、東京本社編集局長・同写真部長は更迭、同行していた西部本社写真部員は停職三カ月、一柳東一郎社長(当時)が責任をとって辞任という結果となった。その後、朝日新聞社の最高幹部が沖縄県庁などに謝罪した。

本田は自然環境保全法違反で検察庁に送致された。これは誰の所有でもない珊瑚に傷を付けた為に器物破損罪に問えないための措置である。しかし、当時の自然環境保全法の主旨は植物動物を捕獲(採捕)することを禁止したものであり、動植物を損傷する行為を禁止していなかった。そのため、実際は不起訴処分となり刑事処分を受けなかった。これは起訴しても類推解釈の禁止の原則を定めた刑法罪刑法定主義に抵触し、裁判所が無罪判決を出すのが明らかであるためである。社会的非難を集めた事件ではあったが、刑事罰を受けることは無かった。この状況に対応するため、自然環境保全法1990年に損傷も禁止する規定に改正(平成2年法律第26号)された。そのため、現在は同様の行為をした者は立件できるようになった。

[編集] 背景

  • この時期の新聞は急速に台頭してきたテレビニュースとの競争にさらされ、写真報道に力が入れられていた。この虚偽報道の特殊性は写真にからむ捏造であり、新聞の虚偽報道としてはやや複雑な様相を呈している。
  • 中村庸夫によると、西表島に偶然『K・Y』というイニシャルの有名ダイバーが居て、彼が憤慨して調査を始めたのがきっかけであったとされる。

[編集] その後の顛末

海洋写真家の中村庸夫の著書『サンゴ礁の秘密―彼らは“地球の肺”である』(祥伝社)P57~65にこの事件に関する顛末が記載されている。

  • 「朝日珊瑚事件」の取材に来たマスコミにより、およそ百隻余りの船が取材の際にを落とした為、およそ一年後の時点で件のアザミサンゴの周辺の珊瑚がボキボキに折られ白い傷口を無残に晒し、珊瑚礁が傷だらけになっていた。
  • 対照的にアザミサンゴは一年後の時点で傷が再生し、文字が解らない状態になっていた(当時、サンゴが元に戻るのに数十年かかると報道されていた)。
  • 更に有名になったアザミサンゴを見に来たダイバーがアザミサンゴや周辺の珊瑚礁にスクーバ・タンクをぶつける被害なども出ている。

[編集] 備考

  • 2006年度より使用されている中学校社会科の公民教科書「中学社会 新しい公民教科書 新訂版」(新しい歴史教科書をつくる会扶桑社発行)に、この事件が取り上げられている。
  • 楳図かずおのギャグ漫画である『まことちゃん』(週刊少年サンデー1989年掲載)のエピソードのひとつに、このサンゴに傷を付けた「K・Y」を「ココロよくない人」として神様がこの世から消してしまうというものがある。
  • あだち充の漫画『虹色とうがらし』の冒頭(週刊少年サンデー1990年掲載)にて、「地球に似た架空の星において、イニシャル入りの珊瑚礁などどこにも見当たらない」といった皮肉が見られる。
  • 井沢元彦は『逆説のニッポン歴史観』において、もし朝日新聞の主張するような歴史教科書の書き方で「朝日新聞の」歴史教科書を作ったらということで、1950年伊藤律会見報道事件とともにこの珊瑚事件を掲載した仮想の教科書を載せている。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月13日 (金) 22:19 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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