期日前投票制度
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期日前投票制度(きじつぜんとうひょうせいど、きじつまえとうひょうせいど)は、日本の選挙の投票制度のひとつ。公職選挙法において規定されているが、2003年(平成15年)12月1日から設けられた制度。
目次 |
[編集] 概要
選挙の執行日(一般に言われる「投票日」)に投票できない有権者が、公示[1]日または告示[2]日の翌日から投票日の前日までの期間に、選挙人名簿に登録されている市区町村と同じ市区町村において投票することができる制度である。
最高裁判所裁判官国民審査においては、期日前投票の期間は最高裁判所裁判官国民審査法第26条により「投票日の7日前から投票日の前日」となる。投票用紙に裁判官の氏名を印刷する必要があるので投票用紙の製作・準備に時間がかかること、が理由とされている。最高裁判所裁判官国民審査の告示日は衆議院議員総選挙の公示日と同じ日であり、審査日(投票日)も同じ日である。ただし期日前投票・不在者投票については、総選挙と比較して実施期間が短い(開始期日が遅い)。
2003年の公職選挙法改正により、これまでの不在者投票制度のうち「選挙人名簿に登録されている市町村と同じ市町村において有権者が投票する」場合について、要件を緩和する形で新しく設けられた。従来あった不在者投票制度は、その対象となる有権者の範囲を縮小して存続している。
「期日前投票」の読み・発音については、本記事の最後に#読み・発音についての節にて解説する。
[編集] 特徴
- 通常の選挙では自書式投票、最高裁判所裁判官国民審査では記号式投票である。投票用紙を裸でそのまま投票箱に投入する。投入した時点から、選挙執行日(投票日)当日の投票と同様に、正式な投票として取り扱われる。
- 正式な投票とするためには、投票所では確定した候補者全員の氏名(顔ぶれ・顔触れ)を一覧として示す必要がある。したがって公示日・告示日の当日(立候補受付中)ではなく、翌日からの実施となった[3]。
- 候補者の一覧を念頭に置いた期日前投票の新設実施について、選挙関係者・識者の間には「将来の電子投票の導入拡大を見据えたもの」とする分析がある。総務省としては、制度開始にあたってのチラシにおいて、期日前投票も電子投票で実施できることをうたっている[4]。期日前投票での全国初の電子投票は、2004年(平成16年)1月18日執行の六戸町(青森県)町長選挙において実施された。
- 正式な投票とするため、期日前投票所には、期日前投票立会人を置く。投票の際に、第三者が投票を受理するかどうかについて意見を述べる機会を保障するもの。
- 選挙期間中に候補者の資格を失った候補者に投票していた場合、その票は無効票となる。この扱いは、不在者投票においても同様である。
- また、期日前投票後、開票日までに投票した有権者が死亡した場合でも、投票は有効となる。
[編集] 投票の手続き
- 投票所入場券が既に郵送されている場合は、持参する。投票所入場券が未だ手元に届いていない場合でも、投票できる。印鑑などは不要。ただし身分証明については選挙事務を処理する現場の各市町村選挙管理委員会によって判断が分かれており、運転免許証などの身分証明書の提示を求められる場合も少数ながら存在する。
- 「宣誓書」を提出することが必要である。「レジャー・観光・買い物」などの曖昧・簡潔な理由でよい。
- 通常の選挙と同じ要領で、投票用紙を係員から受け取って投票する。
- 投票時間は原則として、期間中の毎日午前8時30分から20時(午後8時)まで。平日・土曜日・日曜日・祝日・休日のどの日であっても同じ。なお、一部の地方自治体や施設によっては若干異なる場合がある。期日前投票に出向く都合が限られるなどの必要に応じて、選挙管理委員会に問い合わせをするのが望ましい。特に最近では市町村合併の影響で、同一市町村であっても衆議院議員選挙区が違う場合などがある。
[編集] 不在者投票との違い
- 投票用紙は、裸でそのまま投票箱に投入する。
- 自分が選挙人名簿に登録されている市町村の選挙管理委員会の管理する投票所において、投票する。
- 期日前投票をしようとする者については、「選挙執行日(一般に言われる「投票日」)現在」ではなく「期日前投票をしようとする日現在」において、投票しようとする者が選挙権を有するかどうかを判定する。
[編集] 要件と経緯
選挙の当日に次の各号に掲げる事由のいずれかに該当すると見込まれていて、期日前投票日に選挙権がある有権者は、期日前投票をすることができる。
- (公職選挙法第48条の2の第1項第1号から第5号を引用して、以下に示す。)
- 一 職務若しくは業務又は総務省令で定める用務[6]に従事すること。
- 二 用務(前号の総務省令で定めるものを除く。)又は事故のためその属する投票区の区域外に旅行又は滞在をすること。
- 三 疾病、負傷、妊娠、老衰若しくは身体の障害のため若しくは産褥にあるため歩行が困難であること又は刑事施設、労役場、監置場、少年院若しくは婦人補導院に収容されていること。
- 四 交通至難の島その他の地で総務省令で定める地域に居住していること又は当該地域に滞在をすること。
- 五 その属する投票区のある市町村の区域外の住所に居住していること。
1998年公職選挙法改正以前の不在者投票制度においては、「見込み」ではなく、「確実に投票日当日の投票が困難」であることが必要条件であった。さらに、上記のうち第1号については投票区の区域外に行くこと、第2号については市町村の区域外に行くこと、も条件であった。このように要件は極めて限定的であり、実際の運用でも不在者投票の窓口で、行き先や理由をしつこく尋ねられたりする場合が多く、有権者にはプライバシーの侵害だと感じられることもあった。また、不在者投票の管理運営がずさんであったとして、選挙そのものが無効になったものもあった。
1998年の公職選挙法改正では、不在者投票制度の利用に必要な条件が、現在と同じ程度に緩和された。これにより、不在者投票の利用者は大幅に増えた。しかし不在者投票制度の実務面では、投票・開票に関わる事務手続について、手間を要することに変わりはなかった。また、選挙管理委員会が不在者投票について開票するのを忘れたまま選挙結果を確定させてしまうなど、不在者投票にからんだ事件・事故が依然として続いた。
2003年12月の公職選挙法改正により、現在の期日前投票制度が設けられた。投票率の上昇を追求する総務省・選挙管理委員会、選挙管理事務の簡素化を求める選挙管理委員会、より利用しやすい投票制度を求める有権者らの要望が一致した結果だと言える。
[編集] 問題点
有権者が期日前投票をした後に立候補者が死亡した場合など、その立候補者が欠けた場合、有権者がその立候補者に投じた票は無効となる(例:2007年4月の長崎市長射殺事件)。また、平等選挙と秘密選挙であるため、仮に有権者が「立候補者が欠けてしまったのだから、もう一度投票したい。」と申し出ても、再度投票することは出来ない。
期日前投票の要件が緩やかであることは、各陣営の戦術にも影響を及ぼしている。すなわち、組織票をもっている陣営は、選挙期間の途中で気が変わらないよう早めに投票を呼びかけている陣営が多く出ており、情報が不十分の中で安易に投票させたり、組織票の囲い込みに利用される危険性があるのではないかという点ではデメリットである(一例として、2009年兵庫県知事選挙で、同県姫路市家島町での期日前投票に於いて、地元の漁協が、投票所に来た有権者や、清掃奉仕活動に来た有権者に、現金2,000円を渡し投票を呼び掛けていたケースがあり、公職選挙法に抵触する恐れがあるとして、問題となっている[7][8])。
投票した有権者が選挙執行日現在で選挙権を喪失している場合に、期日前投票ではそのまま有効な投票となって開票される。不在者投票では、開票管理者の受理・不受理決定さらに投票管理者の受理・不受理決定を経て、選挙執行日現在で選挙権を有している者の投票を開票する。この取り扱いの違いは不公平だとする問題提起がある[9]。
公職選挙法には、投票するにあたって身分証明の提示を求める規定は設けられていない。期日前投票所の現場では、投票所入場券を持参しなかった有権者について宣誓書の提出と生年月日などの口頭での確認だけで、投票できる場合が多い。身分証明の提示を求められることは、ほとんどない。このことは、選挙違反・不正投票の要因ともなっている[10]。
[編集] 読み・発音について
公職選挙法では「期日前投票」の読み方について規定していない。
総務省では、期日前投票を新設する「公職選挙法の一部を改正する法律案」(内閣提案)の国会審議冒頭の提案理由説明・趣旨説明において、総務大臣片山虎之助が『きじつぜん』の読み方を使用している[11]。総務省としては現在でも引き続き『ぜん』の読み方を採用しているが、積極的に統一しようと総務省の外部へ働きかけるような動きは無い。また、インターネットでの総務省公式ウェブサイトでは、URLで "kijitsumae" (きじつまえ)としている例がある。[12]
選挙管理委員会では、それぞれの選管によって判断が分かれている状態である。
- 『ぜん』『まえ』の両論を併記する例
- 選挙に関するよくある質問(選挙FAQ) - 用語集-説明編 (札幌市選挙管理委員会)
- 「選挙関係者は『ぜん』、一般的には『まえ』、がそれぞれ多い」とする例
- 期日前に投票(期日前投票について) (高知県選挙管理委員会)
2007年3月には東京都選管が、東京都知事選に際して、『きじつまえ』の読み方を採用して投票啓発用の映像を制作した。この映像について足立区選管は、区民に混乱を招くものであり、読み方についての問い合わせで本来の業務に支障が出る事態を避けたい、として映像の使用を見送った[13]。
テレビ・ラジオなどの各種マスメディアの報道・ニュースなどにおいては、社内で読み方をどちらかに一本化する例はあるものの、全体的に見れば各社ごとに判断が分かれている状態である。
- 『まえ』とするメディアの例
- 道浦俊彦/とっておきの話 ◆ことばの話1775「期日前投票と不在者投票」 - 読売テレビアナウンサー・道浦俊彦の連載コラム。
日本語社会では、通例の音読みではなく、口頭で伝達する際に誤解を避ける意図をもってわざと訓読みにする場合(くびちょう・くびなが(首長=しゅちょう)など)がある。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ 「公示」は、衆議院議員総選挙と参議院議員通常選挙において用いられる。
- ^ 「告示」は、国会議員の補欠選挙や地方選挙(統一地方選挙など)において用いられる。
- ^ 第156回国会 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 第3号 衆議院 2003年(平成15年)5月21日
- ^ 期日前投票制度(チラシ) (PDF)
- ^ 秋田市 - 新☆選挙不思議発見!01年齢計算 (秋田市選挙管理委員会)
- ^ 冠婚葬祭等が定められている。
- ^ 姫路の漁協、期日前投票者に2000円渡す…兵庫県知事選 読売新聞 2009年6月27日
- ^ 清掃活動で2千円渡し投票呼び掛け 姫路の漁協 神戸新聞 2009年6月27日
- ^ 投票日前に死亡なら 「期日前」有効「不在者」無効 遺族是正訴え http://www.hokkaido-np.co.jp/news/san-in2007/40354.html 北海道新聞 2007年7月28日
- ^ 期日前投票 死角狙った犯罪続出 香川県選管、警戒感強める 山陽新聞 香川県版 2007年7月22日付。2007年4月8日執行の香川県議会議員選挙や2007年4月22日執行の高松市議会議員選挙での、期日前投票における詐偽投票事件。
- ^ 片山総務大臣閣議後記者会見の概要 [1] 2003年(平成15年)6月3日
- ^ 選挙制度ニュース一覧 平成15年12月1日 期日前投票制度の創設について http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/touhyou/kijitsumae/index.html
- ^ 何て読む 困った論争 期日「前」(東京新聞 2007年3月31日)
最終更新 2009年11月7日 (土) 11:27 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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