歯科麻酔学

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歯科麻酔科学(しかますいかがく、dental anesthesiology)は歯学の一分野で、各種麻酔に関する研究を行うものである。単に麻酔を実施し、歯科口腔外科医の行なう歯科医療に資するだけでなく、生命維持に直結する論理的思考と技術を実践し、周術期全身管理を行なう診療科である。

目次

[編集] 局所麻酔法

[編集] 局所麻酔法の分類

[編集] 表面麻酔法

表面麻酔法とは局所麻酔法のうち、表在性な知覚神経週末を麻痺させる方法であり、下の浸潤麻酔法や伝達麻酔法での刺入部位や気管挿管時の気管粘膜の麻酔、咽頭反射の麻酔などに使われる。

  • 塗布麻酔法
    • 粘膜面に表面麻酔用液や軟膏、ゼリーなどの局所麻酔薬を直接塗布する方法。
  • 噴霧麻酔法
    • 表面麻酔用の局所麻酔を噴霧器などで噴霧する方法。
  • 表面冷凍麻酔法
    • 液体が、気化するときに急激に熱を奪う事を利用した麻酔法。沸点の低い液体を用い、冷却することにより知覚を麻痺させる。

[編集] 浸潤麻酔法

局所麻酔薬を注射し、知覚神経終末部を麻痺させる方法。

[編集] 伝達麻酔法

神経幹や神経叢に局所麻酔薬を作用させることでその末梢の支配領域全体を麻痺させる方法。長時間麻痺が続く上に麻酔の投与による変形がないので整形や手術が容易となるが、麻痺が必要以上の範囲、時間残るという問題がある。

  • 上顎神経
    • 正円孔注射法
    • 眼窩下孔注射法
    • 大口蓋孔注射法
    • 上顎結節注射法
    • 切歯孔注射法
  • 下顎神経
    • 卵円孔注射法
    • 下顎孔注射法
    • オトガイ孔注射法
    • 頬神経注射法
    • 舌神経注射法

[編集] 血管収縮薬

局所麻酔薬の大部分は血管拡張作用がある。このため局所麻酔薬のみを打つと、血管拡張作用により、血管透過性が向上し、血管に吸収されやすくなる。このため、局所での麻酔持続時間が低下するとともに、血管内での濃度が上昇するため副作用が発生しやすくなる。また、出血量も多くなり処置の障害になる。これを防止するため、局所麻酔薬を使用するときは、同時に血管収縮剤(アドレナリンなど)も利用している。これにより上記の問題点が解消される。

[編集] 全身麻酔法

法的資格・全身麻酔は、歯科医師であれば特別な資格を全く必要とせず、これを歯科医師法第十七条の定める「歯科医業」の一部として実施する事ができる。

歯科麻酔科学会が、学会独自に「歯科麻酔科認定医」「歯科麻酔科専門医」「歯科麻酔科指導医」という資格制度を設けてはいるが、法的には全く意味を持たない物である。歯科医師には、国家資格である「麻酔標榜医」制度は適用されない。

全ての歯科医師には、全身麻酔の実施が法的に許されるとしても、現実には、ふつうの歯科医師が、教科書だけを片手に、見よう見まねで全身麻酔を実施する事は、ほとんど不可能である。

と言うのも、全身麻酔の実施に当たっては、高度な生理学的知識、薬理学的知識、緊急時の全身管理の知識が必須であり、また、静脈確保、マスク換気、気管内挿管、陽圧換気、気管内吸引といった高度な手技を体得しなければならないからである。

現在、日本において開業歯科医師でありながら、歯科恐怖症の患者や、心身障害者の患者などに対して、外来全身麻酔を施行している歯科診療所は、少数ながら存在している。けれども、上記のような知識や手技の修得のために、いずれも多年にわたり、歯科大学の歯科麻酔講座や、医科大学や総合病院の麻酔科で、麻酔科医としての研鑽を積んだ者に限られるのが現状である。


[編集] 全身麻酔法の分類

  • 吸入麻酔 セボフルレンやイソフルレンと笑気を併用する事が多い。特に小児の緩徐導入に際しては、セボフルレンが用いられる。
  • 静脈麻酔 近年、強烈な温室効果ガスである笑気の使用が嫌われ、次第に使用されなくなりつつある。そこで、プロポフォール静脈麻酔剤にレミフェンタニル(強力な鎮痛作用を有する麻薬)を併用した全身麻酔が主流になりつつある。歯科医師が行なう手術であっても、骨移植のために腸骨を採取する必要がある場合などは、脊椎硬膜外腔麻酔が併用される。

[編集] 外来全身麻酔

全身麻酔は、入院して行うことが通常であるが、日帰りで全身麻酔を行って治療・手術をする場合がある。これを外来全身麻酔という。

歯科治療は、痛みや恐怖感が強い割には、治療侵襲が少ないために、外来全身麻酔の応用範囲は広い。そのため自閉症児といった心身障害児や、聞き分けのない小児、歯科恐怖症患者などの歯科治療に応用されている。

静脈確保が可能であれば、通常の全身麻酔(rapid induction・プロポフォールチオペンタールなどの静脈麻酔薬で就寝させた後、筋弛緩剤を使用して気管内挿管を行う)が実施されるが、小児などの場合は、セボフルレンによる緩徐導入(slow induction・セボフルレンで就寝した後、静脈を確保し。筋弛緩剤を使用して気管内挿管を行う)が主流である。

歯科治療の場合は、噛み合わせの状態などを確認するためにも、多くの場合は経鼻挿管で気管内挿管が行なわれる。

歯科医院で行なわれる外来全身麻酔は、ほとんどの場合、導尿をしていないため、長くても2時間以内で行なわれている。

外来全身麻酔の対象となる歯科患者は、ASA1程度の全身状態に問題がなく、過去に大きな既往症のない、健康な患者に限って行なわれている事が多い。

[編集] 精神鎮静法

歯科治療には恐怖感と鋭敏痛が伴う事が多く、「歯科恐怖症」と呼ばれる極端に歯科治療を恐れる者も少なくない。また恐怖感から過換気となり、意識を喪失したり貧血発作を起こすことも珍しくない。また、嘔吐反射が著しい患者にあっては、通常の歯科治療は不可能である。

そのため、リラックスして患者が歯科治療を受けられるように精神鎮静法が工夫されている。全身麻酔とは違い、あくまでも意識を保ったままで自発呼吸下で実施される。

[編集] 精神鎮静法の分類

  • 吸入鎮静法 ・一般的に笑気が使用される。笑気は鼻マスクで投与されるが、30%以下の低濃度が使用されるため安全性は高いが鎮静効果はあまり期待できない。一般開業歯科医師であっても、安全に実施できる。
  • 静脈内鎮静法・ミタゾラムやプロポフォール静脈麻酔剤を使用する事が多い。使用量によっては自発呼吸が止まる為、全身麻酔に準じた事前検査(心電図や血液検査など)全身管理のモニター・施設・知識・経験を必要とする。

平成20年4月から、健康保険において「歯科治療時の静脈内鎮静法」に120点の算定が可能になった。

しかし、実際は開業歯科医師で静脈内鎮静法を実施した経験のある者は、ほとんど存在せず、あまり普及していないのが実態である。

一部、インプラント治療を積極的に行っている歯科医院では、治療時の痛みや恐怖感を和らげるために、あるいは術中の全身管理のために,歯科麻酔科学を会得している者を臨時で雇い入れ、静脈内鎮静法を実施しているところもある。しかし、その場合、歯科麻酔担当の歯科医師に支払われる報酬は数万円以上になるため、とても健康保険の120点からは補填できず、患者から自費治療分として請求している事が多い。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月24日 (火) 01:36 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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