比較優位
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比較優位(ひかくゆうい、comparative advantage)とは自由貿易に関して生まれた考え方で、経済学者デヴィッド・リカードが提唱した。
比較優位を持つ(相手より機会費用の少ない)財の生産に特化し、他の財は輸入する(自由貿易で)ことで、それぞれより多くの財を消費できるという国際分業の利益を説明する理論である。比較生産費説ともいい、リカードモデルの基本である。
リカードモデルとは、この比較生産費説に基づき2国2財1要素を仮定したモデルである。ここでの1要素とは生産要素のことで主に労働力を指す。以下では、その具体例を示す。
目次 |
[編集] 概要
[編集] 国際分業
例えば、ワインと毛織物(2財)という商品があり、大国と小国(2国)がそれぞれどちらの商品も以下のように生産できるとする。このときの生産要素は労働力のみである(1要素)。労働投入係数の概念(1単位生産するのに、どのくらいの労働力量が必要かという考え)から、
- 大国:ワイン1単位あたり労働者2人、または毛織物1単位あたり労働者6人で生産できる。
- 小国:ワイン1単位あたり労働者4人、または毛織物1単位あたり労働者8人で生産できる。
と仮定する。
この時、小国はどちらの商品においても1単位当たりの生産に多くの労働者を必要とするので大国より生産性が低い。逆に言えば大国は小国よりどちらも生産性が高いと言え、これを絶対優位と呼ぶ。この時点では一見すると小国の商品はどちらも大国に対して競争力を持たないように見える。しかし、比較優位の考えを持ち込むと小国はワイン生産において競争力を持っている。
このときの機会費用は、
- 大国;ワイン:毛織物=1:3
- 小国;ワイン:毛織物=1:2
ここで、大国の市場でのワインの価格は毛織物の3倍で、小国では2倍だと分かる。 感覚的に小国でワインを買って、それを大国で売れば利益が出ると気づく。つまり、比較優位が存在している。
上記の例は言い換えると、小国はワイン2単位と毛織物1単位の価格が等しく、大国はワイン3単位と毛織物1単位の価格が等しい。つまり、生産費比率を見た時に、小国の方がワインを割安に作れる。これを比較優位と呼ぶ(逆に大国はワイン生産において割高になり、これを比較劣位と呼ぶ)。つまり小国は大国よりワインの生産において機会費用が大国より低いので、ワインを相対的に効率良く生産できるといえる。
次に関税がないこと(=自由貿易)を想定する。
現在、小国には200人の労働者がおり、100人がワインを、100人が毛織物を生産しているとする。生産状態は、ワイン:25,毛織物:12.5であり、これが現在の小国で消費できる商品数の限界である。
ここで小国が比較優位なワイン産業に特化(200人全員がワイン生産を行う)する。生産状態は、ワイン:50,毛織物:0となる。そして小国は増産した分のワイン25単位を大国へ輸出し、毛織物を輸入する。この時、大国ではワイン1単位=毛織物3単位であるので、小国は75単位の毛織物を輸入できる。
同様に大国も600人労働者がいると仮定し、毛織物に特化する。このとき生産される毛織物は100単位で先ほどと同じく75単位の毛織物を輸出すれば37.5単位のワインが得られる。
ゆえに貿易を行えば両国に利益が生じる。 (大国内ではワインの価格は毛織物の3倍であることを確認する)
このように、自由貿易の利益を得る上で特化すべき産業が比較優位な産業である。
これは各々が比較優位な産業に特化すること(国際分業)によって全体的な生産性が増大することを示し、さらに自由貿易を前提とした場合に、両国ともに消費を増大させることができることを示している。
[編集] 機会費用の観点
もし、どちらの国も労働力をフル活用している状態(生産可能性辺境線)にある場合、ワインを多く作るためには毛織物の生産を減らさなくてはならない。その場合、ワイン1単位を作るために、小国では毛織物を2単位減らさなければならず、大国は毛織物を3単位減らさなければならない(ワイン生産においては小国は比較優位であり、大国は比較劣位である)。
逆に毛織物生産を見た場合、小国ではワインを1減らしても毛織物が2しか増えないのに対して、大国はワインを1減らすことで毛織物を3増やすことが出来る。(毛織物生産においては小国は比較劣位であり、大国は比較優位である)。
これは比較優位に立つ側は、相手側よりも少ない機会費用で生産できることを示している。
[編集] 比較優位の応用
比較優位の考え方は、国際分業に留まらず、国内間や労働者間などの分業一般に応用できる。
例えば、有能な政治家と、その秘書がいる。政治家は政治活動も秘書業務もどちらも秘書より早くできる。しかし、政治家は政治活動に専念すべきである。政治家が秘書業務を秘書に任せることによって、全体としての効率の改善が図られるからである。
[編集] 特化のプロセス
現在の世界の国々は、地球規模の貿易ネットワークに大なり小なりつながっている。そしてそれぞれの国に輸出品と輸入品がある。輸出している商品は国内需要よりも多く生産しているということだから特化が進んでいることになる。
特化が自然に進むプロセスはいくつかある。
[編集] 固定相場制下での特化
固定相場制(または共通通貨制)をとる小国を考える。小国には複数の産業があり、それぞれが大国へ輸出を試みたとする。まず、より高値で販売できる順に序列ができる。
輸出で利益を得た産業は生産を拡大し、より多くの利益を得ようとする。この際に、最も高い利益を得た産業が、より多くの資源(設備や労働力)の購買力を持つ。そうして高い利益を得る産業が資源を需要するため、各資源の価格は次第に上昇する。資源価格の上昇により、輸出競争力の低い産業は収益が悪化し、解散するなどして資源を解放することになる。
この結果、輸出競争力のある産業(比較優位な産業)へ資源が集中し特化が進む。
[編集] 変動相場制下での特化
変動相場制をとる小国を考える。小国には複数の産業があり、それぞれが大国へ輸出を試みたとする。まず、より高値で販売できる順に序列ができる。
輸出で得た外貨は、小国の通貨へ為替されることになる。このとき、より高い利益を得た産業がより多くの自国通貨を得ることになる。こうして、輸出競争力が高い産業はより高い利益を得る。輸出で利益を得た産業は生産を拡大し、より多くの利益を得ようとする。この際に、輸出拡張で自国通貨高が進む。輸出競争力の低い産業は自国通貨高により、輸出縮小により収益が悪化し、解散するなどして資源を解放することになる。
この結果、輸出競争力のある産業(比較優位な産業)へ資源が集中し特化が進む。
[編集] 比較優位の四つの要因
- あらかじめ与えられた天然資源の存在量
- 後天的に取得した資源の存在量
- 科学技術上の優位も含む優れた知識
- 特化(専門化)
[編集] 比較優位に関するよくある誤解
[編集] 生産性と競争力
自由貿易は、その国が国際競争力に耐えられる時のみに利益をもたらすという議論である。
これは比較優位と絶対優位を混同した誤解である。外国よりすべての財で生産性が劣っていたとしても自由貿易は両国に利益をもたらす。両国の生産性だけではなく、賃金にも考慮を入れる必要がある。
[編集] 労働者搾取説
外国との競争は、それが低賃金に基づくとき不公正で他の国々に害を与えるという議論である。
高生産性国は相手国の低賃金によってある財を安上がりに購入することで貿易の利益を得ている。生産性が劣っている国は生産性の低さを相対的な賃金の低さで外国に対して、比較優位に立つことになる。例えばもし低生産性国が高生産性国と同等の賃金を得るなら、低生産性国は何も輸出(輸入)できないことになり貿易は成立しないことになる。労働集約的な財を輸入する高賃金国が実際に打撃を受けるのは、低賃金によることではなく、低賃金国が生産性向上に伴って労働集約的な財の価格が上がることである。従って、この議論は的外れである。
[編集] 不等価交換説
ある国が、その国が輸入する財に他の国が投入する労働以上に輸出する財の生産に労働を投入するならば、その国は貧しくなるという議論である。
輸出財に投入される労働量と輸入財に投入される労働量を比較するのは間違いである。これは輸入財を国内で生産した場合と比較すべきものである。輸入される財は国内で生産されるより安上がりになり、利益になるから輸入が行われる。生産方法は違えど貿易とは間接的に輸出財の投入で輸入財を生産している。貿易に利益があるのは輸入であって、輸出ではないということである。
[編集] 参考文献
- 国際経済 -理論と政策-(ポール・クルーグマン、モーリス・オブズフェルド)
[編集] 関連項目
最終更新 2009年8月12日 (水) 04:27 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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