永小作権

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永小作権(えいこさくけん)とは他人の土地に於いて、小作料を支払い、耕作又は牧畜をする物権である。

目次

[編集] 総説

読んで字の如く小作を行うための権利であるが、農地には賃借権を設定することでも耕作を行うことが可能である(いわゆる賃借小作権)。しかし賃借小作権と違い、永小作権は物権であるから排他性を持ち、土地の所有権者の意思に関わらず自由に処分をすることができる。当然登記によって第三者に対抗することができ、相続も可能である。なお農地を賃貸借している賃借人については農地法によって保護が図られている。また、永小作権に関する規定は任意規定が多く、民法第271条第276条の規定は別段の慣習がある場合はその慣習が優先する。(第277条

永小作権は農地改革における買い取りの対象となっており、現在ではほとんど利用されてはいない。

存続期間は20年以上50年とされている。設定行為で50年を超える期間を定めてたときは50年となる。20年より短い期間を定めた場合の扱いについては条文には明記されていないが20年に延長されると解される。20年存続期間を定めなかった場合は、原則として自動的に存続期間は30年となる。

[編集] 不動産登記

本稿では永小作権の設定登記について述べる。永小作権の登記を抹消する登記については抹消登記を参照。

[編集] 略語について

説明の便宜上、次のとおり略語を用いる。

記録例
不動産登記記録例(2009年(平成21年)2月20日民二500号通達)

[編集] 登記事項

絶対的登記事項として以下のものがある。

  • 登記の目的
  • 申請の受付の年月日及び受付番号
  • 登記原因及びその日付
  • 登記権利者の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が複数であるとき(1901年(明治34年)2月9日民刑124号回答)はそれぞれの持分(以上不動産登記法59条1号ないし4号)
  • 順位番号(不動産登記法59条8号、不動産登記令2条8号、不動産登記規則1条1号・同147条1項及び3項)
  • 小作料(不動産登記法79条1号)

また、相対的登記事項として以下のものがある。

  • 権利消滅の定め
  • 共有物分割禁止の定め(争いあり)
  • 代位申請によって登記した場合における、代位者の氏名又は名称及び住所並びに代位原因(以上不動産登記法59条5号ないし7号)
  • 存続期間又は小作料の支払時期の定め
  • 民法272条ただし書の定め
  • 永小作人の権利又は義務に関する定め(以上不動産登記法79条2号ないし4号)。

本稿では、上記の登記事項のうち代位申請に関する事項以外の事項について、登記申請情報の記載方法を説明する。申請の受付の年月日及び受付番号については不動産登記#受付・調査を参照。

[編集] 登記申請情報(一部)

登記の目的不動産登記令3条5号)は「登記の目的 永小作権設定」のように記載する(記録例272)。

登記原因及びその日付(不動産登記令3条6号)は設定契約の成立日を日付として「原因 平成何年何月何日設定」のように記載する(記録例272)。ただし、永小作権の目的たる土地が農地又は採草放牧地(農地法2条1項)である場合、設定契約成立日と農地法3条の許可書の到達日のうち遅い日を原因の日付とする。

農地法29条の農業委員会の裁定に基づく場合、裁定の公示(農地法30条1項)の日を原因日付として、「原因 平成何年何月何日農地法第29条の設定裁定」のように記載する。

小作料(不動産登記令別表34項申請情報、不動産登記法79条1号)は「小作料 1年何円」(記録例272)や「小作料 1平方メートル1年何円」のように記載する。小作料は金銭で定めなければならないとされていたが、平成13年に廃止された(農地法21条削除参照)。

小作料の支払時期(不動産登記令別表34項申請情報、不動産登記法79条2号)は「支払時期 毎年何月何日」のように記載する(記録例272)。

存続期間(不動産登記令別表34項申請情報、不動産登記法79条2号)は「存続期間 何年」のように記載する(記録例272)。登記原因証明情報に50年を超える存続期間の記載があり、申請情報には50年と引き直して記載した申請は受理される(民法278条1項後段参照、1930年(昭和5年)4月22日民事405号回答)。一方、登記原因証明情報に20年未満の存続期間の定めがある場合、申請情報に20年と記載しても受理されない(民法278条1項前段参照)。この場合、永小作権は成立せず、賃借権とみなされる。また、登記原因証明情報には存続期間の定めの記載がないが申請情報に30年と記載した場合、当該申請は受理される(民法278条3項参照)。

民法272条ただし書の定め(不動産登記令別表34項申請情報、不動産登記法79条3号)は「特約 譲渡、賃貸することができない」のように記載する(記録例272)。ただし、農地法29条の農業委員会の裁定に基づく場合は登記をすることができない(農地法30条3項)。

永小作人の権利又は義務に関する定め(不動産登記令別表34項申請情報、不動産登記法79条4号)の具体例は先例によって示されているわけではない。書式解説737頁以下は、民法270条に関連して設定の目的を登記できるとしている。なお、2004年に不動産登記法が大改正される以前の先例は、目的は登記事項ではないが、登記して差し支えないとしている(1905年(明治38年)5月8日民刑回答)。農地法29条の農業委員会の設定裁定においては、設定の目的は利用権の内容として必ず定められる(農地法29条1項2号)。

権利消滅の定め(不動産登記令3条11号ニ)は「特約 永小作権者が死亡した時は永小作権が消滅する」のように記載する。

共有物分割禁止の定め(不動産登記令3条11号ニ)を永小作権設定登記において登記できるかどうかは争いがある(可とする説は登記インターネット66-148頁を、不可とする説は書式解説742頁を参照)。

登記申請人(不動産登記令3条1号)は永小作権者を登記権利者、永小作権設定者(土地の所有権登記名義人)を登記義務者として記載する。なお、法人が申請人となる場合、以下の事項も記載しなければならない。

  • 原則として申請人たる法人の代表者の氏名(不動産登記令3条2号)
  • 支配人が申請をするときは支配人の氏名(一発即答14頁)
  • 持分会社が申請人となる場合で当該会社の代表者が法人であるときは、当該法人の商号又は名称及びその職務を行うべき者の氏名(2006年(平成18年)3月29日民二755号通達4)。

農地法29条の農業委員会の裁定に基づく場合でも、登記権利者が単独で申請できる条文は存在せず、原則どおり共同で申請を行う(農地法30条2項参照)。

添付情報不動産登記規則34条1項6号、一部)は登記原因証明情報不動産登記法61条・不動産登記令7条1項5号ロ)、登記義務者の登記識別情報(不動産登記法22条本文)又は登記済証及び書面申請の場合には印鑑証明書(不動産登記令16条2項・不動産登記規則48条1項5号及び47条3号イ(1)、同令18条2項・同規則49条2項4号及び48条1項5号並びに47条3号イ(1))である。法人が申請人となる場合は更に代表者資格証明情報(不動産登記令7条1項1号)も原則として添付しなければならない。

また、永小作権の目的たる土地が農地又は採草放牧地(農地法2条1項)である場合、農地法3条の許可書(不動産登記令7条1項5号ハ)を添付しなければならない。ただし、農地法29条の裁定に基づく場合は不要である。

登録免許税(不動産登記規則189条1項前段)は不動産の価額の1,000分の10である(登録免許税法別表第1-1(3)イ)。なお、端数処理など算出方法の通則については不動産登記#登録免許税を参照。

[編集] 登記の実行

永小作権設定登記は主登記で実行される(不動産登記規則3条参照)。

[編集] 備考

本来の永小作は、前近代において未開地を他者に開墾させる代わりに、土地所有者が開墾者に永久的な耕作権を付与してその収穫の一部を小作料として徴収したことに由来したと言われている。それが明治の民法制定時に物権として確立したものであるという。

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • 香川保一編著 『新不動産登記書式解説(一)』 テイハン、2006年、ISBN 978-4860960230
  • 藤谷定勝監修 山田一雄編 『新不動産登記法一発即答800問』 日本加除出版、2007年、ISBN 978-4-8178-3758-5
  • 法務実務研究会 「質疑応答-91 共有物分割禁止の特約の登記は、権利の一部移転の登記の場合に限るか」『登記インターネット』66号(7巻5号)、民事法情報センター、2005年、148頁

最終更新 2009年10月19日 (月) 17:14 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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