犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪

犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪の最新ニュースをまとめて検索!

犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪(はんにんぞうとく および しょうこいんめつのつみ)とは、刑法に規定された犯罪類型の1つで、犯人をかくまったり証拠を隠滅したりして、捜査裁判など国家の司法作用を阻害する犯罪のことをいう。具体的には刑法第二編「罪」第七章「犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪」に規定された犯罪のことをいう。国家的法益に対する罪に分類される。1958年には証人等威迫罪が新設されている。

目次

[編集] 犯罪

  • 犯人蔵匿罪、犯人隠避罪(第103条)
    罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処せられる。
  • 証拠隠滅罪、証拠偽造罪、証拠変造罪、偽造証拠使用罪、変造証拠使用罪(第104条)
    他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処せられる。
  • 第103条、第104条の犯罪については、親族間の犯罪に関する特例があり、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる(105条)。
  • 証人等威迫罪(第105条の2)
    自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処せられる。

[編集] 犯人蔵匿・隠避罪に関する論点

[編集] 罪を犯した者

学説は大きく分けて、真犯人に限るとする説(A説とする)、真犯人及び犯罪の嫌疑を受けて捜査中又は訴追中の者とする説(B説とする)、真犯人及び蔵匿・隠避時の態様によって真犯人であると強く疑われる者であるとする説(C説とする)がある。

判例はB説を採る(最判[1]昭和24年8月9日刑集3巻9号1440頁)。公務執行妨害罪において行為時標準説を採用しているのと整合性がある。一方、A説も有力に主張されている。その根拠は、条文の文言である。C説を採用する学者はほとんどいないとされる。

[編集] 蔵匿・隠避

判例・通説によれば、蔵匿とは、官憲の発見・逮捕を免れるような隠れ場を提供することをいい、隠避とは、蔵匿以外の方法により官憲による発見・逮捕を免れさせるべき一切の行為を含む(大判[1]昭和5年9月18日刑集9巻668頁)。

具体的には、犯人として逮捕・勾留されている者を釈放させる行為も隠避にあたるから、身代わり犯人を仕立てることは隠避にあたるとされた(最判平成元年5月1日刑集43巻5号405頁)。一方、牧師の牧会[2]活動が正当業務行為として違法性阻却事由となりうる(神戸簡[1]昭和50年2月20日刑月7巻2号104頁)とされた例もある[3]

[編集] 共犯の問題

犯人の自分に対する蔵匿・隠避は不可罰だが、他人を指示して自己に蔵匿・隠避を行わせた場合については争いがある。教唆罪成立説と不成立説が対立している。

判例は、教唆罪成立説を採る(最決[1]昭和40年2月26日刑集19巻1号59頁等)。一方、不成立説の根拠の主たるものは、正犯として行った場合が不可罰だから、それより軽い教唆犯として行った場合は当然に不成立だというものである。

一方、共犯者に対する蔵匿・隠避については、自己及び他の共犯者の利益のために蔵匿・隠避を行った場合、共犯者に対する犯人蔵匿・隠避が自身のための証拠隠滅としての側面を併有しているからといって、そのことから直ちにこれを不可罰とすることはできないとした下級審の判決がある(旭川地[1]昭57年9月29日刑月14巻9号713頁)。

[編集] 罪数に関する判例

  • 同一事件で犯人が数名いる場合、数個の行為で犯人それぞれに蔵匿・隠避を行った場合、犯人一名ごとに独立の一罪を構成する(大判大正12年2月15日刑集2巻65頁)。
  • 同一人を蔵匿し、かつ隠避させるのは包括的一罪となり、数人の犯人を一個の行為で蔵匿し又は隠避させたときは観念的競合となる(最判[1]昭和35年3月17日刑集14巻3号351頁)。

[編集] 証拠隠滅罪に関する論点

[編集] 他人の刑事事件

共犯者の証拠を隠滅した場合について本罪が成立するか否かで争いがある。成立説、不成立説、自己のためにする意思があれば成立しないとする折衷説に分かれている。

大審院時代の判例は判然としないが、成立説を採っていたとされる(大判大正7年5月7日刑録24輯555頁)。但し、自己のためにする意思が欠けるときは成立するとした判例もある(大判大正8年3月31日刑録25輯403頁)。戦後、下級審では明快に折衷説を述べた判決が下されている(東京地[1]昭和36年4月4日判時274号34頁等)。

[編集] 隠滅

判例・通説によれば、物理的な滅失のみならず、証拠の効力を滅失・減少させるすべての行為を指し、証拠の蔵匿も含む(大判明治43年3月25日刑録16輯470頁)。

自己の刑事事件について、他人に虚偽の偽証をさせることは、偽証教唆罪を構成し、証拠隠滅罪は成立しない(最決昭和28年10月19日刑集7巻10号1945頁)。

[編集] 共犯の問題

犯人蔵匿・隠避罪と同様に、他人を指示して自己の刑事事件に関する証拠を隠滅させた場合につき、教唆罪成立説と不成立説が対立しているが、判例は教唆罪成立説を採っている(最決[1]昭和40年9月16日刑集19巻6号679頁)。

[編集] 親族間の特例の適用範囲

教唆が関わったときに複雑になる。本人(犯人)、その親族、他人の三者関係について三つのケースが考えられる。便宜上、親族特例の対象となる103条及び104条の犯罪を「行為」と呼ぶ。

  • 他人が本人の親族に「行為」を教唆した場合
    親族が正犯に、他人が教唆犯になる。親族には当然に特例を適用できる。他人については親族関係は及ばず、特例を適用できないとするのが通説的見解である。
  • 本人の親族が他人に「行為」を教唆した場合
    他人が正犯に、親族が教唆犯になる。他人に親族関係はなく、特例は適用できない。親族に特例が適用されるかは争いがあるが、判例は、犯人隠避のケースについて、親族に犯人隠避教唆罪が成立するとした(大判[1]昭和8年10月18日刑集12巻1820頁)。但し、昭和22年に105条の条文が「之ヲ罰セス」から改正される前の事件であることに注意が必要である。
  • 本人が親族に「行為」を教唆した場合(他人は登場しない)
    親族が正犯に、本人が教唆犯になる。親族には当然に特例を適用できる。本人については、他人を教唆した場合に教唆罪が成立しない説(「共犯の問題」で既述)を採れば、そもそも親族特例の問題とならない。成立説も、正犯が刑を免除されうるのに準じて、教唆犯も刑を免除されうるべきであると主張している。
    なお、親族が本人に「行為」を教唆した場合、本人の行為は元々不可罰であるから、教唆者も不可罰になると考えられる。

[編集] 参考文献

[編集] 脚注

[ヘルプ]
  1. ^ 判例集#参照判例・引用判例の略称を参照。
  2. ^ 牧師が信徒などを指導すること。
  3. ^判例時報768号』(判例時報社)p3、『判例タイムズ318号』(判例タイムズ社)p219

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

ウィキブックス
ウィキブックス刑法各論関連の教科書や解説書があります。


最終更新 2009年11月14日 (土) 20:34 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
【犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪】変更履歴

ご利用上の注意