矢文
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矢文(やぶみ)とは、手紙を弓矢を用いて遠くから放ち、文書を送る手段の一つ。手紙を矢柄(やがら)に結びつける方法の他、蟇目(ひきめ)の穴の中に入れて射て飛ばしたり、鏃(やじり)に直接文を刺して、それを放つ場合もある。
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[編集] 概要
前近代では、戦時中、互いに直接手紙を渡せない状況下で行われる事が多い(弓を射る側は相手側に存在を悟られないように放つ)。また、時代劇と言ったドラマや漫画などの創作物の中では、果たし状を送る際、矢文の方法を用いる演出がある。
[編集] 利点
- 直接渡さず、一定の距離から送れるので、その時だけは正体を明かさずにすむ。
- 緊迫した状況下では、身の安全を保ちながら、警戒している相手に文を伝達する手段として即席性がある。相手側も矢文を送って来た者をむやみに詮索しようとすれば、射抜かれる可能性があるので下手に追えない。いわば、文を送ると同時に、威嚇行為にもつながっている。
- 相手に怪我を負わせても構わない時、直接見える状態でなくとも使用できることがある。
- 石や枝に文を結びつけて手で直接投げた場合、対象に当たる反動によって着地がままならない場合がある。それに対し、目標が見えている必要はあるものの、矢はしっかりと目標に着刺する。
- 伝書鳩を飼育している鳩舎の無いところへも送ることができる。
- 船上では、状況によっては、舟で文を送るより早い。
- 塀や城壁などがあっても、矢が届けば、それを乗り越える必要がない。
- 攻撃に見せかけて内通(密通)する事ができる(スパイ活動)。
[編集] 欠点
- 雨風が強い日には困難である。
- 怪我をしたなどで腕が悪くなっている場合、人に当たる可能性がある(その日の状況に左右されやすい)。
- 場所を選ぶ必要がある。自分が相手側に見られない事と障害物が少ない事が条件となる。障害物がない上空に向かって矢を放つ場合、落ちるまでの時間差があるので矢文の時にこの技は用いない。
- 飛距離に限りがある。この点は、伝書鳩の方が圧倒的に優れていると言え、鳩が途中で死なない限り、遠くまで運べる上に、人の方は安全である。
- 当然、運べる重量には限度がある。
- 手紙を隠して運ぶのが難しい。
- 誤って、別の場所(人間)に届いた場合、情報漏洩に繋がる(矢文の場合、この危険性が高い)。
緊迫した状況下で行われる事が多い伝達手段の為、即席性はあってもリスクが多くなるのは当然の事であり、利点より欠点の方が大きい。また、利点には条件付のものが多い。
[編集] 歴史
矢文と言った行為がいつ頃から行われてきたのかは定かではないが、古代では紙は貴重なものであり、相当緊迫した状況でもない限り、ぞんざいには扱えなかったものとみられる。その為、紙の生産技術が向上していなかった日本の律令時代に矢文と言った伝達手段を行う事は少なかったものと考えられる。少なくとも17世紀初めの頃では盛んに矢文が用いられていた事が分かる。
矢取島(宿島)の島名由来伝説では、神代に、夫と別れた女神が自分の子に矢文を送ったと言う話がある。上述のように、紙の歴史を考えれば、後世に創られた話と考えられる。
中世では、互いに矢文を放ち、悪口を書いた文を送りつけ合ったうえで、合戦におちいったと言う話がある。交渉の為ではなく、挑発目的で用いられた(互いに罵倒しあったうえで合戦に入ると言うスタイル自体は、源平合戦の頃より見られる)。
大坂の陣の際、真田信繁が片倉重長の陣に対して矢文を送ったと言う話がある。内容は、自分の子の婚姻の儀の申し入れ文を送ったとされる。
天草の乱の際、キリスタン南蛮絵師である山田右衛門作が矢文で幕府側と内通していたと言う話がある。


