祖霊

祖霊の最新ニュースをまとめて検索!

祖霊(それい・みおやのみたま)とは、先祖のことで、縄文時代から続く祖霊信仰先祖崇拝)といわれる古神道(日本の民間信仰)における基本的な概念の一つであり、特に神道においても同様な位置付けとして、祭祀で用いられる言葉である。

目次

[編集] 概要

祖霊とは死者の霊のうち、死霊とはならず、死後世界へ旅立った精霊(しょうりょう・しょうろう)のうち、直系子孫が居るもの。また、柳田国男によれば、傍系の子孫や縁故者が弔いをされるものなどを祖霊と呼ぶとされる考えもある。

「祖霊」という場合には、死後かなりの時間が立ち、生前の個性(精霊としての個人の御魂・魂)を失ったもの、およびその集合体(御霊)のことを指すことが多い。この観念は縄文時代から続いてきたと考えられ、記紀の神話時代も、祖霊としての母[1]を愛しく思うスサノオの嘆きが記されている。

[編集] 世界観

古神道や神道における世界観としては、現実世界としての現世(うつしよ)と神域や死後の世界としての常世(とこよ)・幽世(かくりよ)に別れるとする考えや、『古事記』や『万葉集』において記述されている常夜を加えて、現実世界としての現世と神域や死後の世界としての「天国理想郷の世界」としての常世と、「地獄黄泉の国の世界」としての常夜に分かれるという考え方がある。

ただしその神域や死後の世界の場所は、特徴的な自然の象徴であるや、普段の生活から隔絶された場所の「川向う」や「海の中の竜宮城の様な場所」や「海上に見える蜃気楼」であり、現実の世界と重なるように存在すると考えられている。またその入り口(結界ともいう)を、端境といった意味を表す言葉(岩境・神籬)や神留る(かんづまる)といった神々が鎮座する場所の意味から表してきた(磐座鎮守の森)などがあり、その場所は神社神道の成立する以前の古神道の時代から、注連縄が飾られ祀られてきた場所である。

柳田国男の解釈における神道の死生観では、人は死後、インドの仏教のように転生したり、日本の仏教のように地獄極楽へ行ったり、キリスト教のような遠い死者の世界に行ったりするのではなく、生者の世界のすぐ近く(山中や海上の他界)にいて、お盆正月に子孫の元に帰ってくると考える。

[編集] 類例・祖霊とその関わり

現世と常世(幽世)の二律双生と、現世に残るものを死霊、現世に帰ったものを御魂、常世に旅立ったものを精霊と祖霊も区別し体系として表記した。

現世
  • 御魂 - 御魂とは玉・珠でもあり、球体をしているとされ、個々の精霊や祖霊のことでもあるが、現世にあるときなどはこのようにも呼ばれ、正月(精霊・祖霊は年神の起源でもある)やの時期に帰ってきた祖霊(精霊・しょうろう)や、肉体を離れた直後の霊を御魂などともいう。
  • 御霊 - 御魂の集合したものや、神となった祖霊や霊をいう。
  • 死霊 - 現世に残る、死者の霊魂の全てをさす。また生霊の相対語としても使われる。本来は、幽世(常世)に旅立って精霊や祖霊になるべきものが現世に残ったり、見えないもののはずの霊魂が、見えるという変化(へんげ)したので、お化けとも呼ばれる霊。ただし柳田國男は死後の人の霊魂を総称して死霊と呼んでいる。

和御魂 - 辞書の大辞林などでは、悪霊に分類されていないため和御魂とした。

  • 亡霊 - 死後、肉体を離れた魂が、現世に残り、生前の姿で幽かに可視化したもの。何故そうなったのか客観からは解らない。
  • 幽霊 - 死後、肉体を離れた魂が、遺恨を解くため現世に残り、生前の姿で幽かに可視化したもの。何故そうなったのか理由がある。遺恨を解くことは、悪いことではないと解釈できる。

荒御魂

  • 悪霊 - 禍をもたらす霊魂のこと。悪霊のうち死者の魂ではない生きている人の魂が分霊して禍をもたらすものは生霊という。
    • 怨霊 - 死後、肉体を離れた魂が、怨念から現世に残り、生前の姿で幽かに可視化し、禍をもたらすもの。
幽世(常世)

本来のあるべき姿の霊魂なので、お化けとは呼称されない霊。

  • 精霊(しょうりょう・しょうろう) - 常世・常夜(とこよ)やへ幽世へ旅立った神霊で、お盆に帰ってきても、見ることはできない。(注意:「せいれい」と読んだときは日本以外の神霊の類のこと。若しくは文化人類学のアニミズム論で用いられる魂や霊魂や命や神の総称や一部を表す言葉)
  • 祖霊(それい) - 本稿にて説明。

[編集] 家系と神への昇華

精霊と祖霊を区別する考え方や、精霊のうち弔われるものが、祖霊となり果てはになるといった考えや、死霊(現世を彷徨う精霊にならなかった霊)も祖霊になれるといった包括的な考えがある。

祖霊崇拝のその根本が家督家業や嫁ぐといった言葉に示される家族戸主といった「」が前提となり、それを継ぐ「子孫」が世襲していくことにより、成り立つ概念でもあるが、基本に継いでいく者は男系の男子だが、養子婿養子の例もあり、必ずしも血縁で有る必要はなかった。ただし家系が必ずしも続くものではないことや、家族の在り方などからその維持に対しても問題があるため、様々な祖霊の位置付けや概念があり提唱されてきた。

祖先の霊から共同体の神へ

精霊は祖霊にさらにに昇化するとする考え方もあり、そのような祖霊は祖神(そじん)や氏神(うじがみ)として氏族集落などの共同体で祀られることになる。沖縄地方では7代で神になるとされていた。

弔うことによりすべての霊は御霊となる

柳田国男によれば、日本の民間信仰(古神道)では、死んでから一定年数以内の供養の対象となる霊は「死霊」と呼び、祖霊と区別する。死霊は供養を重ねるごとに個性を失い、死後一定年数(50年、33年、30年など地域により異なる)後に行われる「祀り上げ」によって、完全に個性を失って祖霊の一部となるとする。(ここでの祖霊の一部とは祖霊が霊の集合である御霊とし、死霊が個々の御魂であるとしている。)

家系による祖霊崇拝の在り方

祖先の霊を祀るために墓所や縁故の場所に小祠を設けたものを霊社、祖先の代々を合せた霊社を祖霊社と言った。その崇祀は子孫に限られ、他者を排する傾向があった。伊勢神宮の古代の私幣禁断には天皇家の祖霊を祀る場所としての排他の論理がある。このような祖先崇拝は未開社会・古代社会では普遍的であっが、血縁や家系を地上的なものに過ぎないと否定する世界宗教仏教キリスト教)によって衰滅した。但し、日本の仏教のように祖先崇拝と習合して土着化している例もある [2]

[編集] 脚注

  1. ^古事記』に「妣が国根の堅州国に罷らむとおもふゆゑに哭く」と言うくだりがあり、黄泉国の母に会いたいが為に泣く、という意。
  2. ^ 『万有百科事典』小学館、1974年。

[編集] 関連項目

最終更新 2009年11月20日 (金) 08:19 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
【祖霊】変更履歴

ご利用上の注意

もっと調べる!