空対空ミサイル

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空対空ミサイル(くうたいくうミサイル)とは兵器の1種であり、空中から発射され空中の目標を攻撃するためのミサイルである。英語ではAir-to-Air Missileと呼ぶため、AAMと略される。

AAM-3

目次

[編集] 概要

長い円筒形をした本体形状に加え、前後中央の内の2箇所に4枚程の安定翼や姿勢制御翼をそなえているものが多い。本体は前から、シーカーを含む誘導部、弾頭部、固体ロケットエンジンなどの推進部で構成される。

空対空ミサイルの多くが戦闘機から発射され、敵航空機の撃墜によって航空優勢を得るために使用されるが、攻撃機や対戦車ヘリコプターのような航空機でも自衛的な目的など必要に応じて武装に加えられる。固定翼航空機では主翼下や主翼端、胴体下や、まれに胴体内部に搭載される。

第二次世界大戦中頃から開発が始まり、1960年代頃から本格的に用いられるようになった。成功した空対空ミサイルは地上発射機や海上艦艇に載せられ比較的短射程の地対空ミサイル艦対空ミサイルとして使用されるものもいくつかある。

[編集] 推進方式

航空機同士の制空戦闘などでの使用が中心となり、短時間で高速度まで加速できる能力が要められるためロケットエンジンが採用され、また多くが小型で多数運用時での保守の手間やコストも考慮されて固体燃料ロケットが多い。 近年では射程を延ばすためロケットエンジンに加え、ラムジェットエンジンを装備するものも開発されている。

[編集] 誘導方式

詳細は「ミサイルの誘導方式」を参照

誘導方法は普通は終末誘導方式の違いによって3つに大別する。IR(赤外線パッシブホーミング)、SARH(セミアクティブレーダーホーミング)、ARH(アクティブレーダーホーミング)であり、旧西側諸国では短距離ミサイルではIR(赤外線パッシブホーミング)、中長距離ではSARH(セミアクティブレーダーホーミング) またはARH(アクティブレーダーホーミング)が主に使われる(またそれらを補足する中間誘導としては慣性誘導と指令誘導が組み合わされる)。空対空ミサイルとして、普及が進んだ順はIR-SARH-ARHの順になる。

姿勢制御翼によって飛翔方向を制御するものが多いが、推力偏向方式を取り入れたものもある。

詳細は「ミサイルの飛翔制御方式」を参照

[編集] LOBLとLOAL

目標の発見、捕捉とミサイル発射の順序の違いにより、「LOBL」と「LOAL」に分けられる。

LOBL(Lock-On Before Launch)は、ミサイル自身が搭載するシーカーが目標を捕らえてからミサイルを母機から発射する発射形態を指す。複数目標に対して複数ミサイルを放つ時に一方では追尾漏れがありもう一方では2基のミサイルが1つの目標を重複追尾するようなムダが発生しないよう、母機が複数のミサイルを厳密に統制したい場合にはLOBLという発射形態が選択される。

LOAL(Lock-On After Launch)は、母機のセンサーが目標を捉えているものの、ミサイル搭載のシーカーが目標を捕らえないうちから発射して、その後の飛行中にこのシーカーが目標を探知して追尾を開始する(Lock-on)ことを想定した発射形態を指す。シーカーの検知可能距離を上回る射程のためLOBLが不可能な中・長距離ミサイルで使われる事が多い発射形態だが、短距離ミサイルであっても、目標が母機の横や後ろに居る場合などミサイルのシーカー走査角内にない場合に使用されることがある。 なお、短距離ミサイルがLOAL能力を持つようになったのは、比較的最近のことである。

[編集] 中間誘導

中間誘導は「ミサイルが発射されてからミサイル搭載シーカーが目標を捕らえる (Lock-on) まで」の中間段階の誘導。慣性誘導と指令誘導がある。慣性誘導は指令した座標に移動するようにミサイル自身のジャイロ加速度計で誘導することである。指令誘導とは、移動する目標を母機などのレーダーなどで追尾し、ミサイルに進行方向の指令を送って、最終的にミサイル搭載シーカーが目標を検知するところまでミサイルを誘導させる方法である。慣性誘導に比較し、目標位置のアップデートがあるので命中率は高まるが母機などが誘導指令を発し続ける必要がある。

ミサイルによっては中間誘導を採用せず、終末誘導のみの誘導方式を持っているものもある。

[編集] 終末誘導

終末誘導は「ミサイル搭載シーカーが目標を捕らえて (Lock-on) から後」の最終段階の誘導を指す。終末誘導は赤外線、SARH、ARHの三種類がある。

  1. 短距離赤外線ミサイル(中間誘導なしの赤外線終末誘導だけの短距離ミサイル)
  2. SARH中距離ミサイル(中間誘導なしのSARH中距離ミサイル)
  3. SARH/赤外線長距離ミサイル(中間誘導:慣性+指令 終末誘導:赤外線/SARHの長距離ミサイル)
  4. ARHミサイル(中間誘導:慣性+指令 終末誘導:ARHの中・長距離ミサイル)
  • 旧西側諸国製ミサイルには赤外線ミサイルは短射程のものしかないが、旧東側諸国製ミサイルには中間指令誘導付で射程100km近い赤外線ミサイルがある。東側は標的の回避を困難にして命中確率を向上させるために、電波誘導と赤外線誘導の2種2発のミサイルを同時に発射する戦法をとる。その戦術を実現するために、1種のミサイルが赤外線誘導版と電波誘導版の2つのバージョンを持つ場合が多い。

[編集] SARH

セミアクティブレーダーホーミング (SARH) は母機が目標に照射したレーダー電波の反射波をミサイルのシーカーが受信し、その反射波を基に誘導を行うもの。その性質上、命中するまで母機が目標へレーダー電波を照射し続ける必要があり、敵のミサイルが迫っても母機が舵を切って回避機動を行えば、ミサイル命中前に目標への照射が中断されるため(戦闘機レーダーは前面一定角の円錐の範囲しか照射/探知できない)、結局ミサイルが当たらない。また、発射後すぐの回避行動が取れないため、その間に母機が撃墜される危険性が高くなる。そのため、相互にミサイルを撃ち合う戦闘機同士の戦闘では使いにくいという欠点がある。

電波は赤外線より大気圏内の透過性が高く、IR誘導ミサイルよりは射程を長くすることが容易であったことと、ミサイルシーカー内に収納できる高性能レーダー発信機の開発は時間がかかったことから、初期の長距離空対空ミサイルにはSARHが多かった。

[編集] IR/IIR

赤外線ホーミング(IR;InfraRed=赤外線)は標的の発するエンジンの赤外線源(ジェットエンジンの排気口など)を追尾するタイプである。最初に出現したものはジェットの赤外線を追尾する1波長式(中間誘導なし)で敵と対向している場合(赤外線源がミサイルシーカーから見えない場合)は撃てず、敵機ではなく強力な赤外線放射源である太陽の方に向かって行ったり、味方の発射したミサイルの放射する赤外線を追尾したり、フレア(欺瞞用燃焼剤)に簡単に騙されたり問題が多かった。また、赤外線シーカーは使用直前から液体窒素などの冷却材で冷やさねば撃てないのでこの保守も手間がかかった。

その後、2波長式が出現し空気との摩擦で加熱する目標機体先端部の放射する赤外線を検知する事で対向目標にも撃て、太陽や味方ミサイルは追尾せず、フレアにもやや騙されにくくなった。

最近のシーカーはホーミング対象を画像として捉える、赤外線ビデオカメラを使用した、赤外線画像式ホーミング (IIR; Imaging InfraRed) ミサイルが多くなってきた。これはフレアなど航空機の形状をしていない赤外線源の妨害の影響を少なくすることができる。電子技術の向上に伴って検知距離は初期の2倍になり、欺瞞(フレア等)への耐性が高まり、かつ常温作動可能になって冷却不要となった。最新型のオフボアサイト赤外線画像ミサイルR73 ARCHERなどは、IRSTを使った中間指令誘導を介在させることによって発射後ロック (LOAL) を可能にし、ミサイルシーカーの視野外(オフボアサイト)の目標・つまり前方から最大60度離れた「横に居る目標」も撃てる新世代の赤外線ミサイルである。1985年にR73が出現し、ソ連崩壊後に旧東側諸国製ミサイルから入手した現物をテストした旧西側諸国関係者に衝撃を与えたと言う。現在ではアメリカのAIM-9Xをはじめとする同種のミサイルを開発して珍しいものではなくなり、徐々に普及してきている。

[編集] ARH

ARH(アクティブレーダーホーミング)はミサイル自身が小型レーダーの発信機と受信機を装備し、ミサイル自身のレーダーが目標を捕捉(ロック)して誘導を行うことが出来る自律型のミサイルである。これにより、打ちっぱなしが可能となりSARHの使用の場合と比べて誘導中の脆弱性が克服された。

アメリカ製AIM-120の場合、中間指令誘導と組み合わせることで8目標との同時交戦能力を得ている[要出典]。その自律誘導により、ARHはミサイルがロックしたら命中を待たずに母機は回避機動ができることが発射母機にとって大きなメリットとなっているが、打ちっぱなしたまま中間誘導指令を行わない場合は当然ながら命中率も低下する。

SARHミサイルはレーダー波の発射装置を自身は持っておらず受信機だけであり、発射から命中するまで母機の機首レーダーで目標を照射しつづけねばならない。敵のミサイルに襲われた母機がSARHミサイルが命中する前に目標照射を中断して逃げるとミサイルは誘導能力を失って当たらなくなる。そのため、双方がミサイルを撃ちあう戦闘機同士の戦いで使用すれば大きな制約が生じる。双方撃ちあえば母機は逃げないわけにはゆかず、ミサイルが命中するまで母機が現場にとどまって目標を照射し続けないと当たらないSARHミサイルは、当方と対等に遠・中距離からSARH/ARHを撃ってくる相手には余り実戦的ではない。検知距離20kmのARHを70kmから撃つなら70km-20kmまでは母機のレーダーで敵機を見て指令誘導でARHを操って検知距離の20kmまで寄せなければならない、この中間指令誘導中はARHでも母機はその場から離れることは出来ないが、この中間指令誘導があれば、1つの目標に2つのARHが向かったり、攻撃漏れの目標が出ないように単独の母機が(例えば)最大8つのAAMを統制して8つの目標を同時に攻撃できる。中間誘導無しのSARHにこのような多目標同時交戦能力はない。

[編集] 初撃墜

空対空ミサイルが初めて実戦で発射され、撃墜を記録したのは1958年9月24日金門馬祖周辺の台湾海峡において、中華人民共和国人民解放軍台湾中華民国)空軍との交戦とされている。この戦闘において、台湾空軍はアメリカから供与されたAIM-9B サイドワインダーを装備したF-86F戦闘機[1]をもって人民解放軍のMiG-17F(またはJ-5)と交戦、11機を撃墜した。

[編集] 主要な空対空ミサイルの一覧

射程を目安に3つに分類した。括弧内は開発国。重量、射程距離、飛翔速度、誘導方式等のスペックを記述したものもある。実際の射程距離は発射母機の速度や目標との高度差などによりこの値とは異なるものとなる。

[編集] 短射程

[編集] 中射程

  • AIM-7 スパロー (アメリカ合衆国)
    AIM-7M - 総重量231kg、射程70km、速度M4.0、セミアクティブレーダーホーミング
  • AIM-120 AMRAAM(アムラーム) (アメリカ合衆国)
    AIM-120C - 総重量152kg、射程110km、速度M4.0、慣性誘導+アクティブレーダーホーミング
  • スカイフラッシュ (イギリス)
    総重量193kg、射程50km、速度M4.0、セミアクティブレーダーホーミング
  • MATRA SUPER 530 (フランス)
    総重量250kg、射程35km、速度M4.0-M5.0、セミアクティブレーダーホーミング
  • MICA (フランス)
    総重量112kg、射程60km以上、速度M4.0、アクティブレーダーホーミング/赤外線画像誘導
  • アスピーデ (イタリア)
    総重量220kg、射程50km、速度M2.5、セミアクティブレーダーホーミング
  • AAM-4(99式空対空誘導弾) (日本
    総重量222kg、射程 非公開(推定100km前後)、速度M4.0- M5.0、指令・慣性誘導+アクティブレーダーホーミング
  • R-4 (ソ連)
    総重量512kg、射程25km、セミアクティブレーダーホーミング
  • R-8 (ソ連)
    総重量285kg、射程20km、セミアクティブレーダーホーミング
  • R-40 (ソ連)
    総重量750kg、射程60km、速度M2.2、セミアクティブレーダーホーミング
  • R-23 (ソ連)
    総重量235kg、射程35km、速度M3.0+、セミアクティブレーダーホーミング
  • R-24 (ソ連)
    総重量243kg、射程50km、速度M3.0+、セミアクティブレーダーホーミング
  • R-98 (ソ連)
    総重量285kg、射程20km、セミアクティブレーダーホーミング
  • R-27 (ソ連、ロシア)
    総重量240kg、射程80-130km、速度M4.0+、セミアクティブレーダーホーミング
  • R-77 (ロシア)
    総重量175kg、射程100km、アクティブレーダーホーミング
  • TC-2 (天剣Ⅱ型)(台湾
    TC-2 - 総重量190kg、射程60km、慣性誘導+アクティブレーダーホーミング
  • PL-11 (中華人民共和国)
    PL-11B - 総重量220kg、射程70km、アクティブレーダーホーミング
  • PL-12 (中華人民共和国)
    総重量180kg、射程70km以上、アクティブレーダーホーミング

[編集] 長射程

  • AIM-54 フェニックス (アメリカ合衆国)
    総重量458kg、射程204km、速度M4.0、慣性誘導+アクティブレーダーホーミング (AIM-54C) F-14専用
  • FMRAAM (アメリカ合衆国)
    AIM-120AMRAAMを基に、ダクテッド・ラムジェットエンジンを組み込んだもの。
  • R-33 (ソ連)
    総重量450kg、射程160km、速度M3.5、セミアクティブレーダーホーミング
  • R-37 (ロシア)
    総重量600kg、射程300km、速度M6.0、アクティブレーダーホーミング
  • KS-172 (ロシア)
    総重量750kg、射程400km、速度M4.0、アクティブレーダーホーミング+慣性誘導 対AWACS
  • METEOR (欧州協同)
    発射重量185kg 、射程100km以上、速度M4.0以上、慣性誘導+アップデート誘導+アクティブレーダーホーミング 開発中

[編集] 出典

  1. ^ ロン・ノルディーン著 高橋赴彦監訳 繁沢敦子訳 『現代の航空戦』 原書房 2005年5月15日第1刷発行 ISBN 4562038691

[編集] 関連項目

最終更新 2009年7月17日 (金) 11:11 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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