紋章院
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紋章院(もんしょういん)とは、中世ヨーロッパにおいて紋章を管理していた国家機関。中世以降ほとんどの国で消滅したが、イギリスでは現在も存続している。
紋章院の創立以前は国王に直属するヘラルド(herald, 紋章官兼軍使)が紋章事務を行っていた。
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[編集] 現存する紋章院
- イングランド紋章院(College of Arms):イングランド及び北アイルランドを管轄し、ロンドンにある。紋章の管理の他に、王の戴冠式や結婚式・葬式などの伝統行事を司っている。また、紋章に関する紛争を管轄する裁判所でもある。
- スコットランド紋章院(The Lord Lyon Office):スコットランドを管轄し、エディンバラにある。紋章の他にクランバッジやタータンも管理している。
- カナダ紋章院(カナダ紋章官庁、Canadian Heraldic Authority):カナダを管轄し、オタワにある。
- アメリカ陸軍紋章研究院 (U.S. Army Institute of Heraldry) - アメリカ合衆国にも紋章院に近い機関が存在するが、これはアメリカ陸軍に属するアメリカ軍のための機関であり、大規模なものから順に大隊レベルまでの陸軍部隊の紋章の制定と管理をつかさどっている。また、一部アメリカ海軍、アメリカ空軍、アメリカ沿岸警備隊の紋章も管理している。
[編集] 組織
[編集] イングランド紋章院
紋章院(College of Arms)は、総裁(Earl Marshal)と13人の紋章官(3人のキング・オブ・アームズ(King of Arms)、6人のヘラルド・オブ・アームズ(Herald of Arms)、4人のパーシヴァント(Pursuivant)で構成されている。
紋章院総裁はノーフォーク公家(Duke of Norfolk)の世襲である。
キング・オブ・アームズは、
- ガーター・キング・オブ・アームズ(Garter King of Arms)
- クラーランスー・キング・オブ・アームズ(Clarenceux King of Arms)
- ノロイ・キング・オブ・アームズ(Norroy King of Arms)
の3官からなる。
ヘラルド・オブ・アームズは、
- チェスター・ヘラルド(Chester Herald)
- ランカスター・ヘラルド(Lancaster Herald)
- リッチモンド・ヘラルド(Richmond Herald)
- サマーセット・ヘラルド(Somerset Herald)
- ウィンザー・ヘラルド(Windsor Herald)
- ヨーク・ヘラルド(York Herald)
の6官からなる。
パーシヴァントは、
- ルージュ・クロワ (Rouge croix)
- ブルー・マントゥル (Blue mantle)
- ルージュ・ドラゴン (Rouge dragon)
- ポートカリス (Portcullis)
の4官からなる。
[編集] スコットランド紋章院
紋章院総裁(Lord Lyon King of Arms)のほか、紋章院書記官(Lyon Clerk and Keeper of the Records)、
ヘラルドとして、
- オールバニー・ヘラルド(Albany Herald)
- 焼成ヘラルド(Rothesay Herald)
- ロス・ヘラルド(Ross Herald)
の3官、
パーシヴァント
- 一角パーシヴァント(Unicorn Pursuivant)
- キャリーック・パーシヴァント(Carrick Pursuivant)
- 五使パーシヴァント(Bute Pursuivant)
の3官がある。
[編集] カナダ紋章院
大紋章官(Herald Chancellor)のほか、カナダ紋章官長(Chief Herald of Canada)、
ヘラルドとして、
- サンローラン紋章官(Saint-Laurent Herald)
- サゲーネー紋章官(Saguenay Herald)
- アシニボイン紋章官(Assiniboine Herald)
- アサバスカ紋章官(Athabaska Herald)
- フレーザ紋章官(Fraser Herald)
- ミラミチ紋章官(Miramichi Herald)
- コッパーマイン紋章官(Coppermine Herald)
の7官がある。
[編集] 紋章の授与
少なくともカナダではその国民であれば貴族や王族とは縁もゆかりもなくとも誰でも新しく自分の紋章を請願することができる[1]。紋章の新規登録を英語ではグランティング (Granting) と言い、形式上はイギリス国王(女王)からの授与となるため紋章を与えるにふさわしい人物であるかどうかの適格性を審査される。請願者は自己の出生、経歴、人物像などの背景と教育的又は社会的な貢献(必ずしも公職のことを指さない)をまとめた資料を作成して提出する必要がある。紋章院がそれを審査した後、紋章官長又は副紋章官長が署名をすると初めて紋章授与の手続きが始まる。
紋章のデザインはまったくの自由に決めることができるわけではなく、長い歴史の中で培われた様々な紋章のルールに従わなければならないため、紋章官長が推薦する紋章官(ヘラルド)の助力を得なければならない。また、紋章の大前提として、同時期の同一国家・地域の中でまったく同じ図柄(紋章記述)の紋章があってはならないため、膨大な数の紋章の中に同じ図案がないか調べてもらうためにも紋章官はなくてはならない存在である。紋章官は、長年の伝統と紋章学から得られた紋章の原則に基づき、提出された資料を元にその人物にふさわしい紋章の図案を考案する。図案が決まると、紋章官は請願者に承認を求め、請願者がそれを承認すると、紋章院が推薦する絵師と契約して実際に紋章を描いてもらうという運びになる。
「国民であれば誰でも」とは言うものの、紋章を授与してもらうには相応の費用がかかり、2008年現在、紋章官長の署名後の手続きだけで435カナダドル(1ドル110円換算で約48,000円)、紋章のデザイン(300 - 1,000ドル)、モットーのラテン語訳などのすべての専門作業を含めて紋章が承認されるまでに最低でもおよそ2,000ドル(約22万円)必要である[1]。作業料でもっとも幅があるのが文書作成料で、紋章の由来などを記述する文書(グランティング・テキスト)にコンピュータ出力を用いる2シート形式では600 - 2,100ドルであるが、文書もカリグラフィーによるすべて手描きの1シート形式では1,800 - 3,300ドルとなっており、最低と最高の間には実に2,700ドル(約30万円)もの差がある。したがって、文書量の多さや図案の複雑さ、オプションの選択により5,000ドル(55万円)を超えることもありえる。費用もさることながら、請願から授与までに要する期間も12ヶ月から14ヶ月とかなりの長期間になる。
現代では紋章の当初の目的である戦場や馬上槍試合で個人を識別するための意味合いは完全になくなってしまったため、紋章のデザインには中世に比べれば自由度があり、デザインの技術も進歩していることから、精巧で大変美しい紋章が多数登録されている。また、中世では女性はエスカッシャン(盾型の紋章のこと。シールド。)を紋章とすることができなかったため、一通りの要素が揃った大きな紋章は与えられなかったが、近年ではそういった区別はなくなって男女ともエスカッシャンを中心とする大きな紋章になっている。そのため、紋章のクレストに様々な動物を採用したり、樹木や野草、花などを描き入れた女性らしい紋章も多数見られる。職業なども大いに影響し、音楽家であれば、自分が得意とする楽器を取り入れてクレストの動物に持たせたり、使用する図柄も多彩になっている。
[編集] 脚注
- ^ い ろ "Granting Armorial Bearings in Canada Coats of Arms, Flags and Badges" (英語). The Canadian Heraldic Authority. Governor General of Canada. 2008年1月26日 閲覧。


