終身雇用
終身雇用の最新ニュースをまとめて検索!
終身雇用(しゅうしんこよう)とは、学校を卒業してから1つの企業に就職し、その企業で定年まで雇用され続けるという、日本の正社員雇用において一般的な雇用慣行である。
1958年にアメリカの経営コンサルタントジェイムズ・アベグレンが著書『The Japanese Factory(日本の経営)』において、日本の経営の特徴として終身雇用と年功賃金を挙げてから広く知られるようになった。
目次 |
[編集] 定義と労働契約上の区分
終身雇用された従業員との間に結ばれている労働契約は、労働基準法上(労働基準法第14条)は、「期間の定めのない雇用」である。つまり、「無期雇用」のことである。法的には、「終身雇用」という言葉は存在しない。実際、労働基準法上(労働基準法第20条)は、「終身雇用」であっても、合理的な理由があって常識的なものであれば、一定の予告期間をおいて解雇できる。
したがって、終身雇用された従業員が定年まで解雇されなかったということは、契約や法が守られたのではなく、慣行が守られたのである。だから「終身雇用」を、法的に定義することはできない。実際、終身雇用されている従業員が全国で何人いるかという政府統計もない。
[編集] 終身雇用を支える解雇権濫用の法理
ただし、終身雇用が「期間の定めのない雇用」だからといっても、雇用主はいつでも自由に従業員を解雇できるわけではない。たとえば、雇用主が従業員を解雇し、従業員がその解雇を無効として争う場合、裁判所がその解雇を権利の濫用と認定し、解雇を無効と判決することがある。これが、解雇権濫用の法理である。
解雇権濫用の法理は旧来判例で認められてきたものだが、2003年(平成15年)の労働基準法改正によって、労働基準法第18条の2に明文化された。そこには、「解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と示されている。なおこの条文、今は2008年3月に施行された労働契約法16条にそのまま移行されている。
日本の雇用は、こうした解雇権濫用の法理によって、法的に保護されているといえる。これは他の先進国・特に欧州にも存在する観念であり正当な経営上の理由が無い限り解雇は違法となっている。ただしその基準は各国において異なる。
[編集] 長期雇用の経済合理性
なお、長期雇用は日本だけの現象ではなく、欧米でも大企業を中心に長期勤続者の比重の高い国や産業はあり、それらの国や産業では「長期勤続を誘導することで、従業員の企業内訓練を高めて熟練技能を形成し、また従業員の企業忠誠心を高く維持することができる」と考えられている。逆にいえば、「従業員がいつ解雇されるかわからない状況では、一企業のために教育訓練を遂げようという意欲は低下する」と考えられている。
さらに、企業が費用を投じて従業員の教育訓練を施してしまっている場合、かりに雇用が過剰になったとしても、将来の需要回復で雇用が不足する可能性があるのならば、すでに教育訓練を施している従業員を雇い続けるのが合理的になる場合がある。むしろその方が、将来の教育訓練費用を節約できるからである。このことを、マクロ経済学の景気循環理論では労働保蔵(labor hoarding)といい、日本だけでなく欧米の雇用の時系列データでもよく観察されている。
以上の点で、長期雇用には一定の経済合理性があり、統計的にも広く認められる現象といえる。
日本の終身雇用にも、長期雇用の経済合理性から企業が自発的に選択している側面はあるが、解雇権濫用の法理の保護を受けることで法的に保障されている側面もあり、単なる長期雇用慣行とは区別した方がよい。
[編集] 歴史と現状
明治時代の末から大正時代の初めにかけて、大企業や官営工場が熟練工の足止め策として定期昇給制度や退職金制度を導入し、年功序列を重視する雇用制度を築いたことに起源を持つ。第二次世界大戦終戦後、人員整理反対の大争議を経験した日本の大企業は高度経済成長時代には可能な限り指名解雇を避けるようになり、また裁判所が「解雇権濫用の法理」によって実質的に使用者の解雇権を制限するようになり、終身雇用慣行が定着した。
しかし、1990年代から2000年代にかけて、多くの日本企業は円高や国際競争、平成不況の中で、人件費の圧迫と過剰雇用に直面し、雇用の調整が大きな経営課題となった。これに対して、いったん雇った期間の定めのない従業員を解雇する際には、上述のように、場合によっては解雇した従業員からの解雇権濫用による解雇無効訴訟のリスクを抱えてしまい、相当の覚悟がいる。
このため、過剰な雇用に直面した企業は、まずは新規採用の抑制を徹底させたといえる。こうした因果関係をもって、終身雇用の維持が、かえって若年の新規採用にしわ寄せを与え、若年層の非正規雇用を増やしたという指摘もある。
一方、「期間の定めのない」従業員の解雇が難しいとしても、事業所や事業部門を分社化して、再雇用するという手法を使えば、人件費を圧縮することは可能ともいえる。その場合、雇用は維持されるとしても、給与などの労働条件は大幅に下げられるのが普通である。そこで、終身雇用制度は見かけほど強固なものではなく、若年層の新規雇用にはそれほどの影響を与えていないという見方もある。
[編集] 飼い殺し
経営状態の悪化や事業縮小(撤退)など理由により、企業側の都合で安易な解雇が横行するようになった結果、自社の重要な知識や技術あるいはノウハウを持った人物が他社に移ると、かえって事業展開に脅威となることが企業側にも理解されてきた。そのため、高度な技術的知識あるいは特殊なスキルを持つ人物を事業上の必要がなくなっても解雇せず、他部署に配置転換して雇用を継続することが行われる。また、労働組合関係者や地元有力者にコネがある者など、解雇すると紛争発生が懸念される人物も同様な措置が取られる。雇用が継続されるため、一見、労働者にとって有利なように思えるが、配置転換先では戦力として期待されず重要な仕事を任されないので、仕事のやりがいの点でストレスを抱え込むことになる。
さらに最近では、競合企業への技術流出防止や秘密保持のため、定年延長により高度な技術的知識あるいは特殊なスキルを持つ人物を囲い込むことや、重要部署に派遣されていた派遣社員を正社員として雇用することが多い。
- 飼い殺しの例
- ゴードン・マレーはマクラーレンの車体設計者としてチームに数多くの勝利をもたらしたが、レースへのモチベーションを失い退職を願い出た。他チームへの技術流出を恐れたチームは、市販車製作子会社マクラーレン・カーズを設立し自由にやらせることを条件に雇用を継続、技術流出を防止した。
[編集] 国民の民度を蝕む終身雇用
財団法人日本生産性本部発表の第20回 2009年度 新入社員意識調査によると、「良心に反する手段でも指示通りの仕事をするか?」の問いには、40.6%が「指示の通り行動する」と回答し、「指示に従わない」(11.7%)、「わからない」(47.7%)とする人がいるものの、調査開始以来の3年間で過去最高値を占める結果になった。このように日本で、「指示の通り行動する」の割合が高いのは、日本特有の事情で、会社を辞めるとやり直しが効きにくい社会だからだと思われる。もちろん上昇原因は不況などの要因があるかもしれない。しかしながら、不況の前からこの割合はかなり高い。欧米なら会社をやめても、やり直しがしにくい社会ではないので、このように高い割合にならないであろう。
[編集] 非効率な労働市場
終身雇用を反対すると、既得権者達から死にもの狂いの抵抗を受ける。これは現在の就職市場が効率的ではないためである。現在の市場が効率的なら、終身雇用を廃止しても労働者は損も得もしない。
[編集] 問題点
最近では大企業の正社員は終身雇用に近い形態(新卒一括採用~定年)、一方派遣労働者や中小企業の正社員は職を何度か変えるのが普通になりつつある。大企業では終身雇用に近い形態なため、雇用の流動性が乏しく、やり直しが困難である。雇用に流動性を与えるために、正社員を解雇しやすくする事が経済学者などにより提案されている。また中途者にとれば、終身雇用により一部の大企業で働く道は閉ざされてしまう事が多いので、機会均等の原則に反するという見方もある。勝間和代は著書『会社に人生を預けるな』(光文社新書)の中で、終身雇用はいわば現代の小作農、奴隷制であり、労働環境の面で「NOといえない労働者」を生み出す要因になっていると述べている。
[編集] その他
ジャーナリストの東谷暁は終身雇用という言葉に対し、定年が存在するのに何故「終身雇用」という言葉を用いるのかと、字句の観点から疑問を呈したことがある。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
最終更新 2009年11月19日 (木) 11:32 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
【終身雇用】変更履歴

