経済地理学

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経済地理学(けいざいちりがく、economic geography)は、「ところ変われば品変わる」という諺が示す、特定の場所における製造業・商業等経済活動の分布状況や空間的差異を記述する人文地理学の一分野である。経済学人文地理学の両方からのアプローチがなされている。

近代科学の登場とともに、記述から説明が学問の主要な原理に取って代わると、このような経済現象の空間的差異を、経済学の論理を用いて説明する試みが行われはじめた。

19世紀に、ドイツチューネンは、中心に1点の需要地がある以外に全く均質な農業生産空間を前提し、そこに、距離という空間の要素をとりいれたとき、いかなる土地利用の不均質性ができるか説明する論理を構築することに成功した。20世紀に入り、やはりドイツのクリスタラーは、人口が全く均質に分布する需要空間を前提として、財の到達範囲と呼ぶ消費者行動の距離的限界から、多様な種類の財の配給拠点から少ない種類の拠点に至る、中心地の階層体系が成立することを論証した中心地理論を提起した。

これらの、今日では古典となっている立地論研究により、当初前提された均質な空間のうえに経済活動によって不均質な空間が成立することを説明する、という斯学の課題が明確になり、経済地理学は経済学の一分野としての地位を確立した。

経済地理学の分野では、経済活動の地誌学的記述に比重を置く伝統的なアプローチと、立地論など抽象性の高い理論に比重を置くアプローチが常に存在している。前者の立場は人文地理学を背景とした者に、後者の立場は経済学を背景とした者にありがちだと考えられることもあるが、必ずしも明確な傾向があるわけではない。両者の指向性は、個人の営為においても研究者集団の活動においても、学術的な交流を経て建設的に止揚されることもあるが、一方では、研究者集団間の対立やすれ違いが生じることもある。 1990年代以降、米国の経済学者ポール・クルーグマンらが、国際貿易理論から展開して、収穫逓増を前提し数理的な手法で特定地域への集積を説明する理論を構築し、それを「新経済地理学」と称した。これは、経済学の立場から見た既存の経済地理学が、地誌学的記述偏重で一般的な経済学理論との連携に問題があると感じられていることの表れと見ることができる。

また海外の地理学界では、経済地理学の中に文化的要素を取り入れて「経済地理学の文化論的転回」を図り、批判地理学や社会学カルチュラルスタディーズと連携する流れも大きくなってきた。

目次

[編集] 日本での研究潮流

日本の大学では、経済学部及び理学部文学部等の地理学教室において主として研究されてきた。現在、東京大学一橋大学京都大学中央大学明治大学東京学芸大学立命館大学大阪市立大学広島大学北九州市立大学九州大学等の諸大学において経済地理学研究が盛んである。

東京大学では、大学院総合文化研究科人文地理学教室において、産業立地の地域構造、流通消費の空間的側面、情報化の地域経済活動への影響などについて、具体的事例に依拠した実証的研究が盛んである。

京都大学では、クルーグマンの共同研究者である経済学者藤田昌久を中心に、クルーグマン流の「新経済地理学」の研究が進んできた。現在、経済学系の研究者を中心とした応用地域学会に主たる基盤を置いて、さらに研究が進んでいる。

一橋大学では、水岡不二雄を中心に、デヴィッド・ハーヴェイらの影響下に構築された「経済・社会への空間包摂」という独自の理論構成によって、均質な原初的空間を前提し、それが有界化・空間統合されることによって空間の不均質性が生まれる過程を弁証法的に説く空間理論が研究されている。この研究手法は、大阪市立大学地理学教室を拠点とする雑誌「空間・社会・地理思想」などと連携し、日本での批判地理学研究の一環を構成している。

1954年に日本に経済地理学会が設立され、現在の会長は山川充夫(福島大学)。会員数は789名(2008年12月現在)。毎年春に全国大会を開催するほか、全国5つの地域支部(北東・関東・中部・関西・西南)で例会を開催している。学会誌『経済地理学年報』は年4回刊行されている。 経済地理学会の事務局は、1979年からは20年間にわたり一橋大学に置かれていた。ところが、1990年代に、当時まだ学会員で役員でもあった水岡不二雄が提起した学会運営に関わる論争を契機に内訌となり、結局、1999年に水岡は学会を退会し(会費滞納による除籍ともいわれる)、事務局は地理教育のメッカ東京学芸大学に移転した。

水岡不二雄は、自らが離れてから後の経済地理学会について、現在では矢田俊文が提唱した地域構造論を支持する派の地理学者が中心に運営を担う組織に変わっており、日本の経済地理学の研究潮流全体を必ずしも反映しているわけではない、と主張している。

実際の経済地理学会は、特定の学問上の指向をもった者の集団ではなく、(地域構造論の流れに与する者ばかりでなく)幅広い背景の研究者が参加しており、経済活動の地誌学的記述を重視する伝統的な記述指向の者や、(水岡の共同研究者を含め)批判地理学系の者も、また、人文地理学系の研究者ばかりではなく、比較的少数ではあるが経済学系の研究者も学会に参加している。

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最終更新 2009年4月20日 (月) 13:19 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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