方位磁針

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方位磁針
護衛艦の主羅針儀

方位磁針(ほういじしん)は、磁石の作用を用いて方位を知るための道具である。

用いられる場面や仕様の違いにより、単に「磁針」と呼ばれたり、「方位磁石」「コンパス」「磁気コンパス」「羅針盤(らしんばん)」などとも呼ばれることもある。

目次

[編集] 概略

方位磁針は磁石を自由に回転できるようにしたものである。これにより、地磁気に反応して、N極が(磁北)を、S極が(磁南)を向く。最も単純なものとしては、非常に軽く作った磁石を針の上に乗せたり、磁石を水に浮かべるだけで実現する。

上記の原理からも判るように、方位磁針は厳密に見れば真北を指しているわけではない。真北と、方位磁針が示している北、それら二つの差は「コンパスエラー」「コンパス誤差」などと呼ばれる。

[編集] 真北と磁北のズレ(偏角)

方位磁針が示すのは、厳密には地磁気の北(磁北)であり、厳密な(地軸の北、真北)からは、ずれている。この差を「磁気偏角」と呼ぶ。日本では磁北が真北より西側にあり、その差は、沖縄で 4°、九州・四国・本州では 6〜8°、北海道で最大 10°である。外国では地域によっては数十度に達する。日本国内の磁気偏角は、国土地理院地磁気測量ホームページで概算できるし、地形図の縁に記入されている。

また、航海においては磁気偏角を「偏差」「バリエーション」とよび、その大きさは海図などに記載されている。

地磁気の北極北磁極)はグリーンランド付近に、地磁気の南極南磁極)は南極大陸近辺の海上にある。この近辺では方位磁針の誤差が大きい。

[編集] 自差(デビエーション)

近くに鉄器類があったりすると、方位磁針は狂い東西のどちらかに偏ることがある。船舶の世界では、この偏りは「自差」と呼ばれており、具体的には船搭載のエンジンやモーター類などがその原因となる。正確な航海の為には、自差を補正する必要が出てくる。

[編集] 上下(伏角)

また、磁力線赤道付近以外では地面と平行に走っているわけではなく、北半球の多くの地域の場合、地面の中に向かって突き進むような方向に走っている。そのため、針が斜めになってしまわないように、S極側を重くすることで釣り合わせている(日本の場合)。[1]

[編集] 歴史

11世紀中国の沈括の『夢渓筆談』正確には「真貝日誌送」にその記述が現れるのが最初だとされる。沈括の記述した方位磁針は24方位であったがのちに現在と同じ32方位に改められた。西アジア及びヨーロッパには、双方と交易を行っていたペルシャ人によって伝えられたと考えられている。

方位磁石のヨーロッパへの伝来と改良によって、航海術は著しく発達し、大航海時代が始まった。そのため、一般に活版印刷術、羅針盤、火薬ルネサンスの三大発明と言うが、方位磁石も他の二つと同様に西欧で独自に発明されたものではない。また、ヨーロッパでも羅針盤自体はルネサンスに先駆けて十二、三世紀には用いられていた可能性がある。ダンテ・アリギエーリ(Dante Alighieri、1265年 - 1321年)の『神曲』にも、羅針盤が比喩的に現れる。

実用的な方位磁針として最初に出現したのは容器に入れた水の上に、磁針を浮かせることで、自由な回転と水平面の確保を同時に実現する方法だった。この方位磁石の欠点は、激しく揺れる船上で正確に方位を知るのが難しい点である。揺れる船上で方位を知る装置として、宙吊り式羅針盤が開発された。

[編集] 最近のコンパス

オイル充填型コンパスの一例(レンザティックコンパス(lensatic compass))
  • 磁石の性質を利用した方位磁針では、透明な油(ダンパオイル)によって振れを低減したものがある。気圧・気温により気泡を生じる事があるが、機能・特性への影響はない。気泡を消そうとして加熱したりしない事(逆にケースが変形する)。
  • 磁石を用いないコンパスとして、2つの磁気センサ磁束密度を測定し、方位を割り出すものもある。
  • 離れた2つのGPS受信機を使って方位を割り出すものもある。大掛かりなため、磁気以外の冗長手段として用いられる。簡易な方法として、運動方向の情報を使えるなら、異なる時点の位置情報から運動の方角が得られる。
  • 高性能なジャイロによって、地球自転を測定し、方位を割り出す方式もある。これも大掛かりになる。(ジャイロコンパス
  • 軍用の物は、軍用地図と組み合わせての砲撃目標や進軍方向の決定等に使われる。「レンザティックコンパス」という。単位としてミルを使用することがある。
    • レンザティックコンパスは眼の高さに持ち、蓋の隙間の照準を目標物に合わせつつ、レンズで盤面を見て、外周の目盛りを磁針の指す方位と一致させる。(目標物が一つの場合は、磁針の方位を覚えるだけでも良い)

[編集] 本針と逆針

方位磁針は、その用法と縁への方位の記し方により、本針と逆針とに分類される。

[編集] 本針

本針(ほんばり)とは、針の示す方向に縁に記してある北が合致するよう、手に持って水平に回転して方位を確認する形態の方位磁針である。方位磁針の縁には、上に北、右に東、下に南、左に西と記してある。

[編集] 逆針

逆針(さかばり)とは、船体などに固定して、針の示す方向の縁に記してある方位を進行方向の方位として確認する形態の方位磁針である。方位磁針の縁には、船首方向には北(子)、右舷方向には西(酉)、船尾方向には南(午)、左舷方向には東(卯)と記してある。

揺れる海上では、手に持って体を水平に回転させるよりも、船に固定したほうが使い易い。針上に記されているN極と縁に記されている方位が合致したとき、その船はその縁に記された方位に向かっていることとなる。例えば、船が東に向かっている場合には、針のN極は左舷方向である東(卯)を指しているので、船が東(卯)の方向に向かっていることが判る。羅針儀にも類似する仕組みがみられる。

日本の航海用語で船の右方向への旋回のことを「面舵」と言うが、これは元来「卯の舵」であり、舵の柄を左舷壁(逆針の縁に卯と記されている)方向へ寄せることを意味している。同様に、左方向への旋回を指す「取舵」は「酉舵」、つまり舵の柄を右舷壁(逆針の縁に酉と記されている)方向へ寄せることに由来する[2]

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  1. ^ 磁石の北と地磁気極と磁極(京都大学大学院理学研究科附属地磁気世界資料解析センター)
  2. ^ 船の科学館ものしりシート(日本財団電子図書館)

[編集] 外部リンク

ウィキメディア・コモンズ

最終更新 2009年11月7日 (土) 09:55 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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