腰痛
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腰痛(ようつう)とは、腰に痛みを感じる状態を指す一般的な語句。
腰痛の原因は、活動による障害または腫瘍などの慢性疾患である。活動による障害が原因の場合、治療法は安静・投薬・コルセット等の対症療法以外基本的に存在しない。鍼灸や柔道整復も痛みを軽快する[1]。腫瘍が原因の場合は長期間放置した結果手遅れとなり回復困難となることもあるので、脊椎脊髄専門医の早期受診が望ましい。
目次 |
[編集] 腰痛の種類
腰痛には筋肉由来の緊張性腰痛と、鈍い痛みを伴う慢性の腰痛がある。
筋肉を原因とした緊張性腰痛(筋筋膜性腰痛)は長時間同じ姿勢を続けるなど、過度なストレスを強いられ筋肉が緊張することで引き起こされる腰痛である。筋肉などにストレスが掛けられることで、常に交感神経が優勢になり活発化し緊張を強いられた結果、余計な他の筋肉などに力が入る。すると崩れたバランスを調節しようと腰の筋肉に負担が大きくなり、腰痛が発生する。
慢性型腰痛は、腰に継続した鈍い痛みのあるものである。
尿路結石による痛みを腰痛と勘違いすることがある。
| 主な病名 | 腰の症状 | 脚の症状 | 検査 | 原因 |
|---|---|---|---|---|
| 椎間板ヘルニア | 痛み、しびれ、重度では排泄に支障・痛み増大 | 痛み、しびれ | MRI レントゲンでは確定できない |
中腰など不自然な作業姿勢 重量物を運搬する仕事の人に多い |
| ぎっくり腰 | 痛み | - | 重い物を持つ・腰をひねるなど | |
| 椎間板症 | 痛み、長時間立つとつらい | - | MRI レントゲンでは異常ないことが多い |
椎間板の亀裂など |
| 変形性脊椎症 | 痛み | - | レントゲン、MRI | 骨の変形など |
| 脊椎管狭窄症 | 痛み、朝起きた時痛い | 痛み、しびれ | レントゲン、MRI | 骨の変形など |
| 感染性脊椎炎 | 痛み | - | 体温測定(発熱を伴う) | 高齢、手術、糖尿病、免疫低下 |
| 骨粗鬆症 | 痛み | - | レントゲン、骨量測定 | 高齢、閉経 |
| 脊椎腫瘍 | 痛み増大、排泄に支障、安静時も痛み | - | MRI | 腫瘍 |
| 心因性脊椎症 | 痛み | - | ストレスなど |
[編集] 原因
欧州におけるガイドラインによれば、腰痛の原因は、疾患ではなく、腰部に負担のかかる動作による脊椎・腰椎・神経などの障害、腫瘍などの慢性疾患からの症状、の2つである。
整形外科医ナッケムソンは、1976年3月に腰痛の原因である腰部に負担のかかる動作と数値を示し、残された課題は腰部に負担のかかる動作をさせないよう知識を広め予防を働きかける整形外科医の行動であると示唆、腰痛を前の職場で抱えた永久に続く持病として永久に労災保険の支払い対象としない古い労災保険制度を温存する学会や米国政府などに対して社会保障制度の抜け道を作らないよう方針転換を強く促した。
これを受け、日本政府は、「腰痛の業務上外の認定基準の検討に関する専門家会議」による議論の結果、1976年10月に腰痛の原因は業務上の作業および姿勢と制度的に認定し、必要な場合は専門医の意見を優先するとし、同一箇所への再発も労災の対象として認定している(業務上腰痛の認定基準等について)。
Wilkeらは、自身の経験上感じたナッケムソンの研究結果への疑問を解決するために更に細かく約30通りの動作について数値を計測、1999年にナッケムソンの研究を補足する形で追認した。
[編集] 腰部への荷重
| 姿勢 | ナッケムソン (第3/第4腰椎の間) |
Wilkeら (第4/第5腰椎の間) |
備考 | |
|---|---|---|---|---|
| 寝ている | あお向け | 25 | 0.10(基準) | 腰痛・疲れた時、可能なら、20分程横になる |
| うつぶせ | 0.11 | |||
| 横向き | 75 | 0.12 | ||
| 座る | ゆったり | 0.30 | ||
| 両ひじで支えて前傾 | 0.43 | |||
| まっすぐ | (140) | 0.46 | 近年の研究は、着席による負荷の軽減(Wilkeら)を支持 | |
| 腰を前に傾ける | (185) | 0.83 | 近年の研究は、着席による負荷の軽減(Wilkeら)を支持 | |
| 立つ | リラックスして | 0.50 | ||
| まっすぐ | 100(基準) | 0.92 | ||
| 体にぴたっとつけて重い物を持つ | 1.10 | この姿勢での長時間の作業は避けるべき | ||
| 腰を前に傾ける | 150 | 1.10 | この姿勢での長時間の作業は避けるべき | |
| 腰を前に傾け、重い物を持ち上げる | 380 | 2.30~4.50 | この姿勢での長時間の作業は避けるべき | |
| 椅子から立ち上がる | 0.10 | |||
| 走る | ジョギング | 0.35 | ||
| 歩く | 0.53 | |||
| 夜 | 上記に各+0.10~0.24 | 起立姿勢での長時間の夜間の作業は避けるべき |
出展:「筋骨格系のキネシオロジー」医歯薬出版株式会社、The lumber Spine. An orthopedic challenge (Nachemson,Spine Journal 創刊号,1976年3月,59~71ページ)、New In Vivo Measurements of Pressures in the Intervertebral Disc in Daily Life (Hans-Joachim Wilke, Peter Neef, Marco Caimi, Thomas Hoogland, Lutz E.Claes, Spine Journal 1999年4月15日, 755-762ページ)
例:体重60kgの人が立って腰を前に傾け、20kgの物を持つ場合、腰にかかる負荷:304kg(Nachemson、第3/第4腰椎の間),184~360kg(Wilkeら、第4/第5腰椎の間)
[編集] 腰痛がおきやすい生活習慣
例を参照
満員電車などでの前屈姿勢など立つことがつらい時には、元気に見えても辛いカラダがあります。「知ってほしいキャンペーン」キーホルダーなど
[編集] 治療法
ぎっくり腰のような急に激しい痛みがきたときの対処法として、最初に患部を冷やすことが肝心である。これは他の急性筋肉疾患でも同様だが、冷やすことで炎症の亢進を抑えて疾患の拡大(腫れ・疼痛)を出来るだけ小さくするための処置であるので、可能な限り早く冷やした方が治療効果も高く痛みも少ない。急性期を過ぎた後は、今度は出来るだけゆっくりと温めて血流を良くすると筋の復帰も早い。腹圧を上げる為のコルセット着用も効果的である。
また、下肢の痺れ・感覚鈍麻・歩行困難等が顕れるような場合は、椎間板ヘルニア等の恐れもある為に病院の診察が必要である。
[編集] 整形外科による治療
| 例 | 備考 | |
|---|---|---|
| 運動療法 | 体操、水泳、ジョギング、散歩 | 痛みが激しい時は運動してはいけない |
| 装具療法 | 腰痛ベルト、コルセットなど | 常時使用し続けると、筋肉が弱まり悪化するので、必要な時のみ |
| 薬物療法 | 消炎鎮痛剤 | 痛み止めは長期間服用し続けると効果が薄まるので、必要な時のみ |
| 理学療法 | 温熱療法など | 整骨院などでも受けられる |
| マッサージ療法 | 指圧など | 整骨院などでも受けられる |
| 手術 | レーザー手術など | 手術しても、数年程度で再発し再手術となる人も |
[編集] 鍼灸による治療
腰痛は肩こりと並び、鍼灸治療により著効を表すことがある。腰部の腎兪穴、大腸兪穴、志室穴などの施術のほか、膝の後ろにある委中穴の鍼や、足の照海穴、さらに体調を整える目的で、背部や腹部の経穴を用いることがある。
健康保険による鍼灸治療が認められている。
[編集] 整骨院による治療
温熱治療、マッサージなど。但し、痛みの原因は腫瘍であるなどの至急手術が必要な場合もあるので、レントゲン検査のため、最初は整形外科を受診すべき。
[編集] 漢方薬による治療
痛みの原因は腫瘍であるなどの至急手術が必要な場合もあるので、レントゲン検査のため、最初は整形外科を受診すべき。
[編集] 予防
[編集] 運動による腰痛予防法
上記で書いたように筋肉が原因の緊張製腰痛に対しては、腰の筋肉である腹筋と背筋を鍛えることにより予防を見込める。 長時間同じ姿勢で過ごす事の多い人は、運動や体操で腰痛予防を心掛けることが望ましい。 運動不足(腹筋が弱すぎ、腹筋に比べて背筋が弱い)、過度の運動(腰椎分離症になる恐れ)は回避する。
- 体の前屈
- これは背筋とスネの裏側の筋肉のストレッチになる。できる範囲での前屈で良いが、膝は曲げないこと。
- 背筋の訓練
- 両手で両膝を抱え、できるだけ胸に引き付ける。足先を開いたほうが楽にできるはず。引き付けは無理のない範囲で。
- 腹筋訓練
- 上半身を起こす運動だが膝を曲げて行うのがポイント。足先を固定しても構わない。腰痛のある人は頭を持ち上げるだけにする。
- 背筋の強化運動
- うつ伏せから上半身を起こして胸を反らせる。既に腰痛のある人は頭を持ち上げるだけにする。
[編集] 生活習慣による腰痛予防法
| 腰痛予防となる生活習慣の例 | 腰痛の起きやすい生活習慣の例 | ||
|---|---|---|---|
| 姿勢に注意 | 前かがみを避ける | 作業姿勢を工夫 | 前かがみ、中腰、前傾姿勢 |
| 同じ姿勢を長く続けない | 屈伸などその場でできる軽い運動をする | 毎日2~3時間車を運転するなど、同じ姿勢を長く続ける | |
| 良い姿勢 | 両足を揃えて椅子に座る、いつも同じ側でかばんを持たない | 脚を組んで椅子に座るなど、姿勢が悪い | |
| 疲れをためない | 規則正しい生活 | 定時退社、家へまっすぐ帰る | 残業などで、疲れをためる |
| 朝食はしっかり | 暖かいものを栄養バランス良く | 朝食抜き、朝食が少ない、油もの・生野菜・果物 | |
| 運動は適度に | 軽い運動 | 激しい運動などで、疲れをためる | |
| 靴 | 適切な大きさの靴 | 足に合わない靴を無理をして履いている | |
| 寝具 | 敷布団は固すぎず、やわらかすぎないもの | 腰が沈み込む寝具 | |
| 十分な睡眠 | 規則正しい睡眠 | 睡眠不足 | |
| 体を冷やさない | 空気を冷やさない | 適度な空調 | きつすぎる冷房 |
| 暖かい食事 | 暖かいものを栄養バランス良く | 油もの・生野菜・果物 | |
| 太陽光 | 日光浴 | ||
| 入浴 | 風呂に肩まで入ってゆっくり体を温める | 半身浴 | |
| 寝具(冬) | 湯たんぽ | 電器毛布をつけたまま寝る | |
| 衣類(冬) | 吸湿発熱性のある新素材、ウール。マフラー、ハイネック、ズボン | スカート、きつい肌着 |
[編集] 労災(通勤・職場で発症)
腰痛は雇用の継続や再就職の困難をもたらす原因となる可能性が高く、収入の途絶など社会生活を営む上での重大な障害となる可能性が高い。また身体障害に関する社会福祉政策の対象として認定されるに至らないケースが大半であり、労働災害の認定がこの場合非常に重要となる。在職中に一度でも診療を受けた実績がなければ労災・障害年金は申請が難しいので、どんなにつらくても当日中あるいは在職中に、整形外科の労災指定病院で診断を受ける必要がある。労働災害として労災申請する場合、労働基準監督局へ写真を持参して認められたケースもあるので、現場の写真を撮る。前任者や同じような業務を行う周囲の人々が労災申請して認められている場合は、比較的スムーズに承認される。時効に注意。
建築現場・工場・倉庫・空港・港湾・物流関連など、重いものを扱う業務では、腰痛による労働災害が発生する危険性が非常に高く、またこれを原因とした退職者も見られる。このため、期間を区切って採用する期間工・派遣社員・委託社員・パート・アルバイトなどを、このような労働災害発生のリスクの高い労働にあてる傾向がある。業務上の安全措置コストを回避しようとするだけでなく、安全でない業務の結果として生じる腰痛にかかるコストも削減し、私病として病院内で労災処理を完結させようという確信犯的な雇用主によって労災申請できない・労災申請したが労働基準監督署の確認作業に時間がかかる・労災申請したが認定されないなど、生活に困った場合は、居住地からの立ち退きを要求される前に、速やかに管轄の役所にて生活保護申請すべきである。生活保護制度には、治療費・交通費・医療器具代などが支払われる医療扶助制度がある。生活保護申請においては、仕事を探す意欲があることやボランティアが一緒であることなどが、効果的な場合もある。
リストラ目的や労働組合活動への制裁的人事としてこのような重労働を任命された場合、そもそも現業活動には十分な訓練や修練・熟練・肉体的素養・年齢などの条件が求められる事が多いにも関わらず本来必要な業務命令を逸脱した配置転換の場合は、パワーハラスメントや不当労働行為に該当する可能性がある。
労災申請には、会社の証明だけでなく、医師の証明も不可欠である。しかしながら、一部の医師は、伝統的な損傷モデル(以前の職場での腰の損傷は、永久的な痛みと再発の唯一の原因であり、以降の全ての職場は労災の原因でなく、以降の全ての職場は永遠に労災保障の義務を回避して良いという論理)を主張することもある。ナッケムソン以降は、痛みの原因は被災者の主張通りとすべき(以前の職場で腰痛があっても、全ての職場において腰をかがめるなどの腰痛を生じうる危険要素は不可避なので、患者本人が今回の職場で発生したと感じるのであればその通りとみなすべき)との説が評価されている。厚生労働省は、病院に不信を感じた場合は他の病院、医師に不信を感じた場合は他の医師・専門医・セカンドオピニオン外来などから診断を受けるよう推奨している。労働局は、医師が明らかに矛盾している場合、労働局から専門医に意見を確認することで、労災申請上の医学的な壁を解決することがある。
[編集] 通院費・療養期間の保障などについて労災申請する場合
労働災害参照。時効に注意。
[編集] 障害が残って障害年金を申請する場合
障害年金は、退職後も、症状が固まり次第申請可能。時効に注意。
[編集] 損害賠償請求訴訟
損害賠償請求訴訟の場合、雇用者側の不法行為を裁判において立証する必要がある。判例あり(大阪地方裁判所 昭和49年(ワ)第879号)。時効に注意。
[編集] 脚注
- ^ WHOにおける鍼灸の適応疾患
[編集] 参考文献
- 科学的根拠(Evidence Based Medicine;EBM)に基づいた腰痛診療のガイドラインの策定に関する研究厚生省科学研究(Minds医療情報サービス)
- 日本脊椎脊髄病学会
- 椎間板に加わる負荷の推定方法の研究高知工科大学
- ユニバーサルデザイン北海道立林産試験場
- 座りっぱなしはなぜ腰に悪い?
- 同じ作業なら立って行うより、座って行うほうが腰部の筋肉の活動は少ない
- 姿勢ガイド
- The Truth About Back Pain
- European Guidelines For The Management of Chronic Non-Specific Low back Pain欧州委員会(European Commission)
- The Lumbar Spine An Orthopaedic ChallengeNACHEMSON, ALF L. MD, Spine Journal
- New In Vivo Measurements of Pressures in the Intervertebral Disc in Daily LifeWilke, Neef, Caimi, Hoogland, Claes (Spine Journal)
- 我々は腰痛をどのように管理したらよいかは知っているのです。現時点での大きな挑戦はそれを実行することです(ナッケムソン)

