臨界量 (原子力)

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臨界量(りんかいりょう)は、原子核分裂連鎖反応が持続する核分裂物質の最少の質量を指す。

目次

[編集] 連鎖反応の持続

核分裂反応に伴なって発生した中性子が、もし次の核分裂反応を起こさせることができれば、その反応で生じた中性子がその次の原子核分裂を起こさせることも期待できる。条件を整えて核分裂反応が持続する状態を作り出した場合、核分裂反応が臨界に達した、または臨界状態になったと称する。臨界に達した核分裂性物質は、何らかの条件変化によって核分裂反応の数が減るか、核分裂性物質そのものが減るなどしない限り核分裂の連鎖反応が維持される。

[編集] 臨界量

核分裂物質を集積してゆくと、ある集積量で内部の核分裂反応が臨界に達する。この量を臨界質量、または臨界量と称する。言いかえると臨界に達する核分裂物質の最少の質量が臨界量である。核分裂物質の臨界量は核分裂物質の種類、雰囲気の状態、形状などにより異なる。核分裂反応の性状は核種により異なり、また臨界量は原子の密度により変わるため、臨界量は圧力とは逆相関の関係にある。すなわち同じ集積量であっても圧力が高ければ臨界量は減少する。物質の形状と周囲の状況は、発生する中性子の利用効率を左右し、臨界量を変化させる。

初期の臨界量は実験的手法で決定された。固定された核分裂物質の空隙に同じ物質の小塊を落下させた時、もし両者の質量の合計が臨界量を超過していれば、小塊が空隙を通過する一瞬だけ臨界になり、周囲に置かれた計数管に多数の中性子が観測される。大きさの異なる小塊を落して、どの量で臨界に達するかを決定する。この実験をファインマンは『ドラゴン実験』と命名した。アメリカのロスアラモス国立研究所の研究者であったハリー・K・ダリアン Jr.及びルイス・スローティンは、臨界量を決定するための実験中に球状のプルトニウム塊に物を落として臨界事故を引き起こし、死亡した。

[編集] 原子爆弾の起爆

原子爆弾は原子核分裂の連鎖反応を制御すること無く暴走させ、生じるエネルギーを一気に開放する。実用化されている原子爆弾は、臨界量以下の核分裂物質を、火薬の爆発力を用いて臨界量を超過させることで起爆される。

いわゆる広島型原子爆弾(Mk.1)の起爆方法は砲身型(ガンバレルタイプ)と称し、タンパーと呼ばれる鋼鉄製のパイプの一端にウラン235の塊を置き、もう一方の端に置いたウラン235塊を火薬の力で吹き飛ばし、互いにぶつけて一塊として臨界量を超過させることで起爆させる。

また長崎型原子爆弾(Mk.3)の起爆方法は爆縮型(インプロージョンタイプ)と呼ばれ、空洞を持つ球状、またはスポンジ状のプルトニウム239塊の周囲に配置された球状の爆薬から発生した球状の圧縮波がプルトニウム塊を押しつぶし、内部の圧力を一気に上昇させて臨界量を超過させることで起爆させる。

[編集] 臨界管理

同じ量の核分裂物質でも、その形状により臨界に達する場合と達しない場合がある。一般に核分裂物質の形状が細長かったり、薄い板状であれば、内部で発生する中性子の多くが外部へ飛び出してしまい、核分裂反応に寄与しなくなるため、臨界に達しなくなる。逆に物質の体積当たり最小の表面積となる球状の時、臨界量は最も少なくなる。

核分裂性物質を取り扱う施設(濃縮工場再転換工場再処理工場等)では、物質量の管理である質量管理のほか、物質の形を管理する形状管理を行って臨界を管理する。形状管理では、核分裂性物質はなるべく薄く長くなるように保たれる。形状が球に近づけば近づくほど臨界に達する危険が増すためである。

 安全審査指針によると、ウラン加工施設においては、臨界安全を担保する各機器(単一ユニットと呼ばれる。)形状寸法、質量、容積、溶液濃度等に核的制限値と呼ばれる管理値を設け、設計および運転時に、この核的制限値を逸脱しないように管理を行うことで臨界事故の防止を行っている。この核的制限値の設定に当たっては、ウランの化学的組成、濃縮度、密度、溶液濃度、幾何学的形状、減速条件、評価手法の誤差等を考慮した裕度、評価手法の信頼性、二重偶発性(技術的に発生が想定されない事象が2つ同時に起こらない限り臨界にならない)ように設定する必要がある。また機器によっては中性子吸収材(ホウケイ酸ガラス小片を容器の中に入れる、ハフニウム性多孔板)等を使用する。

 ユニット間の核燃料物質の移動に対しては、移動先の核的制限値を確認すること、運搬に使用する容器の健全性維持、使用する容器はなるべく寸法・形状管理がなされているものを使用することで担保する。

 ユニット相互の間隔が近い場合には、各ユニットから発生する中性子による相互干渉によって、上記の単一ユニットに対する核的制限値を守っていても臨界事故が発生する可能性があるため、ユニット間の間隔の維持、中性子遮蔽材の使用によって臨界安全を担保する。(これを複数ユニットの制限と呼ぶ)

JCOの臨界事故では臨界管理を無視する方向で仕事の効率化が図られたのが直接の事故の原因となった。正規のマニュアルではウランの溶解は貯塔と呼ばれる装置で行うことになっていた。貯塔は形状管理されているため細長く質量管理により一回の容量が少ないため、大量の残作業を抱えていた作業員は貯塔ではなく、ずん胴な円筒で容量の多い沈殿槽と呼ばれる別の装置を用いたのである。さらに不幸な事に沈殿槽は二重構造で、周囲に冷却水が通る構造であった。この冷却水が反射体となって外部に漏れた中性子を内部へ跳ね返し、中性子利用率をいっそう向上させたのである。この様に、周囲の中性子反射体となりうる物の有無も、臨界量を左右する重要な要素の一つである。

[編集] 核分裂性物質の運搬

核分裂を起こす物質を陸上、海上で輸送する場合には、輸送中に交通事故等に巻き込まれた場合でも臨界にならないように以下のような試験を行い、損傷した状態であっても、臨界にならないことを評価する。

  • 水の吹き付け試験
  • 落下試験(法律で決められた高さから輸送容器を落下させる)
  • 荷重試験(輸送容器に荷重をかける)
  • 貫通試験(鉄の棒を輸送容器の上に落とす)
  • 耐火試験 (800℃の環境に30分おく)
  • 浸漬試験 (上述の試験により損傷した輸送容器を法律で定められた深さに、一定時間置く)

最終更新 2008年11月26日 (水) 21:56 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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