自主防災組織
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自主防災組織(じしゅぼうさいそしき)とは、日本において災害対策基本法第5条2において規定する地域住民による任意の防災組織をいう。主に町内会・自治会が母体となって地域住民が自主的に連帯して防災活動を行う任意団体のことをいうが、具体的には町内会・自治会防犯部といった組織や、地域の婦人防火クラブ、その他防災関連のNPOなどがその例である。 また、地域住民の構成する消防防災機関としては消防組織法に定める公共機関としての消防団が存在する(消防団及び消防団員参照)ほか、水防法においては水防団が設置されているが、これらは公共機関としての位置付けであり、あくまで任意の組織である自主防災組織とは一線を画す(水防団及び水防団員参照)。
防災NPOの活動も活発化しているほか、市町村、とりわけ消防本部において防災ボランティア等の登録制度を設けているところも多い。また、企業においては一定の危険物を取り扱う事業所については、消防法において自衛消防組織を設置しなければならないとされているほか、石油コンビナートなどの業務を行う特定事業者については石油コンビナート等災害防止法によって自衛防災組織を設置義務付けされている。さらに、原子力事業者については原子力災害対策特別措置法によって原子力防災組織の設置が義務付けされている。これらの組織を総称して『自主防災組織』と称されることもあるが、あくまで便宜的な用法であって、法的にいうところの『自主防災組織』とは、あくまで地域住民などによる地域単位の組織を表わす。
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[編集] 自主防災組織の概要
[編集] 沿革
太平洋戦争後の日本では、戦後の混乱期を除くと大規模な災害が比較的少なく、甚大な被害が生じることは稀であった。そのため、防災の主柱は行政(消防機関や防災部門)が担うこととされ、消防庁などの国家機関は、行政主体の防災力の構築を進めていた。
しかし、1995年(平成7年)1月に発生した阪神・淡路大震災は、数千人の死者発生と阪神地区の都市機能停止という未曾有の被害をもたらし、従来の防災観を大きく揺さぶった。この震災を検証したところ、行政がなし得た役割はごく僅かであり、防災のために最も機能したのは地域住民だったことが判明した(救出者の98%は住民自らの活動による)。消防機関や行政の人員は平時を想定した規模にとどまっており、人的資源を大量に投入する必要のある大規模災害時には、消防・行政の人員では絶対的に不足するが、非常時に備えた人員を確保すると莫大な人件費を要することとなる。そこで着目されたのが、地域住民の連帯による防災活動であった。住民による自主的な防災活動こそ、非常時において最大の効果を発揮することが明らかとされ、実際、同震災時において、倒壊家屋から消防機関によって救出されたのはわずか数%に過ぎず、近隣住民によって救出された割合は90%を超えていた。
そこで、1995年(平成7年)以降、行政における消防力・防災力の強化と並行して、住民による自主防災組織の育成が防災行政の重要項目に据えられることとなった。さらに、2000年(平成12年)頃から東海地震、東南海・南海地震などの発生が予測されるようになると、自主防災組織は、防災行政の最重要事項と認識されていき、各自治体はその育成に積極的に取り組むこととなった。近年、日本ではマルチハザード社会といわれ、災害やヒューマンエラー、有事といった多様化する危機に対する地域住民の自主防災力の向上ということが地域社会にとっての重要なテーマとなりつつある。
[編集] 自主防災組織の結成方法
自主防災組織の結成には各行政の決まった組織作りが必要で、町内会・自治会・マンションの管理組合などで結成の決議を採り、設置を決めるのが主な方法であるといえる。その過程で行政に相談することも多い。消防法規にもある通り、市町村においても自主防災組織結成を奨励しているのが常である。さらに、結成した組織については行政との協力機関として地域防災計画その他行政の消防防災ハンドブック等にも記載される。
[編集] 自主防災組織の役割
自主防災組織の役割が期待されているのは、防災というように地域住民が協力して日ごろの火災の防止(火の用心の見回り、啓蒙)や消火訓練、通常の火災等において通報或いは初期消火に努めることなどである。また、大規模災害において地域住民同士の連携による避難及び避難生活に必要な活動、災害弱者の情報を把握し、安否確認について必要な情報を消防に連絡するか主体的に救出するなどのことがらである。 法律上、設置が義務付けられている事業所等の防災組織と異なり、住民の自主性に基づく活動である以上、特に公の責任や権利義務というものは発生しない。
防災をめぐる情勢としては、社会全体に占めるサラリーマン人口の増加や全国的な常備消防の整備率も向上したことにより、消防団はおろか自主防災組織が通常火災等に出動するケースはあまり見られない。しかし、近年は地震や台風など自然災害の頻発により、その役割はおおいに期待されているところである。都市化の進展や少子高齢化、核家族化などあらゆる要因があいまってコミュニティの希薄化が顕著である一方、地方分権の進展の中で情報公開の進展により住民の行政活動への関心の高まり行政参加、住民参画といった形で地域住民としての公共活動の高まりも見受けられる。とりわけ、災害に対しては大規模災害時における地方公共団体並びに消防の公共サービスやマンパワーも限界が指摘されているところであり、地域住民主体の自主防災活動への取り組みが期待されている。住民の自主的な防災活動及びそうした活動への参加手段としては消防団への入団、市町村或いは消防署にて設けている防災ボランティアへの登録などの方法がある。さらに防災NPOなどの組織がある場合はそちらの選択肢もある。
[編集] 消防団と自主防災組織の相違点
消防団と自主防災組織は地域住民が主体となって地域の火災や災害の拡大を予防し抑制していくという点において同じである。但し、消防団は消防組織法に規定された公共機関であって消防団員は非常勤の特別職地方公務員であるのに対して、自主防災組織はほとんどの場合、任意団体である町会や自治会などが主体となる。
よって、消防団員にはある程度の職権を有するとともに技術の習得が望まれ、場合よっては公務員としての制約を受けるが(消防団員の地位を利用して選挙活動、政治活動を禁止するなど)、自主防災組織のそれはあくまで自発的な取り組みに期待されているということである。こうした特徴の違いから消防団員の負傷は一定の報酬及び被服等の支給・貸与とともに公務災害補償の制度が整っており、自主防災組織についても市町村条例等において応急措置従事者及び婦人自主防災クラブ員などが消防作業従事者として消防団員の公務災害補償に関する条例が援用され公的補償を受けることができることがある。但し、自主防災組織は公共機関たる消防団とは異なることから基本的には災害対策基本法ないし市の事業として行った訓練等、その援用には一定の条件があるところが多い。
消防団には公共機関として一定の能力権限の下で災害対策や国民保護における活動が求められるのに対して、自主防災組織は多くの地域住民が協力して被害の拡大を防ぐというものであり、法的な設置根拠、機関の構成、制度、権利義務、目的において基本的に異なる。近年は自主防災組織の強化のために消防団縮小策がとられる傾向もあるが、総務省消防庁としてはこの設置根拠の違いから、それぞれの機能と役割を明確に区別するとともに消防団と自主防災力が相互にバランスよく機能するようにするための施策を推進している。
[編集] 混同されやすい消防団(公共機関)と自衛消防団(自主防災組織)
自主防災組織の中には自衛消防団という名称の団体もあるが、これは消防組織法にいうところの消防団とは無関係であり、あくまで自主防災組織である。したがって自衛消防団という名称で組織が編成されている場合、役職は団長や副団長などが置かれているなど、消防団と類似した名称が用いられることもあるが、これらは消防団員の階級としての団長・副団長を意味するものではない。中には消防団と自衛消防団が混同されることもあるので、注意をはらう必要がある。とりわけ、消防団では機能別消防団の制度を導入し、自主防災組織との連携を図っているところであり、一層明確な区別が必要とされる。
[編集] 消防団の機能別消防団員制度と自主防災組織
近年、自主防災組織と同じく地域の防災の担い手であった消防団において、機能別消防団員の制度が整備され、自主防災組織のリーダーを機能別消防団員の一種、大規模災害団員として迎える施策がとられつつある。これは、大規模災害時においてともに地域の災害対策にあたる消防団と自主防災組織の一層の協力関係を形成し、地域防災力の強化を図るものであり、今後、機能別消防団員制度を導入した市町村を中心に自主防災組織のリーダーの機能別消防団員任用の例が増えるものと思われる。
[編集] 緊急事態との関わり
災害対策基本法及び国民保護法などの緊急事態に関連した法律においては避難その他の活動において国民の協力の必要性について規定している。その参加手段として自主防災組織などがあげられており、地域単位での防災活動が主として想定されている。
特に災害時に地域において同様に活動する消防団との協力は地域住民の安全を図る上で重要とされる。消防団などでもサラリーマン人口の増加その他の要因から、団員数が減っており、より多くの地域住民の参加率を上げるために、消防団で新たに創設された機能別消防団員の制度に基づき、自主防災組織のリーダーに大規模災害団員として入団してもらい、団としての活力を高めるとともに消防団と自主防災組織の連携を強化する対策も検討されている。こうした活動が活性化し、日常から防災に対する行動がとれるように防災に強い地域単位の取り組みが必要との観点から、防災まちづくり(防災都市づくり)、或いは防災コミュニティに対する取り組みも注目されつつある。
[編集] 関連法
[編集] 災害対策基本法(関連部分の抜粋)
- 第5条 市町村は、基礎的な地方公共団体として、当該市町村の地域並びに当該市町村の住民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、関係機関及び他の地方公共団体の協力を得て、当該市町村の地域に係わる防災に関する計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施する責務を有する。
- 2 市町村長は、前項の責務を遂行するため、消防機関、水防団等の組織の整備並びに当該市町村の区域内の公共的団体等の防災に関する組織及び住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織(第8条第2項において「自主防災組織」という。)の充実を図り、市町村の有するすべての機能を十分に発揮するように努めなければならない。
- 第7条 前項規定するもののほか、地方公共団体の住民は、自ら災害に備えるための手段を講ずるとともに、自発的な防災活動に参加する等防災に寄与するように努めなければならない。
- 第8条 2 国及び地方公共団体は、災害の発生を予防し、又は災害の拡大を防止するため、特に次に掲げる事項の実施に努めなければならない。
- 2 十三 自主防災組織の育成、ボランティアによる防災活動の環境の整備その国民の自発的な防災活動の促進に関する事項
[編集] 国民保護法(関連部分の抜粋)
※正式な法律名を「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」という。
- 第4条 国民は、この法律の規定により国民の保護のための措置の実施に関し協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努めるものとする。
- 2 前項の協力は国民の自発的な意思にゆだねられるものであって、その要請に当たって強制にわたること があってはならない。
- 3 国及び地方公共団体は、自主防災組織(災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第五条第 二項の自主防災組織をいう。以下同じ。)及びボランティアにより行われる国民の保護のための措置に資 するための自発的な活動に対し、必要な支援を行うよう努めなければならない。
- 第173条 国民は、この法律の規定により緊急対処保護措置の実施に関し協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努めるものとする。
- 2 前項の協力は国民の自発的な意思にゆだねられるものであって、その要請に当たって強制にわたること があってはならない。
- 3 国及び地方公共団体は、自主防災組織及びボランティアにより行われる緊急対処保護措置に資するため の自発的な活動に対し、必要な支援を行うよう努めなければならない。
[編集] 関連項目
- 防災
- 災害対策基本法
- 国民保護法
- 国民保護
- 日本の消防
- 消防団
- 水防団
- 海防団
- 自衛消防組織
- 自衛防災組織
- 原子力防災組織
- 消防少年団
- 消防クラブ
- 消防団員
- 機能別消防団員
- 水防団員
- 海防団員
- 防災士
- 千葉科学大学-学生による消防車を運用する自主防災組織が存在する。
[編集] 外部リンク
最終更新 2009年8月8日 (土) 21:07 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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