自脱型コンバイン
自脱型コンバインの最新ニュースをまとめて検索!
自脱型コンバイン(じだつがたこんばいん、あるいは自脱式コンバイン)とは、農作物とくにイネやムギを収穫するための農業機械の1つである。普通型コンバインについては、コンバインハーベスター参照のこと。
目次 |
[編集] 概要
自脱型コンバインとは、自動脱穀機に刈取機と走行部を組合わせたコンバインを指す。平野部に大区画の耕地が少なく、中山間地に比較的狭い農地が多い日本の実情に合わせて開発された。
過去には運転者が歩きながら操作する歩行型もあったが、現在市販されているコンバインは全て乗用型となっている。しかし、小型の2条刈コンバインに限り、田の出入りやトラックへの積み下ろしのために、歩きながら操作が出来る機構を有する機種がある。小型の自脱型コンバインは省力化の目的でハーベスターの代用としても利用される。
自脱型コンバインはその営農規模にあわせて、8馬力の2条刈から108馬力の6条刈[1]まで、様々な大きさがある。農林水産省の統計[2]による地域別出荷台数と条数別構成比を下記の表に示す。
| 台数 | 2条 | 3条 | 4条 | 5条以上 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 282 | 0.0% | 0.4% | 20.6% | 79.1% |
| 東北 | 4,005 | 17.5% | 44.4% | 26.2% | 11.9% |
| 関東 | 5,808 | 47.9% | 33.6% | 11.9% | 6.5% |
| 北陸 | 3,610 | 36.1% | 39.4% | 16.1% | 8.4% |
| 東海 | 2,105 | 65.2% | 21.3% | 5.7% | 7.7% |
| 近畿 | 3,692 | 72.8% | 19.7% | 5.5% | 2.0% |
| 中国四国 | 6,567 | 71.6% | 21.3% | 5.6% | 1.6% |
| 九州 | 4,347 | 59.7% | 27.0% | 10.7% | 2.7% |
| 沖縄 | 17 | 76.5% | 11.8% | 11.8% | 0.0% |
| 合計 | 30,433 | 53.1% | 29.2% | 11.6% | 6.0% |
| 輸出 | 1,856 | 4.5% | 0.4% | 57.4% | 37.7% |
[編集] 歴史
自脱型コンバインは、水稲の刈り入れ・脱穀に使う農具および農機を発展させる形で開発が進められた。
刈り取りには、当初は鎌を使った手刈り、その後は作物を後方に刈り倒してゆく歩行型動力刈取機や、間欠式刈取結束機(刈取・移動、結束を交互に行う機械)などが使われた。
脱穀には、江戸時代に発明された千歯扱きが明治時代までに全国に普及し、また1910(明治43)年には足踏式回転脱穀機が発明されるとそれが普及していった。また、選別機には手回し式の唐箕(とうみ、風を送り選別する機械)が開発されて普及した。なお、足踏式回転脱穀機および唐箕の原理は後に開発される動力脱穀機、さらにコンバインへと採り入れられることとなる。
米国やソビエト連邦(当時)などの大規模農場で普及したコンバイン(これら諸国で一般に使われている一体型のコンバインは普通型などと呼ばれる)は、日本では1962(昭和37)年から政府が推進した農業構造改善事業の一環として導入されたが、大型の普通型コンバインは日本の比較的狭い農地では使いづらいものであった。特に水稲においては、圃場が大規模であっても、収穫時の籾の損傷が大きい点、穀粒損失が多い点から、普通型コンバインを用いることは困難であるとされた。
一方で、1966(昭和41)年に井関農機が開発した「自脱型コンバイン(フロンティアHD50)」(自動脱穀機に刈取機を組み合わせたコンバイン)の登場を皮切に、国産農機メーカーが自脱型コンバインを相次いで発表、普及してゆく。
自脱型コンバインは、刈り取った穀桿(穀物の茎と茎から上の部分)の、穂先部分だけを脱穀装置にかけて脱穀(穀物の実の部分だけを取り出す)する。普通型コンバインは、刈り取った穀桿のすべてを機械内部で脱穀する。
このため、自脱型コンバインは普通型コンバインに比べて、水稲収穫時には籾の損傷が少なく、穀粒損失も少ないのであるが、麦類収穫ではあまり差がない。自脱型コンバインの別称として、軸流式、穂先供給式、単コンバイン、ジャパニーズ・コンバインなどの呼称がある。[3]
なお、初期の自脱型コンバインは側面刈りであった。これは刈取機が側面に付いているため、コンバインを使いはじめる前に、コンバインが走行できるだけの幅を手刈りする必要があった。 その後、狭い耕地の多い日本の事情に合わせて前面刈り自脱式コンバインが開発され、圃場の広さや向きにかかわらず刈り取りができるようになると急速に普及し、1990年現在で日本の水稲作付け面積の約 76% で使われている。
また、1970(昭和45)年頃より始まった減反政策により水稲から大豆・小麦・ソバ等への転作が増え、それら多種類に対応可能な汎用型コンバインも開発され、利用されている。
[編集] 各部の仕組み
基本的な構造は乗用型および歩行型とも同じであるので、以下歩行型(写真)をもとにその構造を解説する。
[編集] 刈り取り部
現在市販されている自脱型コンバインでは2条刈りから6条刈りまであり、例外として普通型コンバインに組み合わされる10条刈りの刈取り部もある。刈取り部は油圧によって上下に操作することが出来る。
刈取り部では、先端に取りつけられた三角形のデバイダで作物をかき分け、チェンに取りつけられた樹脂製の引き起しラグが作物の茎を垂直に引き起こしつつ、バリカン状の刈刃で地面から5cm前後の高さで作物を刈取り、作物の向きを保ったまま一列にまとめて搬送部へと送る。
作物が直立している場合、刈り取り作業は容易であるが、台風や病虫害、肥培管理の影響によって作物が倒伏している場合、その程度によっては刈取りが困難になる。進行方向に対して右側に倒伏している場合や、手前側に倒伏している向かい刈りは、構造上刈取り困難で相当速度を落さねばならず、刈取り不能の場合もある。しかし、左側や進行方向に倒伏している追い刈りは慎重に作業すれば、それ程速度を落さず刈取り可能な事が多い。オプションで、倒伏した作物への適応性をより高める補助デバイダを装備出来る。自脱型コンバインの刈取り部は普通型コンバインのリールヘッダに比較すれば、倒伏する可能性がある稲などの作物に対して、より適した刈取り部と言える。
自脱型コンバインの刈取り部は複雑な構造をしており、可動部の磨耗を防ぐために注油が欠かせないが、この作業を簡略化するために 一箇所のオイルタンクから手動または電動のポンプによって注油の必要な個所に一度に注油することが出来る集中注油装置が装備されていることが多い。
近年の自脱型コンバインで全面刈とうたわれる機種がある。これは刈取り部の刈り幅が、クローラの外幅と同等か、より幅広いことを意味する。これにより通常は反時計回りで進行する刈取り作業が、時計回りに進行しても作物を踏倒すことが無いなど、より自由な手順で刈取り作業を進めることが出来るものである。
[編集] 搬送部
地際から刈取られた作物は搬送部によって、脱穀部へ整然と搬送される。搬送は、搬送チェンと呼ばれる突起が付いた金属製のチェーンが強制的に行う。自脱型コンバインでは、作物の穂先部分だけを脱穀部に投入するが、脱穀を効率的に行うために後述のこぎ胴に対して適正な位置で作物を供給する必要がある。
こぎ胴に対して奥に作物を入れすぎた深こぎを行うと、損失や馬力のロスを生じ、逆に浅こぎを行うと穀粒がわらに残るこぎ残しが発生する。搬送部は刈取部から脱穀部へと作物を搬送しながら、こぎ深さを適正に調整する役割を担い、最近のコンバインでは作物の長さにあわせてこぎ深さを自動的に調節し、常に最適なこぎ深さで作物を脱穀部に供給する仕組みを備えている。
[編集] 脱穀部
脱穀部の構造は、従来の定置式の自動脱穀機、あるいはハーベスタの脱穀機と同様の構造を備えており、ここに穂先部分を供給し、籾を分離する。脱穀部は本体に内蔵されているので、普段その構造を外部から確認することは不可能であるが、右図の写真はカバーを取り外した状態の様子のものである。コンバインの処理能力に応じて、脱穀部のこぎ胴や選別板は大型のものが採用されるが、最小の2条刈コンバインから最大の6条刈コンバインまで、基本的な選別の原理は全く同一である。処理能力の向上を狙ってこぎ胴とは別に補助的な処理胴を装備する機種もある。
こぎ胴には逆V字型のこぎ歯が多数取りつけられており、動力で回転する。このこぎ胴がフィードチェンで整然と送られる作物の穂先から、穀粒をこぎ落す。こぎ胴の下側には鋼線を編んだクリンプ網があり、クリンプ網を通過した物だけが選別板へと落ちる。選別板は偏心した軸によって揺動し、穀粒と不要なわら屑を比重によって選別し、大きなわら屑はストローラックを経て機外へ排出される。さらに揺動板から落下した穀粒は唐箕ファンが発生する風によって選別され、目的の穀粒のみが籾タンクへと搬送される。この選別された穀粒を搬送する系統は1番と呼ばれ、1番ラセンなどと呼ばれる。選別が不完全で、穀粒とわら屑が分離しきれていない物は、2番と呼ばれる系統でこぎ胴、あるいは選別板に還元され、再選別が行われる。さらに軽いわら屑や埃は、唐箕ファン、あるいは吸引ファンの風によって機外に排出される。
この、穂先の穀粒のみを処理し、わら(穀桿)が選別部に殆ど入り込まないのが自脱型の最大の特徴である。
[編集] 穀粒処理部
脱穀部が選別した籾は、次の二種類の方法で処理される。
袋詰式 ポリエチレンなどの丈夫な化学繊維を編んだ、チャックで封をすることが出来るコンバイン袋、又は籾袋と呼ばれる袋に籾を詰める方式。一袋の容量は約50リットル有り、籾が詰められるとおよそ30kg程になるコンバイン袋は、手作業でコンバインから取りだされ運搬される。農家の高齢化の為に近年は敬遠される方式であるが、トラックが田に近づけないような条件では今でも使われる。
グレンタンク式 グレンタンクはコンバインの大きさにあわせて250リットルから2,000リットルの容量がある。6条刈の2,000リットルのグレンタンクは籾袋では約40袋に相当し、収量を反当8俵と仮定すると約17aの面積を機械を止ることなく刈り続けることが出来る。タンクが大きければ大きいほど連続して刈取を続けることができ、作業能率が向上する。タンクに貯められた籾は、ラセンを使って籾を搬送するアンローダやオーガと呼ばれる排出装置によって、バラ籾を運搬する籾コンテナやフレコン、或はダンプトラックに排出される。最近ではオーガを無線で自在に遠隔操作したり、伸縮式にして排出の位置合せを容易にする等の構造を持つ機種もある。
平成20年12月、精密農業の為に収穫しながらグレンタンクに貯まる籾の重量と水分を測定・記録する収量コンバインが完成し、今後市販される予定であることが農研機構から発表[4]されている。
[編集] 排わら処理部
一般的にカッタと呼ばれる装置が標準装備され、脱穀作業が済んだ稲わらを5cmから15cm程度の長さに細断処理する。細断したわらは圃場一面に散布されることになり、後でトラクタのロータリによって田にすき込まれる。 稲わらの経路を切替えることによって、稲わらを細断せずにそのままバラ落しすることも可能である。
他には次のような装備を選択することができる。
ドロッパ 稲わらの経路を切替えてバラ落しするわらを受けとめ、結束せずに一定量ずつまとめて圃場に落下させる装置。小型のコンバインではカッタとともに標準装備されることが多いが、あまり使われていない。
結束機 ノッタとも呼ばれる。稲わらを束にして結束する装置。後でそのわら束を手作業で立てて風乾したりする。家畜がいる農家でよく使われる。
立体放出 結束機とともに使用する。結束したわらを捻って垂直に落下させ、わら束を圃場に自立させる装置。手作業でわら束を立てる手間を省く。
カウントドロッパ ノッタドロッパとも呼ばれる。結束機で結束したわら束を、一定の数まとめて圃場に落下させる装置。わら束の収集を省力化する。
[編集] 走行部
自脱型コンバインにはクローラと呼ばれる無限軌道が使われる。これは圃場の接地圧を軽減することが主な目的であり、弱湿田であっても収穫作業が可能である。
強湿田用として、メーカーはさらに幅広のクローラをオプションで用意していることが多い。幅広のクローラを装着することで接地圧を低くすることができ、コンバインが沈み込みにくくなる。湿田用の幅広のクローラの接地圧は人間の足の接地圧よりも低く、歩行が困難な湿田でも容易に走行することが出来るが、旋回やバックはやはり困難である。圃場が非常にぬかるんでいる場合には、コンバインが走行不能となり脱出できなくなるので十分注意しなくてならない。コンバインでの収穫が一般化するようになってから、コンバイン作業を容易にする目的で早期に落水し、圃場を乾かそうとする傾向が見られるようになった。
また、3条より大きなコンバインには仕様によりクローラの接地面を油圧で上下させる車体水平装置があり、左右のクローラを独立して制御することで自動的に車体を水平に保つことが出来る。さらに前後方向の水平を保つことができる車種もある。車体が傾斜すると脱穀機の選別能力が低下するので、刈取中は車体を水平に保つことが望ましい。この装置は、手動操作で左右のクローラを同時に上下させることによってコンバインの最低地上高を自在に上下させることができ、湿田での走破性を向上させることが出来る。
このクローラを駆動するトランスミッションには、3段ないし4段の副変速機と、HSTまたはCVTといった無段変速機が組み合わされる。CVTにはゴムベルト、又は金属の駒をスチールベルトで多数連結した金属ベルトを用いる可変幅プーリ方式が用いられ、馬力のロスが少ないことから初期のコンバインや小型のコンバインに採用された。HSTでは停止状態から前進後進、超低速から最高速までひとつのレバーを倒すだけでノークラッチで自由自在に走行速度を操ることができ、停止状態ではブレーキがかかったのと同じ状態になるなど操作が容易なため、現在ではHSTを装備したコンバインが殆どである。
旋回の為の操作は、初期のコンバインは旋回したい方向のレバーを手前に引く2本レバー方式であったが、その後旋回したい方向にレバーを倒す1本レバー方式に改良され、近年では自動車のように丸いハンドルで旋回操作するクローラ式コンバインも存在する。
[編集] 自脱型コンバインの安全対策
コンバイン操作時の安全対策として、以下の例がある。[5]
- 手こぎ作業時緊急停止装置
- カッタ自動停止装置
[編集] 注釈
- ^ 2008年8月現在
- ^ 統計書名:主要農業機械の出荷状況について
- ^ いばらき統計情報ネットワーク/統計用語の解説/農業/自脱型コンバイン
- ^ 収量コンバインが完成/農研機構
- ^ 農業機械の安全装備いろいろ / 自脱型コンバイン
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
自脱型コンバインのメーカー
その他のリンク
- 農家が自脱型コンバインを選んだ時 (社団法人農林水産技術情報協会)
- 収量コンバイン (生物系特定産業技術研究支援センター)
- 中山間地域対応自脱型コンバイン (生研センター生産システム研究部)
- 三条刈り乗用コンバイン (ヤンマー農機、1999年)
- 自脱コンバイン (クボタ、1998年)
- 二条刈り歩行型自脱式コンバイン (井関農機、1967年)
最終更新 2009年6月10日 (水) 23:37 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
【自脱型コンバイン】変更履歴







