軽快車

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古い特徴を残す軽快車 紳士用(ダイヤモンドフレーム) ブリヂストンサイクル製 「メッセージ」(1990年代)
古い特徴を残す軽快車 男女兼用型(1970年代)サドル・ペダル・タイヤ・ベル は後の時代のもので補修されており 前カゴとヘッドライトが欠損している
婦人用軽快車(1980年代前期)後輪のブレーキは初期のサーボブレーキ ヘッドライトが欠損している

軽快車(けいかいしゃ)とは、日本における自転車の車種カテゴリーで、短中距離、低中速走行向きの自転車である。過去の一時期、日本において最も一般的な車種であったことから、一般車とも呼ばれた。しかし近年ではこのカテゴリーはシティサイクルと呼ばれることが多くなっている[1]

目次

[編集] 歴史

軽快車の歴史は第二次世界大戦以前まで遡ることが可能であるが、戦前の軽快車は現在見ることのできる物とはかなり異なり、一見すると実用車の荷台とスタンドを華奢な簡易型に替えただけのような物であった。大雑把には英国式ロードスターをほぼそのまま国産化したようなものと言える。 この時代の日本において自転車は安価な物では無かったため、目的別に異なる車種を使い分けることは一般的では無く、本来は軽快車が適する用途にも「大は小を兼ねる」の発想にもとづき、重装備の実用車が使われることが多かった。 このため当時の軽快車は、医師の往診などの重量物の運搬の必要のない業務や、裕福な旦那衆の散歩用など、贅沢な用途に用いられる自転車であり、流通量も少なかった。当時の代表的なブランドとして、日米富士自転車の「冨士覇王号」が著名である。

戦後の混乱、復興期を経て、1950年代なかば、昭和30年代に入ると、経済成長によって購買力が上がった一般の個人が自転車を購入する機運が高まった。その用途は勤労者の通勤ならびに日常の用足しが主であったため、実用車の頑強さと積載能力は過剰なものとされるようになり、むしろ身軽で小回りの効く自転車が求められた。こうした要求に応えたものが戦後の軽快車であり、これが現在のシティサイクルに続く直系の祖先となる。初期の戦後型軽快車は、知識のない者には実用車と大差ないようにも見えるが、仔細に見れば構成部品のほとんどに実用車や戦前型軽快車との差異が読み取れ、時代が下るほどその隔たりは明確になる。しばらくは戦前の特徴を引きずる製品も混在したが、漸次戦後の形態へ移行した。

実用車および戦前の軽快車と比較した戦後の軽快車の特徴を挙げれば、

  • タイヤの規格の「BEタイヤ」から「WOタイヤ」への移行による軽量化と転がり抵抗の低減ならびに整備性の向上。
  • フレーム各部の寸法と角度の変更による、低速での安定性よりも軽快な運動性を重視した走行特性の付与と小型軽量化。
  • ハンドル幅の短縮。
  • ペダル小型化。
  • 革サドルからテリー型サドル、後にはパンサドルへの変更によるメンテナンスフリー化。
  • スプロケットの小径化による駆動系の小型化。
  • 後輪バンドブレーキの小型化。
  • 鋼鉄帯材組み立て式の大型荷台から薄鋼板プレス成型による軽量な荷台への変更。

等の他、枚挙にいとまがないが、全体的に華奢で軽快な作りになっている。

1960年代に入ると、復興期以降増加を続けてきた実用車の生産台数が減少に転じ、それと入れ替わるように軽快車の生産が伸びた。1964年には軽快車が実用車を上回り、以来逆転していない。

1970年代には軽快車の形態、品質は煮詰まり、新たな付加価値の模索が図られる。フレーム以外の各部品への錆びにくいステンレス鋼や軽量なアルミニウム合金素材の採用といった実質的な品質向上にくわえ、2灯式ヘッドライトなどの表層的、装飾的な装備も見られるようになる。ロッド式ブレーキに代えてワイヤー式ブレーキの採用例が目立つようになるのもこの頃である。

1980年代には現在のシティサイクルの萌芽にあたる新意匠が見られるようになり、機能面ではサーボブレーキや内装3段変速機の普及、一部ではベルトドライブなどの採用も見られた。

1990年代には東アジアの新興工業国からの輸入自転車が目立つようになり、その急激な低価格化に圧迫を受けることになった日本国内のメーカーでは、生産拠点の海外移転などを含むコスト削減の努力と同時に、高品質と高付加価値を武器とした、低価格品との差別化の試みも盛んになる。アルミニウム合金製フレームや、一部でサスペンション機構などの凝ったメカニズムを持つものが登場し、子供乗せ自転車や電動アシスト自転車などの派生商品が普及し始めたのもこの時期である

2000年代に入るころには一般用途向け自転車の形態の変化、多様化が進み、これらの自転車を軽快車の名称で括ることの無理が無視できなくなる。そもそも「軽快車」とは、「実用車と比較して軽快な形態をもつ一般用途向け自転車」をあらわすものとして定められた名称であるが、その基準となった実用車が、この時代には市場での存在感をほとんど失い、一般への馴染みが薄くなったこともあって、軽快車という名称は足場を失い、宙に浮いたものとなった。こうしたこともあってか日本工業規格のJIS D 9111(自転車 - 分類及び諸元)において従来の「軽快車」の名称を廃し「シティ車」として再定義が行われている。ただし現時点においては、長年にわたって親しまれてきた軽快車という名称が完全に廃れてしまったわけではなく、シティ車もしくはシティサイクルという名称が完全に定着したとも言い切れない。とは言え、現状では今後ふたたび「軽快車」という名称が往時の勢いを盛り返す要因はほぼ皆無であり、遠からず死語として忘れ去られることは避けられない情勢である。

[編集] 軽快車の構造

軽快車は取り回しの軽さ、価格の低下を求められる傾向にあり、以下のような素材が自転車に使用されている。

[編集] 前輪周辺

前輪周辺は以下のパーツに分けられ、素材は次の通りである。

  • 前輪
  • フォーク → 鉄、アルミニウム
  • 前かご → 鉄、ステンレス、プラスチック
  • かごステー → 鉄、ステンレス、アルミニウム
  • ダイナモランプ → プラスチックなど
  • どろよけ → 鉄、ステンレス、プラスチック

強度の点では鉄、ステンレスが採用されるが、軽さを重視する場合はアルミニウムがよく用いられる。素材の順番は使用頻度であるが、価格、強度、軽さのいずれが求められるかによってそれぞれパーツを使い分けている。なお、鉄を使用する場合は、サテンめっきを行うか、塗装を行って錆びを防いでいる。ダイナモランプはタイヤで直接ダイナモを回転させるタイプと、ハブの回転エネルギーを発電に使用しているタイプがあり、後者のほうが高価であるが効率が良く、騒音も低いので人気が高い。 後者を利用する軽快車は、暗くなると自動で点灯するオートライト採用車である。

[編集] フレーム周辺

フレーム周辺は以下のパーツに分けられ、素材は以下の通りである。

  • ハンドル → 鉄、ステンレス、アルミニウム
  • ブレーキレバー → アルミニウム、鉄、プラスチック
  • 前ブレーキ → アルミニウム、鉄
  • グリップ → ゴム、プラスチック
  • ステム → アルミニウム、ステンレス、鉄
  • ヘッドパーツ → 鉄
  • フレーム → 鉄、アルミニウム
    • ヘッドチューブ → フレームと同じ
    • トップチューブ → フレームと同じ
    • ボトムチューブ → フレームと同じ
    • シートチューブ → フレームと同じ
    • シートステー → フレームと同じ
    • チェーンステー → フレームと同じ
    • ボトムブラケットシェル → フレームと同じ
  • ボトムブラケット → 鉄
  • クランク → 鉄、アルミニウム
  • クランクギア → 鉄
  • ペダル → プラスチック(ねじ部分は鉄)
  • チェーン → 鉄
  • サドル → スポンジなど
  • サドル固定金具 → 鉄

前輪周辺と同様、期待される能力に応じて素材は使い分けられる。アルミニウムのフレームについては軽くて取り回しが楽であるが、廉価なものは走りが重くなっているので購入時には注意が必要である。前ブレーキは多くがリムの回転をゴムの挟み込みによって停止させるタイプであるが、リムの素材やブレーキのゆがみなどが原因で音鳴りする。鉄は塗装あるいはサテンめっきであるが、ハンドルについてはステンレスが増えてきている。

フレームの塗装色は、かつて比較的地味な色が多かったが、近年では原色に近い色が数多く存在し、バリエーションは各メーカー内でも多様である。

[編集] 後輪・ホイール周辺

後輪周辺は以下のパーツに分けられ、素材は以下の通りである。

  • 後輪
    • スポーク → 鉄、ステンレス
    • ニップル → 真鍮、鉄
    • リム → アルミニウム、鉄、ステンレス
    • タイヤ → ゴム
    • 英式バルブチューブ → ブチルゴム
    • ハブ → 鉄
    • フリーギア → 鉄
    • ブレーキ → 鉄、ステンレスなど
  • どろよけ → 鉄、ステンレス、アルミニウム、プラスチック
  • キャリア → 鉄、ステンレス
  • スタンド → 鉄、ステンレス、アルミニウム

後輪は、多くのパーツの組み合わせが存在する、比較的複雑なパーツであり、他の自転車と同様価格も前輪に比べて高い。ブレーキについては、前ブレーキとは異なり数多くの種類が存在し、価格や性能に応じて使用されるブレーキは決定される。ブレーキの種類については以下に述べる。リムは鉄→ステンレスと進歩してきたが、軽量を狙ってアルミ製を使うことが増えた。しかしステンレスよりは劣化が早いのも事実である。キャリアやスタンドは剛性が求められるために、アルミ製はあまり存在しない。また、内装変速機が採用されているものもあり、3段変速のものが多い。

[編集] 後ブレーキの種類

後ブレーキは大まかに以下の種類に分けられる。

バンドブレーキは最も価格が安く、革や樹脂等を練り固めたライニングが貼り付けられたバンドを用いて、ハブ同軸の金属ドラムを締め付けて停止する方式である。構造も単純なために廉価な軽快車と寸法上の理由のため子供車に採用されている。しかしながら、ある程度使用すると磨耗しブレーキ鳴きが起きるので、一定の期間ごとに交換が必要である。

サーボブレーキは、唐沢製作所の開発したブレーキであり、外観はバンドブレーキとよく似ているが、内部構造は大きく異なり、ユニサーボ式のドラムブレーキとなっている。バンドブレーキに比べて圧倒的に音鳴りしにくい。

ダイネックスブレーキブリヂストンの開発したブレーキであり、バンドブレーキがドラムの外側からバンドを締め付けるのに対して、ドラムの内側からライニングを押し付ける。ブレーキの調整はやや困難だが、堅牢さに優れ、音鳴りもしにくい。

上記3種は、車輪への取り付け部分が共通の規格となっており、互換性がある。いずれも、前進方向には軽い力で大きな摩擦力を発生させる自己倍力作用を持つが、後退方向では低い摩擦力しか得られず、急な上り坂での停止では、ずり下がりの恐れもある。

ローラーブレーキシマノの開発したブレーキで、音鳴りしないうえに、雨天時でも摩擦力が低下せず、後退方向にも前進時と同じ摩擦力が得られるのが特徴的なブレーキである。構造も複雑で価格も比較的高いが、現在は多くの軽快車に採用されている。一定の期間ごとに指定のグリースを注入してメンテナンスを行う。 取り付け部分がシマノ社の独自規格となっており、同社製のハブを持つ車輪としか組み合わせることができないが、取り外しに特殊な工具は必要無く、ブレーキシステムがユニット化されているため、交換は比較的容易である。

メタルリンクブレーキヨシガイの開発したブレーキであり、ドラムに外側から金属板を押しつける。原理はバンドブレーキに、性能はローラーブレーキに似る。外観からは、グリスに溜まった熱を逃がす大型の放熱板が目立つ。バンドブレーキ、サーボブレーキとは取り付け部分に互換性を持ち、構造上音鳴りはしにくい。

[編集] 軽快車による旅行

自転車旅行」も参照

自転車にて旅行を行う場合は、ランドナークロスバイクマウンテンバイクなど、前後の変速機が付属しておりかつ車体重量も軽いものが使用されることが多い。しかしながら、上記の自転車は価格も10万円以上する場合が一般的で、さらに乗車にはある程度の経験と慣れを必要とする。そのため軽快車で長期の自転車旅行に出かけるケースも多々見られる。

軽快車が長期自転車旅行に有利な点については、以下が挙げられる。

  • 荷物の積載性
  • アップハンドル
  • タイヤおよびチューブ
  • 修理の容易さ
  • パーツの手に入りやすさ

積載性は軽快車の作成された目的のひとつであり、得意分野である。またアップハンドルにより背を屈める必要がなく自然な姿勢がとれるのだが、長距離走行では腰に負担がかかり体を痛めることがある。軽快車に使用されているタイヤロードレーサーのものよりも頑丈で、マウンテンバイク用のブロックタイヤほど抵抗もなく、日本の舗装された道路を走行するのであれば比較的適していると言える(事実、ランドナーやクロスバイクのタイヤは軽快車のものに近い)。

また日本には軽快車の修理の技術を有する技術者が多い。各地の自転車店では軽快車の修理・調整を主体にしている所が多く、競技用やそれに近いスポーツ車を扱う店は比較的少ない。マウンテンバイク、ロードレーサーとは変速機やタイヤなどに仕組みの違いがあり、知識のない者が扱うと症状がひどくなるか、あるいは別の部分に影響が出てくることが多い。対して、軽快車のパーツは一般的に汎用性に富み、他のメーカーのパーツでも容易に応用できる。地方でもホームセンターやスーパーなどではパーツを取り扱っていることも多く、故障が理由で自転車旅行が中止になる心配は少ない。極端な場合、新しい部品を購入して旅行を続けることも価格の安さや販売拠点の多さから十分に可能である。

一方で軽快車が長期自転車旅行に適していない点は以下の通りである。

  • 近距離向けに作られている
  • 坂道に弱い
  • 車体重量が重い
  • 変速機が存在しない(あるいは少ない)
  • 輪行袋に入れにくい(あるいは入れられない—分解搬送を前提にしていない為)

軽快車は、原則的に近所への買い物などを目的に設計されているので、急激な登坂には適しているとは言えない。日本の国土は都市部を外れると多くが山岳であるために、軽快車での走行はこの点で苦しい。また車体重量が重いことも坂道と関連するが、平均重量が18kgと重いのも長距離の走行には厳しい。

変速機は存在しないか、あるいは内装3段変速である場合が多く、この点も長距離の走行および坂道に向いていない。軽快車は始動時の安定性を重視しているのでギアも軽く、トップスピードではギアが足についてこない。また、分解搬送できるように設計されていないため、自転車の電車飛行機内への持込を可能にする輪行袋に収納することが難しい。すなわち行程中に(船舶以外の)公共交通機関の利用を含めるのは無理がある。かごなどマウンテンバイクなどには付属されていないパーツが標準装備されているのも重量面では不利で、事前に旅行中必要が少ないパーツを取り外したり、より軽量・簡便なものと交換しておくことも一考の余地がある。

[編集] イベント

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  1. ^ 日本工業規格JIS D 9101-1991(自転車用語)では「日常の交通手段及びレジャー用に用いる短中距離、低中速走行用の一般用自転車で、サドル最大高さが750mm以上1 100mm以下で、車輪の径の呼び25以上のもの」と定義されている。軽快車と同様の用途に用いられる自転車で「車輪の径の呼び24以下のもの」はミニサイクルとされる。JIS D 9111(自転車 - 分類及び諸元)でも、旧版で両者を区別していたが、1995年改正において、車輪の径による区別を廃止し「シティ車」に統合された。日本の自転車統計でも、軽快車とミニサイクルは「シティサイクル」と総称されている。

[編集] 関連項目

最終更新 2009年11月14日 (土) 00:15 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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