電磁気の単位

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電磁気の単位(でんじきのたんい)を単位系に組み込もうとするとき、電磁気に関係する物理量は、長さ質量時間だけでは表すことができないため、もうひとつ別の物理量を単位系に加える必要がある。

目次

[編集] 各種の単位系

国際単位系(SI)では電磁気関連の基本単位として電流を採用しており、電流の流れる物体間に作用するによって定義している。SI単位系では電荷電流時間として定義される組立単位となる。このような形になるまでには、様々な変遷があった。

電磁気の知識がまだ十分でなかったころ、現代でももなじみ深い C(クーロン), A(アンペア), V(ボルト)および Ω(オーム)などの単位が作り出され、実用的な単位として使われていた。その後、電磁気の研究が本格化すると、このような単位では研究に支障があったため、研究に最も適した単位系としてCGS単位系が構築された。こうして電磁気学の集大成であるマクスウェルの方程式が電場と磁場が対称的になる美しい方程式として完成された。しかし、電気工学の分野に携わる人々においては、物理的な理論やその美しさなどはどうでもよいことであり、むしろ使い慣れたアンペアなどの単位の方に関心があった。これが国際単位系の基本単位に電流が組み込まれる大きな要因になった。

電磁気の単位の構築は、電磁気量と力学量との関係を表す以下の3つの基本方程式から始めることになる。

電荷に関するクーロンの法則
F = k_{1} \frac{Q_{1}Q_{2}}{r^{2}}
電流と磁場に関するビオ・サバールの法則
F = k_{2} \frac{I_{1}\Delta s_{1} I_{2}\Delta s_{2}}{r^{2}}
電流連続の法則(キルヒホッフの第一法則
I + k_{3} \frac{dQ}{dt} = 0

各種の電磁気に関する単位系の違いは、上記の各式に表れる係数 k1, k2, k3の値をどう置くかの違いによるものである。

[編集] CGS電磁単位系

最初に電磁気の単位系を構築したのはウェーバーであった。ウェーバーは、ビオ・サバールの法則の係数 k2 を 1 として電流の単位(電磁単位 (emu: ElectroMagnetic Unit))を決定し、さらに電流連続の法則の係数 k3 を 1 として電荷の単位を導いた。これをクーロンの法則に適用し、1cmの間隔で置かれた単位電荷を持つ物体間に働く力が 1ダイン(dyn)になるように k11 / c2c は光速度)とした。この単位系はCGS電磁単位系(CGS-emu)と呼ばれるが、現在では使われていない。

[編集] CGS静電単位系

電磁単位系と対になるものとして、マクスウェルが提案したのがCGS静電単位系(CGS-esu)である。これは、クーロンの法則の係数k1 を 1 として電荷の単位(静電単位 (esu: ElectroStatic Unit))を決定し、CGS電磁単位系と同様に電流連続の法則の係数 k3 を 1 として電流の単位を導いたものである。これをビオ・サバールの法則に適用し、1cmの間隔で流れる単位電流の間に働く力が 1ダインとなるように k2 = 1 / c2 とした。

[編集] CGSガウス単位系

ヘルムホルツヘルツは、磁気に関する単位には電磁単位系、電気に関する単位には静電単位系を用いた単位系を提唱した。この単位系はCGSガウス単位系と呼ばれる。この結果 k1 = 1k2 = 1k3 = 1 / c となる。この単位系は、電場と磁場の方程式が対称になり、理論的な見通しが良いという特長があるため、現在でも理論物理学や天文学の一部の研究者たちに根強い人気がある。

[編集] ヘヴィサイド・ローレンツ単位系

ヘヴィサイド・ローレンツ単位系は、ヘヴィサイドが1883年に提唱し、ヘンドリック・ローレンツが再編成したCGS単位系のひとつである。単にヘヴィサイド単位系とも呼ばれる。

上記3つの単位系においては、点電荷によるクーロン力が距離の二乗に反比例するために、マクスウェルの方程式など電磁気学で多用される微積分の式に係数 が表れる。 [1] ヘヴィサイドはCGSガウス単位系において k1 = 1 / 4π, k2 = 1 / 4π とすることで、微積分の式に が表れないようにし、これを「有理化」と呼んだ。これが、ヘヴィサイド・ローレンツ単位系である。有理化によりマクスウェル方程式などからを取り除いたが、その代償として従来の単位系との換算の際に\sqrt{4\pi}が大量に表れることになり、実用的な単位系とは言い難いものであった。

[編集] MKSA単位系

工業においてはCGS単位系が小さすぎたことから、工業的な実用単位系としてMKS単位系への移行が行われるようになった。 [2] 理屈ではCGS単位系をそのまま十のべき乗倍してMKS単位系に移行すれば事足りたはずだが、古い単位であるアンペアなどが電気工学の分野では依然として盛んに使われていたため、電気工学的な実用という観点からアンペアが表舞台に引き上げられることになった。このため、CGS単位系からMKSA単位系への移行は力学の問題は簡単だが、電磁気の問題はやや複雑なものとなった。MKSA単位系を基礎としたのが、現行の国際単位系(SI)である。

ジョヴァンニ・ジョルジ(Giovanni Giorgi)は、電磁単位系を元にした、電流をもう1つの基本単位とするMKSA単位系を標準とすることを提案した。これによる係数は k1 = c2×10 − 7 , k2 = 10 − 7 , k3 = 1 であるが、 真空の誘電率 ε0真空の透磁率 μ0 と呼ばれる人工的な定数を使って k1 = 1 / 4πε0 , k2 = μ0 / 4πと表すのが普通である。 ジオルジが提案したMKSA単位系は、ヘヴィサイド・ローレンツ単位系の有理化を ε0μ0を内包させることで実現させたものと言える。 すなわち、公式に ε0μ0 を埋め込むことにより、電気工学で重要な多くの実用的な公式からを取り除くことに成功している。しかし、有理化の代償としてクーロンの法則やビオ・サバールの法則のような基本方程式に1 / 4πが表れるという副作用がある。 MKSA単位系は、電磁気の理論のために構築されたCGSガウス単位系と比べると、電場と磁場の対称性が悪く、物理的性質が見えにくいという欠点があるが、これは仕方がないことである。[3]

[編集] 一般化CGS単位系

上述した4つのCGS単位系において、電磁気の単位を構築するために導入したもう1つの値は基本単位としては扱わない。すなわち、CGS単位系における基本単位は3つなので、これを「3元」という。 一方、MKSA単位系は電流を基本単位(新たな次元)として取り扱っており、これを「4元」という。 3元のCGS単位系から4元のMKSA単位系への移行の際の過渡的措置として、電磁単位系の電磁単位(emu)、静電単位系の静電単位(esu)を基本単位として4元にした「一般化CGS電磁単位系」「一般化CGS静電単位系」が導入された。

[編集] まとめ

各単位系の係数をまとめると以下のようになる。(c は各単位系の光速度)

  k1(クーロンの法則)     k2(ビオ・サバールの法則)    k3(電流連続の法則)  
CGS電磁単位系 1/c2 1 1
CGS静電単位系 1 1/c2 1
CGSガウス単位系 1 1 1/c
ヘヴィサイド単位系 1/ 1/ 1/c
MKSA単位系   c2×10 − 7 (= 1/4πε0)  10-7 ( = μ0 / 4π 1

[編集] 単位

CGS電磁単位系・CGS静電単位系では単位名称は定められておらず、単位系の名称をそのまま使って「電磁単位(emu)」「静電単位(esu)」と呼んでいた。今日では、同じ物理量のSIの単位の前に、電磁単位系についてはアブ(ab; absoluteの略)、静電単位系についてはスタット(stat; staticの略)をつけて表すこともある。これによれば、電磁単位系の電流の単位(電磁単位(emu))はアブアンペア(abA)、静電単位系の電荷の単位(静電単位(esu))はスタットクーロン(statC)、静電単位系の電圧の単位はスタットボルト(statV)となる。

一般化CGS単位系を導入する際、電磁単位(アブアンペア)、静電単位(スタットクーロン)に固有の名称がつけられ、電磁単位はビオ(Bi)、静電単位はフランクリン(Fr)となった。

他にCGS単位系の単位には、磁束のマクスウェル(Mx)、磁場のエルステッド(Oe)、磁束密度のガウス(G)などがある。

国際単位系では、電流はアンペア(A)、磁束はウェーバ(Wb)、電荷はクーロン(C)、電圧はボルト(V)である。

各単位系を相互に変換するには、簡単な計算で求められる係数を乗算すればよい。なお、CGS単位系の基本単位となる物理量や、SI単位系の基本単位となる電流(アンペア)は、その定義通りの実験が困難であるため、より高い精度の別の実験から間接的に求められている。

CGSガウス単位系の単位を1とした場合、各単位系の単位の換算は以下のようになる。ただしc は光速度(cm/s)とする。

  電流 磁束 電荷 電圧
CGS電磁単位系 1 1 1/c c
CGS静電単位系 c 1/c 1 1
CGSガウス単位系 1 1 1 1
ヘヴィサイド単位系 \sqrt{4\pi} 1/\sqrt{4\pi} \sqrt{4\pi} 1/\sqrt{4\pi}
MKSA単位系 10 10-8 10/c 10-8c


SI電磁気の単位
名称 記号 次元 物理量
アンペアSI基本単位 A A 電流
クーロン C A·s 電荷電気量
ボルト V J/C = kg·m2·s−3·A−1 電圧電位
オーム Ω V/A = kg·m2·s−3·A−2 電気抵抗インピーダンスリアクタンス
オームメートル Ω·m kg·m3·s−3·A−2 電気抵抗率
ワット W V·A = kg·m2·s−3 電力放射束
ファラド F C/V = kg−1·m−2·A2·s4 静電容量
ファラドメートル F/m kg−1·m−3·A2·s4 誘電率
ファラドダラフ F−1 kg1·m2·A−2·s−4 エラスタンス
ボルトメートル V/m kg·m·s−3·A−1 電場(電界)の強さ
クーロン平方メートル C/m2 C/m2= m−2·A·s 電束密度
ジーメンス S Ω−1 = kg−1·m−2·s3·A2 コンダクタンスアドミタンスサセプタンス
ジーメンスメートル S/m kg−1·m−3·s3·A2 電気伝導率(電気伝導度・導電率)
ウェーバ Wb V·s = kg·m2·s−2·A−1 磁束
テスラ T Wb/m2 = kg·s−2·A−1 磁束密度
アンペア(アンペア回数) A A 起磁力
アンペア毎メートル A/m m−1·A 磁場(磁界)の強さ
アンペアウェーバ A/Wb kg−1·m−2·s2·A2 リラクタンス(磁気抵抗)
ヘンリー H Wb/A = V·s/A = kg·m2·s−2·A−2 インダクタンス
ヘンリーメートル H/m kg·m·s−2·A−2 透磁率
無次元数 χ - 磁気感受率

[編集] 脚注

  1. ^ 円の面積をπを使わずに表すことが困難なように、宇宙が三次元空間であるため を使わずにすべての電磁気の方程式を表すことは不可能であり、むしろ理論的にはがあった方が都合がよい。しかし、電磁気の理論に深く携わらない人たちにとっては π や光速度 c が目障りなだけであることも事実である。
  2. ^ 現在ではナノスケール・テクノロジーが一大産業に成長したため、この分野に限ればCGS単位系の方がより実用的である。また、家庭で購入する様々な食品や日用品の大多数においては、メートルやキログラムよりも、センチメートルやグラムの方がより実用的である。このように、実用的な単位系は何を対象にするかによって全く異なってくる。
  3. ^ 例えばCGSガウス単位系では、抵抗率の単位が sec(時間)、電気容量の単位がcm(長さ)になるため、物理的性質を推測することは容易であるが、MKSA単位系では抵抗率の単位がΩm、電気容量の単位が F(ファラド)であるため、物理的性質が見えにくい。なお、ファラドをSI基本単位で組み立てると、 m-2·kg-1·s4·A2 という非常に入り組んだものになり、これを直感的に理解することは困難である。

最終更新 2009年9月9日 (水) 15:03 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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