非武装中立

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非武装中立(ひぶそうちゅうりつ)とは、理念として他者を傷つけることを否定するが故に、自国の防衛のためであっても戦争に反対し軍事武装を放棄して国際的に中立主義を貫ぬく事で平和を維持していこうという考え方である。

目次

[編集] 概要

非武装中立論とは、日本だけに見られる独自の政策論ではなく、欧州においても社会防衛論として、軍事による国土防衛を放棄し、自国が外国軍隊によって占領されたとしても、他の手段(デモ、座り込み、ボイコット、非協力等)によって他国からの領土支配を拒絶するとする政策論が存在するが実現している国は存在していない。

ガンディーキング牧師非暴力主義の活動が類似した思想の例として挙げられることもある。(詳細は各ページを参照)。

1867年の建国時点では永世中立国だったルクセンブルクは同時に非武装中立政策を執っていたが、第一次世界大戦第二次世界大戦共にドイツフランスへのより安全な侵攻ルートを確保するため、シュリーフェン・プラン及びマンシュタイン・プランに基づいてベルギーとルクセンブルクの中立を一方的に侵犯して両国を武力占領したので、1949年NATOに加盟し永世中立および非武装中立政策を放棄した(ベルギーは武装中立政策をとっていた)。

現在も非武装中立を行っている国としてコスタリカがよく挙げられるが、コスタリカは常備軍の設置を禁止しているだけで、非常事態には徴兵制を敷き軍隊を組織することができる。また、事実上の国防軍である国家警備隊及び地方警備隊は重火器等を保持し、警備隊への予算の割り当ては隣国ニカラグアの軍事費の三倍(2005年 日本外務省のデータ)となっているなど、実態は非武装というイメージからは乖離している。また、中立という観点からは、安全保障をアメリカ合衆国に依存しており、さらに米州機構のメンバーでもあり、1965年に起きたドミニカ内戦の際には米州平和維持軍の一員としてドミニカ共和国の立憲派政権を転覆させるために、ラテンアメリカの反共国家の軍隊と共に武装警察を派兵したこともある。このような事情から、国際的には中立国として認められない(同国の事情については、コスタリカも参照)。

2009年現在政権与党として非武装中立を掲げる政党としてはキプロス共和国労働人民進歩党があるが、同党の非武装中立の理念は現在のところ実効化はしておらず、キプロス共和国の国軍であるキプロス国家防衛隊(Cypriot National Guard)は未だに健在である。

[編集] 日本

日本の非武装中立論者は日本国憲法の前文と第9条を根拠に自衛隊在日米軍が憲法違反だと主張している。そして日本の安全保障政策として、自衛隊の廃止、在日米軍を肯定する日米安全保障条約の廃止を主張している。2009年現在の日本の政党では護憲(自衛隊違憲)・非武装を党是としている社民党がある。また護憲団体として「9条の会」「9条ネット」がおり、日本国憲法9条の理念を国際的に広める活動をしており、現時点では自衛隊などの防衛力を容認しつつ最終的には軍備の永久放棄を視野に入れている。

非武装中立論者には護憲派が多く、自衛隊や在日米軍の存在を明白に肯定するための第9条の改憲に強く反対している。かつて、1979年森嶋通夫LSE教授(当時)が独自の理論による非武装中立論を発表し[1]、翌1980年には、日本社会党石橋政嗣委員長(当時)も自著[2]の中で「非武装中立論」を展開した。

ただし、第9条改定反対派のすべてが非武装中立論の立場に立っているわけではない。例えば河野洋平など自民党内の護憲派は、自衛隊の存在は容認している。また日本共産党新左翼各派は、現状の自衛隊や在日米軍には反対するが、非武装を提唱した事は無い。

[編集] 反対意見

非武装中立に対する、次のような批判や指摘がある。

  • 戦争当事国の相手方が自国の領域へ侵入することを、武器による抵抗をせずに受け入れることは、戦争当事国の一方(すなわち敵側)だけに加担することになり、これは中立とはいえない。よって、自国が戦争に巻き込まれないために、あるいは利用されないために、国際法的な観点から国土防衛の法的義務が課されていると解され、これは当然に軍事防衛を前提としているものである。
  • そもそも、戦争当事国の一方に領土、領海、領空の通行を許可することは、もう一方の当事国に対する戦争行為にあたる。たとえば、アメリカアフガニスタンに空爆したとき、パキスタンは領空の通過を許可した。このパキスタンの行為は、パキスタン軍自体がアフガンニスタンに直接攻撃せずとも、アフガニスタンに対する戦争行為にあたる。非武装下で、戦争当事国一方が軍通行の要求を出してきた場合、拒否できなくなるため、以上の理由から国際法上、中立を保つことは不可能である。したがって、地上では非武装中立は無意味な主張である。
  • 社会防衛論を現実に実行するにさいしては、国民による不断の努力が求められるが、占領軍による逮捕拷問、処刑、密告勧奨などの恐怖支配によって、領土支配拒絶運動が分断化されたり沈静化されてしまって失敗する恐れがある。結論的には、社会防衛論による戦争への抑止効果は、一般的な軍事力による抑止効果と比較して極めて微弱であるとされ、なんら戦争回避の効果的な手段となり得ない。
  • 国際社会における外交は、経済力、軍事力など、国家の総合力を背景に行われるものであり、軍事的空白を自ら生み出すことは、紛争を招き国際的な安全すら危険に晒すことになる。日高義樹のワシントン・リポートでのインタビューに応じたアメリカ海軍の士官は「歴史的に見れば軍事的な空白が生まれたところに紛争が生じている」とコメントし、勢力均衡の維持が平和につながるとしている。歴史上の例では、第二次世界大戦により旧大日本帝国支配地域が空白地となったことから、その地域をめぐる米ソの衝突が引き起こされ、朝鮮戦争ベトナム戦争につながっている。

なお、戦後日本の非武装中立論の形成に大きな役割を果たした、社会党左派系の社会主義協会に属した山川均の非武装中立論は、永世非武装国家を志向したものではなかった。山川は日本が復興する間の非武装を説いただけで、ソ連の脅威を十分に認識した上での将来的な武装を認めていた。軍備偏重であった戦前の社会を反省し、社会資本を復興に集中するねらいがあったとみられている。また、社会主義協会の代表で社会党顧問であった向坂逸郎1977年のインタビューで、「日本が社会主義国家になれば、帝国主義と戦い社会主義を守るために軍備を持つのは当然」と語っている。向坂の主張は理論上は自然なもので、党の看板政策を「政権を取るまでの方便」同然とみなした発言にもかかわらず向坂は社会党から何の処分も受けていない。

[編集] 脚注

  1. ^北海道新聞』(1979年3月9日付)への寄稿論文。
  2. ^ 石橋政嗣著『非武装中立論』(日本社会党中央本部機関紙局, 1980年10月)、(復刊版:明石書店, 2006年9月, ISBN 4750323985

[編集] 参考文献

  • 『国防』昭和63年7月号94頁以降(朝雲新聞社)

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

最終更新 2009年11月22日 (日) 10:05 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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