湿原
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湿原(しつげん、英: moor、bog、fen)は、湿地(英: wetland)のうち、常に非常に水分の多い状態にあり、自生する草本やコケ類に覆われある程度の広がりを持っている土地をさす言葉である。多くの場合に草原が広がっている。湿原に対する英語にはムーア(en:moor)、ボグ(en:bog)、フェン(en:fen)が当てられているが、それぞれ意味は微妙に異なる[1]。Wetland
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[編集] 形成
湿原とは、主に過湿な環境下で生育する草本や蘚苔類に覆われた陸地を指す。似た言葉に「湿地」があり、小規模な湿原、或いは浅い湖沼や水田、干潟等の陸地以外の場所も含んだ広義的な使い方をする。
湿原は主に浅い湖沼や潟などが次第に堆積物で埋まり、陸地化したものである。平地にある浅い湖沼は、周囲からの土壌の流入、それに水中や水辺の植物の生長につれ、それの生産する植物遺体などの堆積によって、次第に浅くなり、次第に陸化すると考えられている。このような湖沼→湿原→森林(陸地)と変化していくことを湿性遷移と言う。 長い年月の間に陸化していく途中の草原地域が湿原であるとも言える。
寒冷地では、湖沼やあるいは排水の悪い平坦地に生えていた植物の遺骸があまり腐らずに堆積し、水は埋まっても、栄養分の少ない植物遺体の堆積した湿原が、長期にわたって湿地である場合がある。そのような湿原では土壌や表面の水分の栄養分が乏しいか、栄養分があったとしても地表にあまり染み出ないなどの特徴から、大形の樹木などが生育せず、ヨシ、コケ類などがよく生育する。希少な野生の動植物が多く生息しており、世界的に貴重な生態系を形成するところもある。
北欧やシベリア、アラスカなどの極寒地に多く見られ、日本では北海道や東北地方などに大規模なものが見られる。谷地、田代と呼ばれる場合もある。なお、ラムサール条約は貴重な湿地を守るために制定され、日本の湿原の約6割ほどを占める北海道の釧路湿原は、これにより保護地帯となっている。
[編集] 種類
湿原は、常に植生の枯死と堆積を繰り返しており、機構や立地条件によって低層から中層、高層湿原といった姿に変化し、最終的には陸地へと変化していくものと考えられる。その形状や植生から以下の3種類に分類される。
[編集] 低層湿原
一般に湿原と言うと、これを指す。有名な釧路湿原の80%は低層湿原である。表面が平坦で地形面と地下水面とが一致し、湿原の表面まで冠水しているものを言う。その水は地表水と地下水に依存し、比較的富栄養性である。そのため、大形のヨシ、ガマ、および大形スゲ群落などの草本が生息する。また、地下水で涵養されているため、集水域の開発はその地下水位を変化させ、周囲を開発しただけでも変質や減少、さらには消失してしまうことがある。
[編集] 中層湿原
低層湿原から高層湿原に移行するときの湿原。地下水で涵養され植生が維持されている低層湿原と、雨水のみによって植生が維持されている高層湿原との中間の性質を持つ湿原。植生はヨシやスゲ類が主体となり、指標となる植物はヌマガヤである。
[編集] 高層湿原
分解されず堆積した泥炭が多量に蓄積されて、周囲よりも高くなったために地下水では涵養されず、雨水のみで維持されている貧栄養な湿原を指す。代表例に尾瀬ヶ原やサロベツ湿原があげられる。植生はミズゴケ類が主体。温暖な地域では、枯れた植生がすぐに分解されてしまうため、高層湿原は発達しない。まれに、冷たい湧き水などがある場合に、それに近いものが形成される。氷河期の遺存種など、貴重な動植物が生息する場合が多い。
[編集] 特徴
[編集] 生態系
[編集] 人間との関わり
湿原は、平坦で日当たりがよく、水が豊富であるが、水が多すぎるから通常の植物が生育せず、また足場が確実でないなど、利用の難しい面もある。そのため、特殊な利用法が行われる。最も広く行われているのが水田であろう。イネは半水生であるから、湿地での栽培に適している。より水の深いところでは、ウキイネの栽培が行われる。足場が弱いので、足が沈んでしまわないような工夫が行われる。下駄はそのために発達した。
ただし、そのために日本では平地の湿原は現在ではほとんど残っていない。かつては河川の中流域以下に広がっていた氾濫原に成立した後背湿地は、ほとんど水田となり、現在では宅地化している。
日本では、人間の生活地の近傍にある湿原では、気候によっては、日本住血吸虫の中間宿主であるミヤイリガイの生息地となってしまい、日本住血吸虫症対策のため、湿原が潰されるということもあった。しかし、そもそもはそのように湿原や湖沼などに、人間が素足のまま立ち入ることが原因であり、人間環境と湿地帯との住み分け、弁別が重要であろう。
他方で、湿原は自然状態で草原となり、明るい区画となる上、たとえば温暖な地域ではカキツバタなど、寒冷な地域ではミズバショウやヒメシャクナゲなどの美しい花が咲くこと、食虫植物など特異な植物が見られることなどから観光地として扱われることも多い。そのため、人為的攪乱からその状態が荒れることが多い環境でもある。水源が荒らされれば全体に影響があるし、踏みつけによる乾燥化が生じる場合もある。多くの人が入る場所では、人のはいってよい区画を制限することで自然保護を目ざしている例もある。
また渡り鳥にこれを利用する例が多く、その意味でも保護が求められている。
[編集] 日本の湿原一覧
- 釧路湿原(北海道)
- 霧多布湿原(北海道浜中町)
- サロベツ原野(北海道豊富町ほか)
- 雨竜沼湿原(北海道雨竜町)
- 松山湿原(北海道美深町)
- 田代平湿原(青森県青森市)
- 刺巻湿原(秋田県仙北市)
- 駒止湿原(福島県昭和村)
- 戦場ヶ原
- 尾瀬ヶ原
- 九十九里平野
- 池の平湿原(長野県東御市)
- 逆谷地湿原(長野県長野市)
- 八島ヶ原湿原
- 中池見湿地(福井県敦賀市)
- 小田貫湿原(静岡県富士宮市)
- 葦毛湿原(愛知県豊橋市)
- 長ノ山湿原(愛知県新城市)
- 瀞川平(兵庫県香美町)
- 赤名湿地(島根県飯南町)
- 鯉ヶ窪湿原(岡山県新見市)
- おもつぼ湿原(岡山県哲多町)
- 黒沢湿原(徳島県)
- 樫原湿原(佐賀県)
- くじゅう坊ガツル・タデ原湿原(大分県九重町)
- 川南湿原(宮崎県)
[編集] 脚注
- ^ 八杉竜一ら編 『岩波生物学辞典 第4版』 岩波書店、1996年、579頁、ISBN 4-00-080087-6。





